「しかしマスターのあの行動はどうにかならないのか……」
カルデアの食堂の一角で集まったエミヤ、クーフーリン(キャスター)、ランスロット(剣)の三人のサーヴァントが溜め息をつきながらテーブルに膝をついている。
「悪いお方ではないのですが……」
溜め息の原因は他ではなく自分達のマスター、藤丸立香のことだった。
人理を守る戦いの中でもよく笑い、サーヴァントが傷を負えば自分も傷を負っているのに駆けつける、敵であったものも受け入れ善悪問わず関わる。
ここだけ見れば理想のマスターだが立香には、サーヴァントでさえ溜め息をつかせるある悪癖があった。
「あの人を弄る性格はどうにかならないもんかねぇ……」
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ある時、微小特異点が発生したとダ・ヴィンチちゃんから報告を受けた。
もちろん立香はサーヴァントを連れ特異点の修復に向かった。
特異点の原因であった魔術師を追い詰め、いよいよ最終決戦だというときに、魔術師が立香に質問をした。
「なぜお前はこんな世界を守るんだ!!」
その質問を受けて、サーヴァントの皆が立香の答えを待った。
サーヴァントと立香は世界を救う為に、契約している。
なかには世界ではなく立香自体を気に入って、契約したサーヴァントもいるが。
だが、サーヴァント達は立香がこの世界をどう思っているのか気になったのだ。
サーヴァント達が、立香の答えを待っていると、立香は静かに口を開いて言った。
「……今まで多くの特異点を修復して、多くの人々が強い者の犠牲になるのを見た」
サーヴァントも敵の魔術師も立香に注目する。
「だから俺はこれから消える、世界を救いたいんだ!」
その答えを聞いてサーヴァント達は顔をほころばす。
そんな中、立香はチラっと今日ついてきてもらったサーヴァントの一人、エミヤに目を向ける。
「……地獄をみた(キャメロットの聖伐で)」
「………」
「地獄を見た(ウルクでのティアマト戦で)」
「マスター」
「地獄を見た(冬木の特異点で)」
「マスター!!」
「この人生が偽善に満ちたものだとしても、俺はこの世界を救い続ける!」
「先輩!もうエミヤさんの顔が真っ赤です!」
「もういい!早く戦闘開始するぞ!!」
ややヤケぎみに戦闘を始めようとするエミヤ。
「その先は地獄だぞ?」
と魔術師が立香の答えに返答する。
「なんでお前も知ってるんだ!?」
この時の戦闘はエミヤのおかげで速攻でかたがついたが、終始エミヤは涙目であった。
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「本当になんで知ってるんだ!?」
バンとテーブルを叩く。
「なんかこの前、第五次聖杯大戦の資料を食い入るように見てたぜ」
「だからと言って人の心情まではわからないだろう!?」
「エミヤ殿はすっかり標的にされてますね」
そう、エミヤは立香に弄られることが一番多い。
「やっぱネタが多いからじゃねぇの?」
「そんなの貴様も同じようなものだろう!?」
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ある時クーフーリンが立香を叱った。
戦闘中にサーヴァントを庇って腕に怪我を負ったのだ。
「だからサーヴァントは庇わなくてもいいんだよ!」
「だって気づいたら庇ってたんだもん。しかもサーヴァントも当たったら痛いだろうし…」
「それでも坊主が死んじまったらそこまでだろうが!」
そんなこんなでもう結構な時間を立香は怒られてる。
クーフーリンも立香が憎いわけでもなく、邪魔に思ってるわけでもなく、ただただ心配なだけなのだ。
「もうわかったよ!術ニキのバカ!」
しかし立香も長々と怒られて限界だったのか、クーフーリンの前から逃げて走り去ってしまう。
「あ!待てまだ話は終わってないぞ!?」
「術ニキのバカ!槍無し!筋力E!敏捷一人だけC!メイブちゃんとよろしくやってろ!」
捨て台詞を残して。
「なんだとこのガキ!敏捷Cの走力みせてやろうか!?」
といいながら、立香のあとを追いかける。
しばらくは立香とクーフーリンの追いかけっこだったが途中から、
「貴方達なにやってるのですか!」
とナイチンゲールが追ってきた。
「ヤバい!婦長に捕まったら殺られる!!」
「つーかなんで俺まで追われてんだよ!?」
「そりゃぁ怪我人追いかけてればそうなるでしょ!?」
「なっとくいかねぇ!?坊主早く捕まって治して貰えよ!?」
「今捕まったら完璧に切除コースでしょ!?術ニキが捕まって落ち着いたら行くよ!」
「オメェ人を生け贄にしてんじゃねぇよ!!」
そんなことを言いあってる間に二人共婦長に捕まり、ぶん殴られ仲良く連行された。
流石敏捷B+……
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「本当にあの時は参ったぜ」
しかもその時の立香の声が大きかった為に、
すれ違うサーヴァントから、
『槍がない……』
『筋力E……』
とひそひそと言われている。
「まぁ…筋力Eでは…仕方ないな……フフ」
「何笑ってんだ詐欺筋肉」
「なんだと槍を持ってない方のクーフーリン?」
「上等だ、表出ろやクソ坊主」
「いいだろう、槍がなくてもどこまでできるか見物だな」
「お二方お止め下さい」
ランスロットが喧嘩になるのを寸前で止める。
「今はマスターへの対応が先でしょう?」
そういうと二人共舌打ちをしながらも椅子に座り直す。
「そういうアンタは何かあったのかい?」
「私ですか?私はこの間マスターに相談がありまして」
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「マスター、今大丈夫でしょうか?」
「はーい、どうぞー」
ランスロットは立香のマイルームの前で声を掛けるとすぐに返事が返ってくる。
扉が開くと、タブレットを使っている立香がいた。
「マスター編成の確認ですかな?」
「うん、明日は竜の爪を集めに行くからその編成をね」
ランスロットはそうですかと相槌をつきながらタブレットを覗いて見る。
(ドラゴン相手ならアサシン中心だろうか?)
ランスロットが確認すると編成は……
『坂田金時』『源頼光』『酒天童子』『茨城童子』『望月千代女』
ランスロットはそっと見ない振りをした。
(あとで金時殿を労っておこう)
そう思いながら、タブレットから目を離す。
「で、今日はどうしたの?」
「実は折り入ってマスターにお願いしたいことが」
「俺にできることならするけど」
すると立香はお茶入れるねと慣れた手つきでお茶をいれ始める。
「はい紅茶、教授から茶葉もらったんだ」
「ありがたく頂戴します」
「それでお願いって何?」
立香がそう聞いたが立香はもうすでになんのお願いかはわかっていた。
「実はマシュのことで……」
「うんそんな気はした」
ランスロットがこうしてマイルームまで来てのお願いは円卓かマシュのどちらかしかないのだ。
「うっ、すみません何度も」
「別に気にしなくてもいいよ」
こうしたランスロットのマシュと仲良くしたいというお願いの相談は今回だけじゃない。
過去にも何回か相談にのり、その度に色々な事を提案してきた。
「そういえば前回のお出掛けのお誘いは?」
「断られました……」
「あらぁ、どこに誘ったの?」
「いえ…その…」
ランスロットは答えずらそうに口ごもる。
「?」
「……誘う最中に断られました」
「……Oh」
ランスロット曰く
『マシュ、明日は休みだろう?よけれ『結構です』とぉわ……』
だったらしい。
マシュにはギャラハッドの霊基がついている。
その霊基がランスロットをここまで拒絶してるのだろうが、最近ではマシュも拒絶してるのではないかと思われるほど辛辣だ。
「もうなんか俺の力でどうにかできる気がしない」
「マスター!そこをなんとか!」
うーんと考えると、
「ランスロットがそこまで拒否られるのは初めてだよね?」
「ぐっ!そうですねここまでのは初めてです」
どうやら娘に拒否られているという事実がダメージを与えたのだろう。
まぁ事実拒否られているから仕方ない。
そしてふと思い出す。ランスロットがマシュを誘う数日前ランスロットが忙しそうにしてたことを思い出した。
「確か誘う前に忙しそうにしてたけど何してたの?」
「あぁ、あれはマシュに贈るプレゼントを他の方から意見を聞いてました」
「もしかして全員女性?」
「そうですとも、やはり女性のことは女性に聞くのが一番だと思ったので」
そしてまた立香は思い出す。
その忙しそうにしているランスロットをゴミを見る目で見てたマシュを……。
(怖かったから今まで思い出せなかった)
「どうされましたマスター?」
「なんでもないよアーツの騎士」
「もしかして私がアーツだけだと思ってます?」
「ちゃんとクリティカルの人だとも思っているよ」
「きちんと聞いて下さい!」
「きちんとって言ってもねぇ」
「言いたいことでもあるのですか!」
「乙女の加護は得られても娘からの信頼は得られないんだね」
「ぐはぁ!?」
バタンとその場で倒れ付すランスロット。
(これ絶対オーバーキルしちゃったよ)
すると床の色が少し変わってくる。
ランスロットが伏せている顔中心に。
流石にこれ以上責めると先輩最低です案件になるため、助け船を出すことにする。
「プレゼントはもう買ってきてあるんだよね?」
ランスロットは動かない。
「それを渡して、たくさんの意見を聞いてマシュに似合いそうな物を選んだって言えば多分誤解は解けるだろうから」
そういうとランスロットはピクリと動いた。
「心配なら俺も行くから」
そういうとランスロットスクっと立ち上がり、
「いえ、これは私の戦いですから」
と言う。
「そっか」
「でないと娘の信頼も得られない、剣しかない男になりますから」
(あ、結構気にしてる)
「じゃぁ行ってらっしゃい」
「はい、行ってまいります。吉報をお待ちください」
そうして出ていく後ろ姿は勇ましかった。
その後無事に誤解が解け今度一緒に食事をする約束を取り付けたという。
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「マスターのせいで騎士としての恥を晒しましたが、同時にマスターのおかげでマシュとの約束を取り付けられました」
「おぅおめでとさん、本当に悪いヤツではないんだよなぁ」
「我々のことも良く考えてくれるているからな」
「ええ、なんだかんだで頼りになります」
このカルデアでは立香に文句を言う人は多いが、嫌っている人は一人もいない。
それだけ立香もサーヴァントを大事に思っているわけだ。
三人共うんうんと納得していると、廊下から激しい足音が聞こえて来る。
「雑種!貴様今我に何て言った!?」
「身だしなみをきちんと整えろって言われたから、王様も私服ダサいからどうにかした方がいいんじゃないですかって言っただけじゃないですか!?」
「貴様ァ!!我の服はダサくないわ!!ちょっと待て!?なぜ目を背けるセイバー!?」
とそのまま走り去っていく。
「……まぁ、サーヴァント相手に物怖じずに相手できることは、ことは美点だよな」
「そうだな」「ですね」
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藤丸立香
人類最後のマスター
人を弄るのが好きなマスター
戦闘中でも戦闘外でも敵味方関係なく弄る
なぜそこまで弄るのかとサーヴァントに聞かれたので
「自軍を弱く見せたり、相手を挑発してペースを乱すため」と言ったが実際は
戦術:趣味 1:9である
特技は投げナイフ
剣や槍の攻撃より小手先の攻撃が得意
FGO作品1作目!
初投稿作品
拙き作品ですが宜しくお願いいたします