人を弄るのが好きなマスターの話   作:あまいろ+

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持っていかれない話

 

「ダヴィンチちゃーん。恒例のお掃除の時間ですよー?」

 

「立香くんかい?おや、もうそんな時間か…じゃぁお願いするよ」

 

ダヴィンチちゃんのラボ兼、自室。

 

日夜ダヴィンチちゃんはこのラボで、俺たちの為に研究や開発をしてくれているのだが、いかんせん、夢中になりすぎるせいかラボはだいたい足の踏み場も無いぐらい散らかっている。

 

前にラボに訪れた俺は、ラボの惨状を見て、いつも世話になっているお礼として、ダヴィンチちゃんと一緒にラボを掃除したことがあるのだが、

 

『あ、それはいつか使うかもしれない』

 

『あ、失くしていたと思っていた論文ここにあったのか。えーと内容は…』

 

『なんか私が掃除すると余計に散らかるんだが?』

 

と、クソほど役に立たなかったので、今では週2のペースで俺がラボの掃除をしに来ている。

 

しかし掃除には役に立たないダヴィンチちゃんだが、ラボには危険なものも多いため、掃除の間ダヴィンチちゃんには、危険物の監視と息抜きを充分にしてもらっている。

 

にしても、

 

「なんか日に日に散らかり具合が増していってない?」

 

「あーそれはねぇ…」

 

「それは?」

 

「掃除してもらえるってわかってると安心して散らかせるんだよね」

 

「天才で良かったな、もし自分の子供だったらはっ飛ばしてるわ」

 

そんな会話をしながら掃除の段取りを頭の中で組んでいく。

 

「まずはいるいらないで分けるか…、えーっとネジや部品は入れ物に分けて…」

 

ん?これは、

 

「ダヴィンチちゃん、このなんかゴツイ眼鏡は何?」

 

「あーそれは確か、かけると相手の好感度がわかる眼鏡だね!」

 

「いや二次創作か。じゃあこっちに転がっている緑色の液体が入った試験官は?」

 

「あーそれは確か、相手の考えてることがわかるようになる薬だね!」

 

「いや二次創作か。じゃあここにある怪しい箱は?」

 

「あーそれは確か、条件を入力することで観測空間を作れる装置だね。ただ欠陥があって仮想空間じゃなくて特異点がうまれちゃうけど」

 

「いや二次……原作にあったわ」

 

確かあれは…ロゴスなんちゃらって言ったっけ?カルデアいっぱいトラブルおこるからわすれちゃったよ。

 

「ていうか何?そんなマスターを混乱に陥れたいの?」

 

「違うんだ!たまたま別の研究の副産物で出来ただけなんだ!」

 

「そんな豆腐作る過程でできたオカラみたいな感覚で危険物を作んな」

 

あるだけで危機を及ぼすものはどんどん捨てていこう。

 

めんどくさいから全部燃えるゴミでいいや。後で清姫に燃やしてもらおう。

 

 

「だいぶ処分したからすっきりしたな」

 

掃除と整理整頓を終え、やっとラボも本来の姿を表していく。

 

「最後はデスク回りだけかな」

 

掃除も佳境に入り、ついに残るは一番の難所、ダヴィンチちゃんの作業机周辺の掃除に取り掛かる。

 

ダヴィンチちゃんが先ほどまで作業をしていたところなので、作業中に手の届く範囲は机の上から下までもれなく散らかっているのだ。

 

「書類は種類別にまとめて…空のガラス瓶は、清姫に燃やして貰うか。飲みかけのコーヒー缶が出てきた…これはぁ…清姫に燃やしてもらうか。うわっ引き出しから空の電池がいっぱい出てきた!…じゃぁこれも清姫に頼むか」

 

「立香くんリサイクルとか分別って言葉知ってるかい?」

 

「ゴミってえのはなぁ、燃えるか燃えないかでしか分かれないんだよ!」

 

「なんて偏った思考なんだ」

 

机の上が整理でき、最後に机の下に移る。

 

そうしてると、机の下から何か布に包まれた固い感触の物が出てきた。

 

「ん?なんだこれは?」

 

「あっ!!立香くん、それは!!」

 

雑に包んでいたのだろう。それを持ち上げると布が少しめくれ、出てきた物は、

 

「これって、義手?」

 

「あー見つかっちゃったか…」

 

どうやら隠していたのを忘れていたようで、ダヴィンチちゃんはしまったというような顔をしていた。

 

俺はダヴィンチちゃんの顔を見てピンとくる。

 

今現在、カルデアのスタッフに義手や義足を装着している者はいない。

 

そして怪我を負っても、魔力さえあればある程度回復できるサーヴァントも違うだろう。

 

今は誰も必要としていない物。だとしたら残る可能性はこれから必要になるかも知れない人物。

 

それは多くの危機に遭遇しなくてはいけない人物、怪我や傷を負いながらも目的の為に動かなくてはいけない人物、仮に腕や足が飛んでも替えのきかない人物。

 

その人物は、

 

「あぁそっか、これは俺の義手か」

 

「そうだ…それは、君の為になるかもしれない物だ」

 

改めてダヴィンチちゃんの言葉を聞いて、すぐに納得する。

 

「これから君は多くの特異点を踏破しなくてはいけない。こちらもできるだけサポートはするが、それでも君はこれから怪我や傷が増えていくだろう。最悪この義手が表すように身体の一部が無くなってしまうかもしれない。そうなってから作るのでは遅いんだ。これはあくまでプロトタイプだが、いつか君の力になるかもしれない。君に黙っていたのはこんな未来を予想していることを君に知られて、不安にさせたくなかったんだ」

 

「そうだったんだダヴィンチちゃん……、でも酷いよこんな…」

 

「ごめんね立香くん…」

 

「酷いよダヴィンチちゃん…なんでこんな面白い事の開発に俺も入れてくんなかったの!?」

 

「え!?そっち!?今ちょっと重い話したつもりなんだけど!?」

 

「それは今どうでもいいんだよ!ていうかありがとう心配してくれて!!」

 

「ど…どういたしまして…」

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

「だって義手の開発とかめちゃくちゃわくわくすんじゃん」

 

「私の心配はなんだったんだ…」

 

「でも実際ダヴィンチちゃんも義手とか義足の開発って興奮するでしょ?」

 

「興奮するけどさ」

 

流石元ジジィ、もとい男子である。やはり古来から男子は義手、変形するもの、棒状の物には興奮するようにできているのだ。

 

「でもそれはそれ!これはこれ!今はキミが大事なんだ、いくら興奮すると言っても私の趣味全開の物は作らないよ。もちろん君に合わせて作っているさ!」

 

「俺に合わせてってことは、俺の意見も組み込んでくれるんだよね?」

 

「それは当然さ!私は天才のダヴィンチちゃんさ!それにこれはまだプロトタイプだからね、まだまだ機能は追加できるよ」

 

流石はダヴィンチちゃん、おれたちにできない事を平然とやってのけることができるだろう。

 

そこにシビれる!あこがれるゥ!

 

そんなダヴィンチちゃんなら俺の要望も難なく通るだろう。

 

「実は義手を銀色の腕(アガートラム)にして欲しいんだよね」

 

「キミはバカか?」

 

「あー!人にバカって言った!いけないんだ!アルトリアに言っちゃおう!」

 

「迷惑になるからやめなさい。あとちゃんとどのアルトリアか詳しく言いなさい」

 

「グレイ」

 

「彼女はアルトリアじゃなくて、アルトリア顔なだけだ。あとなぜわざわざ彼女に言うんだ」

 

「こんなくだらないことでも、きちんと話を聞いてくれるから」

 

「流石マスター、サーヴァントの特徴をしっかりと理解しているね!ぜひ孔明先生に強めに怒られるといい」

 

怒られたらその義妹に報告するから問題ない。

 

「大体銀の腕って生身だともろに命を削る宝具だからね?そんな危ないものマスターの義手につけれるわけないだろう?」

 

「でもアレかっこいいし、何より大軍殲滅攻撃ができるんだよ?」

 

「大軍殲滅攻撃を行う生身のマスターとか聞いたことないよ」

 

「じゃあビームとかは出せるようにできる?」

 

「キミは何を目指してるんだい?」

 

「両手からビームみたいなもの出して、空を自由に飛びたいな」

 

「どっちも機械工学だけども…」

 

「じゃぁ義手は決まったから次は義足だね」

 

「決まってないが?」

 

「義足はねぇマシンガンにしたいんだよ」

 

「だからビームとかマシンガンとか、そういうマスター支援は求めてないんだけど…、マシンガン…ていうか銃を義足に仕込めばいいのかい?」

 

「ん?違う違う、マシンガンを義足にしたいんだよ」

 

「?」

 

「?」

 

俺の言葉を聞いて不思議がるダヴィンチちゃんに不思議がる俺。

 

「だから仕込み銃みたいなもんだろ?」

 

「違うって仕込んでないんだよ丸出しのマシンガンだよ」

 

またお互い不思議がりながら見つめあう。

 

「ちょっとこの紙に立香くんの想像図を描いてくれる?」

 

「いいけど…」

 

紙とペンを受け取り、俺の頭にあるイメージを紙に書き起こしていく。

 

出来上がったのは右足のひざ下が無く、義足の代わりに本物のマシンガンを義足として装着しているような女性のイラスト(眼鏡+片目隠れ)

 

出来たよと言ってダヴィンチちゃんに渡すと、ダヴィンチちゃんは言った。

 

「………なんだいコレ?」

 

「俺のイメージ図だけど」

 

「キミはバカか?」

 

「なんでさ!?いい出来じゃないか!」

 

「いやだって…!?コレ…その……いやマジで何だコレ!?」

 

「義足だよ」

 

「違うよ!言っちゃ悪いけど頭の悪い何かだよ!!」

 

「本当に言っちゃ悪かったな」

 

「しかも何でイメージ図がマシュにちょっと似てんの!?それがなおさら混乱するんだよ!!」

 

「それはただちょうど頭に浮かんだ人がマシュだっただけだよ」

 

「今度会ったときにマシュに謝っておきなよ!」

 

「それはそう」

 

そこだけは反省している。

 

「えーじゃぁできないの?」

 

「できない…というかたとえできてもしたくない」

 

「一応死霊特攻と人特攻つけるつもりだったんだけど」

 

「たとえつけられても私の脳が拒否しているからダメだ」

 

「グレネードも発射できるんだよ?」

 

「部屋の掃除ありがとう、脳を休めたいから帰ってもらえる?」

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

「てことがあったんだよ」

 

「た…い…へんでしたね?」

 

俺は食堂で暇そうにしていたグレイを捕まえてさっきの話をしていた。

 

やはりこんな話でもきちんと話を聞いてくれるいい子だ。

 

「グレイは今日何してたの?」

 

「拙は今日、師匠の髪を梳いてあげたり、ご飯を用意したり、部屋を片したりと一日師匠のお世話をしていました」

 

「要介護者じゃないか…」

 

普通なら大丈夫?師匠を老人ホームに連れていく?と心配するが、実際彼女は師匠の世話が好きらしいので、口は出さないようにしている。

 

「そんな要介護者からのお知らせだマスター」

 

「うわっびっくりした」

 

「師匠!」

 

「ごきげんよう」

 

「え?なにお知らせ?なんかあったの?」

 

「あぁダヴィンチ女史から至急マスターに魔術基礎を叩きこんで欲しいと頼み込まれてね」

 

「何だと!?ダヴィンチちゃんめ!」

 

「ついでだから常識も詰め込んでおいてくれと言われていてね」

 

「え?自分の師匠から触媒盗んだ輩が常識を教えられんの?」

 

「それもそうだな、ではケイローンとジャンヌダルクも呼んでこよう」

 

「絶対スパルタになるやつじゃん!!」

 

知性、知性と脳筋、超脳筋とか100%ハードになる。

 

絶対に逃げなくてはならない。

 

「グレイ捕まえろ」

 

「はい師匠」

 

「離して!グレイ!このままじゃマスター、勉強のしすぎで廃人になっちゃう!」

 

「大丈夫です!拙も一緒に師匠のありがたい授業を受けますから!」

 

「何も大丈夫じゃない!」

 




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