グロいかもなので一応グロ注意です。
書き忘れていたのですが、響が囚われていた研究所は南太平洋の孤島にあって今は日本へ戻っている道中でのお話です。
今回は二話一気に出してます。
ストレスフルな環境にいたせいか響は眠りが浅く、悪夢を見ることが多い。
ようやく解放されたとは言え、変わり果ててしまった体質がすぐに改善されることがある筈もなく、今日も響は悪夢に苛まれてしまうのだった。
「……んッ……うぅ……」
―――
――
―
これは言葉にすることができないほど最悪な日の夜の記憶の夢。
場所はコンクリートの壁で覆われた窓が一つもない無機質な牢屋。
響はその日に受けた錬金術による人体実験によりガングニールとの融合がかなり進んだことを感じ取り、普通の人間ではなくなったことを察してベッドの上で震えていた。
「……ッ」
四畳もない室内に唯一置かれたベッドは固く寝心地は最悪。
しかも左足首にはベッドの足に鎖で繋がれた枷が装着させられている。
こんな最低な闇夜の中、たった一枚だけ与えられた薄い毛布を掛けて横になって震える響は休まらない。
(……ねむれない……こわい……)
「——チュゥ」
「……え?」
悪夢を見てもいいからこの辛い現実から解放してほしい。
そう思いながら必死に目を瞑っていた響の耳へ甲高い鳴き声がベッドの下から聞こえて入ってくる。
「…………ねずみ?」
のそのそと起き上がった響がゆっくりとベッドの下側へ視線を向けると、コンクリートの床の上にちょこんと立つ実験用ラットが響を見上げていた。
暗闇の中ではよく目立つ白い毛並みに、目を瞑っていたため闇に慣れているおかげで意外と愛らしい顔をしていることが分かった。
「チュゥ!」
「……あの人たちが飼ってる子、かな」
響が漏らした呟きの通り、このラットは研究所で飼育されている個体である。
何かの拍子にゲージから脱出し、奇跡的に錬金術師たちの目に一度も留まることなくこの牢屋まで逃げて来たのだろう。
「……こんばんは……きみは、どこから来たのかな?」
「チュ?」
「……言葉、わかんないよね……よい、しょ」
ラットへ挨拶した響は音が鳴らないよう足枷の鎖を手に持ちながらベッドから床に下りて小さな訪問者と向き合う。
日頃から錬金術師たちを見ているためか人慣れしているようで、響が近づいても逃げ出す様子を見せることはなかった。
「……ふふ」
逃げ出すどころか少し近づいてくれたラットを見下ろした響は誘拐されてきてから初めて笑みを漏らした。
肌寒い牢屋の中で一人苦しんでいた響は本人(本鼠?)にその意図がなくとも彼女の心にほんの僅かな安らぎを与え恐怖を鈍らせたのだ。
(……触ってもいいかな)
相手がラットとは言え響にとっては久しぶりに相対する悪意なき存在。
触れ合いたいと思うのも無理もなく、気づけば響は既にゆっくりとラットへ向けて手を伸ばしていた。
「……ちょっとだけ……」
そう呟きながら、手が近づいてきても逃げる様子を見せないラットを優しく掴み上げようとした響だったが——
「——ヂュッ!!!?」
「ぇ」
ブヂュッ!! という水気を含んだ鈍い音と共にラットの断末魔が静かだった牢屋に木霊した。
「……ぁ…………ぇ?」
響は
そこにあるのは足だった。
当然、響のモノではなく……それはついさっきこの牢屋へやって来たラットのモノ。
続けてゆっくりと右手を開き、手の平を確認するとそこにあるのは破裂した風船のように萎れて身動き一つしなくなったラットの本体。
「な、んで……わたッ……わたし、が?」
急展開に放心していた響だったが、遂に目の前の現実に理解が追い付いく。
今の一瞬で起こった……否、響がやってしまった行為は単純なことである。
抱き上げようとして鼠を包んだ右手でラットを握り潰し、殺した。
ラットとは言え、瞬く間に一つの『命』を自分が奪ってしまった事実に響は戸惑い、ただ震え出した右手を凝視することしかできなかった。
「……なんで、なんでッ……わたし、こんなひどいこと、しようとしてない……してなかったッ——いやぁあぁぁッ!!?」
発狂し零れ出た困惑の声で分かる通り、響にラットを握り殺す意図はなかった。
それは間違いない。彼女はただ寂しさと恐怖を埋めてもらうべくラットとのスキンシップを取ろうと思っただけなのだから。
ならば何故、その結果がこんな猟奇的になってしまったのか。
それは、この日の錬金術師たちによる人体実験によってガングニールと完全に融合を果たしたことが原因だった。
細胞単位の一体化に伴い、響の体は筋肉や骨、神経の造りが改造・強化されてしまっており、シンフォギアの暴走時のような並外れた力を発揮できるようになっていたのだ。
目が慣れているとはいえ暗闇の中でも異様に細かく見ることができているのもこれが要因だろう。
しかし、急な肉体変化に意識がの適応が追い付くことはなかった。
そのため、ラットを軽く握って持ち上げる筈が力加減を間違えてしまい、このような悲惨な結果を生んでしまったのだ。
響が感じていた通り、彼女はもう普通の人間……普通の女の子ではなくなってしまったのだった。
これは聖遺物の力ではなく、融合の果てに生まれた一つの奇跡の産物。
ガングニールそのものは決して響を傷つけることはない。だが、この槍は響を不幸にしてしまうのだ。
「ごめ……ごめんなさい……ごめんなさッ——ぅッ⁉」
響は涙を流しながら蹲り、ラットの血と臓物で汚れながらひたすらに謝罪の言葉をことしかできなかった。
次第に様々な許容量を超えたのか、胸の奥から吐き気が込み上げてきて——。
―――
――
―
響は目を覚ます。
「——ッ⁉」
悪夢から抜け出すと同時に勢い良くベッドの上で上半身を起き上がらせた響は激しい動悸を感じながら口元を両手で覆う。
夢の中で最後に抱いた吐き気が現実でも湧き上がってきてしまったのだ。
「ぅ……ッ——おぇッ」
口を押さて我慢しようとした響だったが、自分で殺したラットの姿を思い出してしまい、抵抗も虚しく嘔吐してしまった。
「げほッけほッ、ぉえッ……」
一度目の酸味を帯びた匂いに釣られ第二射も吐き出してしまい、響の手や病衣、布団が吐瀉物で汚れてしまう。
「……はぁ……はぁ……」
口や食道の焼かれたようなヒリヒリとした感触や吐瀉物の嫌な臭いに苛まれながら息を荒げていた、その時。
病室の入り口の横に設けられたタッチパネルにパスコードを入力する電子音が室内に響き渡り、開錠後、一間開けてからドアが開かれた。
「おはよう、ひび——ッ⁉」
~次話へ続く~
腐れ外道な悪人の錬金術師たちを傷つけたことよりも、小さく無垢なネズミの命を無造作に奪ってしまったことの方が響の心へのダメージが大きそうなのでコッチにしました。
これは始まりで、これでだけではなくケモ耳少女などの実験体などとの戦闘実験を強制的に受けさせられ、相手をケガさせてたりします。(この話はまたいつか……)
触れ合いたい、繋がり合いたいと伸ばす響の手は簡単に命を奪えてしまう凶手だった……。
タイトルの「よわよわ響」はメンタルや雰囲気のことです。攻撃力や瞬発力などのフィジカルは装着の中では抜きん出てます。
コレ+シンフォギアを纏うのでメチャクチャ強いですが、精神病&原作の通りの人間性なので戦うのも他者を傷つけるのも苦手なので全力が発揮されることほぼはないです。
↑
このパワー最強は出そうか凄く悩んだ設定なのですが、響をもう少し追い詰めてよわよわ度を上げるために出しました。
救出時に響のハイパワーが出なかったのは救出までの間になんとか感覚を覚えてある程度は制御できるようになっているからです(反抗を防ぐために錬金術師たちが枷に抑制の術とかいろいろと仕込んでたのも感覚を掴むことを後押しした)
錬金術師たち、そしてアダムにとっては響の進化は棚からぼたもちでニッコニコでいろんな実験をさせました(鬼畜)。
生きた部品として錬金術の研究に活用したり、戦闘実験で戦闘データを取ったりなど、響はあらゆるところで『有効活用』されてきました。★
響は“最強だけど最弱”。
ちなみに未来は“(神獣鏡はシンフォギアの中で)最弱だけど最強/最凶(つよつよ)”です。
ここまで読んでくれてありがとうございました!