ブルアカF   作:あまいろ+

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狐と祈願

夏の暑さも終わり、街中の木々も色づき始めたこの頃。

 

「やっとあっつい夏も過ぎ去ったねぇ」

 

「はぁ…ホント牢屋内の暑さで死にそうになったわ…」

 

「SRTで、寒暖での訓練はしてたけど、それでも大変だったね」

 

「………」

 

ここはキヴォトスの矯正局。様々な罪を犯しながらも、後輩や大人のおかげで取り返しがつかなくなる直前で救ってもらったFOX小隊は、自分たちの罪を認め、その罪と向き合う毎日を過ごしている。

 

そんなFOX小隊の面々は朝食を食べ終わった後の余暇時間で、冷暖房の設備などが最低限しかない矯正局の牢屋にて過ぎ去った夏に対して思い思い話していた。

 

「今年は海見てないなぁ」

 

「矯正局にいる私たちが見れるわけないだろう?」

 

「そうよオトギ、何当たり前のこと言ってんの!?」

 

「でもあると思ったんだけどなぁ」

 

「何があると思ったの?オトギちゃん」

 

「FOX小隊実装夏イベント」

 

「それは…あはは…」

 

「なに馬鹿な事言ってんのよ!」

 

「馬鹿ってなにさ!」

 

次第にオトギとクルミの言い合いが激しくなり、そのいつものような光景をニコが苦笑いで見ている。

 

ユキノも慣れたようで部屋の隅で目を閉じながら彼女らの言い合いを聞き流している様子だ。

 

その時に矯正局全体にキーンコーンカーンコーンと、チャイムが鳴り響く。

 

「あ、このチャイムは…。そろそろ刑務作業の時間ね?」

 

「そうだな準備に取り掛かるか」

 

「今日の作業は何だろうねー?」

 

ガチャッ

 

始業のチャイムが鳴ると牢屋の通路と看守室に繋がる扉が開き、ヴァルキューレの生徒が入ってきた。

 

が、どうやら刑務作業への案内ではなく、どうやら急いでいる様子だ。

 

小走りで彼女らの前につくと、

 

「お前ら。今日は新しい囚人が入ってくるから刑務作業はなしだ。その代わり今日1日牢屋で過ごしておいてくれ」

 

「新しい囚人?」

 

「こんな朝早くから何なのよ…」

 

「にしても囚人が来るというのはよくあるが…、刑務作業を潰してまでの受け入れなんて初めて見るな」

 

「お偉いさんとか?はたまた七囚人だったりして?」

 

「ええい!静かにしろ!」

 

オトギの言う通り、VIPな者か、それともヤバい奴なのかと、牢屋内でザワザワしていると、ヴァルキューレの生徒に一喝される。

 

「これから来る者は新入りだということでお前ら、よくこの場所を教えておくように!……いやどうしてこうなったのか」

 

「?」

 

後半の小声を聞き逃さなかったFOX小隊は、どうやらヴァルキューレの方でも予想外の事が起こったのだと理解する。

 

「はぁ…よしこっちに新入りを連れてこい!」

 

ヴァルキューレの生徒はため息を付くと、扉の向こう側にいたのであろう別のヴァルキューレの生徒に命令を出す。

 

別のヴァルキューレの生徒ははい!っと返事をすると、だんだんと足音が聞こえ始め、こちらに使づいてくるのがわかる。

 

「誰かな!?」

 

「オトギ、何でちょっと楽しみにしてんのよ!?」

 

「だって大物って事でしょ?ちょっと楽しみじゃん!」

 

「たしかに気になるかも…」

 

「ニコまで…」

 

「まあ、すぐにわかるだろう」

 

そしてついに、足音も大きくなり、話題の人物がヴァルキューレの生徒に連れられ、姿を現わした。

 

そんな、大物であり、ヤバくもあり、VIPな人物は、

 

「あ、皆久しぶりぃ…元気にしてた…?」

 

私たちに半泣きで挨拶してきたのだ。

 

ヴァルキューレの生徒が言っていた、新入りはシャーレの先生であった。

 

FOX小隊は予期せぬ、新入りに困惑していると、先生は私たちの隣の牢屋に入れられた。

 

「えっと…先生…だよね?」

 

「オトギぃ……」

 

「先生無事なんですか…?」

 

「ニコぉ……」

 

「こんなところでどうしたんですか?」

 

「ユキノぉ……」

 

「いったい何があったのよ!?」

 

「クルミ」

 

「なんで私だけ真顔なのよ!?」

 

「いやそっちからこっち見れないでしょ…」

 

「雰囲気でわかんのよ!雰囲気で!!」

 

「うへぇ…」

 

「そ…それでどうして矯正局に?」

 

「なんか…ヴァルキューレにタレコミがあったみたいで…シャーレで仕事してたら捕まっちゃった…」

 

「心当たりとかない「まったくない」の…って食い気味で否定されると凄く怪しいわね」

 

「先生の周り女の子いっぱいいるし、セクハラとかしちゃったんじゃないの~?」

 

「セクハラナンテシテナイヨ」

 

「怪し!?」

 

「本当にセクハラなんてしてないさ。もし疑うならトリニティに聞いてもらっても構わないよ」

 

「あのお嬢様学校ですか?そんな大きい学校に聞いてもいいっていうぐらいなら、してないのかな…」

 

「だとしたら冤罪なのかもな。何かと矢面に立って行動するシャーレの先生だから、狙われることもあるだろう」

 

「うん冤罪だよ!」

 

「じゃあ疑いが晴れるまでは私たちと一緒ってことね」

 

「そうだね。でもすぐに晴れると思うよ。…冤罪だからね!」

 

「先生大変だったね~」

 

「ははは、そうでもないよ。…ちょうど君たちと話たいこともあったしね」

 

先生の問いかけによって、FOX小隊の牢屋内に緊張が走る。

 

たとえ捕まっていようが、あのシャーレの先生。

 

そのシャーレの先生がわざわざ話したい事があるという前置きをつけたからだ。

 

今のFOX小隊と違い、シャーレの先生は権力も周りへの影響力も大きくある。

 

そんな権力や影響力に振り回されてきた彼女たちだからこその警戒心でもある。

 

さらに以前に話したニコ、オトギ、クルミたちから先生の事を聞いていたユキノは、他の隊員よりも、警戒心をあらわにしていた。

 

「先生が私たちに話たいこと…ですか?」

 

「ユキノちゃん……」

 

罪を犯し、捕まって後でさえ、FOX小隊のリーダーであろうとし、他の隊員を守ろうとするユキノに、ニコがそっと手を繋ぐ。

 

「ニコ…」

 

以前はFOX小隊として武器として、任務を忠実にこなしてきた。責任や覚悟を人任せにして。

 

しかし、今は彼女と共に明日を見たいと思っている。FOX小隊として、そして大切な友達として。

 

「大丈夫。1人で何でもしようとしないで」

 

「ユキノ…あんた1人で思いつめすぎよ!」

 

「私たちもいるからさ」

 

長い付き合いであるため、短い言葉だが言いたいことはわかる。

 

どうやらオトギとクルミも同じ気持ちのようだ。

 

「……そうだな、また、私1人で突っ走ってしまったようだ」

 

ユキノの頭には、あの日の作戦が思い出される。

 

地下に爆弾を設置し、Rabbit小隊に侵入されFOX小隊が下された後に、1人で何とかしようとしたことを。

 

あの時に人生最後になると感じていたが、FOX小隊の面々が再度集まってきてくれた時を思い出すと、思わず笑みがこぼれてしまう。

 

「すまない先生待たせてしまいました。ではお話を伺います。FOX小隊として」

 

「あの時の事件から色々と学んだようだね」

 

「そうですね…、我々の後輩たちと先生のおかげです」

 

「まぁそんなかしこまるような話じゃないんだけど」

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

「それで、どんな話なの?」

 

「君たち、シャーレに来ない?」

 

『!?』

 

「実は、信用できる情報筋から聞いたんだけどね。近々シャーレが爆発されるみたいで…」

 

「え!?爆発ですか!?」

 

「私たちが爆発させたシャーレの扉じゃなくて!?」

 

「お前ら…扉爆発させてたのか?」

 

「い、今はそんなこといいでしょ!?」

 

「後で詳しく聞かせてもらうぞ」

 

「爆発の原因はわかってるんですか!?」

 

「わかんない…」

 

「わかんないって…それって大丈夫なの!?」

 

「いつ爆発するのかも、なにが爆発するのかも、誰がどうゆう理由で爆発させるのかもなにもわかんない。けど絶対に爆発する」

 

「なにそれ…コワァ…」

 

「そのことを連邦生徒会と話し合ったら、常駐できる戦力があった方がいいんじゃないかって話になってね」

 

「それで私たちってことなの?」

 

「先生なら他の生徒に声をかければ助けが貰えるのではないでしょうか?」

 

「いや、流石に学校に通ってる学生を常駐させたらダメだからね。それに激しい戦いになるかも知れないから、戦闘のプロに頼みたいんだ」

 

「私たちに頼みたいことはわかりましたが、でも私たちはテロリストに加担したんですよ?そんな簡単に釈放するわけにはいかないんじゃないですか?」

 

「その点は、矯正局の監視下からシャーレの監視下に変更になるって感じかな。何から何まで自由ってわけにはいかないけどね」

 

「そんなこと可能なの?」

 

「それは君たちの力だよ」

 

「私たちの…ですか?」

 

「ここに運ばれる時にね、君たちの様子を聞かせてもらったんだ。そしたらヴァルキューレの生徒が驚いていたよ。あんな模範囚は初めてだって。」

 

「模範囚…ですか…」

 

「確かにいくらシャーレや連邦生徒会の力を持ったとしても、難しかったかもしれない。でも最後の決め手は君たちの行動だったよ。ちゃんと自分の罪と向き合ってたんだね」

 

「……っ!?そうですね、また皆と外で明日を見たかったから…」

 

「……先生の話したい事はよくわかりました。ではこの件は小隊で話し合ってから…」

 

「あら?私は賛成よ?せっかく外に出れるんだもの。ずっとここにいたんじゃ身体がなまっちゃってしょうがないもの」

 

「私も賛成~。久しぶりに日向ぼっこしながらお昼寝したいな~」

 

「私も賛成だよ、ユキノちゃん。それに後輩たちや先生に恩返しもしないとね」

 

「そうか…では先生。FOX小隊その任務お受けします!」

 

「みんな、ありがとう!じゃぁ早速……」

 

「あ…あの…」

 

牢屋の外から声がかけられ、全員そちらを向く。どうやらいつの間にヴァルキューレの生徒がきていたようだ。

 

「あの…盛り上がっているところ悪いのですが…先生、取り調べのお時間です」

 

「じゃぁ早速……取り調べを受けてくるよ」

 

「「「あ…はい」」」

 

「しまらないねぇ~」

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

「つまり…合意の上であったと?」

 

「…はい」

 

「生徒の頭の匂いを直接嗅いでいたことも、生徒の足を舐めた事も、生徒に首輪をつけていたことも?」

 

「………はい」

 

「………」

 

「………」

 

沈黙が辛い。

 

あの後、取調室に連れていかれた先生は、狂犬の通称で知られている尾刃カンナに取り調べを受けていた。

 

「先生…何やってるんですか…」

 

「生徒のメンタルケアだったんだよ…」

 

「にしても、やり方ってものがですね…」

 

「生徒のためだったから…」

 

「はぁ…とりあえずはわかりました。先生が先ほど言っていた事の裏付けがきちんととれたら釈放になります。一応情報の提供元も調べておきます」

 

「ありがとうカンナ…」

 

「かまいません。それよりもご自分の行動を顧みてください」

 

「はい…」

 

「……それより、聞きましたよ。FOX小隊の面々を引き取るようですね」

 

「あぁもう聞いてる感じ?」

 

「その時いたうちの生徒が話してくれました」

 

「呼びに来てくれた子か」

 

「ええ、FOX小隊をシャーレで引き取ることは大変だと思いますが、彼女たちをよろしくお願いします」

 

「わかったよ。…でも随分FOX小隊の事を気にしているんだね」

 

「そうですね……彼女たちも苦労したでしょうから」

 

「そっか」

 

ピリリリリ

 

「…先生、すみません。少々電話が」

 

「どうぞどうぞ」

 

「失礼します。あぁ私だ……ん、そうか……わかった……」

 

ピッ

 

「先生、今裏付けがすみました。これでもうしばらくしたら釈放となります。今回は同意とはいえ申し訳ありませんでした」

 

「気にしないで。元々私の行動のせいだし」

 

「ありがとうございます。ですが先生も今後の行動は気を付けてください」

 

「はい、申し訳ありませんでした」

 

「では一回牢屋に戻りましょう。FOX小隊に伝える事もあるでしょうし」

 

「そうだね。あ、そういえば」

 

「何でしょう?」

 

「カヤってFOX小隊の牢屋の方にいなかったけどどこにいるの?」

 

「ああ、彼女は主謀犯として少々警戒の厳重な所にいます。FOX小隊はこの矯正局きっての模範囚ですが、彼女は違いますから」

 

「カヤに面会とかできる?」

 

「可能…ですが、彼女にいったい何か?」

 

「めっちゃ煽りに行こうかなって」

 

「そんなことしているから、こうなるんですよ」




ブルアカF 1作目!
今年の2月後半からブルーアーカイブを始めて、今回ついにブルアカ小説を書いてみました
1発目から未実装キャラですが、FOX小隊の実装祈願として書き上げます。ちなみに今82Level先生です
ユキノとニコのセリフが先生には敬語、仲間には自然と、難しいので、これどっちが喋ってんだ?と思いましたら雰囲気で察してください
拙き作品ですが宜しくお願いいたします
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