無い知恵を振り絞りそれっぽいガングニールとの融合の説明を書いたので、そこに関しては優しい目で読んでくれると嬉しいです。
【注意】
直接の描写はないのですが、今話は誘拐後に響が受けた酷い仕打ちに触れているので、説明だけでも苦手だという人は読むのは控えた方がいいと思います。
響の就寝から十分後。
艦内司令部にて。
照明が消されて薄暗い室内には司令官である風鳴弦十郎に招集された未来を筆頭とした装者たちが集められていた。
招集理由は立花響の検査結果の報告。
弦十郎は未来だけを呼び出したのだが、報告内容を聞いた未来がもし暴れてもすぐに止めに入れるようにと他の五名は自ら同席を名乗り出たのだった。
「……」
そんな意図がある五人に囲まれている未来は両拳を強く握りしめてただ無言で立っていた。表情は無でありながら爆発寸前の爆弾のようなピリピリとした雰囲気を放っている。
司令部内の空気は戦場さながらの張り詰め具合であり、少し息がし辛い。
「し、調……やっぱり部屋に戻らないデスか?」
「だ、ダメだよ、切ちゃん……今の未来さんが怖いのは分かるけど、だからこそもしもの時は止めないと……」
未来の後方に待機する切歌と調が小声でコショコショと言葉を交わしていると、弦十郎がエルフナインと共に姿を現した。
「よし、みんな集まっているな」
「お待たせしてしまって申し訳ございません」
弦十郎は入り口から前進して自分の席の前までやって来ると周囲を見渡し全員いることを確認し、エルフナインもまた前進して弦十郎の一歩後ろに立つと遅れたことを謝罪する。
「すぅ……はぁ……検査結果を、教えてください」
ゆっくりと息を吐いて気を落ち着かせた未来は弦十郎たちへ検査結果の説明を乞うた。
「ああ。では、始めよう」
弦十郎は一言そう言うとデスクに置いていたタブレット端末を手に持ち、その画面へ視線を落としながら口を動かし始める。
「まずはメディカルチェックの方だが……全身に夥しい数の傷跡が確認できたが一応、響君の体には目立った問題は見つからなかった。しかし、対人恐怖症に加え不安障害もみられるので、問題はやはり精神面の方だろう。こちらはカウンセラーに——」
「ちょっと待ってください」
報告の中に気になる箇所があった未来は冷たい声で弦十郎の言葉を遮る。
「
~未来は原作の響のように弦十郎から修行をつけてもらっており、そのため『センセイ』と呼んでいる世界線です~
「……ふぅ……未来君。落ち着いて聞いてほしい」
弦十郎はゆっくりと息を吐き、そしてゆっくりと言い聞かせるように未来へ語りかける。
「……」
「響君……立花響という少女は聖遺物……ガングニールと完全に一体化してしまっている」
「は? それってどういう……」
『聖遺物との一体化』という想像していなかった言葉が出てきて未来は困惑の声を漏らす。
「ここからはボクがお話します」
詳しい説明を求める未来へエルフナインが挙手した後、弦十郎に代わり説明役を買って出る。
「みなさん、ご覧ください。こちらは響さんの精密検査した写真です」
エルフナインはその場の面々を正面モニターへ視線を向けるように促すと、自身の端末を操作して三枚の全身が透けた写真をモニターに表示させる。
「一枚目は約三年前に起こった『ライブ会場の悲劇』の後に響さんが病院で撮ったもので、二枚目はつい先ほど普通に撮ったもの、そして三枚目は錬金術を施したフィルターを追加して撮ったものです」
モニターに表示された三枚の写真の説明がされ、未来たちは暫くの間ジッと写真に見入る。
「……」
「別に変なとこは見えねぇけど……」
「んーッ、わっかんないデース……」
「いえ、ちょっと待って? なんか……」
「三枚目は一枚目と二枚目よりも」
「……なんだか暗い気がする」
未来はただ静かに見つめ、クリスと切歌は違いが見つけられずに頭を傾け、マリアと翼、調の三人がついに違いに気付き、三人揃ってエルフナインへ視線を向ける。
「はい、マリアさんたちの言う通りです。三枚目の響さんの写真は他の二枚と比べてかなり暗く写りました」
エルフナインの答え合わせを聞き、その場の全員が再びモニターへ視線を向ける。
「追加したフィルターは聖遺物を写すモノなのですが、このように写っている要因は響さんと細胞単位で融合しているガングニールなんです!」
力強く黒く写るものの正体を述べると、エルフナインは再び端末を操作して全身図の上に新たな画像を表示させる。
その画像は聖遺物が発するアウフヴァッヘン波形であり、下には『Gungnir』と記されている。
「約三年前、『ライブ会場での悲劇』と呼ばれる事件の際に天羽奏さんが纏っていたシンフォギア——ガングニールの破片が響さんの胸に刺さったことは当時の記録にも残っており、本人もその事件の時に胸に傷を負ったと仰っていました。複数の検査の結果を見るに、この時から既に融合が始まっていたのだと思います」
エルフナインは端末に表示されている過去の事件の報告書や検査結果、響の証言などが記録されたファイルを順に目を通しながら説明をしていく。
「やっぱり、奏のガングニールだったのね……」
翼は無意識に素の話し方に戻って言葉を漏らす。
彼女の視線が向けられているのはモニターに表示されたままにされた雪の結晶のようなガングニールのアウフヴァッヘン波形。
自身の天羽々斬のものと同じく見慣れた、けれど久しぶりに見るそれは翼の脳裏に奏との懐かしい記憶を思い起こさせるのだった。
「融合ってそんな早く始まるもんなのか?」
「響さんはガングニールとの相性……適合係数がかなり高いのです。この中の六名と比べてもダントツで……それが素早い融合の原因だと考えられます」
「えぇッ!? 響さんってナンバーワンなんデスか!」
クリスの質問に答えたエルフナインの言葉に切歌は目を見開いて驚きを露わにする。
「事件から二週間後。どういう経緯で響さんの存在を知ったのかは分かりませんが、響さんはパヴァリア光明結社に誘拐された後、数刻前に壊滅させた研究所にて錬金術を用いた肉体改造を施されたようです」
「……」
響の誘拐というフレーズを出したことで感情が爆発しないかとエルフナインがチラッと未来へ視線を向けるが、彼女は変わらず黙ったままモニターを凝視していた。
「ほッ……そして改造の結果、響さんはガングニールと細胞単位で完全に融合を果たし、本来ならば存在し得ない聖遺物と完全に一体化した融合症例……名付けるのならば『人型聖遺物』とも呼べる存在になったみたいで——ッ!?」
エルフナインが響のガングニールとの融合の経緯の推察を説明し終えると同時に未来が振り返り、光の消えた瞳で見つめながら問い掛ける。
「エルフナインちゃん。さっき肉体改造って言ったよね……それって痛みがあったとか、分かるのかな?」
「その、えっと……それはわか——」
「隠さないで」
「ひッ⁉ は、はいッ、使われたであろう術式を想定してみた結果……その、響さんは実験中は、恐らく激痛に襲われていたかと……」
一度は事実を隠そうとしたエルフナインだったが、未来の気迫と冷たい声に負けて早口で真実を話してしまったのだった。
「ふぅ……」
「あ、あの、未来さん……」
「まだ、何かあるの?」
今度はエルフナインが青い顔でおずおずと未来へ話し掛けると、未来は青筋を立てながらも怒りをかなり押し殺して返事を返す。
「はひッ!? その、ですね……〈おい、代われ。俺が話してやる〉……え? キャロル……ぅ……っと」
「キャロルちゃん?」
「あぁ。小日向未来、久しい……というほどでもないか。ふッ」
思わず怯んで言葉を途切れさせてしまったエルフナインから、魔法少女事変の後から体を共有しているキャロルへと交代すると未来へ向けて不敵な笑みを浮かべて見せた。
「アイツには少々刺激が強く、荷が重い内容なのでな。ここからは俺が説明するぞ」
「……」
(キャロルってなんだかんだエルフナインには優しいのよね)
キャロルは端末をタップしてとあるファイルを開き、新たにそれをモニターへ表示させると普段よりも低い声で錬金術師たちが犯した非人道的な行為を明かした。
「立花響には数度、開腹……腹を切られ、内側も弄られた形跡が見られた」
「ッ⁉」
「そして、これだけ隠しておく必要もないから言うが……研究所からの押収品の一つに琥珀の中に入れられた人間の左腕があった。言わなくとも察しがつくだろうが、立花響のものだ。細胞単位で聖遺物と融合した人間……アームドギアの要領で再生できるのだろうな。奴らは人間性など一ミリも持ち合わせていない連中だ。躊躇いなく切断し、研究所の動力源に使っていたのだろう、と俺たちは推定した」
キャロルが話した度し難い、悪逆非道な内容に未来は目を見開いて驚愕し、ショックを抑え込むように右手で口元を覆う。
「誘拐している時点で外道だとは分かっていたつもりだが、想像以上の人でなしではないかッ」
「腹を掻っ捌かれた上に腕の切断なんて、なんつーことを……ッ」
「なんて酷いことを……ッ」
「なんで……なんで、アイツらはそんな最低なことができるんデスかッ!!」
「そんなッ……響さんが何をしたって言うの……」
肩を震わしながら黙る未来に対し、翼と切歌は激しい怒りを露わにし、クリスとマリア、調の三人はあまりにも酷い仕打ちに言葉を失ってしまう。
先に知っていた弦十郎と緒方は視線を下げて拳を強く握り締め、自分の席に座って聞いていた藤尭と友里もまた響が受けた非人道的な所業に何も言えずに口を開けたまま固まってしまった。
「…………ふー……うん、よし」
「小日向未来?」
未来が急に息を長く吐くというアクションを示したことでキャロルは端末から彼女の方へ視線を向ける。
「師匠……捕まえた錬金術師たちって潜水艦の下の区画にいるんですよね?」
キャロルの視線を無視し、未来は弦十郎へ押し殺した声で尋ねる。
「あ、あぁ。そうだが……」
「そうですか。ありがとうございます」
確認をとった未来はその場で踵を返し、首から掛けた神獣鏡のペンダントを握り締めながら入口へ向けて歩き出す。
「待てッ、小日向! 何をするつもりだ!!?」
急に移動ようと動き出した未来の左腕を掴んで止めた翼は慌てた声で問い質すと、未来は真顔でさも当然のように答える。
「何って……決まってるじゃないですか。響を傷つけて苦しめた
「ッ⁉」
未来の冷たい殺意が込められた答えに翼は言葉を失ってしまう。
以前から未来は響のこととなると気が狂いがちになってしまうことがあるのは、それなりの付き合いとなった翼はよく知っていたが、今回は一段とヤバいと脳内で警鐘が鳴らされる。
「くそッ、やっぱこうなったか! おい、お前ら打ち合わせ通りに止めるぞ!!」
「え、えぇ!」
「フォーメーションβデスッ!」
「そんな作戦名を付けてたんだ……みんなでしがみ付いて押さえ込むだけだけどッ」
クリスの掛け声に合わせてマリアと切歌、調が未来へ向かっていき、既に未来の両脇に腕を差し込んでホールドに移行した翼に続いてクリスたちも素早く未来の身動きを抑制する。
「くッ、放してッ、みんなッ! 放してよッ!!」
予習練習でもしてきたのか、洗練された動きで押さえ込まれてしまった未来はジタバタと暴れるが一歩も動くことができない。
「気持ちは分かるが、流石に〇しはいけない!」
「お前、フィーネのトコにいたあたしに命の尊さを語ってたじゃねーかよッ!」
「くッ、コラッ! 暴れないのッ!」
「絶対に行かせないデース!!?」
「ち、力つよぃッ」
薄暗い司令室で六人の少女が密着し、凌ぎ合う。
大人組は下手に手が出すことができず、ただ見守るしかできないでいる。
「くぅッ、こうなったらッ、Rei shen shou ji——」
「「なッ⁉」」
「「「そこまでやるの/かデスッ⁉」」」
身動きできずにいた未来が奥の手を切ろうと聖詠を唄おうとした、その時。
「お前が誰を殺そうが俺は構わんが……喧しいからそろそろ止まれ、小日向未来」
姦しい状態の未来の元までツカツカと歩み寄ったキャロルが命令口調でそう言うと、細く短い指で未来の額へデコピンをお見舞いする。
「ッ……きゃ、ろ……ぅ……」
キャロルが放ったのは痛みが然程ないデコピンだったが、それを食らった未来は急に頭が重くなり、瞬く間に意識が堕ちてしまった。
「一体何を……」
未来の左腕を担当していたマリアが尋ねると、キャロルはデコピンを空打ちしながら種化しを行う。
「ちょっとした錬金術で小日向未来の意識を奪っただけだ。特に害はない手品みたいなものだな。翌朝には普通に目を覚ます筈だから心配する必要はない」
「お、おぉ……そんなこともできたのか」
「思い出の方は、その……大丈夫なのか?」
「はッ、この程度の術に貴重な思い出など使うものか。言っただろ、手品みたいなものだと。それよりも早く放れて小日向未来を寝床に運んでやれ」
「あ、そうよね」
「早く運ぶデース!」
「……明日起きた時には未来さんの怒りが収まってるといいけど」
キャロルに言われ未だに未来へ抱き着いたままだったことに気付いた装者の面々は脱力した未来から一度離れた後、仲良く五人で未来を彼女の部屋へ運ぶべく司令室を後にする。
「ふぅ……なんとか未来君を殺人者にせずに済んだな……ありがとう、キャロル君。手間をかけた」
六人が出ていったのを確認した弦十郎はドカッと自分の椅子に座ると、ネクタイを緩めて一息吐き、自身の横に戻ってきたキャロルへ労いの言葉を送る。
「全くだ。小日向未来のキレやすさはどうにかした方が良いぞ」
「いや、あの子は
キャロルからの助言に弦十郎は苦笑いを浮かべて答え、それを聞いた緒川たちからも微笑が漏れる。
「はッ、能天気な奴らだな……せっかく変わったんだ、俺も戻り研究でもするとしよう」
キャロルは再度その場にいる大人たちを嘲ると、端末を弦十郎のデスクに置いて自分とエルフナインに与えられた自室兼研究室に戻ろうと歩き出す。
「あぁそういえば、装者の奴らもいる時に言おうと思っていたことがあったんだった」
入口まで移動したキャロルはふと思い出したことを大人組だけにでも話そうとその場で振り返る。
「ガングニールの破片は立花響の肉体と一体化し、新たなガングニールとして生まれ変わった。これは今日捕まえた結社の錬金術師どもが企てたことではないだろう」
「なに?」
「救出作戦の前にも言った結社のトップ、統制局長……アダム・ヴァイスハウプトが誘拐から人体実験までやれと命令した真犯人だろうな。アイツは結社の中で《神殺し》の研究を自分の手下どもにやらしてた」
「……」
「俺は専門分野ではない上に興味がなかったから詳しくはないが、アイツには俺以上に長い年月をかけた大層な計画があるようだった。ガングニールも多少は《神殺し》の逸話がある聖遺物。必要なのならば、奪いに来るだろうよ」
「はぁ……響君のことで今は割と手一杯なのだがなぁ……」
「今回の一件でお前たちは怪物に喧嘩を売った……アダムは錬金術師としてはド三流だが、無駄に力が強い。まぁ、せいぜい気をつけることだ。くく、二度も自分の“
キャロルは新たな忠告を弦十郎たちへ送ると入り口を潜り抜け、自分たちの自室へ戻っていくのだった。
大好きで大切な嫁を傷つけられたのだから、そりゃあMIKUさんはブチギレますよね。(こんな酷い目に遭わせていますが、作者は響推しで、ハッピーエンドが大好きです)
妄想の中の書きたいシーンが書けて大満足です。
融合症例って敵側に渡ったら酷い扱いを受ける気がするんですよね。
ただ登場人物多すぎて、オペレーター組や緒川さんを全然喋らせてあげれなかった……。
キャロルは魔法少女事変のラストバトルの際、思い出を焼却し切る前に未来さんたちに倒されているので記憶が多く残っている状態です。
あと本人は決して口にしませんがエルフナインのことを大事に想ってます。
錬金術で聖遺物を人間と完全に融合させることが本当にできるのかはわかりませんが、この世界ではできるという設定でいきます。錬金術は便利★
アダム傘下の錬金術師たちは畜生にも劣るド外道でしたが、錬金術の腕は確かなので失敗することはなかったのです。
余談ですが、完全融合の実験が失敗していたら響の死体が魔道具的なアイテムとして再利用され、最悪な形で未来さんと出会い、彼女は絶望してキャロルがいう『怪物』に変わり果て、何らかの形で世界を壊していた……かもしれません。
この世界でも響は左腕を切断されています。
切断された左腕は錬金術で琥珀内へ保存され、研究所の動力源の一つとして利用されていました。(錬金術でアレコレしてエネルギー源として使えるようにしている)
響の肉体は傷を負っても再生できますが傷跡は残る設定です。
なので胸元のフォルテの形の傷跡の他にも、開腹の際の傷など多数の傷跡が刻まれてしまっています。(検査の時は確認しておらず、入浴せずに寝てしまったので未来はまだ見ていない)
左腕もじっくり見比べると右腕よりも僅かに肌が白いです。
ここまで読んでくれてありがとうございました!