タイトル通りシャワー浴びて、ちょっと怒られる話です。
病室のクリーニングをスタッフに任せた後、響は未来に連れられて潜水艦内のシャワールームまでやって来ていた。
「——あら?」
入ってすぐに設置された棚から常に用意されているアメニティ用品を手に取って入浴の支度をしていると、二人の後ろからマリアがやって来て声を掛けてくる。
トレーニングウェア姿で手にタオルを持っているので、どうやらマリアは朝の鍛錬を終えて汗を流しにやって来たらしい。
「おはよう。二人もシャワー?」
「マリアさん。おはようございます。はい、ちょっと響が吐いちゃって……」
「……ッ」
振り返って挨拶をする未来に対し、響は声に釣られて振り返りマリアを視認すると同時にサッと未来の背中へ隠れてしまう。
数分前に前向きに頑張ると決めた響だが、約三年間の酷い日々の中で患ってしまった人間不信がすぐに治ることはない。
何故か最初から一緒にいても平気な未来が例外なだけであって、響を助けに来てくれた善人だと理解はしているマリアはまだ信じられず怖いと思ってしまう対象なのだ。
「あー、えっと……私は後にした方がよさそうね」
未来の背後に隠れてしまった響を見たマリアは苦笑いを浮かべ、仕方ないと踵を返そうとしたその時、消え入るような声で響が待ったをかける。
「それじゃあ、また——」
「……ぁ……まっ……て……」
「ッ、マリアさん! ちょっと待ってください!」
「え?」
響の物凄く小さな制止を耳にした未来が変わりに、声に気づかずに立ち去ろうとするマリアを呼び止める。
「響、マリアさんが一緒でもいいんだよね?」
「……う、うん」
「です!」
「いや、『です!』って……あなた、切歌じゃないんだから……」
響の意思を確認した未来による言葉足らずの伝達にマリアは先程とはまた違う苦笑いを漏らす。
切歌と調の部屋にて。
「——へぷちッ!」
「大丈夫? 切ちゃん……はい、ちーん」
「デェス……」
マリアに名前を呼ばれたせいか、クシャミで鼻水を発射してしまった切歌は調にティッシュで鼻を拭いてもらうのだった。
入り口でのやり取りの後、なんだかんだ三人でシャワーを浴びることとなった響たち。
脱衣した後に揃って入室し、マリア、響&未来の並びで汗と汚れを落とし始めたのだった。
「響、痒いところない?」
「……大丈夫だよ」
(…………ちょっと待って? なんで、この子たち一緒の所に入っているのよ⁉)
ここのシャワーの設置数は六つあり、それぞれ仕切りで一人ずつ使用するように分けられている。
現在の使用人数は三名。
空きスペースは四つも残っている状況である。
それなのにも関わらず響と未来は同じ場所に入り、仲良く髪の毛を洗っているのだ。
自然な動きで普通に洗い始めたので今さっきまで気づかなかったマリアだが、声を聞いて二人が同じ所にいることに気付くと、思わず心の中でツッコミを入れてしまった。
(切歌と調ですら別々でシャワーを浴びるわよ⁉)
「シャンプー流すから目を瞑ってね」
「……うん」
(でも……本当に仲良しなのね。未来の面倒見の良さは、昔からあの子の世話を焼いてたからなのかしら)
隣から聞こえてくる未来の幸せそうな声を聞きながら、切歌と調、そしてクリスなどの世話をしていた未来の姿を思い浮かべ、冷静を取り戻したマリアは心中でそんな推察をする。
(昨日はどうなるかと思ったけど、今は大丈夫そうね。クリスが頑張ってくれたの……ん?)
「……んッ……未来、前は自分で洗えるよ?」
「ううん、遠慮しないでいいんだよ? 私が響の全身を綺麗にしてあげるからね♡」
クリスが怒りマックスだった未来をどうにか通常に戻してくれたんだな、などとマリアが思っていると隣の二人のやり取りが少しおかしいことに遅れて気付く。
「……ぁ、あははッ……くすぐったいッ」
「響の体、やわらかぃ……はぁ……はぁ……」
(……)
恐らく体の敏感な場所を洗われたのか笑い声を漏らす響に対し、洗うことよりも別のことに意識が向いていて息を荒げている未来。
前者はともかく後者は明らかに普通ではないことを感じ取り、マリアは思わずため息を吐いてしまう。
「はぁ……」
「次は足を洗おうねぇ」
「……う、うん……ひゃんッ」
「……」
無くなったのか、胸の奥に押し込んだのかマリアには分からないが、昨夜の強く怒っていた未来は跡形もなく消え去った。
今の彼女は響の裸体を久しぶりに見たことで暴走を始めている。
未来は大好きな幼馴染のことになると暴走しがちになるのは、S.O.N.G.関係者ならば全員が出会ってから今日までの日々の中でよく理解している。
装者の中の年長者として不埒な欲に駆られている未来を注意するべきなのだろう。
しかし、フロンティア事変にて、マリアは未来のことを「死んだ幼馴染に固執する哀れな英雄」と蔑んだウェル博士に対し、「響を死人扱いするなぁッー!!」とブチ切れてタコ殴りにしたのを間近で見てしまっている。
その時の強烈な記憶がマリアの脳裏に深く刻まれているのだ。
なので、正直に言って響が関わる未来の行動に一人で関わりたくない。
「はぁ……はぁ……響……ひびきぃ……」
「はぁ~~……よしッ」
せめて装者全員で止めたい、助けてセレナ……そう思うマリアだが、今この場には自分とみくひび二人以外に誰もいないため、ため息を再び吐いて覚悟を決める。
「——こら、未来! そこまでよッ!」
その後、マリアは頑張った。
メチャクチャ勇気を振り絞った。
まだ自分に慣れてくれてはいないが無垢そうな響の貞操のため、世話になっている場所の共用スペースを汚さないため、マリアは獰猛な動物も一目見たら逃げ出すであろう鋭い眼光で振り返った未来の蛮行を少しビビりつつも頑張って止め、年長者らしく注意するのだった。
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「——もぅ、貴女って子は! ここはみんなが使う場所なんだから、如何わしいことは……」
「うぅ……だってぇ……」
「だってもなにもないッ!」
湿ったタイルの上で正座させられた未来を りつけるマリア。
二人ともタオルを体に巻いた姿でかれこれ十分以上この状態でいた。
(……マリアさんって……お母さん、みたい……良い人、なんだろうなぁ)
そんな二人の様子を少し離れて見守る響は内心でそんなことを思っていた。
母親らしさのあるマリアの姿をみたことで、響の中で少しだけマリアに対する認識が変わっていくのだった。
ほのぼの一人目はマリアにしました。
マリアと親睦を深める話を書こうとしていた筈なのに気づいたらHENTAIな未来を書いていた……。
傷跡のことに触れようとしたのに未来のセクハラ?入れたら書き入れられなかったです。
響がマリアを呼び止めたのは、身長高くてちょっと怖いけど未来と一緒に自分を助けに来てくれた人だから大丈夫な筈と思ったから。それと自分のせいでシャワーを浴びるのが後になるのは申し訳なかったからです。
ちなみに、研究所で実験体してた時の入浴は錬金術で作った青い宝石型の装置に触れて綺麗にする術式で汚れを落とすだけの簡素なモノだった……という設定なので響がシャワーを浴びるのは久しぶりだったりします。
ここまで読んでくれてありがとうございました!