ハイパワーダンガンロンパ   作:ゲップ助かります

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失くし記憶とテセウスの船

 

 

俺と龍野の二人は案内に従って体育館までやって来た。詳しく見てないがここはどうやら希望ヶ峰学園ではない、似て非なる希望ヶ峰学園擬きのどこかの学校内だ。

 

何故分かるのかと言われれば、俺は今まで希望ヶ峰学園に付いては世界一を誇れる位に調べてきたからな。そっくりに造られているが所々俺の知らない教室や置いてある物がある。折角の希望ヶ峰学園の学校内かと期待に胸を踊らせてたってのに…と気落ちするが俺はすぐに気持ちを切り替えた。

 

(俺と龍野を拐った犯人からのメッセージだからな…警戒は常にしとかねえといけねえ)

 

それこそ超高校級として選ばれた龍野に何かしらがあったら責任問題が予備学科の俺にくるかもしれねえからな…責任重大って訳だ。

噂に聞いたが希望ヶ峰学園は予備学科の生徒はそこまで大事にはしてねえらしい。色んな所で金づるってよく言われてるのを見掛ける。

 

でももしかして本当は希望ヶ峰学園の新入生歓迎ドッキリだって可能性も捨てるのは早いか?なんてったってあの希望ヶ峰学園だからな!

 

(まさか予備学科の俺が居る理由って龍野や他の超高校級の新入生達との反応の違いを見て、流石は希望ヶ峰学園に選ばれたエリート達だってデータを取るためとかか?)

 

もしそうなら…めちゃくちゃ光栄な事じゃねえか!?しっかりと凡人代表として驚いて慌てねえとだよな!?と一人盛り上がっていると龍野から心配そうに声を掛けられる。

 

「…じゃあ中に入ってみようか」

「おうそうだな!」

 

気を引き締め直して、俺は体育館の扉に手を掛けて力強く開け放った。

すると体育館には同い年位の奴と大人が合わせて数十名程が体育館中央付近にバラけて立っていた。目覚めた場所からここに来るまでの間、人の気配なんてこれっぽっちも感じなかったのにこんなに居たんだな。

 

彼等彼女等も俺と龍野と同じくこちらを見て固まっていた。ずっとお互いに黙って立ったままだと何も始まらないので、勇気を出して龍野に声を掛けて集まっている中央付近まで足を進めた。

 

「……」

 

無表情の龍野だが警戒心を巧い事隠してるな……って何で俺はンな事が分かったんだ?何か…何か大切で重大な事を忘れてる様な…?

 

上手く言い表せれないもどかしい気持ちを抱えるが、次第に距離が近付き既に体育館に居た奴等の顔を視認するとそんな気持ちも何処かへ飛んでいった。

すぐ近くに立って居るのはどいうもこいつも龍野と同じく今年希望ヶ峰学園にスカウトされた入学生じゃねえか!!

 

…ってあれ?なんか二人程大人が居ねえか?

 

「やあ初めまして、だよね?君達二人も目が覚めたらここに居たの?」

 

一番奥の方に立っている大人の二人が気になるが、一番近くに居た男子が話し掛けてくれたので一先ずはこの男子と話すか。

 

「あ…はいそうです……って沢風…だよな!?」

 

目の前に居る百人居れば百人が絶対に振り返るアイドル顔負けのイケメンの沢風に会えた!憧れの超高校級のスーパー…いやハイパワーエリート高校生にこうして出会えるなんて俺はなんてラッキーボーイなんだ中学の同級生達に自慢しよ!

 

「なんやこいつ沢風の事知っとるで?知り合いなんちゃうか?」

「あれ、俺を知ってるの?もしかして…どこかで会った事があるかな?」

「あ、いや全然そんな事はなくてですね…初めましてで合ってるんだけど沢風…君の事はテレビとかで知ってまして…」

 

緊張しすぎて口調がおかしくなるが今の俺にはそんな些細な事も気にならねえ。憧れていた同い年の奴等が目の前で俺と話してたんだ!

 

「あははは、有難い事だけどそんなにキラキラした眼差しで見られてるとなんだか恥ずかしいな」

「そ、それに横に居るあんたは…和良井じゃんか!俺あんたの事めちゃくちゃファンなんす!」

 

聞き覚えありまくりの関西弁とトレードマークである髪を真っ直ぐ針の様に立てている特徴的な髪…そして前髪の一部を緑色のメッシュにしている本人はお気に入り、周りからの評価は低めの髪はこの世で一人だけ、和良井しかいねえ!

 

「お!やっぱり俺の事も知っとるか~!しかもファンて嬉しい言葉のおまけ付きとは!よっしゃ、後でサイン書いたるで!」

「うおおおおぉぉぉぉ!ありがとうございますっ!!」

「それと別に敬語はいらんで!気楽に絡んでなー!」

「俺の事も無理しないでタメ口で話してほしいな」

「い、良いのかありがとう!!」

 

最初龍野に出会った時は俺の持つどんな情報もヒットしなくて希望ヶ峰学園好き失格と言われても良い失態を犯したけど、ちゃんと知ってる人達に会うと気分が晴れやかになるな!それに二人とも才能に違わぬコミュ力の高さで話しやすいぜ!

 

「あははは、君…面白いね。ってまだ自己紹介してなかったね」

「ですが黒髪の方は沢風さんの事を知っている様ですね」

「ここに居る人達とは全員自己紹介し終わっててね、残るは君達二人だけなんだよ」

「そうなのか…って俺等二人だけとか…何で分かるんだ?」

「体育館の壇上の手前に並べられてる椅子と机、今ここに集まった22人分ちょうど置かれてたから多分そうだろうなって思ってね」

「…確かにあるね」

「成る程な」

「でも体育館に椅子だけならまだしも机まで置いてあるって変だと思わない?」

 

…確かに変だな。だけど今現在が絶賛奇妙な事に巻き込まれてる最中だしな。

 

「気を取り直して、自己紹介を始めようか!最初は黒髪の君の事から教えてほしいんだけど良いかな?」

 

沢風が持ち前のリーダーシップを発揮して俺が自己紹介をしやすい様に促してくれる。沢風達は既にお互いの事を軽くは知ってるからな。最後に来た俺達が何者なのかを先に知っておきたいのは当たり前の事だよな。

 

龍野は一番手って柄じゃねえし俺からするのは自然な流れだな。流石は周りの空気を読める出来る男、沢風だな!

 

噂通りな沢風に尊敬の念を抱きつつ、俺は緊張を隠す様に大きな声で全員に聞こえる様に軽い自己紹介を始めた。

 

「俺の名前は砂糖 太郎って言うんだ。ちなみに名字は調味料に使う甘い砂糖の方だ」

「なるへそりんちょー!すっごく珍しいね!!」

 

変な同意をするピンク髪のポニーテール女子から大体の人からも良く言われる事を言われた。ピンク髪にインカムを付けている変なテンションの女子と言えば当てはまる奴は一人しか居ねえ!

 

こいつも沢風と同様に話題沸騰中の女子だな!だが落ち着け太郎…今は自分の事を話さなきゃだ。話し掛けたい気持ちはグッと堪えなきゃだ。

 

「まあ珍しいとは良く言われるな。好きなもんは希望ヶ峰学園だ。小さい頃から憧れてて正直知識だけなら誰にも負けねえって自負してるぜ!趣味って言えるもんなら菓子作りだな。超高校級のパティシエには遠く及ばねえがそれでも自身を持って言えるぜ」

「…お菓子作り……凄いね」

 

龍野からの純粋な尊敬の眼差しに嬉しさもあるがあまりに真っ直ぐ見詰めてくる龍野に若干照れが上回る。

 

「何だよおいおいぃ!砂糖だけに甘旨菓子作りって訳かよおいー!」

「無駄に声がデケーんだよなーこのハゲは…」

「んだとテメー!」

「ちょっと喧嘩は止めなっ!今は砂糖の話を聞きな!」

「うっ…分かったよ悪かったって!」

「へーい…」

 

こいつら三人も当然知ってるぞ!ここに居る中で一番体が大きくて筋肉モリモリのマッチョ坊主に、気だるげなオレンジ髪の長身男子に、二人を止めた赤毛で胸部が…うん……何と言うか…めちゃくちゃでかい女子。

 

超高校級に相応しい才能を持つ奴等が次々と目の前に現れるからにやけそうな表情筋を引き締めるのに必死だぜ!

 

「話遮って悪いね」

「あ、いや別に気にしなくて良いぜ!砂糖だから菓子作りなのかってのも良く言われるし、甘い物が好きなんでね」

 

家族全員甘党で自然と菓子作りにハマっていったんだ。菓子作りだけは、希望ヶ峰学園にハマるより先だったから結構自信はある。だけど当然ながら超高校級のパティシエとかにゃあ敵わねえけど。

 

「ねえねえ気になったんだけどさ、超高校級のパティシエには遠く及ばないって言ってたけど砂糖君の才能はパティシエじゃないの?料理人とか?」

 

目に隈がある帽子を被る男子が予想していた事を聞いてくる。この場に居て菓子作りが趣味なのに超高校級のパティシエじゃねえって事を言えば当然の疑問だよな。

 

「期待させちまって申し訳ねえけど俺にはここに居る奴等と違って希望ヶ峰学園に選ばれる才能は持ち合わせちゃいねえ。菓子作りも趣味の範疇を超えられねえ腕前だ」

「なんだそりゃあどう言う事だよ?」

 

それから俺は簡潔に自身が予備学科の新入生である事を告げた。一番始めに反応したのはさして気にした様子はない沢風だった。

 

「そんなに不安がらないで大丈夫だよ。予備学科なのが悪いって訳じゃないし、皆もそう思うよね」

「うん!予備学科だろうとなんだろうと今僕達はここに誘拐された誘拐仲間だよ!」

「誘拐仲間てなんやねんまだ誘拐とは決まってへんやろ!?希望ヶ峰学園なりのサプライズかもしれへんやないか!!」

「ユカイツウカイ略してユウカイ仲間って事ダナ、ナルハチー!」

「よく分かってくれたねシャベルさーん!正解の景品として僕と抱き付こうか!」

「あ、ちょっと待てよ百澤!俺も混ぜろ!」

「コラッ!君達何を淫らな事をシャベルくんにしようとしているんだ!」

「良いじゃないか泊君!」

「そーだそーだ!」

「駄目に決まっているだろう!」

「ムム~…ナルハチもタイヨウも大変態デ~ス」

「えっと……」

「ごめん皆、砂糖が困ってるしちょっと静かにしてくれないかな?」

 

いつの間にか会話から置いてかれてしまった俺を気遣い沢風が思い思いに話し始めた皆に呼び掛けるが、一番騒いでる奴等には沢風の声が届かずに話し続けている。

 

「あんたら勝手に騒ぐんじゃないよ!砂糖が困ってるって言ってるだろう!?」

「そうだぞテメーらァ!沢風がァ静かにしろッて言ッてんだろうがァ!!」

 

そんな状況を見かねて赤毛女子と白衣を着ている強面赤髪の男子が一際大きい声で一喝すると騒いでる奴等もピタッと黙った。

 

「お、おお…わりい」

「すまない!!俺とした事が砂糖君の邪魔をしてしまった…」

「アララ…失敬デス」

「ごめんね砂糖君」

「ああいや大丈夫だから気にしないでくれ」

 

流石は希望ヶ峰学園に選ばれた超高校級の奴等だ。一癖二癖以上の濃い奴等で内心にやにやが止まらねえよ!

 

「まあそんな訳でただの希望ヶ峰学園マニアの予備学科だけど同じ新入生同士よろしく頼む!」

「でも好きって情熱を持って諦めずに入学するってのは熱くてアタシは好きだよ」

「うんうん!ウチ達と変わらない希望ヶ峰学園の新入生って事だよね!」

「何も不安がる事はないぞ砂糖君!」

「おうありがとな!」

 

否定的な言葉を言われるかと思ったが予想に反して好意的だ。

 

「でも所詮は親に多額のお金を出してもらったって事じゃない…浅ましいわね」

「ふん…恥ずかしいとは思わないのか?」

「まあ~ね~同じ新入生だけど~大体の人は~違うって言うんじゃ~ない~?」

「どーでもいいわ」

 

中には思ってた通りの事を言う奴がいたけど事実だからな…。だからこそ家族には感謝しているしいつか必ず恩返しするって決めてんだ!

 

俺の自己紹介もつつがなく…とは言い難いけど終わり、沢風が自然な流れで龍野に話を振り、簡潔に自己紹介をした。

 

「…龍野 竜斗です。…超高校級ではあるけど才能の事は聞かずにいてほしいんだ」

「言いたくねえって訳かあ」

「なにそれ逆に気になるー!!」

「嶋野ォ…龍野が言いたくねェッてンだからァ突ッ込むんじャァねえよォ」

「あじゃぱやー!そうだよねごめんソーリー!」

「…あ、えっと…そうしてくれると助かるよ」

 

龍野の自己紹介も終わったが、一番気になっていた才能についてもそこまで深くは突っ込まれずに済んだか…と思ったが一人だけ突っ掛かる奴が現れた。

 

「才能に付いては問わずとな?それは怪しき事ぞ?むむむむ…知りたいぞよ…気になるではないか!」

「…え、えっと、言えなくてごめんね」

「うむっ!そなたが謝る事はないぞ!いつの日か必ずや我の手で解き明かしてしんぜよう!」

「…いやあの、解いて欲しくは…ないんだけど」

 

妙な言葉遣いに、小説やドラマとかで見る様な英国紳士が着てる紳士服を着ていて、黒い杖をくるくる器用に回す銀髪パーマの男子に詰め寄られ龍野も困っちまってる。

正直こいつの姿を見て絶対に龍野が才能を秘密にしている事に突っ掛かるとは思ったな。こいつもある意味超有名な奴で癖の強い奴だからな。

 

困ってこちらを見てくる龍野に、しょうがねえなと助け船を出すべく俺は二人の間に入り銀髪パーマな話し掛けた。

 

「そこまでにしてくれねえか歩く死神さん」

「む!むむむむむむ!?」

「…歩く死神?」

「何ぞ何ぞ我の事を知っておるか!某も有名になったものよなあ!」

 

噂通りこの通り名で呼べば嬉しがるって本当なんだな。龍野は知らない様なので軽く説明しとくか。

 

「こいつは剣 星光って言うんだ。どこに居ても何をしても何故か殺人事件に巻き込まれるし、起こった事件は必ず解決するから歩く死神、疫病神って周りからは呼ばれて沢山の人から忌み嫌われてる【超高校級の名探偵】さんだ」

「砂糖よ紹介ありがとう!そして龍野よ脳裏に刻め!さすらい歩き、謎に解けずに迷う子羊を救う名探偵!某の名は名刀の如く切れ味鋭く剣っ!閃けば星の様に光輝く成功の道を歩むは星光っ!そうぞ【超高校級の名探偵】剣 星光とは我輩の栄光の名であるー!!!」

「…えっと……う、うん忘れたくても忘れられないと思うよ」

「ご覧の通りの変人だが探偵としての腕は超一流なんだぜ!」

 

何故かこいつは死神と言う名も疫病神も忌み嫌われてる事も孤高の名探偵だとかで格好いいと思っていて凄い誇らしげなんだよな…。

 

 

 

【超高校級の名探偵】(ツルギ) 星光(セイコウ)

【挿絵表示】

 

 

 

 

コロコロと一人称等の口調が変わるのはわざとだ。色んな推理小説、漫画やドラマに影響され気分で変えていく変人とよく呼ばれている。なんかの記事で剣が特集された時にあいつ自身が言ったらしい言葉が、『一流を超える神流名探偵となれば一つの世には縛られぬぞよ!』だったっけな。

 

「流石は希望ヶ峰学園が好きな砂糖だね!剣の事を詳しく知ってるんだね!」

「ここに居る奴なら大体は知ってるぜ!」

 

今まで希望ヶ峰学園については勿論の事、今年入学予定の奴等の事も調べまくったからな!だけど数人知らねえ奴も居るけどな。

 

「そんならよーおめーがそこの根倉君に教えたれよ」

「確かにな!詳しいんなら砂糖が教えりゃあ早くに済むよな!」

「…僕ってやっぱり根倉なんだ……」

「き、気にすんなよお前は物静かなだけだって」

 

根倉って言葉に落ち込む龍野を励ますけど意外と気にするんだな。

俺が教えんのは現状龍野だけが沢風達の事を知らないって訳だから確かにその方が手っ取り早いよな。

 

「じゃあ俺が皆の事を紹介するけど良いか?」

「…うんありがとう砂糖君、お願いするね」

「おう任せろ!」

 

誰からにするか…とりあえず一番に話し掛けてくれた沢風からにするか!

 

「まず最初に話し掛けてくれたのが沢風 俊也って言って【超高校級のリア充】って才能だ」

「…リア充?」

「あははは、変な才能だよね」

 

 

 

【超高校級のリア充】沢風(サワカゼ) 俊也(シュンヤ)

【挿絵表示】

 

 

 

 

「沢風は超高校級のサッカー選手として最初は入学予定だったんだ。だけど他にも超高校級の生徒会長としても相応しくて、クラスの委員長も兼任してて教師からも同級生や後輩先輩問わず学校中に人気で超高校級の優等生としてもスカウト出来るって事が分かったんでまとめて超高校級のリア充って名称でスカウトされたんだよ」

「…ごめん、そもそもリア充って言葉を知らないんだ」

「あ、マジか!」

「ホンマかいな!?珍しいやっちゃなあ龍野は」

 

龍野って世間知らずなのか?良い所の坊っちゃんとかならイメージと合うけどどうなんだろうな。

 

「リア充ってのはリアルが充実してる奴ってのを略してて、人気者で人生楽しんでるって感じの意味だな」

「…へえそうなんだ。…教えてくれてありがとう砂糖君」

「良いって事よ!他にも沢風の入ってるサッカー部では部長をしてるし、そのサッカー部のマネージャーとは幼馴染みで付き合ってんだよな。凄く可愛くて学校のアイドルらしくて超高校級のリア充として相応しい才能名だろ?」

「…うん超高校級としてスカウトされるのも納得するよ」

「あはは、そんな褒められると照れちゃうよ」

「嫉妬すら霞むこのイケメンスマイルがリア充ってよりリア王だよな…」

「天は二物を与えずなんて嘘だって痛感されるよねー」

 

加えて沢風の容姿もリア充と言う言葉が似合う超絶イケメンだ。高身長で引き締まった体に爽やかな顔。誰に対しても分け隔てなく接するコミュ力の高さはもうリア王だよな。

 

でもそんな沢風にも苦手な事はあり、その一つがファッションに無頓着な事だ。今も着ている動きやすい黒のジャージは普段の私生活でも着ているらしく数十着ストックがあるみたいだ。

似合っている金色短髪の髪も、濡れてもすぐに乾くからって理由なんだよな。唯一腕に着けているピンクのリストバンドは彼女からの贈り物で大切に肌身離さず身に付けている。

 

「俺一人の力で超高校級になれた訳じゃないからそんな凄いって思わなくて良いよ。今まで支えて一緒に居てくれた皆が居たからこそなんだよ」

「人格者過ぎるやろ」

「皆様から慕われるのも分かりますね」

「…眩しいね」

 

分かるぞ龍野…本人は自覚無さそうだが常にキラキラしてるエフェクトが見えるんだよな…。さてお次は和良井にするか!龍野にも和良井の凄さを知ってもらいてえからな!

 

「龍野、こっちの大阪弁を話してるのは和良井 笑平だ。スカウトされた才能は【超高校級の芸人】だ!」

「…お笑い芸人さんなんだね」

「そやで!龍野は知らん様やから教えたるけど俺はめちゃくちゃ売れっ子の爆笑王なんやでー!」

「…は、はあ」

「どえらいうっすい反応やな!!普段バラエティとか見いへんか?」

「…たまに情報番組を見る位かな」

 

先程のリア充って言葉を知らない辺り龍野はそう言ったサブカルチャーとか流行りも知らないんだろうな。ますます龍野の才能が謎に包まれてくな。

 

「まあ知らへんなら今から俺のオモロさを知ってもらえばええんや!俺って今は超視聴率の取れる男やからテレビに引っ張りだこでなあ、ネタ見りゃ腹が捩れる程の大笑い!喋りはピカイチ!リアクションは愉快豪快大喝采やで!」

「…す、凄いんだね」

「せやけどドッキリとかは勘弁してもらいたいんやけどな…一番求められとるから頑張るけども」

 

本気で嫌そうな顔で肩を落とす和良井に、ドッキリは苦手だとインタビューで言っていたのを思い出す。でも毎回神がかった面白いリアクションを見せるから評判良いんだよな、俺も和良井のネタは好きだけどリアクションも同じ位好きだ!

 

 

 

【超高校級の芸人】和良井(ワライ) 笑平(ショウヘイ)

【挿絵表示】

 

 

 

 

「…和良井君はどういう事をしてスカウトされるに至ったの?」

「それはな、有名なお笑い大会で当時無名の中学生であった和良井が圧倒的な実力で大会最年少で初の完全優勝を成し遂げたからだぜ!」

「…どれも凄い偉業だね」

「まあなー!あの頃は俺を舐めとった奴等に一泡所か千泡も吹かせた程の勝利やったからな!」

「あの時のN-1グランプリで和良井を見て虜になったんだよ!同い年でこんな面白いネタをして優勝するなんて絶対に希望ヶ峰学園の目に止まるなって!」

「なんやなんやそないな褒めても俺の気分上がりまくりになるだけやで!!」

 

実際俺の予想通り和良井は希望ヶ峰学園にスカウトされたからな。得意にしている漫談はマシンガントークだが何を言っているか聞き取りやすくて当然面白く、ひな壇ではここぞと言う時のツッコミが冴え渡る!

最近ではトーク番組の司会までも務め始めてドラマにも出演と活躍の幅を広げまくっている。

 

テレビでは黄色の目立つスーツを仕事着としてるが、今は普段着の様でラフな服装だ。トレードマークの眼鏡と前髪に緑色のメッシュを入れた茶髪が本人はお気に入りだが周りからの評価は低く不評だ。

 

「まあ褒めちぎるのも無理ないなあ!過去の超高校級の芸人と比較しても俺程の実績があってスカウトされたんは俺しかおらへんやろうからな!」

「…そうなの?」

「おう、そうだぜ!今まで入学してきた超高校級の芸人は大会優勝者はしてるが和良井みたいに司会やドラマ出演はしてる奴居ねえからなあ」

「うひゃひゃひゃひゃひゃー!沢山褒めてくれてえりがとな砂糖!お前の事気に入ったで!」

「う、うおおぉぉぉぉ!!?マジかす、すっげえ嬉しいぜぇぇ!!」

「暑苦しいわね…」

「仲良くて良いじゃないか」

「間抜けなだけだわ」

「藤はクールだねえ」

 

和良井に気に入ったなんて嬉しい言葉をもらったんだ!暑苦しくもなるに決まってる!こんな事に巻き込まれて良かったなんて不謹慎な事を考えちまう位に良かったって思っちまった!

 

「ねえねえええぇぇ!!!」

「うるさっ!?」

「鼓膜が痛い」

「にゃは~睡眠の邪魔なんだけど~」

「テメェは何回注意すりャァ良いんだァ!?こんな状況で寝んじャァねェ!」

 

和良井と話しつつ龍野に紹介をしていると突然俺達の間に割り込み、可愛い声だがとてつもない声量で耳を痛くさせて話し掛けてくるのは、ピンク髪ポニーテールの女子だ。

 

「ど、どうしたの嶋野さん?いきなり大声を出して…」

「お次のショータイムは私にしてほしいなぁぁぁぁ!!ってお願い!!」

「そ、そう言う事か…分かった。なら今度は嶋野の紹介をするわ」

「いっえぇぇぇぇぇぇい!!!!センキュサンキューだよシュガー!」

「……前半部分は何となく分かるがシュガーってのは俺の事か?」

「そーだよおおぉぉ!!砂糖だからシュガーでりゅうとんね!」

「…りゅ、うとんは…僕?」

「竜斗だから!」

「…そっか」

 

独特なあだ名呼びとは聞いていたが独特ってより安直だな…特に嫌な気持ちにはならないし止めろとは言わずに嶋野の事を紹介する。

 

「龍野、こいつの名前は嶋野 恵子、【超高校級の放送部】って才能で声と喋りが武器だな」

「えっへへ~恵子ちゃんの声でメロメロよぉん!」

「…う、うん」

「んもう!りゅうとん引かないでよー!!ウチのレディオを聴けばりゅうとんも惚れるんだからね~!!?」

「…機会があれば聞いてみるよ」

「うんうん!おったのしみにぃぃぃ!」

 

 

 

【超高校級の放送部】 嶋野(シマノ) 恵子(エコ)

【挿絵表示】

 

 

 

 

自信満々に自分をアピールする嶋野の活発さに物静かな龍野は相性が悪いよな。話が進めば進む程に龍野の心労が増えちまうからさっさと紹介を終えよう。

 

「嶋野は放送部に所属しててな。嶋野が放送すれば皆は聴き惚れて夢中になるんだ。深夜不定期でやってるラジオ放送は、いつも急に始めてんのに聴取率が高くて心地良い癒される声と飽きさせないトークで大人気なんだよ」

「最近ではニュースで取り上げられてテレビ露出も増えてきてたんやったな」

 

俺の説明に和良井が補足をする。彼女がテレビで顔出しをしてからは更に人気が上がったのは確かだ。アイドル顔負けの可愛い容姿といつもハイテンションなのがファンの心を惚れさせている。

 

「いやはや~ウチはただ最近起こった世の中の出来事とかウチが好きな物とかを好き勝手にぶっちゃけてるだけなんだけどねー!!」

「俺もたまに聞いとるけど面白おかしく言っとって聞いてて楽しいで」

「ばくわらちゃんにそう言われると自信グングンヨーグルンだよぉぉぉ!!」

「妙な言い回しをすな!」

 

ばくわらってのは和良井の事か…多分他の皆にも既にあだ名付けてんだろうな。でも和良井のお墨付きも納得だ。若者だけでなくお年寄りの方にも人気を得ているからな。

 

「アタシは紹介してもらうより自分でした方が良いからねえ、アタシが喋るけど良いかい?」

「おう、してくれるんならお願いするわ」

 

皆の凄さを龍野に教えたい気持ちもあるが、無理に俺が言う必要もねえし後で龍野に教えたい事があれば言えば良いだけだしな。

 

「じゃあ改めて、砂糖も龍野も初めましてだね。アタシは熱宮 燐火って名前だよ。いきなりこんな訳の分からない状況になって混乱してるだろうけど何かあったらアタシが守るからねえ」

「…守ってもらわなくても僕は強いから大丈夫だよ」

「俺も自分の身は自分で守るから別にいらねえぞ」

「それでこそだよ!軟弱な事言ってたら喝を入れてやってたよ」

 

 

 

【超高校級の氷彫刻家】熱宮(ネツミヤ) 燐火(リンカ)

【挿絵表示】

 

 

 

 

女子に守られるってのは男子として恥ずかしいからな。それに運動面では希望ヶ峰学園にスカウトされる為に色んな事をしてきたから自信があるし人並み以上に動ける自負はしている。

 

「アタシの得意な事は氷彫刻さ!ここから出れたらアタシの作品を見てほしいねえ」

「…見てみたいな」

「俺もテレビ越しでしか見た事ねえから一度はこの目で見てえんだよな!」

「そんなのいつでも言ってくれたら見せるよ」

「おおおお!マジかありがとな!」

「…是非お願いします」

 

テレビで見たあの美しい氷彫刻作品を生で見れる時が来るとは生きてて良かったぜ!!

 

「…熱宮さんはどんな切っ掛けで氷彫刻を作り始めたの?」

「両親が二人とも氷彫刻家でね、実家に工房があるから自然とアタシも作ってたって訳さ」

「熱宮の手に掛かればどんな氷も見る人を虜にする綺麗で美しい彫刻作品に変わるんだぜ。幾つもの大会でも最優秀賞を受賞してる将来有望の氷彫刻家なんだ」

 

熱宮の綺麗な顔立ちと気安く豪快で姉御肌な性格のギャップから虜になる人も多く熱宮自身のファンも沢山居る。

 

「…そ、そっか……」

「なんだいその妙な間は?何か気になる事でもあんのかい?」

「…あ、いや」

「その反応は何か気になってるって事じゃないか!うじうじと悩んでるよりバシッと言いな!」

 

男勝りで豪快な性格の熱宮らしい物言いに龍野はおずおずと気になっている事を口にする。

 

「…言いにくいんだけど、何でそんな格好なの?」

 

その疑問は確かに初対面で会うと驚くし気になるよな。何も知らない奴からすれば男子高校生には目に毒過ぎる程に魅力的だが暴力的な過激な格好。

 

実を言うと俺もチラチラと視線が熱宮の胸部…そうおっぱいだ!に吸い寄せられてしまう。

高校生とは思えない端正な顔立ちと豊満な胸に、それを支えるのは髪色と同じ赤色のビキニで、下はスラッと伸びる健康的な脚にホットパンツだ。正直年頃の男子高校生だったらそりゃあガン見するに決まってるだろ!

 

「これかい?アタシは暑がりなのさ」

「…でもそこまで今は暑くないしむしろ涼しいよ?…冷えて風邪引いちゃったら僕のコートで良ければ貸すけど…」

「優しいねえ、でも大丈夫だよ。この格好で今暖かい位だからねえ」

「…あ、暖かいの?」

「龍野、熱宮は極度の暑がりなんだよ。少し運動しただけでも滝みてえに汗だくになるんだよな」

 

夏は何もしてなくても汗を流す程で冬場で今の姿が丁度良いらしい。

 

「代謝が良すぎるんだよねえ。作業中はいつも工房の冷房を点けっぱなしにしてるけど毎回汗だくさ」

「氷彫刻を作る工房って事は相当寒そうだよな」

「普通の人なら凍えて震える程には寒いだろうねえ」

「…そんな寒さでもその格好なの?」

「ああそうさ。氷を削ってると段々気持ちが滾ってきちまってねえ、動きも激しくなっちまうから部屋の気温は寒いのに私だけサウナ状態だよ」

「彫刻造りに没頭し過ぎて極寒の部屋で脱水症状起こして死にかけたっていうのを聞いたんだけどよ…」

「もう慣れたよ」

「いや慣れたら駄目やろうがっ!!」

「ウチはホムラっちが心配だよぉぉぉぉ!!?」

「熱宮はホムラっちなのか…」

「うんそーだよー!!」

「そ、そうか…」

 

超薄着で高校生に思えない容姿に姉御肌な性格と暑がりで常に汗かきな熱宮は世の男性を虜にしている。本人は氷彫刻以外に興味を示してないがな。

 

…つまる所、今も横目でチラチラと見てしまう俺は万乳引力に抗えない不可抗力であり男の性って訳だ。

 

「…砂糖君」

「お…っとぉ、いや龍野、ちが…わねえけど違うんだ!」

「…まだ何も言ってないけど?」

 

そう言いながらジト目で俺を無言の非難の視線を浴びせてきてんのは誰だよ!?いや俺が悪いから仕方ねえけどよ!

 

「全く…アタシはそう言うのに慣れてるから良いけど他の女子にはするんじゃないよ?」

「うっ…悪いなるべく気を付ける」

「…なるべくじゃなくてちゃんと気を付けないとだよ?」

「わ、分かってるよ…て言うか何で龍野は何ともねえんだよ!」

「…え?だって最低だし失礼な事だよ?普通は相手の顔を見て話すと思うし…」

「龍野は立派だねえ、それに引き替えあんたは全く…まあそんな訳でよろしく頼むよ」

 

呆れ顔の熱宮だがさして気にした様子もなく軽い注意だけで終わった。周りの男子連中は各々色んな表情で見てくるが女子は全員冷たい視線を浴びせてくる…。男子連中の中には俺の方へサムズアップして笑顔を向けてくる奴が居たので同じ気持ちの同志は発見した。

 

「お次は藤にしてもらえないかい?」

「藤って…折り紙講師で有名なあの藤か!」

「そうだよ。ほら藤こっちに来ておくれよ」

「……」

「藤さん無視してるね」

 

沢風の言うとおり熱宮に手招きされるも、俺達の視線の方に居る藤と言う着物姿の女子はそっぽを向いてしまって完全にこちらを無視だ。

 

「藤ったら仕様がないねえ…砂糖、龍野ちょっと待っとくれ。アタシが強制的に連れてくるから」

 

噂通りの奴みたいだな…と思っていたら熱宮が溜め息を吐きながら藤の元まで行き、腕を掴むと嫌がる藤に構わずズンズン進み俺達の所まで連れてきた。

 

「ちょっと何するのよ痛いじゃない」

「あんたが無視するからじゃないか」

「別に私が行かなくてもそこの予備学科さんが言ってくれるんでしょう?」

「楽をするんじゃないよ!ちゃんとお互い顔を見て自己紹介しないとじゃないか!」

「はぁ…暑苦しいわね。分かったからそろそろ手を離してくれないかしら?手汗が気持ち悪いわ」

「藤さんその言い方は酷いよ」

「おやこれは悪かったねえ」

 

特に傷付いた様子もなくスッと手を離す熱宮にブスッと仏頂面を浮かべる藤と言う名前の着物女子。

 

「目が覚めた時に一緒に居たからって構わないでくれない?」

「そうは言ってらんないよ。あんた一人にすると危なっかしいし放っておけないねえ」

 

どうやら二人は俺と龍野みてえに目覚めた時に一緒の部屋に居たらしい。人との距離を突き放す藤に面倒見の良い熱宮は放っておけない様だ。

 

「ここで砂糖に任せるとあんた誰とも話さないで終わりそうじゃないか」

「それで良いのよ」

「いや駄目だね、自分の名前位は言いな」

「………藤 織姫よ。詳しくは予備学科さんに聞きなさい」

 

 

 

【超高校級の折り紙講師】(フジ) 織姫(オリヒメ)

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「えっとな…藤は超高校級の折り紙講師で折り紙とは思えない匠の技で有名なんだ。近所の子供達に教えてる折り紙教室は、全国から習いたいって人が殺到する程だけど頑なに近所の子達だけにしか教室を開かないんだよな」

「そもそも折り紙教室なんてしたくないのに子供達が無理矢理来るのよ」

「折り紙の大会には出せば優勝確実って言われてるのに出さないのもなんか理由があんのか?」

「別に貴方に関係ないじゃない」

 

教えてはくれねえか…藤のこの性格は有名だ。人形の様に美しく可憐だが人を寄せ付けず話し掛けても毒舌を浴びせられる。表舞台に立つのが嫌いの様で雑誌やテレビのインタビューは全て断り続けている。

なので藤に関する記事等はほぼ無くて精々実家が日本舞踊の名家とかその辺しか俺も情報がねえ。

 

「もう良いかしら」

「全くあんたはそんな態度じゃ後々困る事になるよ?」

「別に困らないわ」

 

そう言うと藤は先程居た場所へ歩いて行ってしまった。

 

「困ったもんだねえ…」

「気難しい奴だもんな」

「…何か理由があるだろうから、そんな深く突っ込み過ぎるよりは適度に接した方が良いかもね」

「あの我儘姫さんとはその方がええかもやな」

「龍野の言いたい事も分かるけどアタシは諦めないよ」

 

熱宮の姉御肌な性格に火が点いた様だ。俺も折角こうして知り合えたんだしガンガン話し掛けに行ってやるぜ!

 

「ほら良いから来なさいって!」

「……」

「どうせ湯上も藤さんと同じで自分から動かないじゃないの!なら私のついでに自己紹介終わらせときなさいって!」

 

決意を固く決めていると俺達の元に怒り顔の女子とその女子に手を引かれて嫌々そうな顔の小柄な男子がやって来る。何だか先程の光景と同じだな。

 

「次は私とこの仏頂面ね」

「おい誰が仏頂面だ」

「湯上以外には…藤さんが居るわね」

「何を言っても無駄だな…」

「よく分かってるじゃない!それじゃあ砂糖と龍野に挨拶も出来る?」

「おいお前はオレは子供と勘違いしているのか?馬鹿にしてるのか?」

「ごめんごめん!ついつい弟と話す時と同じ感じになっちゃうんだって!」

「何度間違えれば気が済むんだ?その度に次はないぞと忠告しているが?」

「でも結局は許してくれるじゃん」

「おーい…そろそろ良いか?」

 

またもや俺達を置いてけぼりにして話し続ける二人におずおずと話し掛けた。

 

流石は超高校級のエリート達だぜ。こんな状況に置かれても自分のペースを崩さずに居るのは見習わないといけねえな!

 

「あ、ごめんなさい!それじゃあ砂糖は私達の事は知ってるって事らしいし、軽い自己紹介を任せても良い?」

「二人の事もバッチシ知ってってから任せとけって!」

「その熱意を少しはスカウトされる方に注げば良いものを…」

「こら湯上!」

「ふん…事実を言った迄だ」

「あんたって奴はっ!」

「あー良いって妻夫木!気にしてねえし湯上の言ってる事も間違ってはねえよ…だけどまだ本校に入学する方法は残ってるし諦めてねえからよ!」

「ふん…」

「…その方法ってなに?」

「知らねえか?予備学科でも希望ヶ峰学園に認められたら特別に本校に編入出来るんだよ!」

「その様なからくりがあるのだな、しからば砂糖にも可能性の原石は宿されておるのだな!」

「どういう事よ…」

「おうそうだな!」

「何で剣の言葉に疑問を持たないのよ!?」

 

独特な言い回しの剣を目の前で聞けるとは感動だぜ!言わんとしてる事は伝わってるけど妻夫木の反応が正しい。

 

希望ヶ峰学園は予備学科だろうと超高校級に相応しい才能だと判断されれば本校に編入する事は出来るが、それはレアケースで数年に一人現れれば良い方だ。

 

「おい無駄話はその辺にしてさっさと終わらせろ」

「あ、悪い!それじゃあ早速紹介始めるぞ」

「お願いするわね」

「龍野、こいつらは女子の方が妻夫木 弥生で【超高校級のアルバイター】だ。男子の方が湯上 健で野球のユニフォームで分かる通り【超高校級の野球選手】だ」

 

 

 

【超高校級のアルバイター】妻夫木(ツマブキ) 弥生(ヤヨイ)

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【超高校級の野球選手】湯上(ユカミ) (ケン)

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「妻夫木は色んなバイトをしてきたけどその中で一番評判が良いのが接客業のアルバイトなんだよな。売上を過去最高にした実績も持ってるし、他の接客以外のバイトでも勿論評判は良いぜ!」

「二人もバイトしたいなって思ったら私に言ってね!ツテは沢山あるから紹介出来るよ!」

 

そう言ってニッコリと笑う妻夫木を見ると確かにお客さん達が夢中になって沢山買っちまうのも納得する魅力的な笑顔だ。

 

「おおう…超高校級のアルバイターのツテで紹介されるアルバイト……やべえすげえマジか…」

「語彙力どこいってんねん!?」

「…ありがたいけど今は別にアルバイトしたいとは思ってないかな」

「そっか!それじゃ気が向いたら遠慮なく言ってね!」

「…うんありがとう」

 

妻夫木にこれまで働いてきたバイトについて色々聞きたいがグッと堪えて湯上の凄さも話さねえと!

 

「お次に湯上はな、これまでずっと弱小で無名な野球部の部長を務めて、大会優勝まで導いた手腕とずば抜けた野球センスでスカウトされたんだ。将来はプロ入り確実と言われてて、希望ヶ峰学園にスカウトされた今や色んなプロ野球団が喉から手が出る程望まれてるんだぜ!」

「こんな性格でチームメイトと上手くやってこれたって信じられないわよね」

「あいつらはオレと同じ志を持ちお互いに支え合い高め合い優勝出来たんだぞ?」

「湯上はチームメイトを心から信頼してるんだよな!」

「俺も同じ運動部の部長を務めてるから湯上の気持ちは分かるよ」

 

信用出来ない奴にはとことん敵意を剥き出しにして警戒心張り巡らせてるけど、チームメイトの様に信頼すると馬鹿にされれば怒り、全力で護る頼れる男なんだよな。

 

しかし事前に知ってはいたが湯上をこうして生で見ると湯上の可愛らしい童顔と小学生低学年だと見間違えられる身長に驚くな。龍野も少し目を見開いて驚いてたからな…これでも歴とした現役高校生なんだよな。

 

「おいお前…砂糖と言ったな?」

「え?おうそうだけど…」

 

突然湯上に睨まれながら呼び掛けられ驚きつつも応じた。凄い怒ってるみたいだが童顔過ぎて全然怖くねえしむしろ癒されるなー。

 

「オレの背を見て何か思ったよな?それに顔を見ても思ったな?」

「な、何故バレたんだ!?」

「ふん…図星か」

「いや砂糖ずっと見すぎやしもろバレやで」

「あ…」

 

しまった!湯上が背の事と童顔な事を気にしてる事を知ってたのにこの目で見たら衝撃が強くてガン見しちまってた!と、とりあえずはジロジロ見てた事を謝らねえと。

 

「すまねえ!別に馬鹿にしてたとかじゃねえんだけどつい見ちまってた…」

「素直に謝ったな…今回は許してやろう」

 

ふー、良かったぜ…って言っても大抵の事はちゃんと謝れば文句は言うけど広い心で許してくれるで有名だしな。

 

「それにしても何で妻夫木は湯上に世話を焼いてんだ?」

「熱宮さん達と同じで偶々目覚めた場所が一緒でさ、湯上のこの性格で人と衝突しそうだし私の弟と雰囲気似てるからついお節介しちゃうんだ」

「良い迷惑だ」

 

なるほどな、確かに最初に出会った人と行動すんのは多少安心するもんな。

 

「妻夫木と湯上も終わったか?なら次は俺達だな!」

「まだまだ残りの人も居るし早く終わらせちゃおっか!」

 

一通り龍野に妻夫木と湯上の事を話し終えたら笑顔でズンズン歩いてきたサングラスに筋肉モリモリマッチョでイヤリングやアクセサリーをジャラジャラ付けている派手な坊主男子と目に隈がある帽子を被っている男子が来た。

 

「俺は瀬戸内 太陽ってんだ、【超高校級の僧】としてスカウトされたぜ!砂糖に龍野よろしくな!!」

「どもどもー!僕は【超高校級のゲーマー】の百澤 成八ですー!得意なゲームは格ゲーで好きなジャンルはエロゲーだよ!」

「分かってんな百澤!俺も好きだぜ!」

「瀬戸内君なら分かってくれるって思ってたよ!」

「…なっ!?」

 

堂々とエロゲーが好きだと言う百澤に顔を真っ赤にさせて龍野は驚きの声を上げた。

 

 

 

【超高校級の僧】瀬戸内(セトウチ) 太陽(タイヨウ)

【挿絵表示】

 

 

 

 

【超高校級のゲーマー】百澤(ヒャクザワ) 成八(ナルハチ)

【挿絵表示】

 

 

 

 

「何を言ってんのよ百澤!龍野君を見なさいよこんなに真っ赤にさせて!」

「ふむふむ…僕はゲームのジャンルは問わない派なんだけどエロもジャンル問わず好きなんだけどね…つまり言うと龍野君の赤面は効くね!」

「…え!?あのえっと……そんなに見ないで…」

「むほほー!たまらないねえー!」

「止めな!」

「むっほー!熱宮さんに怒られたー!」

「何で喜んでんだい…」

「百澤、今は自己紹介の方を優先させてもらえるかな?」

「うん分かったよ!」

 

百澤の暴走により場は混沌と化してしまうも沢風が軌道修正をしたので一先ずは落ち着いてくれた。その隙に俺がさっさと龍野に二人の情報を伝えとこう。

 

「龍野、百澤はああ見えて凄腕のゲーマーなんだぜ」

「…あれで?」

「いや気持ちは分かるけどな…それでもどんなジャンル、難易度のゲームでもクリアする腕前にゲーム大会に出れば優勝は勿論だが、見てる人を魅せるプレイで熱狂させられるって程なんだぞ」

「だって上手いプレイだけじゃつまんないでしょ?上手いプレイは当たり前でプラスアルファで見てる人の心を惹き付けないとプロゲーマーは名乗れないってのが僕の信条さ!」

「…志しは立派なんだね」

「ほんまに言動が変態過ぎんねん…砂糖と龍野が来る前もこいつと瀬戸内と後もう一人そこでうずくまって寝てる奴が熱宮見て暴走しとったんやからな…」

 

思い出して疲れた顔の和良井に同じ様な顔を浮かべる沢風達に何故か自信満々にドヤ顔をしている百澤と瀬戸内が異彩を放ってんな。

 

気を取り直して瀬戸内の話しに移るか。

 

「龍野、それじゃあ次に瀬戸内の事を話すぞ」

「…あ、うんお願い」

「ナイスやで砂糖、話題の切り替えが上手いで!」

「えー酷くないかな?」

「お前はちょっと黙っとれ!」

「…それでだけど瀬戸内は実家がお寺で幼い頃から厳しい修行を受けてるんだ」

「そのお陰で耐えるって事は得意になったな」

「それと瀬戸内の説法を聞くと悩みや不安を振り払ってくれるし元気をもらえるって評判なんだよな」

「んな大した事は言ってねえぞ?俺の思った事とか正直に言ってんだけど…まあそれで誰かの気持ちが救われてんなら嬉しいんだよな!」

 

良い笑顔でそう言う瀬戸内を見てると不思議と明るい気持ちになれるな。これも瀬戸内の説法が人気の一つなんだろうな。

 

見た目はチャラチャラしてて服装は修行僧が着てる様な服…確か作務衣って名前だった気がする服を着てるけど、サングラスに腕にブレスレット、首にネックレスで耳にイヤリングって僧として許されるのか?

 

疑問に思ってたら俺の視線に気付いた瀬戸内が苦笑しながら答えてくれる。

 

「これはプライベートでしか付けてねえから安心してくれ。流石に修行中とかは外してるからよ」

「あ、やっぱりそうだよな」

「あんたは何でそんなチャラついた物を付けてんだい?」

「それはね、瀬戸内君はモテるからって浅はかな考えで沢山付けてるんだよ!でも結局モテてないから無駄になってるよ!」

「いや百澤辛辣ぅ!?」

 

瀬戸内と百澤は仲が良いけど気が合うんだろうな。

 

「いやいやしかし先程の砂糖君のエロ波動は僕らに近しい物を感じたね!」

「へ?」

「おうそうだなあ!分かるぜ砂糖、熱宮の爆裂でドエロい乳は全神経を張り巡らせてる見ちまうよな!」

「あんたら懲りないねえ」

「……だよな!」

「…砂糖君?」

「はっ!?や、止めてくれ龍野そんな目で見ないでくれぇ!!」

「砂糖もこいつらと同じって訳かい?」

 

オープンスケベな百澤と瀬戸内に思わず同意しちまった!でも仕方ねえよ俺だって健全な男子高校生なんだぞ!?これは自然の摂理であって変態な訳じゃねえ!

 

だから熱宮のおっぱいに興味を示さねえ龍野に平常心を保ってる沢風はおかしいんだ!…いややっぱ俺らが変態なんだよな!?

 

「そう言えば希望ヶ峰学園の事に博識な砂糖君に聞きたい事があるんだけど良いかな?」

「え?そりゃあ自信はあるけど…なんだ?」

 

冷たい視線を浴びせてくる龍野や他の女子達に怯んでるといきなり百澤から質問があると言われた。何で百澤も瀬戸内も皆の視線に貫かれても平然としてんだよ鋼のメンタル過ぎるだろ!?

 

「あのお二人さん、砂糖は知ってるか?」

「あの二人ってのは…」

 

瀬戸内が指差す方を見ると最初から気にはなっていた大人の男の人二人組だった。見た目的に一人は三十代っぽくてもう一人は二十代半ばって辺りか?服装は…希望ヶ峰学園の警備服だな……ってあの二人見た事あるな…?

 

「よーうまた会ったな」

「君も巻き込まれたか…」

「えええ!?貴方達って今朝の警備員さんじゃないですか!!?」

 

そうこの二人は今朝俺が希望ヶ峰学園の本校舎の見学するのを協力してくれた優しい警備員さんだ!まさかこんな形でまた会うとは思わなかったが…百澤は何を聞きたいんだ?

 

「あれ?砂糖君顔見知りだったの?」

「ああ、今朝本校舎前で会って話したんだけどな…」

 

とりあえず二人との状況説明を皆に軽く話す事にした。粗方説明し終わると若い警備員さんが話し始める。

 

「俺と先輩は普通に仕事してた筈なんだけど気付いたらここの体育館で目覚めたんだよ」

「そうだったんすか…」

「砂糖君はこのお二人さんをご存じない感じかな?」

「いや…知らねえけどなんなんだ?」

「ありゃあ知らないか。この二人…詞述さんと桜花さんは希望ヶ峰学園の本校卒業生らしいからさ」

「な、なんだと!?本当ですか!?」

「ああそうだぜ」

 

全く気付かなかった!いやでも名前で分かるかもだ!先輩警備員さんが詞述さんで若い警備員さんが桜花さん………あ!!

 

「元"超高校級の審判"の詞述 真義さんに元"超高校級の占い師"の桜花「おっとそれ以上は言わなくて良いぜ」……え?」

 

桜花さんに何故か遮られてしまったがどうしたんだ?

 

「いや別にフルネーム知ってんなら言わなくて良くね?って話だからよ」

「そ、そっすか…」

「お前は何を恥ずかしがっているんだ?龍野君は知らないのだから正々堂々と自分の名前は伝えんか!」

「うっ…先輩はこう言う時に融通が効かないんですから…」

「何か言ったか?」

「いえいえなんでも!」

「では自分の口で話すんだ」

「うぃーす…あー俺の名前は桜花 心咲ってんだけどぜってーに下の名前で呼ぶんじゃねえぞ?なよっちくてはずいんだよ…」

「…分かりました」

「そんな理由だったんすね」

「そうだ、お前も呼ぶんじゃねえぞ?」

「はいっす!」

 

 

 

元"超高校級の審判" 詞述(シノベ) 真義(シンギ)

【挿絵表示】

 

 

 

 

元"超高校級の占い師" 桜花(オウカ) 心咲(ミサ)

【挿絵表示】

 

 

 

 

「でも貴方達があのどんな判定も規則正しく審議して判決を下す超高校級の審判だった詞述さんに、予感的中度八割の超高校級の占い師だった桜花さんですか!」

「名前を聞いてすぐさま俺達の事が分かるとは…」

「まあ的中度は高いけど自在にポンポン当てれたりは出来ねえ使い勝手の悪いもんだぞ?」

「と言うとどういう事ですか?」

「すぐその場で自由自在に占えねえんだよ。時々頭に浮かんでくるのが当たるからってスカウトされたんだけど不自由過ぎるだろ?」

「…確かに」

 

成る程そうなのか。完全に運な形で予感が来るものが当たるってのも凄い事だけどな。

 

「何でお二人は卒業後、希望ヶ峰学園の警備員に?」

「俺はこの才能は将来的に安定しねえからって理由だ。卒業後の事はある程度は保証されっからこの仕事に就いてんだ」

「俺は希望ヶ峰学園に侵入しようとする不埒な輩を成敗する為だ」

「スカウトしてくれた恩返しってな訳で先輩は警備員になったんだとよ」

「ほうほう…成る程~貴重な話ありがとうございます!!!」

 

希望ヶ峰学園本校の卒業生に話を聞けるなんて貴重過ぎるだろ!?今日の俺はツイてるな!っていや誘拐されてんのは不運過ぎんだけどよ。

 

「何かあれば俺と桜花が護るから安心してくれ」

「子供は大人の背中に隠れてなさいっての」

「大人の人が居ると安心するなあ」

「あれ?和良井君ビビってるの?」

「び、ビビるに決まっとるやろ!?誘拐されてんやぞ!」

「ちょっとワクワクしない?」

「せえへんわ!」

 

希望ヶ峰学園の警備員である詞述さんも桜花さんも訳が分からない状況らしいってのが増々希望ヶ峰学園とは関係のない見知らぬ奴等の犯行って事を裏付けてくな…。それでも今のところ犯人は姿を見せないし一体何が狙いなんだよ?

 

「…まだ僕が紹介してもらってない人は半分を切ったね」

「そうだな」

 

ここまで駆け足ぎみに話したが時間があればもっと話せるんだけどな…だけど残りは後8人居るし犯人が何かしら行動してくるより前に紹介は終わらせとかねえとな。

 

「やあ初めまして砂糖君に龍野君、僕は泊 進だ!こんな事に巻き込まれてしまったが共に協力してここから脱出してみせよう!」

「…うん頑張ろう」

「おう泊、よろしくな!」

 

 

 

【超高校級の交通委員】泊 進(トマリ ススム)

【挿絵表示】

 

 

 

 

残る紹介出来てない奴等は8人で次は誰にするかと思っていると、元気な声でやって来たのは目立つ黄色の服に反射板のキーホルダーを首に下げていて、肩には安全第一と書かれているたすきを掛けている男子だ。

 

「龍野、泊は【超高校級の交通委員】って才能でスカウトされたんだ」

「…交通委員って具体的にどんな事をしたの?」

「泊の住んでる所は交通事故が多かったらしいが毎朝欠かさず泊がパトロールしていたお陰で事故が激減したり、信号無視やひき逃げ犯の車のナンバーをすぐに覚えて警察に伝えて逮捕に協力したって実績があるんだぜ!」

「…真面目で優しいんだね」

「いや当然の事をしたまでさ!」

「…その心掛けが立派だよ」

「うむ、そう言ってくれると嬉しく思う!」

「新聞に何度も載ってたの見たぜ!そのたすきも警察からの贈り物なんだよな?」

「ああそうさ!有難い事に表彰を頂いた時に一緒に頂いたんだ」

 

泊のたすきを良く見てみると確かにとある警察署の名前が書かれているし泊の名前もあるな。立派な行いの賜物だな。

 

「ススームの次はワターシとナーエの番ネ!」

「ごめんねお話の途中で邪魔しちゃって。シャベルちゃんが行っちゃおうって聞かなくて」

「うむ、気にしなくて良いさ!」

 

泊と話していると女子二人がやって来てその内の一人、明らかな外国人の女子が手を振りながら元気良く話し掛けてきた。

 

「まあまあ良いじゃないノ!これでもワターシはお待ちかねなんだからネ!ところでタローはワターシの事はご存知ネ?」

「おう勿論、【超高校級の努力家】としてスカウトされたシャルロット・ド・ベルジックだよな?フランス出身で偶々テレビでやってた日本の特集を見てから興味を持って、希望ヶ峰学園の事を知ってからは入学する為に色んな事を努力して実績を重ねてきた努力家って事は知ってるぜ」

「ワーオ!嬉しいネー!タローもリュートもワターシの事は気軽にシャベルって呼んでネ!って言うか呼べナ!」

「…なんでシャベル?」

「シャルとベルって良く呼ばれるから合わせてシャベルにしたノ!お話しするのも好きだからネ!」

 

 

 

【超高校級の努力家】シャルロット・ド・ベルジック

【挿絵表示】

 

 

 

 

そう言ってシャルロット…シャベルは笑顔を浮かべる。見た目上品なお嬢様って感じの顔にラテン系って言われる彫りの深い顔立ちは気品漂うけど話してみると活発な女子の様でギャップがあるな。服装も動きやすさ優先の露出度の高い服で眼福……か、格好いい服だな!

 

別に邪な事は考えてねえからそんな責める眼差しで俺を見てくるなよ龍野…何で分かるんだよ何でこいつは興奮しねえんだよ下ネタとか苦手なのか?

 

「シャベルは勉強も運動も平々凡々なんやったんよな?」

「ウン!でもそれじゃあキボーガミネ学園のお眼鏡に敵わないから沢山努力したネ!」

「勉強はトップ、運動神経も抜群にまで伸ばしてそこから様々な事にも手を伸ばして苦手な事も努力して伸ばす様になったんだぜ」

「…努力して入学する資格を勝ち取ったんだね」

 

俺とシャベルは平々凡々だった所は同じだが大きな違いは努力して伸びる才能だよな。俺も必死に今まで努力してきたが全部人並み以上程度にしか上達しなかったからな。

 

でもそこでシャベルを羨みはするが、逆恨みする事はねえ。シャベルの努力の賜物でむしろ尊敬する事だ。

 

「でもまだワターシは満足出来てないネ。もっともっと頑張って凄くなってくからネ!」

「シャベルの熱い想い好きだねえ」

「リーンカありがとナ!それじゃ次はナーエの番だからどうぞー!」

「え、そんな急に私?えっと…こが、木枯 苗です。【超高校級の幸運】です…あの、よろしくね砂糖君龍野君」

 

 

 

【超高校級の幸運】 木枯(コガラシ) (ナエ)

【挿絵表示】

 

 

 

 

茶髪の少しばかりおかっぱな髪型にセーラー服を着ている言っちゃ悪いが俺と同じくどこから見ても平々凡々な出で立ちの木枯は、驚き焦りながらも自身の紹介を終えた。

 

「シャベルちゃん何でいきなり私にバトンパスしちゃうの!?焦って噛んじゃうしどもっちゃったよ!」

「でもワターシがお次はどぞ~ってしないとナーエ一番最後まで喋らないでよネ?」

「う…うんそれはその通りだけどさ…ありがとうシャベルちゃん」

「どんぶりおかわりしちゃってネ!」

「…え?」

「シャベル?お前いきなり何を言ってやがんだ?」

「シャベルちゃんもしかして…どういたしましてって言いたかった?」

「Oui!あれれれ!?やっぱり日本語とは難しきネ!!」

「いっやどない間違え方やねん!?何を呑気に丼完食しておかわりまで要求しとんねん!!」

「ウ~ム…ショーヘイのせいでお腹空きました…」

「なぁぁぁんで俺のせいになんのぉぉぉ!!!?」

 

さらっと和良井に飛び火してしまったが御愁傷様だな。シャベルの言い間違えも酷いが一流芸人の和良井なら大丈夫だろ。気を取り直して龍野に紹介しないとだ。

 

隣で頭を傾げてる龍野に話し掛ける。

 

「龍野は超高校級の幸運って知ってるか?」

「…いや初めて聞いたから知らないんだ」

 

有名な超高校級の幸運の事も知らないとなるとマジで龍野は希望ヶ峰学園の事は表面の薄っぺらな所しか知らねえみてえだ。

 

「超高校級の幸運ってのはな、毎年行われる全国の超高校級に選ばれなかった平凡な高校生の一人を抽選…つまりクジ引きの完全なる運でスカウトされる奴の事を言うんだ」

 

最近は男子が多めだったが今年は久々の女子って訳か。

 

「ショーヘイに構ってると時間蝕まれるネ!時はありけりだからタロー、リュートはまだ未登場の人達相手ナ!」

「それって時は金なりと間違えてる?ってちょ、ちょっとシャベルちゃん腕を引っ張らないでー!」

「まあまあ後は若いお二人に任せてナ!」

「それ使い方間違えてる!!」

 

シャベルがまた意味不明な事を言いながら木枯の腕を無理矢理に掴んで引っ張っていった。木枯痛そうだったけど大丈夫かよ…そんで木枯の翻訳機能がスゲーな。

 

「…行っちゃったね」

「嶋野とはまた違ったベクトルの騒がしい奴だな…」

「おやおやおやぁぁぁ呼んだぁぁぁ!!?」

「嶋野さんはこっちで俺達と話さない?」

「おんやまあ!しゅんやくんに誘われたなら行かないとよね!!!」

 

流石は周りの空気を読む達人沢風だぜ。スマートな流れで嶋野を連れてった…けど沢風の事は普通にしゅんやくん呼びなんだな。

 

「ま、まあ次行こうぜ」

「…うんお願いします」

「そんなかしこまらなくて良いっての。気楽に話してくれよ」

「…まだ慣れなくて、多分すぐに慣れるから舞ってて?」

「おうよ!」

 

若干おどおどしてっけど俺の目を真っ直ぐ見て話してるし、皆とも特にビビらずに普通に話してっから大丈夫なんだろうな。龍野の言葉を信じて砕けて話せるまで待っとくか。

 

「それじゃあ次は…あそこの二人にするか。行くぞ龍野」

「…分かったよ」

 

俺と龍野は皆の輪から少し外れた言い争いをしている…と言うか一方的に怒られてる二人の元まで行った。

 

「だァからお前はさッさと起きやがれェ!」

「ん~後七時間以上寝かせて~」

「どんだけ寝やがんだァ!?夜ふかしでもしてたッて訳かァ!睡眠はちャァんと取りやがれッてんだゴラァ!」

「昨日の夜七時から~朝の五時まで寝てたよ~?」

「だッたら何で眠たくなるんだァ!?病気かァ!?ここから急いで出て診察だゴラァ!!!」

「うわ~うるさいよ~…って~桃瀬く~ん」

「あァ?」

「後ろ後ろ~新しく来た二人が居るよ~?」

「なッ!?それを早く言いやがれッてのォ!」

「なんて名前だっけ~?」

「ちャァんと聞いとけよォ、砂糖とォ龍野だァ」

 

大体にも寝転がって夢の世界に旅立とうとするやけに間延びした口調の独特な雰囲気の男子と、それを起こそうと必死に怒鳴るオールバックで赤髪に白衣というアンバランスな格好の見た目完全ヤンキーの男子は、こちらに気付くと寝ようする男子を引きずりながら近付いてきた。

 

「おゥ砂糖龍野ォ」

「お、おう初めまして」

「…初めまして」

「にゃは~どもども~」

 

実際に目の前で見ると強面と長身で威圧感が半端ねえ…それに寝ようとしていた男子も負けず劣らずの背の高さだな…それにこいつの事も龍野と同じく俺の知らねえ奴だ。て言うか俺でも目の前の強面ヤンキーに威圧されてビビってんのに龍野は平然としてられるな…。

 

こんな個性の塊がネットにも記事にもなってないって変だな…。

どんな才能なのかと注目していると赤髪の見た目ヤンキーが話し始める。

 

「俺は桃瀬 一護だァ、【超高校級の保健委員】ッて才能だからよォ怪我したり具合悪けりャァ遠慮せずゥ俺のとこまで来いィ」

 

 

 

【超高校級の保健委員】桃瀬(モモセ) 一護(イチゴ)

【挿絵表示】

 

 

 

 

桃瀬の才能を聞いた龍野は分かりにくいが目を少しばかり見開いて驚いていた。初見なら誰でも驚くであろう桃瀬の見た目と才能の不一致さは俺も初めて知った時はそりゃあ目ン玉飛び出す程にビックリしたが、流石は超高校級に選ばれる程の奴だ!ってすぐに尊敬したな!

 

「龍野、驚くのも無理ねえけど桃瀬は豊富な医療知識で的確に怪我や病気を治す優しい医者だぜ」

「ンな大層なモンじャァねえよォ。まだ医者なんて名乗れる実力もォ実績もォ持ち合わせちャァねえよォ」

「…それでもスカウトされたって事は桃瀬君の才能は認められてるって事だよ」

「嬉しいけどなァ…親父と比べるとォ俺なんかァひよっこにもなれてねえよォ」

「桃瀬の親父さんも希望ヶ峰学園卒業生なんだよな?」

「なんだ砂糖ォンな事まで知ッてンのかァ」

「おう当然だぜ!」

 

俺は胸を張って自信満々に答えた。

 

「俺の希望ヶ峰学園への深い熱意をなめてもらっちゃあ困るってもんだぜ!」

「親の事まで知っとるって…ある意味尊敬するわ」

「…あの、気になったんだけど」

「あァ?ンだよ龍野ォ」

「…何で超高校級の医者じゃなくて保健委員なのかなって」

「あァ…その事かァ」

「それは桃瀬の謙虚さ故なんだよな。桃瀬の親父さんが超高校級の医者だったから桃瀬も同じ才能名で入学予定だったんだけどよ、自分はまだ医者とは名乗れないって事で断ろうとしたら、親父さんが保健委員としてならどうだって提案されてそうなったんだよな」

 

見た目からは考えれない程の真面目で謙虚な桃瀬は担当する患者のアフターケアも怠らず真摯に対応して心までも癒すって事が有名だ。

 

「…素敵なお父さんなんだね」

「まァそうだなァ…ガキの頃から俺にィ医療の知識を教えてくれたァ恩人だぜェ。あの人にはァ一生敵わねえぜェ」

「…桃瀬君もとっても素敵な人だよ?」

「へッ…照れるじャァねえかァ」

「何々りゅうとんとモモゴンのてぇてぇ疑惑?」

「…え?てえてえ?」

「なァにをォほざいてンだァ!?」

 

とんちんかんな事を言ってほのぼのしてた空気をぶち壊す嶋野は純粋な笑顔を浮かべてるから悪気はねえんだよな…。

 

「そ、そう言えば桃瀬って暴走族の総長って聞いた事あるんだけどよ、本当なのか?」

「そんな訳ねえだろォ…ンなの勝手に着いてきやがる奴等がァ言ッてるだけだァ」

「そうなのか?異名もあるんだよな?確か返り血のイチゴって呼ばれてるって」

「その名で呼ぶのはァやめてくれェ恥ずいだけだァ…」

 

どうやら周りから呼ばれてる異名も暴走族の総長って祭り上げられてる事も桃瀬本人は不満の様子だ。

 

「…ならその格好はただの趣味なの?」

 

何で龍野は平然とそんな事を聞けるんだよ!?俺も気になったけど、んなズケズケと聞けねえぞ!

 

「まァ好きでこの格好だけどよォ暴走族ッて訳じャァねえがァ、喧嘩は毎日してるぜェ」

「な、何でなんだ?」

「ガキの頃にィ勉強が出来たからッてェいじめられてよォ…ムカついて反抗してボコボコにしてやッてからよォ色んな奴等からァ喧嘩売られる様になッたッて訳だァ」

「なるほど…そんな経緯があったのか」

「暴走族の奴等もよォボコしてやッたら懐いてきてよォ…勝手に総長にしやがッたッてだけなんだよォ」

 

何だよそれ、まるで漫画の様な話には流石は超高校級に選ばれる希望の象徴に相応しいエピソードだぜ!そんな桃瀬の話を生で聞けるなんて幸せだぜ!

 

「ぐ~すぴ~」

「あァ!?てめェゴラァ!目ェ離した隙に何を寝てンだァ!」

 

桃瀬との話が長かった様でもう一人の男子が再び寝ようとしていた。怒号を上げながら桃瀬が叩き起こして、渋々と起きて自己紹介を始めた。

 

「んにゃは~どもども~僕は~猫屋敷の~狛犬だわ~ん~。好きな事は~寝る事~好きな言葉は~睡眠第一だよ~」

 

 

 

【超高校級の???】猫屋敷(ネコヤシキ) 狛犬(コマイ)

【挿絵表示】

 

 

 

 

丸眼鏡の奥から覗かせる細い猫目に、上半身が常にふらふらと左右に揺らしている独特な雰囲気、間延びした喋り方は掴み所のない奇妙な印象を抱かせる猫屋敷は呑気に笑いながら簡素な自己紹介をした。

 

しかし名前を聞いても俺の記憶には猫屋敷の情報はなかった。不思議に思い好奇心から俺はすぐさま猫屋敷に才能の事を聞いてみる。

 

「よろしくな猫屋敷!それじゃあ早速で悪いんだが猫屋敷はどんな超高校級の才能の持ち主なんだ?」

「なんや砂糖でも知らへんのかいな」

「ああ、今日まで死ぬ程調べまくったけど猫屋敷って名前すら見た事がねえ」

「あ~それはそうだろ~ね~。けど~残念ながら~秘密って事で~納得してね~」

「そうか…まあ言いたくねえなら別に言わなくて良いぞ」

 

猫屋敷も龍野と同じ才能は言いたくねえらしい。気にはなるが嫌がる事を無理やり聞き出すなんて酷い事はしたくねえ。

 

「ありがとね~俺の才能は~理解されないと~思うし~」

「んな言い方されっと気になるんだが…」

「ん~言う機会があれば~言うかもだから~気長に待っててね~」

「おうその時を楽しみにしてるぜ!」

「……」

「ん?」

 

ふとずっと黙ってる龍野が気になり横を見てみると龍野は何故か知らねえが猫屋敷の事をずっと見つめていた。

 

「おい龍野どうしたよ?」

「…え?」

「にゃはは~そんな見つめられると~照れちゃうにゃは~」

「…あ、ごめんちょっとボーッとしちゃってて」

「大丈夫かァ?具合でも悪いンならァ診るぜェ」

「…いや大丈夫だよ…心配かけてごめんね」

「まァ龍野が言うンなら良いがァ…無理はぜってェすんなよォ?」

「…うんありがとう」

 

同じ才能を言わないって所に親近感でも湧いたのか本当にボーッとしてただけなのか知らねえが俺から見て別に体調とかは悪そうには見えねえな。でも何があるか分からねえし一応気を付けて見張っとこう。

 

「それじャァお前らはァ残りの奴等とォ話し済ませとけェ」

「お~これで終わり~?なら~これで寝れるね~」

「あァ!!?何が起こるかも分かンねえのにィ寝させるかよォ!てめェは俺が見張ッとくぞゴラァ!」

「ええ~」

 

猫屋敷の首根っこを掴んだ桃瀬は嫌がる猫屋敷に構わずズルズルと引き吊りながら離れていった。桃瀬と猫屋敷と入れ替わる様に今度はモデルの様にスラッとした女子がやって来た。

 

「【超高校級のメカニック】、鈴木崎 美佳子」

 

 

 

【超高校級のメカニック】鈴木崎(スズキザキ) 美佳子(ミカコ)

【挿絵表示】

 

 

 

 

今までで一番端的な自己紹介だな…。熱宮もシャベルも身長は高めだったが鈴木崎は更に高くて本当にモデルやってそうだ。

だけど服装的にそう言った方面に興味はないみたいだ。超高校級のメカニックに相応しく機械いじりが好きって話しだし服も油汚れに煤汚れが目立っている。

 

「龍野、鈴木崎はな親父さんが自動車の工場長で幼い時から機械いじりをしてたんだとよ。そのお陰で鈴木崎に掛かれば腰に巻いてる工具入れでどんな機械の故障も新品同然に直す技術を持ってるんだぜ!」

「…メカニックか…機械音痴の僕からしたら凄く尊敬する才能だよ」

「覚えれば案外簡単」

「…そうなんだ」

「うん」

 

口数少なめで喋るのが苦手な鈴木崎は根っからの職人気質なんだろうが、同じく口数少ない龍野とは相性が悪い様ですぐにお互い口を閉じてしまう。

 

「ごめん、私喋るの下手で」

「…あ、いや僕の方こそ話すの下手だから」

「二人が落ち込む事はねえって!まだ知り合ったばかりだし何を話せば良いか分からなくなるのも無理はねえから気にすんなって!」

 

口下手な二人だが誇れる才能を持って希望ヶ峰学園に選ばれた凄い奴等なんだからな!必死に励ましてなんとか二人の落ち込んだ気持ちを払った。

しかし龍野も表情が全然変わらねえって思ってたが鈴木崎はピクリとも変わんねえ。表情筋があるのかって位に動かず無表情だな。

 

「じゃあね」

「お、おう」

 

もう話す事はないと鈴木崎は一言喋って行ってしまった。猫屋敷とはまた違った掴み所ない奴だ。

 

「…砂糖君フォローしてくれてありがとう」

「良いって事よ。じゃあ次の奴行こうぜ」

「…うん」

 

気付けば残り少なくなってたが流石は超高校級に選ばれる奴等だよな!ここまで全員濃すぎる程に強烈なインパクトを与えてきやがって俺の興奮が収まらねえ!

 

でもあんなに調べまくったにも関わらず、才能や名前も知らねえって奴がちらほら居てワクワクが止まらねえな!残りの二人も知らねえぞ!

 

まずは一切こちらに関心を示さずに突っ立ってる長身で艶やかな橙色の髪色に顎髭を生やした男子に声を掛けた。

 

ん~なんか見たことあるんだが…俺の知ってるあいつとは雰囲気とか違うけどな…。

 

「…砂糖君知ってる?」

「多分…なああんたもしかしてネット配信者のヴィルか?」

「そーだけどなんか用かー?」

「や、やっぱり!!?」

 

 

 

【超高校級のネット配信者】 鷹倉(タカクラ) ルゥ ヴィクトー

【挿絵表示】

 

 

 

 

「雰囲気とか違うから最初分かんなかった!」

「うるせー…耳障りなんだが」

「わ、悪い」

 

不快そうに顔を歪めてため息をこれでもかと吐く。そ、そんなにうるさかったか?

 

「…砂糖君この人は?…ネット……配信者?」

「あ、すまねえ龍野、ヴィルが希望ヶ峰学園に入学なんてどこの情報にも載ってなかったからよ。あ、ヴィルってのはネットでの活動名なんだよな…名前聞いても良いか?」

「はぁぁぁぁ…どこにも書いてなかったのは配信のネタにしようって思って秘密にしてたんだよ。名前なら鷹倉 ルゥ ヴィクトーだ。トゥウィッターで呟いたりすんじゃねえぞ?」

「そりゃあ勿論だぜ!」

「まー暴露っても別に気にしねえけど」

「良いのか!?」

「いやアカンやろ!」

 

本名がバレてもそこまで気にしない様子だけど危機感がないのかよ。それにどこにも情報がなかったのはそう言う理由で秘密にしてたのか。

 

「龍野、ヴィルは」

「あのよー気安くヴィルって呼ばねえでくれね?配信と今は違うんだからよー」

「おうすまねえ…それでえっと、鷹倉はネットで色んな活動をしててゲームの実況動画上げたりもしてる日本のみならず世界中に人気の配信者なんだぜ」

「…へえそうなんだ」

「最近はテレビにも出る様になってるんだけどよ…嶋野に負けず劣らずのハイテンションで話すから今と違いすぎて分からなかったんだよ」

 

顔付きすらガラッと変わりすぎてるからな。髪色とかで判断出来たからもしかしてとは思ったけどよ。

 

「お前はあんな頭のおかしいテンションが素だと思ってたのか?そこの爆音ピンクと一緒にするんじゃねえぞ?」

「ええええ!!?急な流れ弾に被弾しましたけど!!!??」

「うおおおぉぉ!!?嶋野声がデカすぎるってのぉぉ!!」

「瀬戸内君もうるさいよ?それに口臭いよ」

「うぉい!百澤辛辣ぅ!!」

「だぁぁぁお前ら喧しい!静かにしとかんか!!」

 

嶋野に話を振ると連鎖で騒々しくなっちまうな、今後俺も気を付けよう。

 

「うるっさ…一応言っといてやるけど動画と配信は視聴者が求めてっからやってるキャラに決まってんだろ」

「…なるほど」

「そうなのか…そりゃそうに決まってるよな」

 

誰だって素と誰かに見せてる姿が違うに決まってるもんな。

 

「ほら早く離れろお前ら、会話めんどいし疲れんだよ」

「そ、そんな言い方すんなよ!」

「あー無駄だよ砂糖君。鷹倉君ってずっとそんな感じだから」

「そうだぞ、俺も最初はムカついたから突っ掛かったけどよ軽く流されたわ」

「うむ!瀬戸内君は単純思考ゆえに軽くいなされたな!」

「あれ泊?お前さらっと酷くね?」

「まあまあ泊も悪気はないからさ」

「悪気ない事の方が酷くね?なあ沢風?」

「えっと…あははは」

 

周りが騒がしくなったのを見計らってスーッと自分の存在感を薄めた鷹倉が離れていってしまった。折角こうして知り合えたんだしもっと話してえんだけどな…。まあ諦めずに話し掛けに行けばいいか!

 

「…これで全員話し終わったね」

「うむ!しかしこれから何が起こるのか…」

「いやーーんこわぁぁぁい!!」

「分かりやすい棒読みの悲鳴だねえ」

「君達、少しは警戒してくれ」

「そうだぞお前らァ!俺らは誘拐されてんだぞォ!?」

「でもでもさ!これって希望ヶ峰学園のサプライズ入学式とかじゃないのー?」

「たかが入学式でこないな大掛かりなサプライズをするんか?」

 

確かに、希望ヶ峰学園と言えどこんな事をするか?今までどんな入学式が行われてるかは完全に秘匿されてて分からねえけど、こんなサプライズ的なのを毎年してたりするのか?

 

…て言うかずっと気にしてる事があるんだが…この空気で言いにくいが言うか。

 

「あのよ…まだ話してねえ奴が居るんだけどよ……」

「何を言ってるのタロー、全員自己紹介終わったネ!」

「いやまだ居るじゃねえか!ほらそこに居る女子だよ!」

「え?……………って居たネ!!?」

「はあ!!!?だ、誰だお前いつから居た!?」

「詞述さん、桜花さんはここで目覚めたんですよね?彼女の事は気付いてました?」

「いや…最初から居たのなら気付いているし途中から入ってきても扉の開く音で気付く筈だが…」

「先輩が気付かないって…ちなみに俺も知らねえ」

 

俺の指差す方には黒髪ロングの女子が居た。ずっと端っこの方で辛そうに微笑んでたのが印象的だったが、俺が指差して彼女の事を知らせると物凄く驚いた顔をして俺を見ていた。

 

驚きながら恐る恐るといった足取りで俺の元まで歩いてきて震える声で話し始めた。

 

「わ、私の事が見えるんですか?」

「え?お、おう見えてるけどよ」

「最初から気付いてたんですか?」

「おうそうだけどよ」

「そ、そうなんですか…」

「えっと…あんたも希望ヶ峰学園の入学生…なのか?」

「はい…私は影山 琥珀と言います。【超高校級のモブ】…としてお呼ばれして頂きました。よろしくお願い致します」

 

丁寧な言葉遣いで彼女はそう言って深々とお辞儀をした。儚げな印象を抱かせる影山は顔を上げると先程の辛そうな笑顔から安心した様な暖かい微笑みを浮かべていた。

 

 

 

【超高校級のモブ】影山(カゲヤマ) 琥珀(コハク)

【挿絵表示】

 

 

 

 

「モブ?砂糖は何か知ってるかな?」

「いや…全く知らねえ」

「影山ァいつからここに居たんだァ?」

「えっとですね、和良井さん剣さんと同じ場所で目覚めてお二人に着いて行きましたので早い段階で体育館に居ました」

「な、なんやて!?おい剣お前気付いとったか?」

「むむむ、いや分からぬ。我輩に気付かれず着いてくるとはやりおるな」

「いえ私の影の薄さのせいですからお気になさらず」

「それにしたってここまで気付かれないものかしら?」

「それが影山の超高校級のモブって才能に関係してるって事か?」

「はいそうです」

 

俺は気付けたけど他の皆は全く気付けてないってのが変な話だよな。モブってのも希望ヶ峰学園の歴史を思い返しても誰一人居ない珍しい才能だな。

 

「ちなみにどんな才能なんだ?」

「えっと…何て説明をすれば良いんですかね……本当にモブって言葉が似合うんですけど何か事件が起きた時、私は大体その場に巻き込まれてしまうんです」

「なんぞまるで拙僧の如きではないか!」

 

真っ先に剣が反応をした。確かに事件に巻き込まれてしまうなんてのは剣に似てるな。だが影山は超高校級のモブって訳だし剣とは違った特殊な才能なんだろう。

 

「はい、実際に剣さんともお会いした事はあるんです」

「なんと信か!?」

「ええまあ…剣さんは気付かれてないと思います。私の影の薄さもありますし事件を解決されたらすぐにどこかに行かれるのでお礼を言う事も出来ずでして、なので今お礼を言わせて下さい。何度も救って頂き誠にありがとうございます」

「ふははははは!うむ!」

 

感謝を述べながらお辞儀をして礼を言う影山に対して剣は大笑いをしながら気持ち良さそうな顔を浮かべて満足げに頷いた。

 

どうやら礼を言われたのが嬉しい様子だ。死神と言われる事が気に入ってても素直な感謝の言葉の方がやっぱり嬉しいのか。

 

「今まで銀行強盗、飛行機のハイジャック、機材トラブルで墜落した時も巻き込まれはしたんですけど、色々ありましたが生き残れましたし、家に私一人しか居ない時に空き巣さんが来た時も中学校にテロリストが占拠された事もありました」

「な、なんやその激動の日々は!?」

「うっわーおぉぉ!シャドちゃんどうやって生き残れたの!?」

「すみません…私にも分かりません。いつの間にか事件に巻き込まれてたと思いましたら、いつの間にか事件が終わってましてありがたい事にこうして無事に生き残れてます」

 

波乱万丈過ぎるな…剣に救ってもらったってのも納得する巻き込まれ体質なんだな。

 

「しかし砂糖はよく影山に気付けたねえ」

「確かにそうだな!僕達は誰一人として影山君に気付かなかったのに…砂糖君の希望ヶ峰学園好きが幸いしたのかもな!」

「それか砂糖君の女性好きゆえかだね!」

「おい百澤誤解を招く様な事を言うなよ!」

「まあ~まあ~男たる者~抗えない事だよ~」

「そうだぜ砂糖!誇っていい事なんだからよぉ!」

 

百澤に続いて猫屋敷、瀬戸内の二人も意気揚々と話してくる。自分でも影山の事を最初から気付いてたのは泊の言う通り希望ヶ峰学園好きって情熱からだと思ってるが、百澤達の余計な言葉で皆から変態だと思われるかもしれねえじゃねえか!

 

「…砂糖君?」

「何でそんな目で見てくるんだ龍野?」

「…砂糖君ならあり得るかなって」

「こいつらじゃあるまいし違うに決まってるだろ!?」

「さらっと俺らに対して酷くね?」

「そうだよ!瀬戸内なら未だしも僕と猫屋敷君は違うよ!」

「うぉい百澤辛辣ぅ!!?」

「まあまあ落ち着いてよ。これで全員自己紹介し終わったし」

 

沢風が騒ぎをなだめてくれて、一先ず落ち着いた。

 

「はえー所終わらせてくんねえかなー…めんどくせー」

「確かにこれから何が起こるのか、いつまで待てばいいのか分からなくて不安よね」

「はぁ…呑気なものね」

「君達警戒も怠るなよ?」

「詞述さんの言う通りだぞ!誘拐という線が高いのだから!」

「しかし誘拐でしたら私達を拘束せず、自由にしている事が変ですよね」

「て言うか何で俺達自由に動けんだって話だよな?おかしくね?普通は縛り上げてるとかじゃねえか」

「あの…今私が同じ事を言ったんですけど…瀬戸内さん?」

「これってよくあるデスゲーム物だよね」

「あ、あの…すみません皆さん私の事は見えてませんか?」

「あー影山?俺は聞こえてたからな」

 

各々がこれからの事を話して、とりあえず何かしらが起こるのを待っていた。すると影山の言葉がスルーされていて悲しそうな顔をしていてすぐさま俺は聞こえてたと教えた。

 

「あん?何だよ砂糖、影山がなんか言ってたんか?」

「いやさっきお前が言った言葉を直前で影山も言ってたんだぞ?」

「え、マジかよ…?全く聞こえてなかったんだが」

「俺も影山の声は聞こえへんかったなあ」

「えぇ…これも影山の超高校級のモブが発揮してるって事かよ…」

「…難儀な事だね」

「だ、大丈夫ですから…慣れてますし今は砂糖さんが気付いてくれますし」

 

物凄い悲しい事を言うなって!でも影山が嬉しそうに話してるし、気付いた時は積極的に影山に話し掛けにいこうと決めた。

 

そこからしばらく皆で今後の事やお互いの事を話していると突然大きな音が鳴り響いた。

 

 

 

キーンコーンカーンコーン…キーンコーンカーンコーン…。

 

 

 

「チャイムの音」

 

鈴木崎がポツリと呟いた言葉の通り、よく聞く様なチャイムの音が鳴り響いた。

 

「な、なんやちゃんとチャイムの音鳴るって事はこれから入学式始まるんとちゃうか?」

「いやでもさっきも言ったけどここは本当の希望ヶ峰学園じゃねえ可能性が高いぞ?」

「でもそれって砂糖だけが言ってる事でしょ?」

「俺も先輩も目覚めたのがここだしなー」

「あまり動き回らない方が良いと判断したのが裏目に出たな…」

 

詞述さんと桜花さんが証言してくれたら確かな情報になるんだけどな…後で確認出来たらしてもらおう。

 

『…あーテステース、テステース…オマエラ聞こえてるー?聞こえてないヤツが居たら耳掃除した方が良いよ?うぷぷぷぷ』

 

スピーカーから耳障りな声が聞こえてきた。どこまでも人を小馬鹿にした様な声に顔をしかめた。

 

『さてさて、オマエラが長い時間掛けて自己紹介し終わってボクと教頭は待ちくたびれました!』

『その通りですよ!アナタガタが長々ダラダラと話してるせいで学園長が退屈だったんですからね!?』

「何で俺らがキレられてるんや?」

 

和良井の意見に全員そう思った。勝手にここに連れてきて体育館に集まれってだけ言われてやっとここに連れてきた奴等からきたかと思ったら何故かキレられるって訳がわかんねえよ!

 

『うぷ、うぷぷぷぷぷ…でも許してあげるよ~?だってこれから楽しい愉しい愉悦の時間が始まるんだからさ!』

『うっぷっぷっぷー!それではミナサマのご期待に答えまして御登場致しましょう!』

 

ブツッ…と放送を切った音が鳴って謎の二人の声が消えた。静寂の空気が流れる。

 

「……おい桜花」

「はい…これって」

 

詞述さんと桜花さんがボソボソと何か話していて、気になっていたら突然体育館の壇上から二つの物体が飛び出て演台の上に一つ、演台の前に一つ立った。

 

「やあやあミナサマ御初にお目に掛かりますねえ!早速ですがワタクシの名はモノシロ!この学園の教頭を務めます!」

 

全身が真っ白…着ているスーツまで白で統一された眼鏡を掛けた熊の様なロボットはそう言った。皆はいきなりの事に言葉を失っている。

 

「そしてそして演台に立つこのお方こそ!屍ノ原学園(カバネノハラガクエン)の学園長であるモノグマ学園長でございまーす!!」

 

モノシロとか言う奴が、これまた全身真っ黒スーツで眼鏡はしていない奴を学園長と紹介してきた。

 

「学園長だと…?」

 

何を寝ぼけた事を言ってやがるんだ?あんなロボットが学園長って‥それになんだよ屍ノ原学園って。聞いた事もねえ怪しい学園名だし、明らかにここは希望ヶ峰学園じゃねえか。いやでも偽物の可能性もあるんだ…俺の審美眼が正しければ…。

 

仮に本当に希望ヶ峰学園だったとしたら俺はつい先程希望ヶ峰学園の学園長と話したんだが?やけに手の込んだドッキリなのか…本気で誘拐されてるのか今の俺には訳が分からねえ。

急な出来事過ぎて頭がパニックになり疑問が尽きねえ…今まで生きてきた中で一番脳みそをフル回転させてるけど疲れるだけだ。

 

「うぷぷぷぷぷ!さあて始めようかオマエラ!満ちる事ない飢え続ける絶望が待つ絶対飢亡の屍ノ原学園、ワックワクのドッキドキコロシアイ学園生活をー!!」

「…………は、はあ?」

 

高らかに言い放った言葉の意味が理解出来ず、いや理解したくなくて恐怖混じりの疑問の声を漏らした。

 

「うぷぷ!うぷぷぷぷぷぷぷぷ!」

「うっぷっぷっぷっぷ!」

 

無邪気に笑い続ける謎の存在にただただ恐怖を募らせていき、先程までの幸せで楽しい気持ちは消え失せていた。

 

 

第一章

 

【友好喪失リトライロード】に続く

 

 

 

 

ー登場人物ー

 

【予備学科】砂糖(サトウ) 太郎(タロウ)

 

【超高校級の???】龍野(タツノ) 竜斗(リュウト)

 

【超高校級の名探偵】(ツルギ) 星光(セイコウ)

 

【超高校級のリア充】沢風(サワカゼ) 俊也(シュンヤ)

 

【超高校級の芸人】和良井(ワライ) 笑平(ショウヘイ)

 

【超高校級の野球選手】湯上(ユカミ) (ケン)

 

【超高校級のゲーマー】百澤(ヒャクザワ) 成八(ナルハチ)

 

【超高校級の僧】瀬戸内(セトウチ) 太陽(タイヨウ)

 

【超高校級の交通委員】泊 進(トマリ ススム)

 

【超高校級の保健委員】桃瀬(モモセ) 一護(イチゴ)

 

【超高校級の???】猫屋敷(ネコヤシキ) 狛犬(コマイ)

 

【超高校級のネット配信者】鷹倉(タカクラ) ルゥ ヴィクトー

 

元"超高校級の審判" 詞述(シノベ) 真義(シンギ)

 

元"超高校級の占い師" 桜花(オウカ) 心咲(ミサ)

 

【超高校級の放送部】嶋野(シマノ) 恵子(エコ)

 

【超高校級の氷彫刻家】熱宮(ネツミヤ) 燐火(リンカ)

 

【超高校級の折り紙講師】(フジ) 織姫(オリヒメ)

 

【超高校級のアルバイター】妻夫木(ツマブキ) 弥生(ヤヨイ)

 

【超高校級の努力家】シャルロット・ド・ベルジック

 

【超高校級の幸運】木枯(コガラシ) (ナエ)

 

【超高校級のメカニック】鈴木崎(スズキザキ) 美佳子(ミカコ)

 

【超高校級のモブ】影山(カゲヤマ) 琥珀(コハク)

 

生存者 22人

 

屍ノ原学園 学園長 モノグマ

屍ノ原学園 教頭 モノシロ

 

 

 

 

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