「帰りたい…」
人類最後のマスター、藤丸立香は食堂で無意識に口に出していた。
「…どうしたんだ悩み事かマスター?」
カウンター席に座っていた立夏の独り言は、キッチンで作業していたエミヤに、聞こえていたようだ。
立香の帰りたいと言う言葉を聞いて心配して声をかけてくれる。
「声に出ちゃってた?ごめん心配させたいわけじゃないから大丈夫だよ」
「そんなことはない、君は普段から任務やたくさんのサーヴァントの相手などで大変だろう?それに君は我々のマスターなんだ。無理に聞きはしないが我々を頼ってもいいのだぞ?」
「いやエミヤに言ってもしょうがないし…」
「なんだ水臭いじゃないか、解決できるかはわからないが、愚痴でも不満でも話すだけ話てみてもいいんだぞ?」
「…そうだね、じゃぁちょっと聞いてくれる?」
「あぁ問題ない」
「実は…家に帰りたいんだ……」
「そうか…」
人類最後のマスター、そんなたいそうな呼び名をされているがまだまだ子供だ。常日頃戦いと隣り合わせの日々では心も摩耗するだろう。
サーヴァントになる前のエミヤも聖杯戦争という戦いに身を投じていた一人だ。マスターであったエミヤだからわかる苦しみもあるだろう。
だからこそ今目の前にいる立香の気持ちにも寄り添えることができるだろう。
「何か…きっかけはあったのか?」
戦い、交流、何がきっかけで立夏が帰りたいと言ったのか?
何かがあって突発的に言ったのか、たまりたまったものがあふれてしまったのか。
自分も言った通り、解決できるかはわからない。だが少しでも立夏の気持ちが軽くなればと思い、きっかけを聞いたのだ。
「実はね…」
幸い昼飯時も過ぎていた為、回りにサーヴァントや職員などはいない。
キッチンにいるブーディカやタマモキャットも、今は聞こえないふりをしてくれるだろう。
立夏の声を待つエミヤ、立香とエミヤの回りだけが異様に静かに思えた。
「実は……○ァミチキが食べたいんだ………」
「……うん?」
「だから…○ァミチキが食べたいんだ…」
「いやマスター?良いんだぞ?素直に言っても?」
「全然素直に言ってるけど」
「もっと他にあるじゃないか!?任務が辛いとか!家族が恋しいとか!」
「任務については俺の仕事ってことで割り切ってるし、そんな家族がーっていう年でもないしねぇ」
「他にもあるじゃないか!サーヴァントが裏切ったとか!妹が聖杯に汚染されたとか!」
「それお前のマスターじゃねぇか!しかも片方の原因お前!」
「他にも悲惨な研究をしていた父親を殺してしまったとか!母親代わりだった女性を旅客機ごと対空ミサイルで墜落させたとか!」
「どこの誰のえげつない人生!?最初のたとえと比較して重いんだよ!ふざけるな!」
関係ないと思うけどアサシンの方のエミヤが食堂に入ろうとしてUターンして出て行ったぞ!?
「はぁ…まぁあれだ。そこまで深刻な事では無くて良かったよ」
「だから最初言うの渋ってたじゃんか」
「しかも悩む必要もなかっただろう?」
「え?」
「なぜ一言私に言わない」
「何を?」
「なぜ○ァミチキを作って欲しいと私に言わない」
「…いや流石にエミヤでも作れないでしょ?」
「今君の食べているものはなんだ」
「唐揚げ定食」
「うまいか?」
「すっごくおいしい」
「ならいけるだろ!」
「いや違うでしょ!?凄くおいしいけど店舗のと手作りはまた違うでしょ!?」
「当たり前だ!私のほうがおいしく作れる!」
「そこじゃないわ!たまにはジャンキーなものが食べたくなったの!」
「あんな油だらけの物などマスターに食わせられるか!」
「エミヤの唐揚げ食べたらから食べたくなったんだよ!」
「私のせい…だと…?」
そう言われるとエミヤは目に見えて落ち込んでしまった。
エミヤには悪いが栄養の計算がバッチリされているのを食べていると、たまにはジャンキーなものを食べたくなってくるのだ。
よほどショックだったのか、ふらふらとシンクに行き、洗い物を始めてしまった。
落ち込んでも家事をするとは、流石専業主婦の英霊。
「あれはもう今日だめだね」
エミヤとは入れ替わりで、小鉢を持ったブーディカが現れた。
「後で謝っておくんだよ?」
「そうだね俺も少し言い過ぎた」
「にしても急に帰りたいっていうからお姉さんびっくりしたよ」
「俺の近くに丁度○ァミリーマートがあってさ、唐揚げ食べたら鶏肉つながりで思い出しちゃってね」
「鶏肉?」
「え?」
「あー鶏肉だったね!たくさん作ってるとド忘れしちゃってね!」
「なんの肉使ってんの!?これ本当に唐揚げだよね!?」
「いやー私ブリタニア出身だからさ?詳しいことはわかんないけどちゃんと小麦粉をまぶして揚げてるよ?」
「調理工程に不安を感じてるんじゃないよ!もっと前!原材料に疑いを持ってんの!ちょっとキャット!?」
原材料に不安を感じ、奥で別の作業をしているタマモキャットに声をかける。
「なんだ?ご主人?」
「これ鶏肉だよね!?」
「……毒は入っていないぞ?」
「やだ!質問と答えがあってない!バーサーカーだ!」
「ご主人、元々キャットはバーサーカーだぞ?」
「元々っていうか元もバーサーカー味あったしね…」
まぁもともと食料も少ない中おいしいご飯を作ってもらっているのだ。文句は言えないだろう。
「はぁ…食べても安心ならとりあえずいいか」
アハハと困ったように笑うブーディカの前で、唐揚げ定食(仮)に手を付けるのを再開する。
いや味は本当に鶏の唐揚げなんだよな…。
「でももし帰るってなったら一緒に行きたいって言うサーヴァントは多いんじゃない?」
「あーいるだろうね」
「もー誰かと一緒に帰って恋人だって紹介したらー?」
「ハハハ俺に地元でテロ起こせって言ってるんですか?」
「ハハハそれもそうだね!」
「「「ハッハッハッ!!!」」」
あれ今笑い声多くなかった?
「まったく立香くん!水臭いじゃないか!」
「ダヴィンチちゃん!」
「そんなに家や家族が恋しいだなんて言ってくれればいいじゃないか!?」
「いやもうその話は終ング!!」
話している最中にダヴィンチちゃんの完璧な肉体で頭ごと抱きしめられ何も話すことができなくなる。
「しかも帰るときにはサーヴァントも連れて行きたいだって!?いいともこのダヴィンチちゃんに任せておきたまえ!」
引きはがそうとするもさすがサーヴァント、筋力Eでも抑え込まれては勝ち目はない。この要介護研究者め!
「善は急げだ!早速サーヴァントを決めるための催しを行おうじゃないか!」
元気に勢いよく宣言すると満足したのか立香を解放し食堂を出ていく。
「くそ野郎め、今度発明中にチャフ投げ込んでやる…」
「大変だねマスターも…」
「絶対楽しんでやがるあの天災」
2時間後この食堂で『マスターの帰省についていけるのは誰か!?決定戦!!』となるレクリエーションもどきが行われるのであった。
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「さー始まりました!『マスターの帰省についていけるのは誰か!?決定戦!!』」
『わーーー!!!』
ダヴィンチちゃんの宣言通り、イベントが開始すると食堂内が異様な盛り上がりを見せていた。
「いやー壮観だね、立香くん!そんなみんなに何か一言!」
「みんな暇なんだね…」
食堂に座っているサーヴァント全員から見えるような位置で、マイクを持って司会を務めているダヴィンチちゃんにマイクを向けられ、率直な意見を述べる。
食堂に集まったサーヴァントは過半数を超え、ざっと見ると所属しているサーヴァントの4/5ぐらいは出席していた。
「そんなこと言うもんじゃないぜ立香くん?」
「あそこの席見ても言える?」
立香が指差すテーブルには、ギルガメッシュ王やマーリンがニヤニヤしながらこちらを見物している。
その近くではビリー、ロビン、ジェロニモの三人がチップやサーヴァントの名前が書いてある表を持ってきて賭け事にいそしんでいる。
「あれは立香くんのことを見守っている妖精さんだよ」
「いいんだな?今ここでアヴァロンルフェしてもいいんだな?」
「やめてくれ。このシリーズは基本1部から1.5部ぐらいの設定なんだから」
「2部ぐらいになると書きにくいんだよね」
にしてもかなり集まったな。かといって一人一人に自己PRを聞くほどそこまで暇じゃない。
…暇じゃないよね?
「まずは少し減らすか」
「おやどうするんだい?」
「簡単な質問をするだけだよ」
大事なことだが彼らはサーヴァントである。彼ら一人で戦闘機や戦車を壊すこともできるし、一般人レベルなら束になっても勝てないだろう。
え?セイバーのサーヴァント相手に一方的ボコボコにできる社会科の先生?そんな奴が一般人なわけないだろう?
さらにサーヴァントは兵器でありながら人と同じ感情や性格がある。過去の偉人や神、デミサーヴァントが主なので当たり前と言ったら当たり前なのだが。
何が言いたいかと言うと確実に外に出してはいけないタイプと熟考してから外に出してはいけないタイプがいるのだ!
「あー、みんな集まってくれてありがとう。まずは最初に簡単な質問をしたい」
サーヴァント全員が立香の質問に耳を傾けるようにする。
「この中でカルデアの外に出たら確実に何かやらかすよって人、素直に挙手!」
わかったこと…みんな素直だね。
「なんで全員手上げてんの?素直なのは美徳だけどマスター今だけはこの光景見たくなかった」
多少なりともごまかす奴がいるかと思ったら何でこいつら素直なんだ。
この綺麗にみんな挙手している姿を持て、ダヴィンチちゃんと王様たちは必死に笑いをこらえていた。
「じゃぁ全員行けないってことで…」
「なんだよそれ!?」「横暴だー!」「この茶色の紙に名前と印鑑推してください!」「甲斐性なしー!」
「なんかやらかすの確定してるやつを、みすみす外に出せるわけないだろうが!」
こうなったら常識枠をこっちから選出しなければなるまい。腐ってもマスター、こっちが選んだのなら文句はあっても従ってくれるだろう。
誰かいないかな?
「あっアーラシュ!アーラシュはどう?」
カルデア内での常識人枠で名高いアーラシュをに声をかけると一斉にアーラシュに視線が集まる。
「悪いなマスター、集まった手前申し訳ねぇが俺は無理だ」
「何でさ?結構いけそうだと思うけど」
「誤って
「どんだけ緩くなってんの?年季の入った水道管か」
「お前と周回しまくったせいかな…」
「確かに散々
彼の宝具、
そんなものが街中でいきなり発動したらそれこそ一大事である。
「それは無理そうだね…」
「ああ悪いな」
アーラシュの言う通り、悪いが歩く爆弾アーラシュ・カマンガーには辞退してもらおう。
「他の常識人…マンドリカルドとかどお?」
さっきさっと見渡した時にたしかいたはず。
「おいマスター」
「おぉ…どうしたのイアソン」
「これ」
「え、なに?メモ?」
『俺なんかみたいな三流サーヴァントを選んでくれてとても嬉しいっす。でもこんななみいるサーヴァントを差しおいて俺がマスターの横にいることを思うと腹が…申し訳ねぇっすけど他の皆さんにお任せするっす マンドリカルド』
「いなくなるの早くない?」
「お前に名前呼ばれた瞬間、メモをその場で書いて用意し、俺にメモを渡し、誰にも見つからずにあいつ食堂を出やがった」
「Oh…」
「神霊級のサーヴァントでも気づかなかったぞ、あいつのスピード」
「今度神霊級のサーヴァントと手合わせ組んでみるか」
もちろんマンドリカルドに伝えずにだが。
「いないものはしょうがないか…。他にはエミヤとか行けそう」
「無理だな」
「また早い回答だね、夏イベも付き合ってくれたじゃんか」
「○ァミチキも作れない私など不要だろう……」
「まだ引きずってんのそれ!?」
「笑うがいいマスター、まともに○ァミチキも作れない台所の守護者を…」
あぁ完全にいじけちゃってるよ。自分で台所の守護者って言ってるもん。
エミヤもダメ(多分今日はずっとダメ)か…。
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「もうそしたらこっちで多少振り分けちゃおうかな」
「それがいいんじゃない?幸い大丈夫か大丈夫じゃないかはわりかしハッキリしてるし」
ダヴィンチちゃんの同意も得たことで本格的に振り分けしていく。
「えーーっと、とりあえずバーサーカーは軒並みアウトで」
「なんでー!!」「そりゃねぇぜ大将!?」「保証人の覧は書いてありますので名前をお願いします!」「圧制!!」
「うるせぇ!狂化持ちを野に放てるわけねぇだろうが!」
「では私は大丈夫だな!」
「あなたは別ベクトルでヤベェからだめです」
「なぜだ!?」
狂化の代わりに獣化のスキル持ちのアタランテオルタが立ち上がったが、即座に座らせる。
ブーイングが起こる中無理矢理にでも進行を進める。でなきゃ終わらない。
「バーサーカー除いてもまだまだクラスはあるから…」
「なら私ならどうかネ、マスター君?」
「ご飯はさっき食べたでしょ?おじいちゃん」
「アラフィフまだボケてないヨ!?」
何が楽しくて犯罪世界のナポレオンと仲良く帰省せねばならんのか。
何が恐ろしいって他のサーヴァントと違って、こちらが想像できないことをやるのがリアルに想像できるからだ。
「マスター君私のことを信用していないのかい?」
涙目でまるで下手に出るような声で聞いてくる。
「教授の事は信用しているよ」
「マスター君…」
「絶対にどうしようもないことをやるって信用しているよ」
「マスター君!?」
「どうしても来たいなら止めないけど、常にホームズとペアだからな」
「それは勘弁だネ!!」
どこからか私の方が嫌だという声が聞こえてきたが知らないふりだ。
「む、アピールタイムですか。ならぜひこの呂布をお連れください」
「珍しいね、あまりこういうのに参加するイメージないのに」
「いやいや、私も楽しむ時は楽しみますとも」
「そっかそっか、それで?どこ行きたいの?」
「やはりこの呂布が活躍した伝説の場所を見て回りたいですね!」
「そっかー」
「「ハハハハハハハ」」
「陳宮悪いんだけど発射してきて」
「承知致しました」
「陳宮殿?どちらへ私を…」
「いいから来なさい」
「はぁ」
食堂を出ていく陳宮(+馬)を見送り、無事星になってくれることを願う。
なんであの馬あの姿で人にまぎれられると思ってんだ?異物にもほどがあるだろ。
「じゃぁ次は…」
「マスター…」
「静謐ちゃん、いたのか」
「ずっと」
背後からいきなり静謐のハサン、通称静謐ちゃんが現れていた。
隣にいたダヴィンチちゃんがえらくビビっていたが、俺はまったく気にしない。
「マスター…」
「なーに?」
「私も行きたいです…」
「無理だよ☆」
「何でですか…」
その身自体に毒を仕込み、触れただけで相手を毒殺できるアサシン。それが静謐ちゃんなのだが、
「そうだなぁ、満員電車って知ってる?」
「はい知っています…、鞄や手荷物などは体の前で抱きかかえるのが…マナーの満員電車ですよね…」
「なんでそんな独特の覚え方してんの?まぁいいやそこに静謐ちゃんが入ったらどうなるかな?」
なぜかマナーを知ってる静謐ちゃんだ、意外と気配りもできるしこれで気づけるだろう。
「マスターに…安全に席に座ってもらうことができます…」
「マナーの前に常識を覚えてこい」
静謐ちゃん的には、電車が満員→私が触れる→毒殺!→人が減るから座れるようになる→ハッピー
なのだろう。
いやテロ行為じゃねぇか。
「そしたら野外フェスって知ってる?」
「知っています…目当てのアーティストの何組も前から場所取りをしないあれですね…」
「それは知らなかったわ」
全然参加しないからわかんないや。
「静謐ちゃんがもし参加するとしたらどうする?」
「…首にかけてあったタオルを振り回しライブを盛り上げます」
「ちょっと呪腕さん!?お宅の子の教育間違えてますよ!」
タオルを振り回すのは悪くない…と思う、よく見るし。だが今回は前提条件が違う。静謐ちゃんの使っていたタオルを振り回したのなら絶対に静謐ちゃんの回りは大惨事になるだろう。
この子自分がハサンサッバーハだって自覚無い?
「とにかく連れていけません、もう少しでマシュが検診終わるから遊んできなさい」
適当に通称、ただいるだけでテロ行為、静謐ちゃんをあしらうと大人しくマシュを探しに行った。
「では私の番ですね!」
「景虎さん…」
日本で越後の国を統一し、治め、のちに軍神とまで言われた武将長尾景虎。しかし彼女は、
「いやだから狂化が入ってるサーヴァントは連れていけないって言ったじゃないですか」
「?」
「?」
「…立夏くん、彼女は対魔力、騎乗、神性のスキルしか持っていないよ」
隣にいたダヴィンチちゃんがこっそりと耳打ちで教えてくれる。
「マジで?やっべ…」
「あっははははっ!マスター、気にしないでください!誰にでも間違いはありますとも!」
「そうだよね!人はみんな間違うもんね!」
「そうですそうです!……時にマスター?教えてもらいたのですが…」
「…何かな」
「はたして、この私を、誰と間違え、なんのクラスだと思っていたのかを教えてもらえればと。なに参考までに、そう、さ ん こ う までに聞きたいだけですから!」
「…長尾さんもしかして怒ってる?」
「いやいや数多の特異点を踏破したマスターがまだこんなミスをするとは!どれ私がまた一から鍛え直してあげましょう!」
「ヤダ!この人加減知らないんだもん!」
「はい、本日は立香くんが連れ去られたので終了としまーす」
「しょうがない」「また今度だね」「マスターの部屋にこの紙置いてこないと」「楽しかったね」
「何解散する気になってんだへーるぷ!あと誰だ頑なに婚姻届書かせようとしてくる輩は!!」
「ほら行きますよ!修行の後は飲みにも付き合ってもらいますからね!」
その後、俵藤太のお米でお酒を作ることを約束したら修行は免除されました。
飲みには連れて行かれました。
FGO作品18作目
作者はコンビニの中ではローソンが一番好きです。ミミガーがおいしいんですよ
拙き作品ですが宜しくお願いいたします