ブルアカF   作:あまいろ+

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狐と菜園

 

「先生、シャーレにある菜園を使ってもいいでしょうか?」

 

「菜園?」

 

ある日私、ニコは午後の事務作業で眠気と闘いながら書類を捌く先生に、お願いがあって声をかけた。

 

菜園と聞いて不思議そうにする先生は、しばらく考えた後にシッテムの箱を操作し始める。

 

しばらく画面を指ですいすいと動かしていると、目的の画面を見つけたようで、画面を読み込んでいく。

 

「菜園なんてあったんだ…」

 

「…先生、今まで知らなかったんですか?」

 

先生はいっぱい施設があってねと、ばつの悪そうな顔して笑う。

 

シャーレの菜園。

 

シャーレ居住区にある野外のテラスに設置された、小規模な家庭菜園場。

 

昔はここでは、観賞用の花や果物が育てられていたらしい。

 

現在菜園は、シャーレの主が把握してなかったのも原因で、荒れ放題になっている。

 

「それで私が使っちゃっても大丈夫ですか先生?」

 

「いいよいいよ。誰も使ってないと思うし」

 

生徒のことを第一に思っている先生だから、すぐに許可は貰えるかなと思っていたが、ここまで二つ返事で許可されてしまうと、少し拍子抜けしてしまう。

 

「もしよかったら使う際に、少し場内の管理とかお願いしてもいい?大変だったら私も手伝うから」

 

「はいありがとうございます!もし困ったことがあったらお願いしますね」

 

自分も大変なのに、進んで手伝いを申し出る先生。

 

本当にこの人は。と、先生の優しさに心地よさを覚える。

 

「ところで、菜園ってニコは何を育てるつもりなの?」

 

先生は机の上に置いてあった、ミントタブレットを眠気覚ましに食べようと、ケースをザカザカ振りながら質問してくる。

 

「さっき調べたら、昔は花とか果物とか育ててたらしいよ」

 

「大豆です」

 

「え?」

 

先生は振っていたミントタブレットのケースをピタリと止め、こちらに目線を送ってくる。

 

「大豆?」

 

「大豆です」

 

「……別に大豆を悪く言うつもりはないけどさ、…渋くない?」

 

確かに普通の女子高生は好んで大豆を育てないだろう。

 

それこそ、クルミちゃんが言っていた花の十代とは縁遠い物だ。

 

だけど私は作らなくてはいけない。大豆を。

 

しかしその原因は…。

 

「先生のせいですよ」

 

「え?私?」

 

「だって……先生にはもっと美味しいお稲荷さんを食べてもらいたいから!!」

 

「………あ、自作!?油揚げを大豆から作ろうとしてる!?」

 

お稲荷さんの皮の部分の油揚げ。油揚げの原料は豆腐である。

 

そして豆腐の原材料は大豆。

 

そう、つまり私はお稲荷さんを1から作ろうというのだ。

 

「なにもそこまでしなくても…」

 

「だって…こないだクルミちゃんから、先生が稲荷浮気してるって」

 

「稲荷浮気って何?」

 

ある日、百鬼夜行に仕事で行った先生が、昼食に私以外のお稲荷さんを食べていたらしい。

 

その日、護衛でついて行ったクルミちゃんが、「毎日シャーレでお稲荷さん食べてるのに、外でも食べるの?」と引き気味で言っていたらしいが。

 

「だから私決めたんです。先生を私の元に引き戻すって…」

 

「毎日食べてるおかげか、お稲荷さんが好物になったんだよ。まさか外でお稲荷さん食べたことが、こんな大ごとになるなんて…」

 

「先生待っていてください。必ず納得のいくお稲荷さんを作って見せますから」

 

「今でも十分に美味しいけど……そっかぁ」

 

先生は生徒の自主性を育てるもの。

 

「がんばってね」

 

としか先生は言えなかった。

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

「よし!」

 

先生から許可をもらった私は、早速菜園の整地に尽力した。

 

雑草を抜いたり、蜘蛛の巣や汚れを綺麗にし掃除をすると、だんだんと綺麗になり、日が暮れるぐらいになると、ようやく種を蒔けるぐらいには菜園の状況が回復した。

 

思っていたよりも早く終わったのは、シャーレの倉庫にあった、芝刈り機などの機械のおかげだ。

 

機械にはエンジニア部と書いてあり、高性能な仕事っぷりを見せてくれた。

 

整地も終わって一息ついた後は、いよいよ種蒔きのスタートだ。

 

私は早速、大豆の種をもって畑に蒔こうとすると、入り口付近から声が聞こえた。

 

「あれ?綺麗になってる」

 

声のした方向を振り返るとそこには、白いフードを被り、青みがかったピンク髪の女の子が立っていた。

 

シャーレは客人が多い。

 

連邦生徒会や先生を慕ってくれている生徒や当番の生徒など、日々たくさんの人がやってくる。

 

彼女もその一人だろうか?

 

「……あなたは?」

 

「あ、ごめんなさい。邪魔するつもりはなかったの。だけど、菜園が綺麗になって驚いちゃって」

 

「そっかそっか!」

 

どうやら、前まで荒れてた場所が急に綺麗になっていたため、気になって来たみたいだ。

 

しかし2、3言話した後でも、彼女は目を離さずジッと花壇を見ている。

 

「……これから種蒔きするんだけど一緒にしてみる?」

 

「いいの?」

 

「うん。私も手伝ってくれると嬉しいかな」

 

「わかった。私もやる」

 

そう言うと、嬉しそうに駆け足でこちらに近づいてくる。

 

畑仕事が好きなのかな?

 

「私はニコ。あなたの名前は?」

 

「私…私はアツコ」

 

「アツコちゃんか、よろしくね!」

 

2人で少し微笑み合うと、私はアツコちゃんに種を渡し、花壇に一緒に種を植える。

 

一定間隔で小さい穴を掘り、そこに種をいくつか入れ、最後に優しく土をかぶせる。

 

彼女も私の真似をしてすいすいと作業を進めていった。

 

「これ…なんの種を植えてるの?」

 

「これは大豆だよ」

 

「大豆…?」

 

「うん、大豆」

 

「大豆……」

 

そう言うとアツコちゃんは考えるように、黙ってしまう。

 

どうしたんだろう…。やっぱり大豆は渋かったかな。

 

なんて思っていると、

 

「大豆はどんな花が咲くのかな…」

 

とアツコちゃんが言った。

 

「お花、好きなんだ」

 

「うん…好き」

 

その後は、アツコちゃんと好きな花の話題を話しながら種まきの作業をした。

 

 

「またねニコ。私は毎日は来れないけど、時々様子見に来るね」

 

「うんまたねアツコちゃん!」

 

種蒔きを終え、最後に一緒に花壇に水を撒いていったあとアツコちゃんは帰っていった。

 

夕ご飯に誘うも、お友達が心配していると言ったため、お土産にお稲荷さんを包んであげる。

 

アツコちゃんはそれを嬉しそうに受け取ると、すっかり暗くなっていた闇夜にとけるように消えていった。

 

「ふふ、私も戻ってお夕飯作らなきゃ」

 

お夕飯の準備は事前に終えているので、後は軽く調理をすれば完成する。

 

そこまで急ぐことではない、けどその前に調べなきゃいけないことがあった。

 

「大豆ってお花咲かせるのかなぁ」

 

流石に花好きの女の子に、花が咲かないかもしれない植物を一緒に育てさせるのは心苦しい。

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

大豆。

 

マメ科の一年草。温暖またはやや冷涼な気候を好み、比較的に育てやすい植物だ。

 

畑の肉と呼ばれるぐらいに栄養価が高く、さらに加工品としての用途もさまざまである。

 

多くの場所で大々的に栽培されているため、時にはこんな被害もあって………。

 

「虫…」

 

「虫…だね…」

 

あれからしばらくたって、植えた大豆もぐんぐん育ち、葉が生い茂ってきた。

 

すると、それをまってましたというように、害虫の被害が多くなっていった。

 

「ニコ、農薬とか使わないの?」

 

「できれば無農薬で育てていきたいんだけどね…」

 

アツコちゃんの言う通り、確かに農薬などの類を使えば、幾分楽になるだろう。

 

農薬は危険!というつもりもないし、用法容量をきちんと守ればいいことも知っている。

 

しかし、この大豆を使ったお稲荷さんを食べているあの人を想像してみる。

 

私の我儘だけれど、できるだけあの人には安心安全なものを口にしてもらいたい。

 

あとこないだ救護騎士団の生徒に切れられていたので、健康面も気を付けて欲しい。

 

「どうしよっか?」

 

「どうしようねぇ…」

 

と、花壇の前でアツコちゃんと唸っていてもしょうがない。

 

私たちは、植物や害虫のこと調べるために、シャーレ内にある図書室へ場所を移した。

 

私は作物系の本を、アツコちゃんは害虫についての本を読み進めていく。

 

しかし私の本ではどうしても農薬についての話しになってしまう。

 

SRTでは任務での自給自足の訓練をしたが、農学的な授業は受けていない。

 

うーんと頭を悩ませていると、アツコちゃんがある本を持って私のもとに来た。

 

「ニコ、ニコ。これ見て」

 

「ん?なあに?」

 

アツコちゃんが持ってきた本のページには、

 

「『お部屋で虫よけ!?ハーブは虫よけ効果がある!!』……ハーブ?」

 

「うん、ハーブは虫よけ効果があるらしい」

 

「ハーブってあのハーブティーで使われるやつ?」

 

「そうかも。私ハーブティー飲んだことないけど」

 

「後で入れてあげるね。なになにハーブとは香りを持っていて、食などに役立つ有用な植物です」

 

「いいにおいのする植物ってこと?」

 

「そうだね。ほらこないだ街中で紫のいい匂いのするお花あったでしょ?あれもラベンダーっていうハーブだよ」

 

「そうだったんだ…。他には何か知ってる?」

 

「そうだね…カモミールとか、ローズマリーとか…」

 

そこで私はふと、職務で眠そうにしている彼の姿を思い出す。

 

「ミント…とか…」

 

「それは私も知ってる。先生がいつも食べてるやつだよね」

 

「そ、そうそう!あれも元はミントっていうハーブが入っているんだよ!?」

 

「私も一個もらったけど辛かった…。それじゃミントを一緒に花壇に植えれば防虫になるってことかな」

 

「…そうかもしれない」

 

「やってみる?」

 

「うんやってみよう!」

 

私たちは知らなかった。

 

アツコちゃんが持ってきた本のページの、『お部屋で虫よけ』の本当の意味が。

 

 

 

「なにやってんのさ……」

 

「いや…これはね…オトギちゃん」

 

あの後、アツコちゃんと一緒に、近くの花屋さんでミントを買いに行き、花壇に植えた数日後、確かに私たちの思惑通り、害虫の被害は減った。

 

それと同時にミントが花壇を覆いつくし、大豆を呑み込んでいった。

 

とてつもない速度で成長し、大豆を呑み込もうとするミントを何度も取り除いたが、ミントの繁殖力は凄まじく何度取り除こうにも復活し、ついには大豆を一時的に別場所に避難させることによって大豆はギリギリのところで事なきを得た。

 

そう大豆は。

 

「これどうするの…?」

 

大豆は無事だった。しかし花壇は当然のこと、隣接する芝生にもミントは侵食していたのだ。

 

まさに荒れていた菜園を思い出すぐらいには、十分な量であった。

 

そんなミントによって荒らされた芝生に、今私は正座している。

 

「ここを通った先生、『すっごいミントの香りする!?』って驚いてたよ?」

 

「ごめんなさい…」

 

ミントによる侵略の最中、さらによくハーブやミントのことを調べてみると、大体のハーブは、繁殖力が高いので花壇などに植えてはいけないと、注意書きがされていた。

 

赤字で。

 

その中でもミントは『ミントテロ』という言葉があるぐらいに繁殖力があるらしく、ちょっとやそっとでは根絶できないのだそうだ。

 

「どうしようオトギちゃん…」

 

「先生が業者?に頼んで何とかしてもらうって」

 

「うぅ…」

 

本当に申し訳ない。先生の為と言いながら、こんなにも先生の手を煩わせてしまうなんて。

 

「先生怒ってなかった?」

 

「怒ってはなかったけど…凄い爆笑してたよ」

 

「恥ずかしい…」

 

穴があったら入りたいとはこのことだ。

 

「ここは私が何とかするからニコは見回り行ってきてよ」

 

「はい…」

 

FOX小隊の副小隊長であるが、今この場面においてそんな威厳は吹いて消えるぐらいの儚いものなので、大人しく言うことを聞く。

 

そうして私はすごすごとその場を退散するのだった。

 

「ふぅとりあえず業者を待つかな」

 

「やっほ~先生に頼まれて来たよ~」

 

「おっあなたが業者さん?」

 

「業者?私は先生に頼まれただけだよ、これでここに生えている雑草を燃やし尽くして欲しいって!」

 

「え?それって火炎放射器じゃ…?」

 

「大丈夫大丈夫!ちゃんとフルパワーでやってあげるから!」

 

「それが心配なんだけど!?」

 

「火力は十分!よっしいくぞ~!」

 

「ごめんニコ!やっぱすぐに帰ってきて!!お願い!!!」

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

「どうしようかなぁ」

 

オトギちゃんに言われ見回り中。

 

私の頭には今後のことが頭をよぎる。

 

農薬を使わずに防虫をしなくてはいけない。

 

防虫だけではない。他にも病気やミントほどにはないにしろ、他の草への対処も大切だ。

 

心の中でそんな物は存在しないと考えてしまっていても、考えることを止められない。

 

頭の中で悩みながら、見回りを続け、執務室を開ける。

 

すると執務室にはいるはずの先生の姿はなく、その代わりに、ソファで寝転びながらゲームをする生徒がいた。

 

「あれ?モモイちゃん?」

 

「あ!ニコさんだ!」

 

ソファにいたのはミレニアムの生徒、才羽モモイちゃん。

 

モモイちゃん含むゲーム開発部はよくシャーレに訪れ、先生と遊んでいるためFOX小隊の皆は全員知っている。

 

たまに私たちも一緒にゲームをして遊ぶ仲だ。

 

「モモイちゃん先生は?」

 

「先生ならさっきオトギさんにモモトークで呼ばれて行ったよ」

 

「オトギちゃんに?菜園で何かあったのかな…」

 

「一緒にアリスもついて行ったから多分大丈夫じゃない?ちなみにミドリとユズは遅れてくるって」

 

「あ、そうなの?」

 

アリスちゃんが一緒なら大丈夫かな?アリスちゃんが力持ちなのは知ってるし。

 

モモイちゃんは伝言も頼まれていたのだろう。伝えたいことを伝えるとゲームの集中し始める。

 

ふと彼女のゲームが気になり、ソファにうつぶせになって寝転がる彼女の上から、ゲームの画面を盗み見る。

 

画面には笠を被った小さい女の子が畑を闊歩していた。

 

「畑?」

 

「ん?ニコさんも気になる?」

 

うんと答えると、モモイちゃんはゲームの内容を丁寧に教えてくれる。

 

どうやら農作物を育て、収穫した農作物を力に変え主人公を育てるゲームらしい。

 

農作物を育てるパートと敵を倒すパートを交互に行い、クリアしていくのだとか。

 

「へ~今はこんなゲームが流行ってるんだね。難しそう…」

 

「実際難しいよこれ。農作物を育てるのがさ、かなりリアルに設定されててね」

 

「ちゃんと育つの?」

 

「育つには育つんだけどね~。だから肥料もあげていって」

 

そう言うとモモイちゃんは肥料の選択画面で、色々な肥料を見せてくれる。

 

防病+3、防虫+2、防虫+4。

 

色々なポイントをざっと目を通しながら、ゲーム画面を見る。

 

すると、その中でひときわ大きなポイントをもらえる肥料を発見する。

 

「ちょっと待ってモモイちゃん!」

 

「うぇ!?なになに!?」

 

「さっきの戻って!」

 

「どれどれ?」

 

ピッピと画面を選択しお目当ての肥料の選択をする。

 

なんとその肥料のポイントの数値、防虫+10、防病+10、防草+10。

 

あきらかに他の肥料とは一線を介している。その肥料の名は、

 

「塩…」

 

「良く気付いたねニコさん。そうそうこれだけ数値が凄い高いんだよ」

 

「モモイちゃん…このゲーム凄くリアルに作られてるんだっけ?」

 

「うん、なんか農業のガイドラインを見ながらプレイした方がいいって言われてるぐらい」

 

「そう…ありがとうモモイちゃん…」

 

「どういたしまして?」

 

モモイちゃんにお礼を言って私は執務室を後にする。

 

どうやら買わなくてはいけないものができたようだ。

 

後からこの時を思い出すと、私はミントの失敗で気持ちが焦っていたのかもしれません。

 

「お姉ちゃんいる?」

 

「あー!ミドリ!ユズも遅いよー!」

 

「しょうがないでしょ?外せない用事ができちゃったんだから」

 

「あはは…あ、モモイそのゲームやってるんだ」

 

「そうそう、ユズももうプレイした?」

 

「うん、もうクリアしたよ」

 

「流石UZQueen!」

 

「もう…!やめてよ…!あ…、」

 

「どうしたのユズ?」

 

「モモイ、その塩ってやつ使わない方がいいよ…」

 

「え?何で?」

 

「だってそれは……」

 

 

「で?花壇に大量の塩ぶん撒いて、花壇丸々ダメにしたと?」

 

「はい………」

 

「馬鹿じゃないの?」

 

「返す言葉もございません……」

 

あの後、私はブラックマーケットで大量の塩を買い込み、花壇に撒いた。

 

撒いてしまった。

 

そのせいで、菜園の花壇は全て重度の塩害の被害にあい全滅。

 

重度の塩害のせいで、不毛の地へと変化してしまっていた花壇に気付かず、避難させてた大豆を植える前に、心配で様子を見に来たユズちゃんに真相を聞いた私は、目の前が真っ暗になった。

 

ショックでピクリとも動かなくなった私を何とかする為、ユズちゃんは慌ててFOX小隊の誰かを呼びに行った。

 

そして、ユズちゃんに連れてこられたクルミちゃん。

 

クルミちゃんは、ユズちゃんから聞いた話と、花壇の横で積まれている塩の袋を見て事態を察し、ふっかいため息をついた後、冷めた声で、

 

「正座」

 

と一言言った。

 

なので私は今、再び使えなくなった花壇の前で正座をしている。

 

もう副小隊長の威厳など雲の彼方へさよならバイバイしていた。

 

「任務の成功率を上げる方法は、何があるかしら?」

 

「…事前準備をしっかりすることです」

 

いつもの表情豊かなクルミちゃんと違って、冷めた目線で私を見下ろしながら、話し始める。

 

「そうね。するのとしないのでは、任務の成功率は雲泥の差よ」

 

「はい」

 

「今回、菜園の花壇が全滅する被害が出たのはなんでかしら?」

 

「…私の事前準備不足です」

 

「その通りだわ。今回はこの被害で済んだけど、任務だったらどうなっていたと思う?」

 

「…任務は失敗。成功しても部隊に甚大な被害が出た可能性があります」

 

「わかってるならいいわ。しっかりしなさい。あんたは私たちの副部隊長なんだから」

 

「…はい」

 

普段オトギちゃんに怒っているのとは違く、冷静に淡々と私の駄目なところや、改善点を指摘する。

 

クルミちゃんのお叱りは鋭く、私に刺さっていった。

 

「最後に、何で農薬を使わなかったの?農薬は危険!ということはほとんどないし、用法容量をきちんと守ればいいってこともあんた知っているでしょ?」

 

「そ…れは、……できるだけあの人には安心安全なものを口にしてもらいたかったからです」

 

「そう。でもあんたの行いのせいで、先生に多大な迷惑がかかったわ。多分あの人は気にしてないだろうし、今回のこともきっと許してくれるでしょうけど。…それでいいの?」

 

「嫌です…。できるなら、私たちを助けてくれたあの人の役に立ちたい…!」

 

これは本心。私の言葉を聞いたクルミちゃんは、そうと、素っ気なさげに言った。

 

そっとクルミちゃんの顔を見ると、さっきの冷たい顔はしておらず、いつものクルミちゃんに戻っていた。

 

凄い呆れた表情は浮かべているけども。

 

「……………私から、1ついいかしら?」

 

「…はい」

 

ここでクルミちゃんは、もう一度深い溜息をついてから、今度は息を吸い始めて言った。

 

「………あんたのプライド役に立ってないから!!!」

 

「反省してます!!!」

 

まったくもってその通りでございます。

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

バン!!

 

「あ、クルミに、ニコもおかえり。どうだっ…え?何でそんな大股で近づいて来るの?」

 

『バシン!!!』

 

「いったい!?何で叩いたのクルミ!?」

 

「うっさい!元はといえばあんたのせいでしょ!?責任とんなさい!」

 

「私本当に外でお稲荷さん食べただけなんだけど!?」

 

「ふん!!」

 

バタン!!

 

「あはは…怒られちゃいましたね。二人とも…」

 

「私に関しては八つ当たりに近かったけど…」

 

「……先生今回のこと本当にごめんなさい」

 

「いいよいいよ誰でも間違えるんだから」

 

「いえ、それでもきちんと謝らせてください」

 

「…わかったよ。どうする?菜園はまだ続ける?」

 

「はい。でも大豆作りはいったん休憩です。しばらくは最近できたお友達と一緒に花壇にお花を植えていきたいと思います」

 

「そっか」

 

「大豆作りは、またきちんと勉強した後でやってみます」

 

「頑張ってね。応援してるよ」

 

「はい!」

 

「……ところでニコがいない時には、外でお稲荷さん食べても大丈夫?」

 

「ダメですよ!」

 

「え~好きなんだよお稲荷さん」

 

「だって………好きな人には私の作った好物を食べて欲しいじゃないですか?」

 

 

「は~~!聞いてよユキノ!」

 

「クルミか、いきなりどうしたんだ?私の部屋まで来て」

 

「もう本当さー!(クルミ説明中)」

 

『どうしよう…まったく私に報告されてないことばかりなのだが…』




ブルアカF作品4作目
待ちに待ってのニコ回
そんなこんなで残りはオトギ回のみ!
オトギ回いっても終わる予定はないですが…
拙き作品ですがよろしくお願いいたします
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