人を弄るのが好きなマスターの話   作:あまいろ+

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神出鬼没なって話

 

「そういえば立香、お部屋の掃除は自分でやっていますか?」

 

ある日の食堂で隣に座っていた頼光さんがそう問いかけてくる。

 

母性を全身で体現したようなサーヴァント、源頼光は召喚に応じてくれた次の日からその持ち前の母性を発揮しキッチンサーヴァントの手伝いをしてくれている。

 

エミヤやブーディカなどキッチンサーヴァントからは、大変助かっているとよく話を聞いている。

 

今は遅いお昼とあって食堂にあまり人がいないためか、俺に食事を運んでくれると隣に座り、色々とお世話してくれたり心配してくれたりする。

 

「掃除?あぁ最近してないなぁ」

 

「まぁ!だめですよ!きちんと掃除をして自分の部屋を綺麗に保たなければなりませんよ!」

 

「えー?必要ないよ」

 

「必要ないとはなんですか!部屋に汚れががたまると貴方の健康が……」

 

しまった説教モードに入ってしまった。

 

確かに頼光さんが俺のことを心配してくれるのはありがたい。

 

でも大切なことを思い出して欲しいんだ。

 

俺の部屋は良く壊れる。

 

当然壊れるたびにキャスターの面々やダビィンチちゃんが何とかしてくれるのだが、その際にほぼ新品のような部屋になるため、あまり部屋の汚れを気にすることがないのだ。

 

言い換えるとほこりがたまる前に部屋が壊されているというわけで、どちらも一長一短なのである。

 

……いや部屋壊されるより掃除するほうがましだわ。

 

「立香聞いていますか…?」

 

「ごめん聞いてなかった」

 

考え事をしていたせいで頼光さんの話が聞こえていなかった為、正直に答える。

 

正直なことって素敵だね!

 

「わかりました、ならこの母が貴方の部屋を掃除してあげましょう」

 

「え?それは悪いよ」

 

「大丈夫です、すぐに終わりますから」

 

「でも」

 

「この刀の一振りですぐ終わりますから」

 

「そうだね俺の部屋が終わるね」

 

そして人はそれを掃除とは言わない。

 

「23秒ぐらいで片付けますから」

 

「お?宝具使おうとしてるな?」

 

「4人になって効率的ですし」

 

「頼光さん自分のレベル覚えてる?」

 

「100ですが?」

 

「…いい天気だし午後から仕事もないから掃除して来ます」

 

「母の力が必要ならいつでも呼んでくださいね」

 

「少なくても掃除で呼ぶことは永久にない!」

 

食堂を出る際に我が子が冷たいですとお小言をもらったが聞こえないふりをし、窓から吹雪の降る様を見ながら自室に急いだ。

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

「さぁ掃除を始めようか」

 

「マスター、掃除は良いのですが」

 

自室の扉を開け掃除用具を持つ俺の隣には

 

「どうして沖田さんが呼ばれたのですか?」

 

幕末の治安組織、新選組一番隊隊長沖田総司がいる。

 

「総司だから」

 

「え?沖田さんそんなくだらない理由で呼ばれたんですか?」

 

普段温厚な沖田さんもマジか?って顔で見てくる。

 

「5割冗談だ」

 

「半分以上も本気なんですか!?」

 

本当は自室に行く途中にひっまそうにプラップラしてたから誘ったのだが、そんなことを伝えたら沖田さんが傷ついてしまうから言わないようにしよう」

 

「マスター途中から声に出ちゃってます、傷口に思い切り塩を塗りこんでいます」

 

しまった口に出ていたようだ。

 

「もういいですよ…、実際に暇そうにしてたのは事実なんで…」

 

「悪かったよ、でも役に立ってくれそうだったから誘ったんだぞ?」

 

これがジルドレェや黒ひげだったら勢いあまってQPに変えてしまうところだ。

 

「へ、へぇ…?沖田さんのどこが役に立ちそうだったんですか?」

 

「沖田さんは…縮地ができる」

 

「掃除とはまったく関係ないスキル!!」

 

沖田さんと話している間に掃除の準備もあらかた終わったので早速掃除に取り掛かる。

 

まずは雑巾やはたきで本棚やこまごまとしたものを綺麗にしていく。

 

部屋が壊されるとはいえ教本やJ○J○の奇妙な冒険の入った本棚やサーヴァントからもらった小物などこまごまとしたものはあるので、丁寧に拭いたりほこりを落としたりして綺麗にしていく。

 

「トロイの木馬(手のひらサイズ)みっけ、沖田さんこれどこ置いてたっけ?」

 

「もー!マスターがわからないなら沖田さんもわかりませんよ!」

 

「そうだよねぇ」

 

『それは本棚の上に飾ってありましたよ』

 

「ああ!そうだったそうだった!アキレウスに見せた時に弄ったんだっけ」

 

うっかりうっかりと言いながら立夏は元あった場所に木馬を戻していく。

 

「…マスター、今ここにいない誰かの声が聞こえませんでした?」

 

「気のせいだよ」

 

「…そうですか」

 

「隕鉄線はどこにしまってたっけ?」

 

『それは一番下の引き出しに閉まってありましたよ』

 

「思い出した、中華組と一緒にこれで稽古したんだった」

 

「…マスター、今ここにいない誰かの声が聞こえませんでした?」

 

「マスターしてればそういうこともあるよ」

 

「ないです!マスターしてても幽霊と話すことなんてないですから?」

 

「沖田さんサーヴァントだよね?」

 

沖田さんも英霊のはずなんだけど。

 

「ドルイドの杖どこだっけ?」

 

「ついに積極的に幽霊に話しかけてる!?」

 

「幽霊じゃないよ」

 

「幽霊じゃなきゃなんなんですか!」

 

「シャルロットですよー?」

 

「…一歩音越え、二歩無間、三歩絶刀!無明三段突き!!」

 

「ちょっと危ないですよ!」

 

いきなり沖田さんの背後に現れたシャルロットコルデーに驚き、思わず宝具を繰り出してしまう沖田さん。

 

「いやそれはびっくりさせるほうが悪いでしょうが、シャルロット」

 

「反省してまーす」

 

そしてその宝具を片手の人差し指と中指で挟んで止めてしまうシャルロットコルデー。

 

「え?」

 

「すみません驚かせてしまって…」

 

「いや大丈夫で……え?」

 

「あぁ…シャルロットはこのカルデアにて最強!だから気にしなくていいよ」

 

「……わぁ……ぁ…!」ジワ

 

「泣いちゃった!?」

 

「え!?すみませんどこか痛かったですか!?ケガさせちゃいました?」

 

「ちょっやめろ追い打ちをかけるんじゃない!」

 

「……うぇぇ」

 

 

宝具を簡単に止められたことがショックだったのだろう。

 

一回掃除を中止して泣いてしまった沖田さんを二人して一生懸命慰める。

 

「落ち着いた」

 

「…はい」

 

「シャルロットは来たときはお世辞にも強くはないサーヴァントだったんだけどね、持ち前の努力で今じゃこのカルデアで一番強いサーヴァントなんだ」

 

「LOVEパワーのおかげですね」

 

「ちょっと静かにしようか」

 

「マスター、私マスターを守れるように強くなります!」

 

「…あぁ期待してるよ」

 

「沖田さんなら強くなれますよ!」

 

「そうですかね…沖田さんも強くなれますかね?」

 

「はい!沖田さんは縮地ができますから!」

 

「結局縮地!!」

 

何はともあれ新しく志を持ち元気になった沖田さんと共に掃除を再開していく。

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

あれからやる気になってくれた沖田さんとシャルロットのおかげで掃除も滞りなく終わりに近づいて行った。

 

後は、

 

「デスク回りですね」

 

デスクの上には書類や読みかけの本が散乱しており、デスクの表面が見えないぐらい散らかっていた。

 

「マスター、こんなに散らかしているといざというときに大事なものが見つかりませんよ?」

 

「耳が痛い」

 

「まずは本を片付けてから書類を整理しましょうか」

 

「ん?いや本のほうは問題ないよ」

 

そう言うと立夏は散らばっている本を全部集めると、本棚に向かって全部投げた。

 

「マスター!?流石にそれはいけませんよ!!」

 

本棚に向かっていく本を目で追うと、本棚に当たる瞬間、本棚から褐色の腕が伸びてきて目にも止まらぬ速さで本を本棚の元の場所に戻していく。

 

「は?」

 

「あぁ今日はあちらにいたんですね」

 

「よし本は片付いたから後は書類だな」

 

すると立香は手をパンパンと叩いて鳴らす。

 

「お呼びですか先輩」

 

そう言って部屋の観葉植物の陰から現れたのはマシュキリエライト。

 

「書類整理するの手伝って」

 

「お手伝いします」

 

「今どこから現れたんですか?いませんでしたよね?」

 

混乱する沖田さんをよそに、

 

「ますたぁ!この清姫、貴方のお布団に入りふかふかにしてやりますとも!」

 

「いやそれ清姫がしたいだけ…あぁうん、よろしく」

 

無人だった布団にいきなり現れる清姫。

 

「!?」

 

次々に現れるメンツにまったく驚くことなく作業を進める立香。

 

「…マスターって1人部屋でしたよね?」

 

「それは俺が知りたい」

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

「てことがあって驚きましたよ」

 

「それは大変だったのう」

 

ボイラー室の横、ぐだぐだ系サーヴァントにはいつもの場所で沖田総司は織田信長に本日起こったことを和菓子を食べながら話た。

 

ちなみに和菓子は掃除を手伝ってくれたお礼にマスターから貰ったものだ。

 

「そうですよ大変だったんですよ!いきなり声がすると思ったら誰もいないところから急に人が現れるし、こっちからの攻撃はいとも簡単に防がれるしで…」

 

「それ本当に掃除の話?」

 

実際に自分が体験した話なのだから余計に怖い。

 

「ノッブ…私はこれからも強くなれるでしょうか」

 

「心配ないじゃろ、だってそなたには…」

 

ノッブは口に詰めた和菓子をお茶で勢いよく流し込み言うのだった。

 

「縮地があるからの」

 

「……縮地以外の武器も一緒に探してください」




FGO作品17作目!
感想等ありがとうございます!
とても励みになっています!
これからも、拙き作品ですが宜しくお願いいたします
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