「先生殿~助けて~!」
「いらっしゃいミチル。どうしたの急に?」
昼食も過ぎ、眠気に耐えながらシャーレで書類仕事に精を出していると、いきなり百鬼夜行連合学院、忍術研究部、部長の千鳥ミチルが飛び込ん出来て半泣きで助けを求めてきた。
「先生殿これ見て!」
「何?スマホ?」
ミチルにグイっとスマホを押し付けられ、画面を見るとその画面には、
「少女忍法帖ミチルっち」
「そうこれ!」
少女忍法帖ミチルっち。それはミチルが多くの人に忍者のカッコよさを広めることを目的とした動画チャンネルである。
「これがどうしたの?」
「先生殿、これ見てわからないのぉ!?」
動画チャンネルには、更新順に動画が並んでおり、これといっておかしな事はない。
「わかんないなぁ」
「なんでぇ!?ここ見てよ!」
と言ってミチルが指さした所はチャンネル登録者の部分。
「全然チャンネル登録者が伸びないの!」
少女忍法帖ミチルっち。チャンネル登録者―――6人。
ちなみにうち1人は先生こと私である。
「そっかぁ」
「そっかぁ…って冷たいよ先生殿!」
「だってそんなチャンネル登録者の話されても、私にはどうすることもできないよ」
「うっ!?そうなんだけど…。じゃぁどうすれば…」
「そうだなぁ。動画はよく出てるし…後は、地道に宣伝するしかないんじゃない?」
普段から先生と呼ばれているが、ネットリテラシーは教えることは出来ても、流石に登録者を増やす方法はさっぱりだ。
「宣伝かぁ…」
「誰か有名な人にでも宣伝してもらえれば、一気に知名度は上がるわけだしね」
「有名な人……先生殿とか?」
「え?」
ギヴォトスの危機を何度も救ってきたシャーレの先生。確かに知名度はピカイチだ。
「そうだよ!先生殿、宣伝手伝って!」
「えー!?」
「いいじゃん!先生でしょ!?」
「ミチルは先生を何だと思ってるの?それに先生として誰か1人に肩入れするわけにはなぁ」
「じゃぁさりげなくでいいから!ちょっと露骨に宣伝してくれればいいから!」
「ちょ袖引っ張らないで、伸びる!?」
「ほら!私のお気に入りのクナイ触らせてあげるから!」
「危な!?刃物を押し付けないの!わかったから」
「やった!ありがとう先生殿!!」
「その代わり、宣伝なんて先生やったことないからどうなっても知らないよ?」
「大丈夫だよ。先生殿なら変なことにはならないよ!」
少女忍法帖ミチルっち。チャンネル登録者の内訳はイズナ、ツクヨ、イロハ、イブキ、アリス、先生。全て知り合いの動画チャンネル。
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
「部長、次はあっちのお店を見てみましょう!」
「も~待ってよイズナ、先に行かないで~」
先生に宣伝をお願いしてから数日が過ぎた。
宣伝を頼んだ私はというと動画の企画探しと、忍術研究部の活動を合わせてイズナと一緒に、ミレニアム付近のお店に来ていた。
忍術とは無縁そうだが、ちょっと違う目線で忍者を見たかったからだ。
そうして百鬼夜行ではあまり見ないミレニアムの機械製品などをイズナと見て楽しんでいると、
「あれ?あれは…主殿!?おーい主殿ー!!」
「しっ…!イズナ。ちょっと待って…」
イズナが大きく声をかけようとしている先生の周りには、3人のメイドが付き従っており、先生と敵対しているわけじゃないが、それでも物々しい雰囲気を感じ取れた。
「先生殿…今仕事中じゃないのかな…」
「え!?ではイズナが今からでもお助けに向かわないと!?」
「今から行ってもきっと邪魔になっちゃうよ!」
「それは…。…なら、忍びらしく主殿のお仕事が終わるまで、陰ながら主殿を見守ります!」
「あっイズナ!……でも陰ながらならいいのかな?だって忍者だし」
そう言って自分を納得させると、先生殿に見つからないように尾行した。
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・
・
そのまま先生殿を尾行していると私の予想した通り仕事中のようで、先生はメイドたちと一緒に、今は使っていない廃施設を根城としていた不良たちを、制圧していた。
やはり前に私たちと一緒に戦闘した時のように、先生殿の指揮は素晴らしく、不良たちはだんだんと窮地に立たされていた。
「これは私たちが出る幕はなさそうだね~」
「流石イズナの主殿です!」
私たちも安心して見守り、メイドたちも先生を信頼して戦闘を行っていたが、それがダメだった。
『クソッこのままやられて…たまるか!』
すでに倒されていた不良の1人がヨロヨロと立ち上がり、先生殿に向かって[[rb:RL > ロケットランチャー]]を撃った。
私たちもメイドも気づいた時には遅く、弾はどんどん先生に近づいていき、
大きな音ともに先生の近くに着弾し、爆風と土煙をあげた。
「主殿!!!」
ギヴォトス人ならまだしも、外から来た先生殿には、銃弾でも命取り、ましてや威力の高い、RLの弾なんて…大怪我だけではすまない。
『へへへ…やってやったぜ…』
不良の独り言なんて、聞く余裕も無く、イズナと仏頂面のメイドが先生の安否を確認すべく、わき目もふらず爆風の中心地に急ぐ。
他のメイドたちは先生の安否が気になりながらも、不良たちの相手で手が空かないようだ。
そんな中私は、呆然とするしかできなかった。
「先生殿……」
だんだんと煙が風で晴れていき、先生殿の姿が現れていく。
「あるじ…どの…?」「せん…せい…?」
しかしそこには、先生の姿は無く代わりに、
「きつね…?」
そこには先生はいなく、代わりに爆風で少し汚れてしまっているが、目元に赤い縁取りをされた白い狐のぬいぐるみが横たわっていた。
その光景に驚いたのは、味方よりも敵側。なぜなら決死の攻撃を放った相手が、何をしたのかわからないが、消えていたからだ。
『ど…どこに消えた!』
「こっちだよ」
『っ…!』
突如背後から聞こえて来た先生の声に驚いた不良は、急いで振り返ろうとするが、その首にクナイを突きつけられ、動けなくなってしまう。
「神出鬼没 空蝉の術。成功かな?」
『いつの…間に…』
「出来れば大人しくしてほしいな?これ以上手荒な真似したくないからね」
・
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・
「主殿ーーーーー!!!!!」
「心配させてごめんねイズナ。あとちょっと力抜いて?背骨が折れちゃう…」
「本当です先生。こんなにメイドを心配させるなんて」
「うん、トキ。心配させたのは悪かったけどさもう少し力を緩めて?肋骨がそろそろヤバい…」
無事に廃墟を占拠。不良たちを全員捕縛したところで、駆け付けたイズナとトキによって、前と後ろから力いっぱい抱きしめられる。
「まったくお騒がせな先生だな!本当に爆散したかと思ったぜ!」
「ご主人様無事でよかったー!」
「ネル、アスナ…。二人とも心配かけたね。それでお願いなんだけど、イズナとトキをはがすの手伝ってくれない?」
「それは心配かけた先生の責任です」
「はい…」
先生の願いはアカネによって無碍も無く、却下されてしまう。
『チクショウ…何でこんなことに…』
さっき先生にRLを打ち込んだ不良生徒が悔しそうに呻く。
「あぁ?それはテメーらがミレニアムの商品を横流ししてたからじゃねぇか!?」
『そうでもしなきゃ金がねえんだよ!』
「だとしてもまっとうなことして働かないとダメだよ」
『そんなことわかってる!…だけどもうこんな悪事に手を染めた私たちにはもうまっとうなところで働くことなんて…』
「だったら最初からするんじゃないの。…もしまだ生まれ変わりたいなら矯正局から出たら、シャーレにおいで。仕事なら一緒に探してあげるから」
『こんな私たちでもいいのか…?先生?』
「可愛い生徒の頼みならね」
「相変わらずあめえなぁ先生」
犯罪を防ぎ、なおかつ容疑者も反省の余地あり。
これにて一件落着だが、
『あと一つ聞きたいことがあるんだが』
「なに?」
『私が撃ったRL…どうやってかわしたんだ…』
「私もご主人様がどうやって避けたのか気になる!」
「あれは忍術、空蝉の術だよ」
『私あれがどうしても気になるんだ!どこで知ったんだ先生!』
「それは…少女忍法帖ミチルっちをフォローしてるから」
・
・
・
先生の話しを陰で聞きながらミチルは思っていた。
(そんな術紹介してないよ!?)
先生が安全だとわかった瞬間、ミチルは安心からか腰が抜けてしまい、さっきまでまともに立てず、戦闘を傍観していた。
戦闘が終わり、ミチルは先生とイズナ元に合流しようとしたが、メイドたちや不良生徒に人見知りを発動させてしまい、物陰から出ることなく先生たちの会話を聞いていた。
先生が宣伝してくれていたが、物陰にいたためそんな術私できない!と言えず、
(どうしよう!?イズナに教えてもらう?でも部長としての威厳がーーー!?)
と、大変パニックに陥っていた。
少女忍法帖ミチルっち。最新の動画は、『最先端学校の郊外にある謎の廃墟、潜入してみた!』
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「こんなもんかな~」
以前の事からこれまた数日。
先生殿の地道な宣伝のおかげで少しだけだけどチャンネル登録者と視聴者数が伸びてきた。
あと空蝉の術は、お祭り運営委員会とのコラボと最大級のお茶濁しの術で何とかすることができた。
どんどん成長していく自分のチャンネルを見て、ほくほくしながらも次の企画アイディアを見つけるべく、私は忍術研究部の部室でテレビを見ていた。
「なにか面白い番組やってないかな~。あれ?」
のんびりとテレビを見ていると急に画面が代わり、画面の上部には生中継と緊急放送の文字が浮かんだ。
「緊急?どうしたんだろ…?」
いつぞやの赤くなった空を思い出し窓に近づき、空を見ても空は変わりはない。いつものまま青いまんまだ。
『緊急事態です、見てください皆さん!突如として出現した巨大な機械生命体!
その巨体によって周りの建物が次々と倒壊!現場では甚大な被害が出ております!』
テレビから聞こえるレポーターの必死な声を聞き、再びテレビの前に座る。
『皆さん!たった今連邦生徒会から避難命令が出されました!皆さん落ち着いて避難してください!』
テレビの中では巨大な機械生物が、建物をその四肢でなぎ倒しており、その被害から逃れるため、慌てて逃げる市民が映し出されている。
「巨大な機械生物…」
そのテレビの様子に私は怯えながらも、画面に釘付けだった。
カメラは相変わらず逃げる市民を移し続けている。
だが、次第に逃げる市民の間を突き抜け、現場に向かう人物の姿が映った。
レポーターもその人物に気が付き、レポートを開始する。
『何でしょうか、あれは!?逃げ惑う市民とは逆に、こちらに向かってくる人物がいます!』
カメラに映し出される人物はだんだんと大きく映り、その詳しい輪郭を現していく。
『あれは…自転車…?』
向かってくるのは、自転車に乗っている銀髪で獣耳を生やした少女。
だが、レポーターが気になったのは、その後ろに乗っていた、
『いや…あれは、せんせい!?シャーレの先生が現場に現れました!!』
レポーターが興奮気味に伝える間にも、先生を乗せた自転車は、猛スピードでカメラの方へ向かっていき、やがてカメラの前で急ブレーキで止まった。
『ちょっとこんな所にいると危ないよ。避難しなさい、避難』
「先生殿…」
先生が現れたことによって画面の向こうが大変だと思うが、少しほっとしてしまう。
『先生!これはどのような状況なのでしょうか!?』
『私も詳細はわからないけど、どうやらギヴォトスのの地下に封印されてたやつを、どっかの馬鹿が解いちゃったようだね』
淡々と質問に答えながらも、先生殿はまだ距離が遠い機械生物から目を離さずに観察している。
『そ、それは大丈夫なのでしょうか!?ギヴォトスの未来は!?』
『大丈夫。すでに救援も呼んであるし、弱点も調べてもらって次期にわかるから』
『ん、先生そろそろ時間。私たちも早く行こう』
『そうだねシロコ。じゃぁ君たちも危ないから避難誘導と同時に早めに避難してね』
まだ異変から時間がたっていないのに、こんなにも冷静に対応できる先生殿を見て素直にかっこいいと思う。
シロコと呼ばれた少女が、ペダルに力を入れたところで、レポーターが声をかける。
『せっ先生!!』
『どうしたの、まだなにか?』
『さ、最後に生徒たちに伝えたいことは!?』
『伝えたい事?』
先生殿はレポーターの質問に、少し考えると
『伝えたい事…あ~そうだ。―――少女忍法帖ミチルっち。よろしくね』
『先生!?何ですかそれは!?先生ーーーー!?』
先生殿はそう一言言って猛スピードで現場に向かった。
そんな私は先生殿の姿を見て、
「先生殿ーーーーー!?」
冷や汗を流す
私にはもうすでにテレビの向こうの被害などどうでもよくなり、急いでパソコンを立ち上げ、少女忍法帖ミチルっちを検索する。
「ヤバイヤバイ!!」
案の定そこには、少女忍法帖ミチルっちに関するスレや掲示板が大量に並んであった。
自己チャンネルの様子を見ると、目にも止まらない速さで視聴者数がぐるぐる回っている。
SNSでも少女忍法帖ミチルっちの言及がたくさんされており、私の思惑通り先生の宣伝のおかげで少女忍法帖ミチルっちは一気に知名度が上昇したのだ。が、
「こんな広まり方はヤダーーーーー!!!!!」
こうして私はギヴォトス1、知られる動画投稿者になった。
勿論悪目立ちとして。
少女忍法帖ミチルっち。この2日後に、チャンネル登録者―――10万人達成。
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さらにさらに数日後。
私は、シャーレに向かう為、DU市内を歩いていた。
頭にはほっかむりをして姿を隠しながら。
この様子は忍者とはもはや呼べず、知らない人から見たら泥棒と呼ばれるぐらいに不審な恰好であったが、私にとって姿がバレ無ければ些細な問題だ。
どうにか世間から隠れながら、シャーレにたどり着くと、宣伝を頼んだ日と同じように先生は書類仕事にいそしんでいた。
「ちょっと先生!!」
「いらっしゃいミチル。どうしたの急に?」
「急にじゃないよ!?どれだけ私が大変だったと思ってるの!!」
「イズナから聞いたよ。部長が有名人に…イズナには手の届かない所に行ってしまわれましたって」
「有名人ってもんじゃないよ!道端でも百鬼夜行でも色んな人に囲まれて大変だったんだから!!思い出したら……ウッ!!」
「ほらバケツ…」
私が現状を思い出して、気持ち悪くなり口に手をあてると、先生殿はバケツを渡してくれたがそれを丁重に断る。
「でも本当に有名になったんだねぇ」
「オェ…なに他人事みたいな顔してんのさ」
「ほら、ミチルがEXスキルの反動で転がる姿が、明るい曲に合わせて高速で行き来しているGif動画がSNSに流れてるよ」
「これだからインターネットは嫌い…。今だけは先生殿も嫌い…。」
「悲しい…」
「これじゃぁ表歩けないよ…」
「なんか手伝おうか?」
「もう先生殿には何も頼まない」
少女忍法帖ミチルっち。動画の内容やミチルの人柄によって変に炎上することなく、ネットの玩具になった後に、盛り上がりは沈静化した。
皆さん眼鏡というものを知っているでしょうか?
目に装着することによって、視力の補正、目の保護などを目的として使う器具である。
そしてコンタクトレンズと違い、眼球に直接触れることはないので、お子様からお年寄りまで安心してかけられる便利な代物でもある。
視力の矯正以外にも、伊達眼鏡、ブルーライトや紫外線をカットする眼鏡もあり、オシャレアイテムなどとしても重宝している人も多くいるだろう。
素材や形も様々なものが世に出ており、市販で並べてある物を眺めるだけでも楽しいだろう。
しかし今ここまで読んでくれている人たちならこう思うだろう。
知っとるわ。
何年眼鏡が身近にある生活送ってる思ってるんだ。
吊るせ吊るせ!と。
だがここで聞いてもらいたい。
………眼鏡って良くない?
この世に産まれ落ちて二十余年。つい最近眼鏡の良さに気づきました。
別に今まで眼鏡のキャラが嫌いだったわけじゃない。眼鏡のキャラを可愛いと思ったこともあるし、アヤネのメモロビで、え?そこで眼鏡外しちゃうの?と思ったこともある。
だが、ある時天啓が、来た…!眼鏡とはなんと、げに素晴らしきことかと!
そして前述したように眼鏡には様々な素材や形のものが出ている。スクエア、ラウンド、ボストン。
眼鏡好き強火の方々は、これらの魅力を、好きを語る。
しかし吾輩、弱火も弱火、若輩者の眼鏡好きでござい。
だからこの一言で締めさせていただきたい。
『眼鏡っていいよね』
それと、今回眼鏡の話題とは一切関係ない話ですが、この拙き作品、どうぞ宜しくお願いいたします。