ブルアカF   作:あまいろ+

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狐と捜し物

私たち、FOX小隊が矯正局からシャーレに移った当日。

 

長期任務になる可能性が高い今回の任務での初日は、シャーレの中を先生が自ら案内してくれた。

 

私たちは任務で事前に、ある程度シャーレの内部を知っていたが、菜園やゲームセンターなどがあると知った時は驚いた。

 

シャーレの設備の充実さには驚いたが、それよりも驚いたのは先生が案内の途中でたびたび、

 

「あ、そこ盗聴器あるから注意してね」「そこのロッカーから、たまに生徒が無断侵入してくるけど閉じないであげてね」

 

と言って、生徒の犯罪行為を容認している事だった。

 

1回目の説明ではFOX小隊の隊員もあれ、聞き間違いかな?と思って生返事をしていたが、何度もヤバい説明を聞く度に、この先生の警護という任務の難しさに気づいていった。

 

そんな案内も終わりが近づき、最後に私たちの部屋に案内してくれた。

 

どうやら1人1部屋という破格の対応であったが、部屋もたくさん余ってるから使ってと言われ、ありがたく使わせてもらうことにした。

 

私たちの部屋も含め、全ての部屋の案内が終わると、先生はゆっくりしてねと言って去っていった。

 

先生が去り、残されたFOX小隊はしばらくお互いの顔を見つめあった後、隊長の私が頷くと同時に、シャーレ内のマップを出し、危険予測マップの作成や不審者の侵入対策案などの話し合いを行った。

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

十分な話し合いを終え、オフィスに向かうと先生は、デスクに向かい仕事をしており私たちに気づくと笑顔で迎えてくれた。

 

「あ、みんな。ゆっくりできた?」

 

「はい先生。それではFOX小隊、本日より任務を開始します」

 

私の敬礼に続き、他の隊員も敬礼を行う。

 

「こちらこそよろしくね。設備とか冷蔵庫の中とかは自由に使っていいから」

 

「了解しました」

 

「じゃあ早速私は外の警備に行ってくるね~」

 

「オトギ、あんた寝に行くわけじゃないでしょうね?」

 

「しないよ~でも、天気が良かったらその限りではないけど…」

 

「一応任務なのよ!?」

 

「一応ではなくれっきとした任務なんだが?」

 

FOX小隊の通例となっているオトギのクルミを言い合いを眺めながら、先生は安心したように息をつく。

 

「いやいやみんな元気そうで良かった良かった。さて、私も仕事を再開するかな」

 

「あら?だったら手伝いますよ?」

 

「いいの?ニコ?」

 

「はい!任せてください!こっちの書類の山は終わったやつですよね?」

 

ニコは連なったデスクの上にある大量の書類の山に目をやり確認する。

 

50㎝くらいの書類の束が6つ。山とも塔とも形容できそうな大量の書類であったが、終わった物ならば、後は仕分けやファイリングするだけで事足りる。

 

終わった書類をこんなに溜めちゃって…とニコが思っていると、

 

「え?それ今日の仕事だけど?」

 

「え?」

 

先生の言葉を聞いてニコが唖然として、先生の方を振り返る。

 

ニコの後ろで喧嘩していたオトギやクルミもこちらの会話が聞こえていたようで、ニコと同じくえ?という疑問の視線をこちらに向けていた。

 

「あー多いよね。ほら昨日、矯正局だったでしょ私?その分が溜まってるんだよね」

 

「あ!そうですよね!びっくりした…」

 

「うんいつもはこの2/3ぐらいだから」

 

先生の返答にニコは呆然として固まってしまう。

 

後ろからわずかにクルミの「シャーレヤバ……」という言葉がボソっと聞こえた。

 

「…先生こちら我々で手伝える物は?」

 

「ユキノ?」

 

「私も手伝うわ…」

 

「クルミも?」

 

「私も手伝います…」

 

「オトギまで?」

 

そう言ってFOX小隊はユキノの指揮で書類を手伝うのであったが、先ほどのようなにぎやかな雰囲気はなく、各々が黙々と書類に取り組むのであった。

 

始めは同情心から始まった先生の手伝いであったが、3日もたつと自然とFOX小隊の任務の一つとなっていった。

 

しかしクーデターを起こしても、私たちはSRT。文武両道の私たちにとって、先生の手伝いは重荷にはならず、むしろ世話になった先生へのせめてものお返しとして、今後も続けていくことにした。

 

このことを先生に伝えると、

 

「君たちが来てくれて良かった…」

 

と大変感謝されてしまった。

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

シャーレに移ってから1週間がたった。

 

流石に1週間も経つとシャーレでの生活も慣れて各々が自分らしく生活することができている。

 

ニコは台所を預かり、私たちや先生への食事支援をしてくれる。

 

オトギも任務外はのんびりと過ごし、矯正局で言っていたように日向ぼっこや昼寝を楽しんでいる。

 

クルミは足しげくRabbit小隊のもとへ赴き、後輩たちのサキを中心に戦術指南を行っているらしい。

 

私はというと……。

 

「○七:○○、FOX1。朝の見回りから帰投した」

 

「FOX1お疲れ様。ご飯もうそろそろできるから、座って待っててね」

 

「ん、了解した」

 

「小隊長おかえり~」

 

「ああ今戻った」

 

「あ、オトギちゃん。先生起こしてきてくれる?」

 

「まだ起きてきてないの?」

 

「先生昨日はゲーム開発部に行っていたでしょ?それで夜遅くまでゲームやってたから…」

 

「大人が徹夜でゲームって…何やってんのよ…」

 

「もーしょうがないなぁ」

 

「お願いね?」

 

「はーい」

 

オトギが椅子から離れたのと入れ替わりに、私が座る。

 

「そういえば今日ユキノオフよね?」

 

「そうだな。比較的今日は書類も少ないし、先生も今のところ外出の予定もないしな。ニコとクルミはシャーレの警護だが、私とオトギは今日非番だ」

 

「いいわねぇオフ…」

 

「クルミは昨日非番だっただろう?」

 

「そうなんだけどさ。で、あんたは今日何するの?」

 

「私…か…」

 

「……まさか、なんにも予定ないの?」

 

「…あぁ」

 

「はぁ~~花の10代が何しけた言ってんのよ」

 

「うっ!?」

 

「もっと10代なら色々あるでしょ?オシャレしたりスポーツしたりとか。やりたい事とかないの?」

 

「やりたい事……、オシャレ…はよくわからないが、スポーツはいつもしているぞ?」

 

「…FOX小隊での訓練はスポーツとは言わないのよ?」

 

「そうなのか!?」

 

「身体を動かすといえばあってるけど、スポーツじゃないんじゃない?」

 

「そうなのか…」

 

「でもどっちも大切なことよ?クルミちゃん」

 

「ニコ…」

 

「もちろん小隊での訓練も大切よ?でもなんていうのかしら…、そう!きらめき!きらめきが足りないのよ!」

 

「きらめき……」

 

「きらめき……」

 

「なに二人とも引いてんのよ!?」

 

「戻ったよー」

 

突然のきらめき宣言にユキノとニコの両名が困惑していると、先生を呼びに行ったオトギが帰って来た。

 

「あ、おかえりオトギちゃん。先生は?」

 

「顔洗ってから来るって」

 

「そう?じゃあもうテーブルにご飯並べちゃお」

 

「私も座って待ってよ。あ、そうだクルミ」

 

「なによ」

 

「きらめき(笑)」

 

「ふん!」

 

オトギの発言にクルミが強烈なボディーブローで返す。

 

「これが、きらめきの力よ」

 

不意のボディーブローで何も言えずに、床に沈むオトギを見下ろし、クルミはそう冷たく言うのだった。

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

朝食も食べ終わり、その後ユキノはいつものようにSRT式の訓練に取り組んだ。

 

あらゆる自治区への介入を可能とし、普通では対応できない困難な任務をこなすためのエリートを養成する、SRT特殊学校。

 

なので身体作りのための訓練。射撃のための訓練。それ以外にも多岐にわたる訓練がある。

 

さらにシャーレにはトレーニングジムや射撃場など、設備もしっかり整っているので、訓練でいつも利用させてもらっている。

 

そんな激しい訓練をこなしながらも、朝からずっとクルミに言われた言葉が頭の中に残っていた。

 

『きらめき』…違うそれじゃない、『もっと10代なら色々あるでしょ?オシャレしたりスポーツしたりとか。やりたい事とかないの?』だ。

 

訓練が一通り終わり、ふと時計を見てみると時計はまだ午前の11時を示していた。

 

シャワーも浴びた私は1人、自分の部屋でぼーっと過ごす。

 

「やりたい事か…」

 

誰もいない部屋では当然自分の独り言も返ってくるわけがないが、それでも一人呟く。

 

部屋を見渡すとSRTの教範や火器の取り扱いが記されたマニュアルなど、任務のためのものが目につく。

 

そこにはFOX小隊の小隊長の姿はあるが、七度ユキノの痕跡はなかった。

 

今までSRTの復興をしなくてはと感じ、追い込まれるように様々なスキルを身に着けてきたが、そんな気持ちが今でも何かをしなくてはいけないという、焦燥感として私を襲っている

 

自分をおろそかにしていたつけが、返ってきたような気分になり不安になる。

 

ありがたいことにシャーレでの任務に伴い、比較的落ち着いた環境で過ごすことができるようになったが、それと同時にこんなにも不安になるとは思いもしなかった。

 

しばらくは考え込んでいたユキノだったが、このまま部屋に籠るのは、悪循環と判断し部屋を出て、非番だがシャーレ内部の点検もかねてシャーレの中の散策を行う。

 

しばらく散策していると、歩いている先生の姿が見えた。

 

今日は仕事も少ないためもう終わったのだろうか?と思い声をかけた。

 

「先生、お仕事は終わりましたか?」

 

「あれユキノ?仕事は終わったよ。ユキノは何してるの?今日非番じゃなかったっけ?」

 

「えぇ…まぁ…」

 

「言いずらい感じ?」

 

「言いずらいことではありませんが…」

 

先生にそう言われ、少し悩む。

 

こんないち子供の、やりたい事について悩んでいるなんてことを、先生に聞いてもいいものか?

 

先生に迷惑をかけず、1人で解決した方がいいのではないだろうか?

 

「いえ、大丈夫です…」

 

「そっか、なにか困ったことがあったら言ってね」

 

「………困ったこと」

 

何気ない返答に、あの時先生に言われた言葉がよみがえる。

 

¨分からないことがあれば、学べばいい…¨

 

¨困ったことがあったら、手を伸ばして…¨

 

¨辛いと時は支えあって…¨

 

思い出した。また私は自分の力だけで解決しようとしていたのか

 

そうだな、私はまだ成長できていなかったのだ。

 

「先生…実は、相談したいことが…」

 

私は改めて自分の愚かさを実感し、心の内を先生に話すのだった。

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

「やりたいことかぁ」

 

「はい…自分でもわからなくってしまって」

 

「やりたいこと、趣味みたいなことだよね」

 

「そのような解釈でも構わないかと」

 

「そうだね…まずは自分を知ることからかな」

 

「自分を知ることですか?」

 

「そう。ユキノは今、自分が何を好きかもわからないでしょう?」

 

「恥ずかしながらその通りです…」

 

「だからまずは自己分析をして、自分が何に興味があるのか知るんだ」

 

「なるほど…ですが、それだとあまり今の私の状況と変わらないのでは?」

 

「確かにやりたいことがわからないっていう人に、なにやってみたい?って聞くのは違うよね。だからこれからは気になる物があったら、とりあえずやってみるんだ。誰かがやっていること、お店に並んである商品を見てみて、自分で少しでも興味が出てきたらやってみる」

 

「そんな単純なことでいいんですか?」

 

「単純簡単でいいんだよ!よく色んなものを観察して、気になったらやってみる。やってみて自分にあわなかったら別のやりたいことをやってみる。大事なことは経験だからね。」

 

「経験…ですか…」

 

「あと最後に大切なこと。…もっと自分の気持ちに正直になって、好きなようにしよう!ゆっくりでいいんだから」

 

先生に相談して得られたのは簡単であり、なおかつ明快な答えだった。

 

そんな単純明快な答えを聞き、私は自分が難しく考えていたことを知る。

 

「まぁ誰でもこたえられるこたえだけどね」

 

「いえ、そんなことはありません。…先生に相談してよかったです」

 

「力になれたようでよかったよ」

 

こちらの素直な感想を聞くと先生は嬉しそうに微笑んでくれた。

 

心のつかえがとれたような思いを得ながらも私は一つの疑問が頭をよぎる。

 

「先生はどのような趣味を持っているのですか?」

 

「私の趣味?」

 

「はい…少し、気になったもので」

 

「おぉ。早速実践できてるね、偉い偉い」

 

先生の職務を手伝うことも増え、よくプラモデルなどの領収証なども整理することがあったため、先生の好きなものを少しは把握しているが、直接先生に聞いたことはなかった。

 

「趣味ねぇ…結構色々とやってるけど、………そうだ」

 

「どうしました?」

 

「そういえばFOX小隊の歓迎会、してないよね」

 

「?そうですね、私たちがここに来てから何かと忙しかったですから」

 

「そっか。…じゃぁ出かけようかユキノ」

 

「え?どこへですか?」

 

「私の趣味を見せてあげる」

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

そのまま先生に連れ出され、向かった先は、近くのスーパーだった。

 

様々な店が併設されている大型のところだ。

 

「シナモンとコリアンダーと、あ八角みっけ」

 

「先生?何をするつもりですか?」

 

「料理だよ」

 

「先生は料理ができないのでは?」

 

「全然できるよ?」

 

私が見ている中では先生が料理を作っているところなんて見たことがなかった。

 

それどころか毎食カップ麺の先生を見かねてニコが、料理を作っているぐらいだ。

 

「忙しくて料理をする時間がなかったからね」

 

シャーレの先生は忙しい。それは私たちが手伝っている仕事量や普段の先生の生活を見ていればわかる。

 

「前はしてたんだ。これでも結構上手なんだよ?歓迎会で作ってあげるね」

 

「楽しみにしています」

 

そんな私と会話しながらも先生は、子供のような目でスパイスを漁り続ける。

 

「レモン果汁はあるかな…あとはグラニュー糖と…」

 

「先生…かごが、かごがもう3つ目なのですが…」

 

スーパー内を闊歩しながら次々と商品をかごに投げ入れていく。

 

先生のいきいきしている姿を見て、私もこうなれるのだろうか?と少し未来の自分が楽しみに思えた。

 

 

その後、私たちは精肉店で豚肉のブロックを買ったり、物産展で乾物を買ったりした。

 

それこそ凄い量の荷物にはなったが、流石に大体は宅配にし、後日シャーレに届くことになった。

 

現在私たちは、先生が家電を見に行きたいと言った為、家電量販店にいる。

 

店に着くなり先生は「圧力鍋が私を呼んでいるから」と言って、店の奥に消えた。

 

手持無沙汰になった私は、ぶらぶらと店内を歩き回る。

 

テレビ、エアコン、コード類。色んな家電の前を通り過ぎたが、あまり興味を持てそうにない。

 

だが私は、あるコーナーの前を通り過ぎる際に自然と足が止まった。

 

「写真か…」

 

私が足を止めたのは、カメラコーナー。

 

「そういえばこれがあったな」

 

そう呟き、懐からあの時、『小隊合同遊撃訓練記念』の時の写真を取り出す。

 

これはまだFOX小隊を結成し、そこまで月日がたっていない頃。

 

まだ各々がこなすべき役割がわかっておらず、訓練で先輩たちにもまれていた頃の写真だ。

 

先輩たちに負けたことが悔しくて、翌日からは死に物狂いで訓練したものだ。

 

そのおかげか、訓練の最終日には先輩たちに打ち勝つことができ、その記念に写真を取ったのだ。

 

「みんないい笑顔だ」

 

写真に映っているFOX小隊は、皆笑顔でこちらを見ている。

 

「あの頃はまだ私だったのかな」

 

その後FOX小隊として様々な任務をしてきたが、どうにもこの写真は捨てれなかった。

 

そんな感傷に浸っていると、

 

「あ、見つけた」

 

買い物帰りの先生が圧力鍋を片手に声をかけてきた。

 

「先生…」

 

「カメラ、興味あるの?」

 

「いえ、そんなわけでは………そうですね、興味あります」

 

「そっか。どうする?買ってく?」

 

少し悩んだが、私の答えは決まっていた。

 

「はい。とりあえずやってみる、ですもんね」

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

「それでカメラを買ったんですねユキノ先輩」

 

「ですけど、これ少し型が古いタイプですよね?よかったんですか?」

 

「ああ、これで問題ない。最初のうちだからな。慣れたら新しく買うなり改良するなりするさ」

 

私たちは買い物後、子ウサギ公園により、後輩であるRabbit小隊に差し入れを行っていた。

 

どうやら大量に買った食料品は彼女らの差し入れの分もあったのだ。

 

Rabbit小隊は食料品を貰うと、大はしゃぎで受け取っていた。

 

モエは日持ちのする食料をテント内に運び、仕分け。

 

ミユは先生を連れだって、公園内を散策。

 

残ったミヤコとサキ、ユキノの三人は焚火を囲いながら、話していた。

 

「でも驚きました。いきなり先生とユキノ先輩が両手に袋を持って現れたので」

 

「しかもなぜか先生は圧力鍋を持ってたしな」

 

「あぁ今度先生がFOX小隊の歓迎会で料理をふるまってくれるらしい」

 

「「先生の料理ですか!?」」

 

「あ…あぁ」

 

「先生の料理美味しいんだよな…」

 

「はい、前にRabbit小隊全員でお呼ばれされた時もふるまってくれました」

 

「Rabbit小隊は食べたことがあったんだな。…しかし、先生は料理をするんだな。シャーレに来てもう1週間はたつが、まったくわからなかった」

 

「先生の料理はとても本格派なんですよ」

 

「でもこれから先輩方は大変になるなぁ」

 

「どうゆうことだ?」

 

「あ~ユキノ先輩はシャーレに来てまだ1週間ですもんね」

 

「モエ、仕分け終わったのか?」

 

「終わったわよ。これでしばらくはひもじい思いをしなくてよくなるわ」

 

「それは良かった。それで、大変になるというのは?」

 

「さっきミヤコが言ったように、先生本格派なんですよ。裏を返せば料理に対し凄く凝り性なんですよ」

 

「前の料理のソース、2日かけてたって言ってたよな」

 

「出汁やスパイスなんかも、色々なところを回って探したとも言ってましたね」

 

「キッチンからでっかい蒸し器が出た時はびっくりしたわ」

 

覚えがある。

 

今日のスーパーでの出来事がユキノの頭の中に思い出される。

 

「先輩、先生は、料理をする人じゃないんです」

 

「え?それはおかしい。こんな量の食材を買って…」

 

「先生は、料理ができる人なんです」

 

「毎日料理をしないから人数分がわからないのか、割と大量作るもんな」

 

「私たちが呼ばれた時も大量すぎて、タッパー渡されましたね。まぁ将来は私が料理をするから問題ないのですが」

 

「しかし、多いぐらいなら大丈夫だろう?FOX小隊も4人いるし、シャーレには冷蔵庫もある」

 

「先輩、そこじゃないんですよ。先ほどサキがソースの話してましたね?」

 

「あぁ、2日かけたソースがどうと言っていたが、それがどうしたんだモエ」

 

「その2日間、シャーレはどうなっていたと思います?ソースっていっても火は使うだろうから、キッチンから離れられない。だけど先生の仕事もある」

 

「まさか…」

 

「はい、そのソース作りも含め計5日。シャーレは、ほぼ機能停止になりました」

 

「嘘だろう!?」

 

「一応料理の片手間で行える業務と、あと当番の生徒でも行える業務は出来ていたようですけど」

 

「食事会の後に連邦生徒会の行政官がブチギレていたな…」

 

「多分先生の料理中は先輩方の仕事量が、とても多くなります」

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

「FOX小隊、よくシャーレに来てくれました!かんぱーい!」

 

「「「「かんぱ~い………」」」」

 

モエの言う通り、先生は次の日から料理を始め、私たちの仕事量が多くなった。

 

言っても、先生がいないだけ…とも思ったが、どうやら先生の仕事の速さは段違いに早いらしく、とても苦労した日々であった。

 

先生にしかできない書類は手が出せないが、それ以外の仕事はどうにか完了することができた。

 

仕事も終わり、小隊の皆が死屍累々とデスクに突っ伏していると、そこに仕事を受け取りに来た、連邦生徒会行政官、七神リンが現れた。

 

七神リンは、FOX小隊の面々を見てすぐに現状を理解。

 

その後、人を殺せそうな笑顔でキッチンに行き、先生を叱り飛ばした。

 

そうして先生の料理も終わり、無事に歓迎会が開かれたわけだが、

 

「美味しい!何これお肉が凄くトロトロ!」

 

「このカレースパイスがよくきいていて、辛いけど美味しい!」

 

「じゃぁ私もご飯を…」

 

「先生はまだ正座です」

 

「……ハイ」

 

FOX小隊と書類を取りに来たリンは大きなテーブルで料理に舌鼓をうっていたが、先生はリンの静止により床で正座をしていた。

 

「先生、この豚の角煮、美味しいですね…」

 

「ありがとうございます…」

 

「こんなにお肉が柔らかくするには、たくさんの時間をかけなくてはいけませんね?いったい仕事をサボって何日間煮込んでいたんですか?」

 

「たくさん煮込んでいました…」

 

「このカレー、食べてみるとたくさんのスパイスが、入っていることがわかりますね」

 

「はい、カレーに合うスパイスを選んで入れました…」

 

「凄いですね…いったいスパイスを選んだ時間で、どれだけ仕事が終わったんでしょうね?」

 

「うへぇ…」

 

「この味噌汁、顆粒出汁を使わずきちんと出汁を取っていますね?そんな時間があったら……」

 

「すみませんでした!!!」

 

その後、リンちゃんによる詰問を耐えた後、リンちゃんには、デザートに作ったチーズケーキを、渡すことで何とか許して貰うことができた。




ブルアカF 2作目!
今回はユキノ回
FOX小隊での推しはニコなのですが、なぜこんなに長くなった?
拙き作品ですが宜しくお願いいたします
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