そしてオリジナルの技も出してしまいました…。
いつもより少し長い潜入任務の末、ついに私にも悪魔の実が送られることになった。
長官から手渡された箱を持って軽くお辞儀してから、私は足早にみんなが待つ広間へと向かう。
『おかえり』
「ただいま、みんな」
グワンハオにいるカクとカリファ以外のメンバーが揃っているのを確認し、私は箱をテーブルの上に置いてソファーに座る。
どうやらみんなも楽しみにしてたみたいだ。
恐る恐る蓋を開けて見れば、そこには猫の頭の形をした独特の渦巻き模様が入った、グレープフルーツぐらいの大きさの木の実が入っていた。
長官からは何の実かはわからないと言われていたが、もしストーリーの強制的とやらが働いているのだとしたら、これを食べればサーベルタイガーの能力を得られるはず。
でも私が望むのはただデカくて強い古代種になるだけじゃない。もともとのサーベルタイガーにはない特殊な能力を得るためだ。
伸び縮みするキリンやプロペラのトリケラトプスがイケるなら、サーベルタイガーだって好きな能力を上乗せするくらいはできるはず。
そのためには強くイメージする必要がある。
一度深呼吸してから、悪魔の実を両手でしっかり掴み額に当てる。
「姉さん?」
イメージとしてはサイズを自在に変える能力がいい。ほかにも猫に関する逸話や雑学も、取り入れるだけ取り入れてみたい。
大丈夫。
サーベルタイガーならできる。
サーベルタイガーならできる。
サーベルタイガーならできる。
サーベルタイガーならできる。
「なにしてんだ?」
私の挙動を不審に思ったジャブラが聞いてくる。
「念を送ってる」
「なんで?」
みんなの戸惑いを余所に私は集中してネコネコの実(仮)に念を送り続ける。
………よし、もういいだろう。
みんなが固唾を呑んで見守るなか、試しにひと欠片だけを小さくむしって食べてみる。
「………ヴエエエエ!?」
舌が味を感知したと同時に、私は思わず吐きそうになった。
「ああ、うん。まずいよな……」
ジャブラは初めてイヌイヌの実を食べた日のことを思い出したのか、同情しながら背中をさすってくれる。
私はなんとか醜態を晒すのを押しとどまり、ブルーノが差し出す水を受け取って無理矢理実の欠片を喉に流し込む。
味はもう、なんというかその……タイヤのゴムを食べてる気分だ。いや本当に食べたことはないけど、そう表現するしかないほど身体が拒否反応を起こしたのだ。
作中で度々不味い不味いって言われてたけど、これは確かに不味い。
「で、どうだ?」
「あんまり変わった感じはしないけれど……」
少し落ち着いてから自分の手足を眺めてみる。
原作の設定通りなら一口でも食べればすぐ能力は得られるはずなのだが、特に変化は見受けられない。
もしかして動物系じゃなかったのかな……?
そう少しだけ落胆しかけた瞬間だった。
「!?」
ゾワッと前身に鳥肌が立ち、血管の流れが早くなる。
耳、皮膚、顎、歯がムズムズしだしたかと思えば、体毛が増えたり歯が鋭くなったりと、ググッと形が急速に変わっていく。変化の過程で関節がミシミシと軋む音が鳴るけれど、不思議と痛みはない。さながら『私』という存在が書き換えられていくような感覚だ。
「姉ちゃん!?」
一方で、私の異変にフクロウ達は慌て始める。
「アッ……ガァ……!」
直立向けの足も四足歩行向けの作りに変わっていき、ついには両脚で立っていられなくなって前のめりに倒れてしまう。
床を這いつくばる態勢のまま、身体が圧縮されるように縮んでいき………
「………みゃあ」
深呼吸のつもりで吐いた言葉は、可愛らしい鳴き声となった。
何が起こったのだろうと周囲を見れば、心配そうに私を見下ろすみんなの身長が異様に高くなっている。
いや……みんなが大きくなったというより、部屋全体がほんの少しだけ大きくなっている。
まさかと思い、部屋に備え付けられている姿見の鏡に写っているであろう自身を見れば…
黄色い毛並みの、家猫サイズの動物になっていた。
「あ、あれ?」
自分の手……今は前肢となったそれを眺めれば、指先は短くなってプクプクした肉球が掌に付いている。
後ろからはふわふわの長い尻尾が生えていて、髪の毛はないけど角はそのまま。
どこからどう見ても、古代のネコ科猛獣ではなくかわいらしいニャンコの姿になっている。
「ね、姉さん! 大丈夫なの!?」
「私は大丈夫だけど……」
オロオロと心配するブルーノを見上げつつ、私はただただ困惑する。
え、なんで?
原作の獣形態ってもっと大きくなかったっけ?
実はサーベルタイガーのモデルじゃなかった?
私が女だから?
確認のために食べ残した悪魔の実を凝視すれば、猫の頭の形に二つの鋭い牙っぽいでっぱりと、形だけならサーベルタイガーっぽい。
「チャパー! 動物系てやつか!!」
そんな私の姿にフクロウはキラキラした目ではしゃぎ、
「お、おま……猫って!」
ジャブラは腹を抱えて爆笑しだす。
そんな笑うことないじゃないとムスッとした目で彼を睨むと、突然お腹に手を回されて床から抱え上げられ、見上げればルッチが抱っこしていた。
「………お揃いだ」
彼は私にフッと微笑みかけると、腕の中にすっぽりと収める。ああ、そういえばルッチもネコネコの実だったっけ。仲間が増えたようで嬉しいのかな?
一方のジャブラはルッチのドヤ顔を見て、笑うのを止めてハッとする。
それにしてもこの姿……やっぱりただの猫そのものだよね。でも牙が大きく鋭いし、サーベルタイガーの能力なのは間違いとは思う。
(ん~……これは事前のイメージが上手くいったってことでいいのかな?)
もしそうなら基本系である巨体にもなれると思うんだけど、これどうやってサイズ変えるんだろう。
ダメもとで今度は大きい姿をイメージして……
「おい! いつまで抱えてんだ、離せ!」
いると同時に不愉快そうなジャブラが引ったくるようにルッチから私を奪った。
「あ」
「へ?」
その瞬間、ズンッと体積が増して一気に巨大な猫科猛獣に変貌し、その勢いのままジャブラを下敷きにしてしまった。
「うわ……」
その惨状を見たブルーノが、哀れみのこもった声を漏らす。
「わー! ジャブラ大丈夫!?」
慌てて退ければジャブラは咄嗟に鉄塊で防いだらしく、大きなケガをせずにすんだのだった。
[newpage]
あれから一週間後。なんとか動物系の形態変化のコツを掴んだ私は、エニエス・ロビーの訓練場にいた。
まずは実を食べたことで得たサーベルタイガーに関する能力を調べてみようと思い、手の空いているCP9の諜報員に組み手を頼んでみた。
何度か戦ってみてわかったこと。
もともと動物系はシンプルな身体能力向上や回復力とスタミナが持ち味で、一般的な動物の上位互換に当たる古代種ともなればその恩恵も桁違いだ。
ただ……獣型に近い姿になるほど気が昂るというか、目の前の物を破壊したいという欲求が強まっていく。ルッチ達に聞いてみればこれは肉食動物の本能が色濃く出ているかららしい。
そして事前のイメージのおかげか、身体のサイズを自在に変えられるという本来のサーベルタイガーにない能力を手に入れた。これは地味に諜報活動の役に立つ。
あと前世で見聞きした、猫に関する雑学を応用できないかどうかも試してみることにした。よく『猫は液体』なんて言われるくらい、猫科動物の身体は優れた柔軟性を持つという。
それをヒントに回避の六式・神絵と組み合わせて編み出した、私のオリジナル技……
その名も、紙絵猫液!
………うん、ちょっとダサいな。
少しだけ自分のセンスを呪う。
[newpage]
「ルッチ! 私も抱っこしたい!」
「ワシも! ワシも抱っこじゃ!」
その後、ブルーノ達から私が悪魔の実を食べたことを耳にしたカクとカリファは、グワンハオに訪れる度に私の抱っこをせがむようになってしまった。
みんなを抱っこすることはあっても、みんなに抱っこされるのはなんだか新鮮だ。
大はしゃぎする二人にブラシをかけられたり、毛皮に顔を埋められること一時間。チラリと時計を見ればそろそろ授業が始まる時間が迫ってきている。
「ごめんみんな、私そろそろ次の授業にいかないといけないから…」
「え~、もうちょっとだけ!」
「ダメか?」
まだ離れたくないのか抱き締める力を強めて、二人は目をウルウルさせて懇願してくる。
うう……二人とも、それはズルいよ…。
「……じゃあ、もうちょっとだけ」
………結局、時間になっても来ない私を教官が探しに来るまで、私が自力でそこから脱出することは叶わなかった。
その後の弟達
ルッチ「ジャブラ、お前の悪魔の実はなんの実だったか?」
ジャブラ「………」
ルッチ「どうした? ほら、答えてみろ」
ジャブラ「………イヌイヌだよ」
ルッチ「そうか。ちなみに俺はネコネコだ」ドヤァ
ジャブラ「うっせ! うっせぇんだよこの化けネコ!!」
ブルーノ(………しょうもない)