ブルアカT   作:あまいろ+

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フルアーマー先生

シャーレの先生が撃たれた。

 

クロノススクールの報道部がそう報道したのが1週間前。

 

すぐに連邦生徒会の生徒を派遣し調べてみると、誤報であることがわかったのだがそれでも、そのような報道が流れてしまったため、ギヴォトスでは現在ちょっとした混乱が起きていた。

 

正確にはDU区画外の鎮圧に向かった先生が銃撃戦の中で、崩れた瓦礫の一部が丁度頭に当たり、気絶したのが事の真相だ。

 

当たり所が良かったのか、すぐにトリニティ学園の救護騎士団に運ばれ、治療を受けたようだ。

 

幸いたいした怪我も後遺症もなかったようだが、普段の生活も祟り、この1週間の間は検査と入院で療養していたが、本日退院予定だ。

 

そんな退院後の先生の身体に鞭打ちたいわけではないが、早急にギヴォトスの混乱を治めるべく、退院後はすぐに連邦生徒会に来ていただけるようにと連絡した。

 

そんな連絡をした七神リンは、少し落ち着かないながらも連邦生徒会の応接室で、先生に説明する書類を整理しながら待っていた。

 

先生が入院し、実質混乱の鎮圧に動けるのは自分しかいなく、この1週間ろくに休まずに仕事をさばいていた。

 

その為彼女は、とても忙しく先生のお見舞いになんかとてもじゃないが行く事が出来なかったのだ。

 

先生の安否については、仕事の合間にモモトークで連絡を送り判明していたが、

 

ギヴォトスの平和に何度も協力してくれた先生を、憎からず思っている彼女にとっては、元気な先生の姿を早く見たいのである。

 

『行政官、シャーレの先生が見えました』

 

「通してください」

 

扉の外の声に返事をすると、懐かしい先生の姿が、

 

「おはよ、リンちゃん」

 

「………どなたですか?」

 

「久しぶりなのに酷くない!?先生だよ!?」

 

「先生でしたか。すみません、私の知っている先生の姿とは違ったので…」

 

「どう見える?」

 

「………鏡、見てみますか?」

 

そう言うとリンは、応接室に置いてあった姿見を先生の前に置く。

 

「おぉフルアーマーみたい」

 

「……何故、身体中に生徒がしがみついているのですか?」

 

そこに映った先生の姿は、まず頭部に小鳥遊ホシノ、腹部に空崎ヒナ、背中に聖園ミカ、左腕に天童アリス、右腕に月雪ミヤコ、左脚に久田イズナ、右脚に狐坂ワカモの面々が各部位を身体全体で抱きしめるように、しがみついていた。

 

どの生徒も、虚妄のサンクトゥムタワーやアトラハサースの箱舟の際に力を貸してくれた生徒なのでリンも認識していたが、身体中に生徒がしがみついているという、夢でも悪夢よりの光景に、至極まっとうな疑問が口に出る。

 

「いや……さっき退院してきたんだけどさ、私が撃たれたって聞いてみんな心配してくれてね」

 

「そうですね…、ギヴォトス中がその話題一色でした」

 

「そうなんだよリンちゃん…」

 

「…誰がリンちゃんですか」

 

「懐かしいなぁこのやり取り…。それでみんな私が守る!って言ってくれて…」

 

「それで、こうなったと?」

 

「うん」

 

「先生……もう少し入院した方がいいのでは…」

 

「本当だよ!?」

 

「はぁ、それは信じるとしてここまでどうやって来たのですか?まさか病院から歩いてここまで…」

 

「いやいや流石にそれはね。人の目もあるし」

 

「ここ、人の目の中心地なのですが」

 

連邦生徒会。現在実質ギヴォトスの統治を行っており、常に人の目がある場所である。

 

「もう、それはしょうがないから、近くまで便利屋68に頼んで車で送ってもらったよ」

 

「もう、いいです。なぜこうなったのかはわかりましたから…」

 

ちなみに車内では、アルとカヨコはずっと困り顔、ハルカはいつものようにオロオロしていて、ムツキに至っては終始先生の姿を見て爆笑していた。

 

「あと連邦生徒会の生徒が誰も目を合わせてくれなかった」

 

「でしょうね」

 

でしょうね。

 

「では…そろそろ始めますか…」

 

「そうだね、私も早く座りたい。足がそろそろ限界で」

 

「離れるように言ってみては?」

 

「あーみんな離れてくれる?」

 

『やだ』

 

満場一致である。

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

「それでこちらの建物の被害ですが…」

 

「これの建て直しは…」

 

『先生、ナギちゃんがいい建設会社知ってるよ☆』

 

「本当?じゃぁあとでナギサに相談してみるかな」

 

「…後は現在、クロノスの誤報のせいで先生の様子を気にする、学校や生徒がたくさん居りますので」

 

「そうだね。私から無事だって伝えようか」

 

『先生。ならばまずシャーレのアカウントで先生の無事を配信しましょう。それなら多くの人にすぐ先生の様子が分かると思います』

 

「それいいね。ありがとうミヤコ」

 

『アリス配信の準備手伝います!』

 

「そしたらアリスにお願いしようかな」

 

「……この被害に乗じて、不良たちのカツアゲなどが横行しているようです」

 

「あぁ早急に対応した方がいいね」

 

『だったら風紀委員で見回りを行うわ』

 

「大丈夫?ゲヘナからも遠いし大変じゃないかな…」

 

『そしたらおじさんたちも手伝うよ~』

 

「ホシノたちも協力してくれるの?だったら任せても大丈夫かな…」

 

『あなた様、私も微力ながらお手伝いしますわ』

 

『主殿!イズナも手伝います!』

 

「みんな……!!」

 

多くの生徒が手を取り合い協力する熱いシーン。

 

だがリンには先生にしがみつきながら生徒たちが会話する姿が、一つの身体に意識がたくさんある妖怪の類に見えた。

 

そういえば以前先生からすすめられた漫画にそんな怪人がいたような気がする。

 

「リンちゃんどうしたの?」

 

「…いえなにも。ただ話しが早く進むのはいいのですが、とても気が散ってしまって」

 

「私は慣れちゃった」

 

先生の適応能力に引いていると、応接室の扉から控えめにノックをされる。

 

「?どうぞ」

 

「失礼します。あ、アリスちゃんいた」

 

「ミドリ?」

 

「ゲーム開発部の人ですか」

 

「先生昨日ぶり」

 

「そうだね。昨日も一昨日もお見舞いに来てくれたね。アリスを迎えに来たの?」

 

「違うよ。交代しに来たの」

 

「交代?」

 

「うん。ほらアリスちゃん交代の時間だよ」

 

『嫌です!!アリスはこのまま先生とモンスターを退治しに行くんです!!』

 

「モンスターならもう私の目の前にいますけどね」

 

「約束したでしょ!平日の8時から13時まではアリスちゃん、13時から18時までは私って決めたでしょ!」

 

「シフト?」

 

「しかもパート勤務みたいですね」

 

「ほら先生も困ってるでしょ!?」

 

「先生ミドリにも困ってるよ」

 

無論ミドリだけではないが。

 

『ミドリ引っ張らないでください!アリスは離れません!あっやめっ、ンアーーーッ!!!』

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

迎えにきました~☆

 

ホシノ先輩帰るよ!

 

うへ~あともうちょっと~

 

ん、先生私も装着するべき

 

シロコ先輩も帰りますよ!

 

 

ーピッ はい、うんわかった。今そっち行く。……………………はぁっ。先生、今ゲヘナで温泉開発部が暴れてる見たいだから戻るね。うん、大丈夫。またね先生。

 

 

ミカさん帰りますよ

 

えー!私もっと先生といる!!

 

……そういえばコハルさんがミカさんのこと探してましたよ?お茶菓子がなんとかって言っていましたが。

 

え!?コハルちゃんが!?…行くしかないじゃんね☆先生またね!

 

 

もう!ミドリもアリスも何してるの!?帰るよ!

 

お姉ちゃん!?何でここに!?

 

オラァ!とっとと帰んぞチビ!余計な世話かけさせんじゃねぇ!!

 

うわぁん!アリスは先生の鎧になるんですー!

 

 

おいミヤコ!帰るぞ!

 

サキ…、私はまだ帰りません。あと数日はここで暮らしますので

 

馬鹿な事言ってるんじゃない!任務もあるだろうが!

 

いえ私は何と言われようと…!あれ?サキだけですか?Rabbit3とRabbit4は?

 

私だけだ。じゃんけんで負けたからな。

 

私小隊長なのですが…。

 

 

イズナちゃん迎えに来たよ……

 

ツクヨ殿!迎えに来てくれたのですか!

 

うん、百鬼夜行に帰ろう…?

 

で、でもイズナは…、あれ?部長はいずこへ?

 

あ、部長なら…さっき表で忍術の練習をしてて…それで、あの…ボヤを…。

 

ボヤ……火事ですか!?それはいけません!主殿、イズナは急いで消火してきます!

 

あ、イズナちゃん…!もう消火は終わっ…行っちゃった…。

 

 

…ここは私も空気を読んで帰りますか。ではあなた様、またの機会に。

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

その後天童アリスが騒ぎ出したのをかわきりに、先生にしがみついていた生徒の関係者を連絡して呼び、どうにかお引き取りいただいた。

 

「あー身体が軽い」

 

「7人もしがみついてれば当然です。よく潰されませんでしたね」

 

「1週間も健康な生活してたからね。今は体力が有り余ってる感じ」

 

「それはよかったです。また明日から先生のお仕事頑張ってください」

 

「仕事溜まってるんだろうなぁ」

 

明日の仕事に憂う先生を尻目に、デスクに散乱していた書類を纏める。

 

「これで先生の入院中にあったことの説明と対策の話し合いは終わりました。先生お疲れ様でした」

 

「あれ?予定時間より少し早いけど?」

 

「予期せぬ妖怪からの助けのおかげで早く終わったんですよ」

 

「そっか、それならリンちゃんこれから時間ある?」

 

「まだ仕事が残ってますけど、なにか?」

 

「もうお昼も過ぎてるしご飯でもと思ってね」

 

時計を見ると短い針は2時を差していた。

 

これから先生との話し合いで決まったことを纏めないといけないが…。

 

「そうですね…ではお願いします」

 

後でいい。先生と違ってこっちはこの1週間、忙しさでまともな食事を取っていないのだ。

 

どうせなら1番高いのを選んで奢って貰おう。

 

「決まり!リンちゃんなに食べたい?」

 

そんな私のちょっとした思惑を知らず、先生は部屋を出ようと、扉の方へ歩いていく。

 

そこで私は思い出した。

 

「あ、先生。そこで止まってください」

 

「え?なになに?」

 

「止まって、扉の方へ向いてください」

 

「いいけど…どうしたの?」

 

無防備に私に背中を向ける先生。そんな先生に向かって私は…。

 

背中から抱きついた。

 

「リンちゃん…?」

 

普段私がしないであろう行動に、目をぱちくりしながらも抵抗せず、私に抱きしめられる先生。

 

「そういえばまだ、直接言っていませんでしたね。先生、帰ってきてくれて嬉しいです…、ご無事で安心しました……」

 

まだ先生に言っていなかった。

 

私も貴方を心配していたことを、そして貴方にまた会えて良かったことを。

 

先生に顔は見られないが、なんだか気恥ずかしく、先生の背中に顔を押しつけ見られないようにする。

 

そんな私に、先生は回された私の手に、安心させるように自分の手を重ね、言った。

 

「うん、ただいま…リンちゃん」

 




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