『母です』
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5/8日 マイルーム。
「やっと終わった……」
ダヴィンチちゃんに提出するレポートをすっかり忘れていた為、徹夜でレポートを作成し、今しがたやっと完成したのだ。
時計を見るとすでに2時をまわっている。
「こんな時間に行くのは迷惑か……」
ダヴィンチちゃん、職員、サーヴァントなど毎日いたるところで光が漏れているカルデアだが、流石に遅い時間に出向くのは迷惑だろう。
「今日はもう寝て、起きたら提出しよう」
机のライトを消し、ベッドに入る。
前に、
ベッドの下を確認する。誰もいない。
「下よーし」
続いてベッドの中を確認する。誰もいない。
「中よーし」
最後に天井を棒でつついてみる。
不審な音なし、落ちてくる不審者なし。
「上よーし」
安全確認が終わり、ようやくベッドで体を休める。
なぜこんなことしてるのかって?
わからないのか?
貴様、マスター初心者だな?
正直清姫や静謐ちゃんはもう慣れたが(慣れたくはなかった)、アビーが寝床に入ってきた時はヤバかった。
第2再臨で
しかも起き抜けに、
「昨日は激しかったわ…。でもこれで消えない思い出になったかしら……」
なんて言われたら、見に覚えがなくても思わず責任を取ってしまうところだった。
その後はアビーにそんなことをそそのかした悪の親玉に、バリツキックと
ちなみに余談だが1番ホッとしたのはメイヴちゃんだ。
こちらは起き抜けに布団の中で目が合うと、
「よし!これで結婚ね!だってもう既成事実は作ったもの!大丈夫心配いらないわ!私がきちんと貴男を躾けてあげる!結婚!結婚!」
なんてほざいていたから、笑顔で廊下に叩き出してあげた。
ということもあり、就寝時は一応注意しているのだ。
まぁ注意してても霊体化で鍵を無効にできるので、あまり意味はないのだが。
ただでさえイベント時は急に寝てしまうこともあるのだ。
所詮はやらないよりはマシなのである。
「はぁ…、思い出したら疲れてきた。もう寝よう」
本格的に寝ようとして毛布をかぶる。
「おやすみなさい」
そう言って意識を夢の中に落とした。
天井から聞こえる小さなおやすみなさいを聞かなかったことにして。
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『……さい、…こよ…』
声が聞こえる。
『起…さい、わ…こよ』
だんだんと大きくなる声に意識が戻ってくる。
『起きなさい、わが子よ』
母性に満ち溢れた声であり、どこか危うげな声でもあった。
またイベントかと思いつつ目を開ける。
そして目に映った景色は……
「……和室?」
なんの変哲もない6畳1間の和室であった。
和室に似合った、桐や木で作られた家具。
部屋の真ん中にはちゃぶ台が置かれていて、簡単なお茶菓子も乗っている。
「ここどこ?」
当然の疑問を口にすると、突然襖がガラッと音をたてて開いた。
「気づかれましたか、あなた」
そこには、紫の鎧を身に纏い、その絶対的な力をもって、力と母性を振りかざす、源氏の棟梁源頼光であった。
「頼光さん」
「母と呼んでもいいのですよ?」
「頼光さん」
「……泣きますよ?」
「仮にも源氏の棟梁が初手で号泣ですか!?」
「うえーん」
「武士とは思えぬ泣き真似」
「えっぐっ……うっ……うぇっ……」
「別に本気の泣き真似を所望したわけじゃないわ」
「クスン……あなたをここにお呼びしたわけなのですが…」
「その前にここどこなんです?」
「ここはあなたの意識の深い場所。一応夢にお邪魔させていただいてます」
「そうゆうのは某ロクデナシの専売特許でしょう?」
「そこはちょっと招雷ってやって恢々ってしたら出来ました」
「力技でどうにかしたのはわかった」
「今日は疑問があってこちらに来ました」
「すっごい気軽に人の夢に来るじゃん」
そこでふとこちらも疑問が産まれてしまう。
「あれ?……頼光さんってうち(のカルデア)にいないよね?」
「それですよ!!!」
ダンッとちゃぶ台を叩く頼光さん。流石バーサーカー、ちゃぶ台が半壊してしまった。
「なぜ私のことを呼んでくれないのですか!?」
「いや……それは……」
「溶岩水泳部の他のメンバーはもうすでにいるのに、どうして私は呼んでくれないのですか!?」
「どうして……だと……?」
どうしてだと?
それは藤丸立香に対しては言ってはいけない言葉であった。
「それはな………」
「それは?」
「お前が呼んでも来ねぇからだよ!?」
「!!??」
「こっちが呼んでも来ねぇんじゃしょうがないだろ!」
「ほんとに呼んだのですか!?」
「呼んだわ!何回召喚の演出見たと思ってんだ!もうアタランテオルタはいらないんだよ!!」
「バーサーカーがいっぱいいて、いいじゃないですか!!」
「アタランテオルタもだけどなぁ清姫もいっぱいいるんだよ!24清姫いるんだぞ!?2ダースだぞ2ダース!?こんなダース胸焼けするわ!!」
「あ、愛が足りないのです!!」
「愛ならそっちでカバーしろや!有り余るぐらいあんだろうが!母性愛がよぉ!」
「回転数が命なのですよ!」
「こっちわなぁ!虹が見てぇんだよ!」
「だ、だいたい!何回回したのですか!」
「………っ!?」
「……あなた、もしかして……何回回したのですか?」
「……5かい」
「なんと?」
「……45かいです」
「とりあえず謝りましょうか」
「なぜだ!?無課金で45回は凄いだろうが!!凄いって言って!お願いします!」
「どんなに凄くても課金勢には勝てないのですよ」
「クソぅバーサーカーが正論で責めてくる!?」
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「あなた、時に今日はなんの日ですか?」
「え?今日は」
日付を聞かれると癖でカレンダーを探してしまうが、ちょうど目線の先にカレンダーが掛けられていた。
ご丁寧に5/8日に赤丸が何度もつけられている。
「世界赤十字デー」
「えっまぁそれも大切な日ですが……。ヒントは私を象徴する日です」
「溶岩の日?」
「そんなに溶岩が好きなら今度溶岩でぇとでもしますか?」
「やめて下さい、死んでしまいます」
普通の人間……いやサーヴァントでも溶岩は普通にヤバい。
「母の日だっけ?」
「そのとおりです!」
「祝うのはいいんだけど、頼光さんカルデアにいないでしょ?」
今ここでおめでとうと言葉だけを送るのはなんとも味気ない。
「それは大丈夫です」
「?」
「私はこれから運営に乗り込み1日だけ源頼光ピックアップを実現させてきます」
「そんなことができるの!?」
「あなたのためですもの…」
「流石頼光さん!俺達マスターにできないことを平然とやってのける!そこにシビれる!あこがれるゥ!」
「さぁ!行きなさい!私とあなた、親子の絆をここから始めるのです!」
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・
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「おはようございます!!!」
朝起きてベッドから速攻で出ると早速マシュから端末に連絡が入った。
『先輩大変です!予期せぬピックアップの情報です!』
「やったか頼光さん……」
急いで部屋から出て召喚ルームに向かおうとすると、後ろから気配を感じる。
「召喚ですか、わたくしも参りましょう」
「私も参ります……私達の仲間の為に……」
「清姫…静謐ちゃん…」
流石溶岩水泳部。素晴らしいチームワークだ。
例えそれがマスターの部屋に無断で侵入している場合でも、遺憾なく発揮できるようだ。
3人で頷きあいながら召喚ルームに向かう。
俺を2人が挟んでいるような並びだ。
いつもと違うものものしい雰囲気で召喚ルームに向かっているため、事情を知らない者達は次々とマスター達に道を開けてくれる。
中には『何か事件があったのではないか?』とか『これから何かやらかすのか?』とか『あそこだけ背後にBGM流れてない?』とか口々に聞こえてくる。
そしてついに召喚ルームにつくとすでにマシュが召喚の準備をしてくれていた。
「準備完了です、いつでも召喚できます」
「ありがとうマシュ」
さぁ今ある聖晶石はちょうど30個。
「みんな準備はいいな?」
「えぇ」「はい」
「……いくぞ、来いカルデアの母!!!」
システムを起動すると召喚ルームが眩い光に満ちていく。
「こんにちは、愛らしい魔術師さん。サーヴァント、セイバー……あら? あれ? 私わたくし、セイバーではなくて……まあ。あの………………………──サーヴァント、アーチャー。召喚に応じ参上した」
「オカン違いーーーーー!!!」
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