マリアさんはスッゴイ過保護。
マリアの説教をタオル姿で正座をして聞き続けて三十分。
ようやく解放された未来は手間をかけさせたお詫びとしてマリアの背中を流していた。
「……」
「響、これくらいの力加減で大丈夫かしら?」
「……はい……大丈夫です」
黙々とマリアの背中を洗っている未来に対し、マリアもまた優しい顔つきと声で尋ねながら正面に立つ響の小さな背中を洗ってあげていた。
響が背中を洗われている理由は、手持ち無沙汰解消と、未来がセクハラに集中してしっかり洗っていなかった可能性があるためである。
幸か不幸か、未来へ説教する姿に懐かしき母性を感じた響はマリアに対する恐怖心が薄れたようで、タオル越しではあるが肌に触れられても震えたりすることはなかった。
(それにしても……本当に小さいわね。調よりも小さいんじゃないかしら……)
「……♪」
(ぁ……この、傷痕は……)
マリアは洗いながら響の背中を見つめていると、そこに刻まれている多数の傷跡の中から見慣れた傷跡を発見する。
それは鞭によってついたと思われる数本の切り傷の痕。
一見すると爪痕のようにも見えるが、マリアには違うと分かってしまう。
マリアがF.I.S.にいた頃は自分を含めて実験体たちの体についているのをよく見たので嫌でも判別がついてしまうのだ。
(鞭だけじゃない……薄くなってはいるけれど、火傷や刺し傷なんかもある。左腕はよく見たら肌の色が他と比べてほんの少し白い……ここ一、二年で再生したからまだ新しい肌色なんだわ……本当に切断されたのね……)
「……泡、もこもこ……良い匂い」
(こんな体格が小さい子にこんなに傷を負わすなんてッ、パヴァリア光明結社という組織はは外道の集まりかッ! 許せないッ!!)
実妹であるセレナに加え、長らく苦楽を共にしてきた妹分の切歌と調という『守るべき存在』がいるマリアは過保護である。
姉としての本能か、それとも宿命か。
エルフナインたちから話だけを聞いた昨夜、抱いた怒りはまだ最低火力だったようだ。
実際に自分の目で響の体に刻まれた傷跡を見たマリアは、自分よりも幼い無垢な子供が悪戯に傷つけられた事実に憤慨する。
「ま、マリアさーん……もういいでしょ——」
「未来」
「はいッ⁉」
一人黙って静かに背中を流していた未来だったが、流石にもう手が疲れてきたので止めていいかと尋ねた言葉を遮り、マリアが真面目なトーンで名前を呼び掛けた。
響に聞こえないように声量はギリギリ未来に届くレベルに抑えられている。
「この子を傷つけた元凶には手加減するんじゃないわよ? 思いっ切り、ブン殴ってやりなさい」
「!」
「と言うか、私もムカついてきちゃったから一発入れるわ」
怒りが収まらないのか、マリアは響の背中を洗う手とは逆の手を掲げると、ギュッと強く握り締めて未来へ乱暴な宣言を伝えた。
「ッ……ふふ。そうですね。元凶が分かったら、一緒に殴りましょう♪」
急なマリアの暴力的な発言に一瞬目を見開いて驚いた未来は一間開けて笑みを漏らすと、マリアへ向けて自身もまた笑顔で暴力的な約束を交わすのだった。
「……未来? マリアさん? 何か言った?」
「あ、何でもないよ~。ね、マリアさん?」
「えぇ、ちょっとこの後のことを話してただけよ。さ、もう泡を流しちゃいましょう」
マリアも何度か敵を殴ってるので原作通り……ということで。
三人で背中の流し合いを最初に考えてついて、でもアニメ見る感じ潜水艦内には大浴場は無さそうで……でもどうにか入れたくて、いろいろ考えてオマケで無理やり入れちゃいました。
マリアの姉力?母性?で意外と早く響の心の隔たりが薄れました。
まだ救出されてから二日なんですよね……他の人たちとの話はどうするべきか……。
ここまで読んでくれてありがとうございました!