某日。
現在私、グラスワンダーはトレーナーさんのお家にお邪魔しています。
なぜかというと、あるG1レースで勝った際に、トレーナーさんから、レースに勝ったご褒美としてお家に招待してもらえました。
私としても、ご褒美の為に走っているわけではありませんが、せっかくの機会ということで、このチャンスを逃すわけにはいきません。
トレーナーさんも最初は渋っていましたが、私が5時間粘ることで快く快諾してくれました。
そんなわけでしばらくの間トレーナーさんと一緒にたわいのない話して楽しんでいると、ふと私の目に気になる物が入ってきました。
「トレーナーさん…そのテレビにつながっている物は…?」
「ん?これ?ゲームだよ、テレビゲーム」
「ゲーム…」
「昔から結構やっててさ、まぁ最近はトレーナー業が忙しくてあんまり触れてないんだけど…」
「ゲームですか……」
「…グラスもやってみる?」
「はい!」
「じゃぁ最初はどのゲームにしようか?」
「どんなゲームがあるんですか?」
「レースにシューティングに、後はアクションかな」
「アクション…!」
「じゃぁこれにしよっか?初心者にも優しいゲームはっと、この対戦格闘アクションゲームでいい?」
「お願いします!」
そうして私は人生初のテレビゲームに挑戦するのでした。
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グラスが対戦格闘アクションゲームを始めて数時間。
最初のうちはコマンドを覚える為に、CPU相手に頑張っていたグラスであったが、難易度Normalの相手を倒せるようになってからは、俺に対戦相手を求めるようになってきた。
それはいいのだがこのゲーム、なかなかのシリーズ作品で俺は昔からこのシリーズで遊んでおり、それなりにやりこんでもいる。
そうなるとどうなるか?
『You win‼』
熟練者の俺と初心者のグラス。
どちらが勝つのかはわかるだろう。
何度目かわからない俺を称える『You win‼』の文字。
最初のうちはグラスも「負けちゃいました~」「強いですね~」と言っていたが、今は無言。
自分が負けても一切顔を、画面から動かさず、『次だ、早くキャラを選べ』と無言の圧力を放っている。
さらに接待プレイとしてわざと負けようものなら、抑揚のまったくない声で、
「今、手を抜いていましたね?果し合いにて情けは無用、真剣勝負でお願いします」
と、男顔負けの男らしさを発揮するため、わざと負けることもできない。
そんなこんなでグラスをひたすらにゲームでボコボコにしていると寮の門限の時間が近づいてきた。
「…グラス、そろそろ門限じゃないか?」
「そのようですね」
「帰らなくてもいいのか?」
「トレーナーさん、1つお願いしてもいいですか?」
「…なに?」
「こちらのゲームお借りしてもよろしいですか?」
「いいけど…」
「ありがとうございます。…では今日はこれで失礼いたします」
こうして嵐の前の静けさのようなグラスは俺から、ゲーム機本体とアクションゲームのソフトを借りて寮に帰っていった。
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「エル、付き合いなさい」
「ケ?ゲームデスか?珍しいデスね?グラスがゲームなんて。でもいいでしょう!エルがケチョンケチョンにしてやるデース!」
「ではゲームを繋ぎましょうか」
「ハイ!あ、でもこの部屋にテレビがないデスね…」
「それは心配ないですよエル。ほらこれ」
「おお!デッカイテレビ!これで大画面でゲームできますね!でもこんなデッカイテレビ、よく用意できましたね?」
「…ほら繋がったわ。早速ゲームを始めましょうか」
「ハイ!早速勝負デース!(ピロン)あ、スぺちゃんからメッセージが…」
『ニュース!ニュース!食堂のおっきいテレビが急になくなっちゃったんだって!今ちょっと寮の中で事件になってるの!エルちゃんなにか知らない?』
「……グラス、そのテレビどこから持ってきたんデスか?」
「始まりましたよエル。キャラを選びなさい」
「食堂のテレビじゃありませんよね!?」
「私はもう決めましたよ。あとは貴方のキャラだけです」
「と、とりあえず寮長に…」
「日本の江戸時代後期には新撰組という組織がいたそうです」
「ケ?急になんデスか?」
「そんな新撰組鉄の掟、局中法度には『敵前逃亡は士道不覚悟で切腹』と、決められていたそうです」
「あ…、あ…」
「さぁエル、キャラを選びなさい」
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「トレーナーさんリベンジです」
「今日スタミナトレーニングの日なんだけど…」
グラスを家に招待した次の日、学園での授業も終わり、さぁトレーニングの時間だということで、トレーナー室で準備をしていると、勝負服を着たグラスが大きなテレビを抱え、トレーナー室にやってきた。
「トレーナーさんに昨日のリベンジを申し込みます」
「リベンジはいいけどまずはトレーニングからね」
「ではゲーム繋ぎますね」
「話を聞きやしねぇ!」
「わかりました。私がゲームで負けたらトレーニングをしましょう」
「いやトレーニングは勝ってもしてくれよ」
「嫌です!トレーナーさんに負けて悔しかったんです!トレーナーさんに勝つまでトレーニングしません!」
「どっち!?勝ったらするの!?負けたらするの!?」
「私が勝ったら今日はトレーニングお休みで、トレーナーさんの家に泊まります。私が負けたら、そうですねぇ、このテレビをあげます」
「なんて図々しいおんなだ…。つーかそのテレビどこから持ってきたの?」
「寮のテレビです」
「あぁ寮の…寮のテレビ!?寮のテレビ持ってきちゃったの!?」
「トレーナーさんにリベンジするための必要な犠牲です」
「自分の犠牲を他人に強いるなよ…」
「ほらキャラを決めてください」
「もう繋いで自分のキャラを決めてやがる…。わかったよ!やればいいんだろやれば!」
「はい、ではゲームスタートです!」
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「………………!!」
(確かにグラス上手くなってる…でもまだまだ…甘い!)
「………………!?」
『You win‼』
「ふぅ勝った」
「………」
「とりあえず俺が勝ったから、トレーニングしてくれ」
「………」
「グラ…泣いてる!?」
「泣いてません」
「そんな眼に涙貯めて言われても…」
「泣いてません!!」
「でも……」
「だってバ鹿みたいじゃないですか…。トレーナーさんと遊んでただけなのに勝手に負けず嫌いで意地になってしまって…、しかもあんなに我儘言ってリベンジしたのに勝てませんでしたし…、しかも絶対にトレーナーさんにも嫌われてしまいました……」
「グラス…」
俺は静かに涙を浮かべるグラスを抱きしめる。
「トレーナーさん……!?」
「俺がグラスを嫌うことはないよ。グラスがとっても負けず嫌いだろうと絶対に嫌いにならないよ。だから安心して我儘を言っていいよ」
「そんなこと言ったら私たくさん我儘言ってしまいますよ?」
「構わないよ」
「トレーナーさん…ごめんなさい。…そしてありがとうございます」
「うん」
「あと一つだけ我儘いいですか…?」
「なに?」
「実は昨日寝てなくて、今日のトレーニング、お休みでもいいですか?」
「……まぁそうだろうと思ってたよ。本当寝不足気味だと性格変わるよね」
「ではおやすみなさいトレーナーさん…」
「え?グラス?このまま寝るの?抱きついたまま寝るの?マジで?グラスさん?もしもーし!?」
この後ぐっすりと寝て体調が回復したグラスに謝られたり、テレビを一緒に返しに行き、二人仲良く怒られたりした。
大変な日々であったが、たまにはこんな日もいいなと思った。
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後日グラスに別のゲームをやらせてみたが、
「なっ!?こんな遠距離からこそこそと!?小賢しい…正々堂々と一対一で闘いなさい!」
「グラス…それシューティングゲームだから」
アクション以外はまだまだ練習が必要なようだ。
ウマ単6作目
一応5話の続きとなってますが今作から読んでも問題ないです
拙き作品ですが宜しくお願いいたします