赤い野良猫は海を行く   作:ペペック

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おいおい待ってくれよ公式さん……。
こちとらもう本編の登場を諦めかけてたのに、扉絵でぶっこんでこないでくれ……;


赤い分岐点

真っ黒な雲が空を覆い、豪雨と暴風に揺られながら、一隻の船は荒れ狂う海を進む。宛がわれた部屋に込もって膝を抱える私は、外から響く雨風の叫びと落雷の轟きに耳を傾けながら外を眺めていた。

 

 

 

もうすぐで私の運命が決まる。

あとは原作と同じになるのか、それとも全く別の流れになるのかはまだわからないけれど、何があろうともインペルダウン行きだけは絶対に回避してやる。

思わず眉間にシワを寄せてしまうのと同時に、コンコンと部屋の扉をノックする音が鳴る。どうぞと入室を許可すれば、今回の班の先輩が顔を覗かせてきた。

 

「おい、そろそろ交代だ」

 

「……はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

「いきなり嵐か」

 

「全くついてないぜ」

 

急な空模様に愚痴る同僚達を横目に、私は一度懐のものを確認しておく。

 

大丈夫、きっと上手くいく。

それでも不安を抑えられなかったのか、いつ来るのだろうかと落ち着きなくその場をうろうろと歩き回ってしまう。

 

「おい、なにソワソワしているんだ」

 

その姿が目立ったのか、先輩に注意されてしまった。

 

「あ……すみません」

 

一旦落ち着こうと椅子に座ろうとするが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゾワリと、背筋を撫でるような悪寒に鳥肌が立った。

 

 

(来る………!)

 

 

同僚達はまだ気づいていないようだったけれど、私の長年に渡って鍛えあげた見聞色は『それ』の接近を知らせる。

 

 

 

 

その予感を裏付けるように、ドーンッと大砲の音が聞こえ、私達が乗る船が大きく揺れた。

 

 

 

突然の衝撃に船内は大騒ぎになりすぐさま甲板に出ると、外に出ていた同僚の一人が双眼鏡で砲丸が飛んできた方角を見ている。

私は視力だけを獣化して、雨と暗闇で視界の悪い遠くの海をジッと目を凝らして探す。

 

 

そして、ついに見つけた。

一隻の海賊船を。

 

「!」

 

みまごうはずもない。

先日暗記しろと手渡されたばかりの最新の海賊旗集にも載っていた、特徴的な傷痕のような模様の髑髏の旗。

 

「あれは……!」

 

「赤髪の船だ!!」

 

同僚達も襲撃者が赤髪と気づき、まさかこんなところで大物海賊に出くわすとは思ってもみず船内に緊張が走る。

 

「撃てー! 赤髪を近づけるなー!!」

 

「クソッ……一体なんだっていうんだ!? この船には財宝はないんだぞ!!」

 

「あるのは精々、悪魔の実一つだっていうのに……!」

 

「なんだっていうんだ! たかがゴムになる実だろう!?」

 

 

 

 

 

(………それが、たかがじゃないんだよね)

 

四方から指示と怒号が飛び交い、船は互いに砲撃の応酬を繰り出す。

そうこうしている間もレッドフォース号は接近してきて、私達が乗る船に船体をぶつけてきた。

 

 

「乗り込めー!!」

 

 

煽動の叫びと共に何人もの男達がターザンのごとくロープにぶら下がり、ズカズカと船に侵入していく。仲間達は赤髪海賊団の船員達を鋭い目で睨むも……

 

「………!」

 

その先頭に立つ一人の男を見て、私の心臓が一際大きくはねる。

夜でも目立つ赤い髪に、使い旧した麦わら帽子。

ああ、間違いない。

 

 

 

 

 

 

 

「赤髪のシャンクス!」

 

 

 

 

 

 

 

 

『フーズ・フー』にとっても、

『ONE PIECE』という物語にとっても、

重要な人物が………生きたままの姿でそこにいた。

 

 

「ほう、女のCP9とは珍しいな」

 

名を呼ばれ、シャンクスは私を見て意外そうに目を見開く。

 

「……先に言うけれど、この船には大した財宝はないわ。物資を無駄に消費したくないなら、帰ってくれないかしら」

 

無意味とはわかっているけれど、私は一応彼と話し合いを試みてみる。

 

「いいや、財宝ならあるさ」

 

しかし彼は剣を構えて不敵に笑うのみで、その反応に私は『でしょうね』と内心でごちて苦笑するしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「かかれー!!」

 

互いに士気を高め、船上は乱戦となる。

 

「嵐脚!」

 

まず私は様子見を兼ねて、遠距離からシャンクスに攻撃してみる。

 

「遅い!」

 

だけどシャンクスは笑みを浮かべて余裕に躱し、愛剣を構えだした。

 

(っ………何か来る!?)

 

その構えと鋭い眼差しに、鍛え上げた見聞色が警鐘を鳴らす。

 

 

 

 

 

「『神避』!」

 

 

 

 

 

技名と思しき単語を叫び剣を振りかぶれば、刃から斬撃が飛ぶ。

 

 

「っ…!? 『剃』!!」

 

 

受けたらまずい。

そう判断した私は寸でのところで回避したものの、巻き込まれた仲間達はマストに叩きつけられてしまった。

 

「………まだまだだな」

 

その際シャンクスが何かボソリと呟いた気がしたけれど、そんなことに気を向けられない。

 

(やっぱり強い…!)

 

さすが後の四皇、この程度では傷一つ受けないか。

まあこっちだって端から勝てるとは思っていないけれど……

 

 

「お頭! 目当てのものを奪いました!」

 

とここで部下の一人が叫び、シャンクスと私がほぼ同時にそちらを振り替えれば、得意げに例の宝箱を高く掲げている。

 

「でかした!」

 

それを見届けたシャンクスは満足そうに笑うと、直前まで戦っていた私達に目もくれず、身を翻して船に戻っていった。

 

「引き上げるぞ!」

 

船長の鶴の一声で船員達も続けてシャンクスの後を追う。

 

「逃がすな! 撃て、撃ちまくれ!!」

 

「クソが! おのれ赤髪いいい!!」

 

逃げていくレッドフォース号に向けて、怒り心頭の仲間達はせめて海の藻屑にしてやろうと次々と大砲を放ち続ける。

 

「………」

 

怒号を上げる仲間達を横目に、私は隙を見てその場から離れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仲間達に見つからないように注意しながら船内を進む。

確かこの辺りに…

 

 

 

(………あった!)

 

 

レッドフォース号から受けた砲撃で、船体に穴が開いてぼろぼろになっている部分がある。

 

これだ、これを私は待っていたんだ。

 

周囲に誰もいないのを確認して、私はまず雨で濡れた上着と白いワイシャツを脱ぎ、割れて鋭利になった木片の中からなるべく雨に濡れにくそうな部分にシャツを引っ掻ける。その際に風で飛ばされないようにしっかり固定するのを忘れない。

次にポケットから小さな瓶を取り出す。中には事前に採取しておいた私の血が入っているのだけれど、瓶の蓋を開けてその血をシャツにかけた。これを見れば、私が海に落ちたと仲間達に思われるはず。

 

これで準備は整った。

大きく深呼吸し、穴からレッドフォース号を見据える。

船はまだ遠くへ行っていない、今から向かえばまだ十分追い付ける距離だ。

 

意識を集中させて獣形態になり、目的地を見据えて構える。

 

 

 

ここから先は境界線だ。

ここを越えれば、もうエニエス・ロビーには戻れない。

 

 

 

ルッチと組手をすることも、

カリファに本を読んであげたりも、

フクロウのお喋りに耳を傾けることも、

カクにお土産のボトルシップをプレゼントすることも、

 

もうない。

 

……ジャブラに謝ることさえ。

 

 

 

 

「『月歩』!」

 

 

唯一の未練を断ち切るように、私は後ろ足に力を込めて

高く跳んだ。

海にだけは絶対落ちるわけにはいかないと、暴風と雷雨が荒れ狂う空を必死に駆け抜けていく。

 

雨のせいで視界がボヤけ、雨粒が頬を濡らす。

そうだ………きっと雨のせいに決まっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さようなら、みんな。

元気でね。

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