某日。
任務任務任務の毎日。
そんな毎日からやっと開放された今日。
俺は、俺と一緒に任務に付き合ってくれたマシュに会いに、彼女の部屋へ訪れた。
「マシュ―?あーそーぼー」
部屋の前まで着き、部屋の扉を何度かノックし、声をかけると中からバタバタと音が聞こえ、慌てたマシュが飛び出してきた。
「い…いきなりどうしたんですか先輩?」
「久しぶりマシュ」
「お久しぶりです先輩。……いえ基本毎日会ってますし、最近は連日任務でお会いしてますよね?」
「いや、なんか突然言わなくちゃいけないような気分になって…」
そうなんですか…?と、頭に疑問マークを浮かべながら、あまり今の状況を呑み込めてないマシュに、俺はもう一度この可愛い後輩に会いに来た理由を伝える。
「遊ぼうぜ」
「遊ぼう、ですか?」
「最近任務ばかりで疲れちゃったからさ。気分転換も含めてマシュを誘いに来たってわけよ」
「そうだったんですね、誘ってくれて嬉しいです先輩!」
俺の真意を知ると途端に花のような笑顔を咲かせるマシュ。
「そしたら何して遊びますか?わ、私の部屋には世界のボードゲームが揃ってますよ!!」
確かにマシュの部屋には世界のボードゲームが、有名なものから、マイナーなものまで揃っている。
多くのサーヴァントを巻き込み、TRPGをしたのは、とても盛り上がった。
「それも楽しいけど今日はこれで遊ぼう」
そう言って俺は、あらかじめ持ってきていた箱をマシュの前に出す。
「箱、ですか?それで何をするんでしょうか?」
差し出された箱を不思議そうにジッと見るマシュ。
それはピンク色の菓子の空き箱であり、おもて面には見覚えのある女の子の、デフォルメされたキャラクターが、たくさん描かれている。
「あ、そっちは関係ない。裏面裏面」
立夏に促されクルッと箱を回転させてみると、そこには丸い紙が並ぶように5つ貼り付けてあった。
「先輩これは?」
「おとうさんスイッチで遊ぼう!」
~~~~~
おとうさんスイッチとは!?
空き箱に50音のいずれかの行の文字5つを設定された手作りの「おとうさんスイッチ」を押し、その押された相手はその文字から始まる動きをする遊戯である!
~~~~~
「ということだ。記憶したか?」
「大体わかりました、けど実際に見て見ないことには…」
「確かにそうだね。じゃぁ今俺たちの後ろを通り過ぎたロビンで試してみよう!」
「うわっ!!急に巻き込まないでくださいよ!?」
俺たちが話しているのはマシュの居室の前の廊下。
当然職員、サーヴァントと多くの人物が行きかう場所だ。
そんななか、巻き込まれるのを恐れて、我関せずで通り過ぎようとした、アーチャーのサーヴァント、ロビンフットに声をかける。
「だって思いっきり目が合ったのに、無言で通り過ぎようとしたから…」
「わかるんですよ。だってマスター、おたくまた何かろくでもないこと考えてるでしょ?」
「酷い!そんないつも俺が人の嫌がることばかりしてるみたいな言い方!」
「ええ…はい…」
ロビンにやんわりと肯定されたので、マシュの方を見てみる。
マシュと目が合うと速攻で目を反らされた。
「はぁー心にもないこと言われたから、明日ロビン単体で槍の修練所行こ」
「そんなことしてるから言われるんすよ!?」
「ろ、ロビンさん…ロビンさんが宜しければ少し遊びに付き合ってもらえればと…」
「しょうがないですねぇ…マシュの頼みなら少し付き付き合いますよ」
「…皆マシュに優しくない?ん、もっとマスターにも優しくするべき」
「だったらまずマスターが、俺たちに優しくするべきなんじゃないですかね」
「優しいだろ。Fate/Zeroマスターより」
「わざわざ人間的に終わってるマスターが多い回で比較します!?」
〈マスタールール説明中〉
「あー言われた言葉にあわせて俺が行動すりゃいいわけですね?」
「基本そうだね」
「なんていうか簡単ですね」
「子供向けだからね。じゃぁ早速いくぞ!」
「よし来た」
「頑張ってくださいロビンさん!」
「これ頑張ることあるんすか?」
「最初だからあ行で行くぞ!おとうさんスイッチ『あ・挨拶をする』」
「うっすマスター、それにマシュも」
「さっきそれをやってれば巻き込まれなかったのに」
「後悔してますよ。数分前の俺に」
「おとうさんスイッチ『い・射る』」
「おらよ!」
「見事なボウガン捌きですね」
「おとうさんスイッチ『う・受ける』」
「受ける?何を受けるんです?」
「明日超級よろしく。槍の」
「……断わることは?」
「おとうさんスイッチ『う・受ける』」
「わかりましたよ!行けばいいんでしょ!?」
「おとうさんスイッチ『え・笑顔』」
「相性不利の修練所の予定を無理矢理入れられて笑顔になれと?」
「最後!おとうさんスイッチ『お・折れる』」
「文句言わずにこっちが折れろってか?」
「さて!これでとりあえず説明兼被害者の様子が見れたけど、どうゆう遊びかわかったマシュ?」
「とりあえずサーヴァントの皆さんがこれから大変な目に会うことはわかりました」
「いつものことだね」
「おたくのせいですがね?」
「マシュも理解しただろうし次の生に…サーヴァントに会いに行こう!」
「先輩漏れてはいけない本音が口から出てます。すみませんロビンさん。付き合ってもらってしまって」
「いやまぁマスターの相手はここのサーヴァント達は慣れっこだからな。良いってことよ」
「バイバイ、このチュートリアルサーヴァントめ!」
「アンタはもっと気にしろ」
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
「お、クーフーリン発見!」
「次の犠牲者はクーフーリンさんですか…」
「あ?坊主か。よう、どうしたん…嬢ちゃん今犠牲者つったか?」
「聞き間違えかと」
「おぉクーフーリンだ。久しぶりに出たわ」
「なんだ坊主。いきなり人を珍獣扱いしやがって」
「だって♯9以来でしょ?」
「♯9?何言ってんだ?」
「え?」
「先輩、このクーフーリンさんはランサーのクーフーリンさんです。キャスターのクーフーリンさんは何度か出ていますが、ランサーのクーフーリンさんは、このシリーズでは一度も出ていません」
「え!?マジで!?………ホントじゃん」
てっきり1,2回出て来てるもんだと思ってたわ。
「あぁ~はじめましてぇ。わぁクーフーリンが槍持ってる~」
「俺は基本槍持ってんだよ。あと☆3のサーヴァントがはじめましてなわけねぇだろ」
「それはそう」
「で?どうしたんだ?」
「あ、そうだ。クーフーリンこれ見てよ」
〈マスター説明中〉
「おとうさんスイッチ~?」
「やろうぜ」
「断わってくれても構いませんので…」
「いやいいんだけどよぉ。…俺お父さんじゃねぇんだけど」
「あ、それは私も思ってました」
「………」「………」「………」
「おとうさんスイッチ♪おじいちゃんも、おかあさんも、おばあちゃんも、お姉ちゃんも、お兄ちゃんも、お師匠も、王様も、皇帝も、先輩も、後輩も、神様も、同盟者も、女神様も、病院も、ゴールデンも、ピグレットも、共犯者も、安珍様も可!」
「多い多い多い!!関係性が多い!」
「まだまだいっぱいあるぞ」
「先輩…もうサーヴァントスイッチでよろしいのでは…?」
「今回はサ行で、いきますよ~」
「無理矢理始めやがった…」
「おとうさんスイッチ『さ・
「早速死んでんじゃねぇか!?」
「おとうさんスイッチ『し・自害する』」
「そんなに殺したいのかおい」
「おとうさんスイッチ『す・すぐ死ぬ。何で?』」
「俺が聞きてえよ!?」
「おとうさんスイッチ『せ・セルフギアススクロールで死ぬ』」
「それは別のランサーな!?俺じゃねえよ!……俺じゃねえよじゃねえよ!?殺そうとすんな!!」
「おとうさんスイッチ『そ・即死する』」
「もう理由も考えなくなったな?」
「徐福さんばりの死因の多さでしたね…」
「ふぅっ。……あのねクーフーリン。」
「なんだよ」
「俺今、クーフーリンで遊べてめっちゃ満足」
「良かったな坊主。お礼にゲイボルグ投げつけてやろうかこのクソガキ」
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クーフーリンと楽しく遊んだ後、また別のサーヴァントを探して、カルデア内を練り歩く。
「次は誰と遊ぼうかマシュ」
「先輩…そろそろ後ろから刺されますよ…」
「刺されるどころか体の中に手を突っ込まれて、かきまわされたことあるからなぁ」
「あぁ下総の時でしたね…」
「次はマシュがスイッチやってみる?」
「私ですか!?私がサーヴァントの皆さんに命令だなんて…」
「そんな難しく考えなくてもいいんだけど」
「そうですね…やってみます!」
「おや、マスター、それにマシュ」
そうしてマシュと話していると、ふと背後から話しかけられた。
「…ランスロット卿」
「意図しないカモが来ちゃった…」
「どうしたのですかマスター?そのような苦虫を噛み潰した顔をして」
「ランスロット卿…少し、遊びましょうか…」
〈マスター(略)〉
「そうゆう遊びなんだけどやる?」
「………」
「どうしたのランスロット?」
「…この遊びに参加すればマシュに、おとうさんと呼んでもらえるのですね」
「まぁそうだけど…え?泣いてる!?目、潤んでない?」
「すみません。感極まってしまって。はい、私も参加しましょう」
「ではおとうさんスイッチ、行きますよ」
「うっ!」
「また泣いてる…」
「私は今回が初めてなのであ行で。では、おとうさんスイッチ『あ・挨拶をする』」
「御機嫌ようレディ、よろしければこのあとご一緒にお茶でもいかがですか?」
ああ、マシュの額に青筋が…。
「おとうさんスイッチ『い・妹を斬る(同僚の)』」
「ぬおおっ!!!」
「流石マシュ!地雷原でタップダンスするように、人の地雷を踏み抜く!そこにシビれる!憧れるぅ!」
「おとうさんスイッチ『う・浮気する』」
「とぉわ!?」
「いえ、あの時はランスロット卿は独身でしたね。正しくは、浮気をさせる。でしょうか?」
「ハァッ!ハァッ!」
「重すぎるダメージでランスロットが消えそうになってる…。まだ戦えるか?ランスロット!」
「ええ。全ては私の罪…、やられはしませんとも…」
「おとうさんスイッチ『え・円卓を去る』」
「Gaaaa……Arrrr………」
「狂化しちゃった…」
「おとうさんスイッチ『お・王を裏切る』
「王…貴方に…裁いて…欲しかった……」
「ランスロットが光の粒子に!?」
「おとうさんスイッチ『か・カムランの丘で…」
「2周目!?もしかして50音全部やらないよね!?」
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
マシュが2周目に入るところで流石に止め、どんどん薄くなっていくランスロットを2人で医務室まで運んだ。
マシュもやりすぎてしまったと反省して、ランスロットの容体が良くなるまで医務室で看病を申し出たため、ランスロットのことをマシュに任せ、俺は再びカルデア内を歩き回っていた。
しばらく歩き回っていると、前の廊下の壁に背を預けている見覚えのある女の子の姿があった。
その女の子は俺に気づくと甘ったるい声色で声をかける。
「あらマスターさん、こんなところで何してるんですかぁ?」
「なんちゃってラブ神(中)」
「誰がなんちゃってラブ神(中)ですか」
なんちゃってラブ神。もといインドの神カーマが声をかけてきた!
「カーマこそどうしたの?」
「私はですねぇ、マスターさんがなにかおもしろいことをしてるって聞いて、わざわざ探しに来たんですよ」
「楽しくもおもしろくもあったけど1人帰らぬ人になったよ」
「本当に何してたんですか?」
〈略〉
「へぇサーヴァントに命令して回ってるんですかぁ」
「人聞きが悪いな。強制はしてないよ」
「ふーん……私にも命令してみます?」
「え?」
「ふふっいいですよマスターさん。私になら、なにを命令しても。ぜーんぶ叶えてあげますから」
さっきまで気だるげに会話していたカーマだが、突然空気が変わった。
蠱惑的に、そして相手を蕩かせる声色に変わる。
「どんな命令でも…?」
「ノリ気なんだー♪ええ叶えてあげます。どーんな浅ましい願いでも。貴方が望む物全て」
気づくと俺とカーマの距離はとても近くなっており、離れようとしても遅く、彼女の両手がまるで捕まえるように、俺の両頬に添えられる。
「逃げようとしても無駄ですよ?ほらいいこいいこ」
頭を撫でられ射止めるように見つめられる。
そんなカーマの行動に俺は、顔がにやけそうになるのを必死で抑える。
相変わらず独特の空気に飲まれた状態で、カーマの言葉を聞くしかない。
「さぁこの箱で私にどんな命令を……………」
急に今まで場を支配していたカーマの動きが止まった。
「マスターさん、ひとつ聞いていいですか?」
俺はにやけそうになるのを抑えながら、コクコクと首を縦に振る。
「ありがとうございます。ではマスターさん」
もう俺とカーマの間にあった空気は霧散してもうない。
「なんでそのスイッチとやらの箱に、私のあげたチョコの箱を使っているんですか!?」
「アッハッハッハッハッ!!!やっと気づいたか!!!」
ピンク色の箱、おもて面にはカーマをデフォルメしたキャラクターが、箱の枠を囲うようにたくさん描かれており、その中心ではL♡veと、可愛いフォントで書かれている。
そう、俺が持っていた箱はバレンタインでカーマがくれたお菓子の空き箱『愛のある(笑)チョコ』を改造したものだったのだ。
「はー!?ホントありえない!せっかくあげた私のチョコをこんな工作で使うなんて!!」
「ハッハッハッハ!あー!無理!お腹痛い!!いつ気付くかなー?って思ったけど。笑いこらえるの辛かったー!」
「なに笑ってんですか!!??」
「いやもう笑うしかないでしょ!?」
「私は怒ってるんですよ!?」
「はー落ち着いた……。悪かったって。毎年くれるしまだ余ってる箱はあるからさ」
「もうマスターさんなんて知りません!!」
「ごめんごめん!ほらこの後エミヤのとこ行って一緒にプリン食べよ
?」
「何ですか?私のことを小学生だとでも思っているんですか?」
「いらない?」
「いらないなんて言ってませんけど!?」
「決定だね。じゃぁ最後にカーマちゃんスイッチやるか」
「え?あれだけのことあったのにまだやるんですか?」
「えー?だってなんでも叶えてくれるって言ったじゃん」
「言いましたけど……しょうがないですねぇ。はいどうぞ、ぱっぱと終わらせて早く食堂に行きましょう」
「よーし、今回は…な行!」
「はいはい」
「カーマちゃんスイッチ!『な・泣いて退場する』」
「最初からクライマックスなのやめません?」
超絶に長い後書きはpixivの方に載せています
気になる方は是非pixivへ
※見なくてもなんら困りません