「さーてもう逃げ場なんてないぜ?」
「お姉ちゃん!ピンチだよ!」
「どうするの!?先生!」
某日。
私たちは、逃げ込んだ古い施設の一室で、たくさんのスケバンに取り囲まれ、追い詰められていた。
何故こんなことになっているのかというと、少し時間を遡らなければいけない。
・
・
・
シャーレで仕事をしている最中に、ゲーム開発部からミレニアムのゲーム開発部からゲームのお誘いがあり、丁度仕事も一段落着いたので、せっかくだからとお邪魔させてもらった。
ゲーム開発部に到着し、みんなとしばらくゲームで遊んでいるとモモイが何かに気づいたように言った。
「あれ?もうお菓子がない!」
モモイの言葉にその場にいた全員がテーブルに目を向けると確かにそこには、お菓子の空き袋が散乱していた。
「あれ…?もうなくなっちゃったのかな…?」
「アリス見てました!モモイがバックバック大量にお菓子を食べてました!」
「ええ!?私のせい!?」
「アリスちゃんもたくさん食べてたでしょ?お姉ちゃんも大量に食べてたけど」
「じゃぁ私が買ってくるよ」
ゲーム開発部のみんなが言い合いになったところで、私が買い出しに行くことを申し出る。
「せ…先生が…!?そんな申し訳ないです…!」
「そうです!私も行きます!」
「先生!私ポテトチップスがいい!」
「アリスはアイスがいいです!あの高くて美味しい英語のアイスをお願いします!!」
流石個性の強いゲーム開発部。
ユズとミドリは申し訳なさそうに、モモイとアリスは生き生きと先生をパシってくる。
あとモモイはまぁいいとして、アリス、キミはもう少し遠慮という言葉を覚えなさい。
別にいいけどね!
「じゃぁミドリ、先生と一緒に行こうか」
「はい!一緒に行きます!」
モモイはゲームをするため動きたくないらしく床に寝転んでいる。
アリスは論外。ユズを外に連れ出すのは気が引ける。
なら、と一番協力的なミドリを誘ってみた。
快く引き受けてくれて良かった。
誰を連れて行くか決まった私は、ゲーム中座りっぱで凝り固まった身体を起こし、出かける準備をする。
「ついでだから飲み物とかも買おうかな」
「飲み物も買うのでしたら、もう一人いた方がいいですか?」
「重いし、そうかもね。そんなに大量に買うつもりはないけど」
「だったらお姉ちゃんも来てよ」
「ええ!?」
「何を驚いてんのさ…言い出しっぺでしょ?」
「そおだけど~…だけど大量には買わないんでしょ?」
「ふーん。お姉ちゃんは私と先生だけに重い物を持てっていうんだ?買い出しの途中でなにかあった時でも大荷物で立往生すればいいんだ?お姉ちゃんは冷たい人だね。私と先生だけで大変な思いしてくるよ」
「なんでヒス構文!?わかったよ!私も行けばいいんでしょ!?」
「いや…大丈夫だよモモイ、無理しなくても」
「行くって言ってるでしょ先生!ほら早く準備して行くよ!」
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
「ついたー!早速お菓子ー!」
「お姉ちゃんはしゃぎすぎ…」
「私は飲み物担当するから、ミドリはモモイとお菓子をお願い」
「わかりました。任せてください」
ゲーム開発部から近いコンビニに着き、空調の効いた広くない店内を私は才羽姉妹と別れて買い物を進める。
まず炭酸は必須か。お茶系統があっても飲まないかな?後はジュースか。
あ、コーン茶売ってる。珍しい…買ってこ。
飲み物の選別も終わり、才羽姉妹の様子を確認すると、まだお菓子のことで話し合っていたため、先にアリスの要望であったアイスを見に、アイス売り場を覗く。
確か、英語のアイスで美味しいやつだったか。
アリスの要望を思い出しながら、冷凍のショーケースを確認すると、
「あったあった」
そうして私が取り出したのは、1箱に6粒入ったアイス。
台形のようなアイスが、チョコレートでコーティングされた、1口サイズのアイス。
これでいいよな、アリス。
『うわーん!違います!アリスが求めているのは、カップの高級感が売りのやつです!』
うん、私の心の中のアリスは満足しているようだ。
無事に要望のアイスを手に入れたため、再度才羽姉妹の方へ向かうと、どうやらお菓子の方は決まったようだ。
「あ、先生!これよろしく!」
「お願いします先生。先生の好きなチーカマも入れておきました」
「ありがとうミドリ」
才羽姉妹と合流した後は、二人と一緒にレジに並ぶ。
「先生チーカマ好きなの?」
「好きだよ。これとお酒で一杯やると、…もうね」
「…先生お酒飲むんですか?」
「たまにね。月に何回かぐらいかな?」
「知らなかったよ先生がお酒飲むなんて」
「生徒の目の前では飲まないからね」
「…先生はお酒は強いんですか?」
「普通かな。飲みすぎで倒れたことはないけど」
「一度も倒れたことないの?」
「あー、最初の方は自分のキャパがわからず飲んでたから、よく気持ち悪くなってたな…。あの時は大変だったな」
「お酒って危なそうですね…」
「用法容量さえ守ってれば良薬なんだけどね。前は大変だったけど、今は気持ち悪くなっても大丈夫だからね」
「慣れちゃったってこと?」
「それもあるけど、今はかかりつけ医がいるから安心なんだよ」
「かかりつけ医、ですか?」
「うん、私が体調が悪いと私がどこにいようと、どこからともなくやって来て、治療してくれる看護師さんかな。ちなみに帰る時は一瞬で姿を消す」
「それ本当に看護師?妖精とかじゃなくて?」
「お姉ちゃん、妖怪の方かもしれないよ」
「私の生徒だよ」
「あ、生徒さんなんですか」
「トリニティのね。鷲見セリナって子なんだけど、救護騎士団っていう部活に入っているんだ」
「あ、本当に看護師なんだ」
「二人ともセリナのこと何だと思ってるの?」
「「妖怪」」
「……優しい生徒なんだよ」
「私たちも悪いけど先生の説明も悪いよ」
「もっとなにかないんですか?」
「セリナのこと?えーっとまず救護がうまい」
「必須だけど基本だもんね」
「ひいき目じゃなくても上手なんだよ。包帯の巻き方とか治療の説明とかさ。あと、患者の状態を見るのが得意」
「大事なことですね」
「情けない話なんだけど、よく徹夜でボロボロになってるとね急に現れて、何日徹夜してましたね?とか、インスタントの食品ばかりでは身体にお悪いですよって、まるで見てきたかのように当てるんだ」
「……へー」
「あと凄いのは、セキュリティに掛かんないし、監視カメラに映んない」
「………」
「さぁここまで聞いて、改めてセリナをどう思った?」
「「怪異」」
「うん、わかってた」
先生の納得と同時に店員に次の方どうぞと声をかけられ、会計を済ませた。
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
買いたい物も買い、部室へ帰る帰り道。私はモモイとミドリと一緒に会話に花を咲かせながら帰路を歩いていた。
「でさーアリスがこの前、部室にそこらへんで知り合ったらしい友達連れて来てさー」
「アリスもなかなか交友関係が広いね」
「あの人凄かったよね。美食家なんだっけ?」
「………」
「そうそう!凄い綺麗でしかも銀髪で!まるでお嬢様みたいだった!」
「その子って…」
「先生もしかしてお知合いですか?」
「…その子はね、テロ………ゲヘナでとっても有名な生徒だよ!」
「有名人なんだー!サインとか貰ったほうが良かったかな!」
「アイドルじゃないんだから…」
「ポスターならゲヘナの街中にたくさん貼られてるよ」
「めちゃめちゃすごいじゃん!?」
顔写真と一緒にWANTEDって書かれてあるポスターなら、ゲヘナと言わず色々な所に貼られているだろう。
「先生はアリスちゃんと一緒で色々な人とお知合いなんですね」
「これでも先生だからね」
「他にも誰かおもしろい人と知り合いじゃないの?」
「そうだなぁ…忍者とか?」
「「忍者!!」」
「二人とも興味津々だね」
「気になるよ!だって忍者だよ!?」
「ぜひ会ってイラストの参考にさせてもらいたい…!」
「じゃぁ今度紹介しようか?」
「お願いします!」
「私忍術教えてもらいたい!」
「忍術いいよね。先生も一つだけど忍術を『おい!いいから金出せよ!!』ん?」
目をきらきらとさせる才羽姉妹に、忍術研究部への紹介を約束していると、路地の裏からあまり穏やかでは無い声が私たちのもとに聞こえた。
歩いていた路地からこっそりと声の聞こえた裏路地を覗くと、裏路地にいたのはミレニアムの生徒とスケバン。
スケバンはミレニアムの生徒にメンチを切って怒鳴りつけており、ミレニアムの生徒はすっかり怯えてしまっている。
さっきのセリフや様子から見てどうやらカツアゲの現場だろう。
「先生…」
「わかってる。二人とも少し待ってて」
心配そうに見つめる二人を手で軽く制し、私はカツアゲをされている裏路地に向かった。
私が裏路地に入り、進むとスケバンもミレニアム生も私の存在に気づく。
突然の乱入者に不思議そうにする二人に私は声をかける。
「こらこら、カツアゲなんていけないよ?」
「あぁ!?知らねぇ大人が邪魔すんじゃねぇ!」
カツアゲの邪魔をされ怒るスケバン。
あいにく作戦では恐怖状態を駆使する私には効きはしない。
「先生!」
「あ?先生ってあの先生か?」
スケバンの方は私のことを知らなかったようだが、カツアゲされていたミレニアム生は私の事を知っていたようだ。
不安そうな顔から、少し安心した顔を見せる。
「先生でも関係ねぇ。あたしの邪魔すんじゃねぇよ!」
「こんな現場見て、邪魔しないわけないでしょ」
「先公がうるせぇな!」
私が邪魔した事と引かないことで、スケバンはイライラした様子で私に突っかかって来る。
完全に標的がミレニアム生から私へとシフトしたところで、スケバンに見えないように、手をヒラヒラさせ、ミレニアム生に合図を送る。
ミレニアム生は私の合図に気づき、オロオロした様子でこちらに一礼し、慌てて去っていった。
「キミはここで何してたの?」
「あぁ!?見りゃわかるだろ?コイツから金を…いねぇ!?」
スケバンはとっくにいなくなってしまったミレニアム生に気づいたようだ。
「クソ逃げられた!しょうがねぇアンタでいいや。逃げたアイツの代わりに金だしな!」
「カツアゲはいけないって言ったでしょ?」
「うるせぇ!さっさと出せ!」
ミレニアム生に逃げられたことの怒りで興奮したのか私の胸倉あたりを掴んで脅してくる。
「とりあえず落ち着いて。なんでそんなにお金が欲しいの?」
「そんなの決まってるじゃねぇか!!」
この時代の子はお金が掛かる。何か欲しいものがあったりとかするのかな?と思いながらスケバンの答えを待っていると、
「恵まれない子に寄付すんだよ!!」
「え?」
「聞こえなかったのか?恵まれない子に寄付すんだよ!!」
「あぁ合ってた。エクスクラメーションマークもピッタリ同じだった」
「噂で聞いたんだ。アリウスってとこには食うものにも困ってるやつらがいるって…」
「うん…」
「そんなやつらをよぉ、あたしらが助けるために募金で金が必要なんだよ!!」
「さては良い子か?」
手段はいったん置いとくとして、目指している物は大変すばらしい。
「先生もアリウスのことは知ってるよ」
「そうなのか!?なら話はわかんだろ!」
「その子達のために募金をして寄付するのはとても立派だ。…でもその人から巻き上げたお金でその子達は喜ぶの?」
「そ、それは…」
「今キミがしているのは、アリウスの子を助けるために、他の子を傷つけてるだけだよ」
「わかってる!わかってるけど…アイツらを助けるためには…」
「トリニティ」
「あ?」
「アリウスの問題はね、私もどうにかしたいと思ってたんだ。そこで、さ、今度トリニティと一緒にアリウスの支援をすることが決まってさ」
「それって…」
「うんキミだけが、あの子たちを助けたいわけじゃないってこと」
「良かった…あたし達の他にも助けてくれるやつらがいたんだな…」
「そこでキミが良かったら、その支援に参加してくれないかな?」
「あたしも…?」
「やり方が悪くてもこんなにあの子達を思っているんだ。あと…どうも一筋縄ではいかないようでね。出来ればキミの力を貸してもらえると嬉しいんだけど…」
「こんなあたしでもいいのか…?」
「うん、協力してほしい」
「わかった…こんなあたしでもいいなら…、ぜひ手伝わせてくれ!!」
始めはどうなることかと思ったけど、何とかなったかな。
他人のために真剣になれる人はそういない。やり方を間違えたとはいえ、彼女の思いは間違えていない。
ならば大人の私が導いてやらなければいけないだろう。また彼女が他人のために動けるように。
さて、話しも少し長くなったな。
表の路地を見ると、私の事を待っているモモイとミドリはわちゃわちゃと言い争いをしているようだ。
早く戻り、安心させねば。
「じゃぁ落ち着いたらシャーレに連絡して。あと、今まで迷惑かけた子達には可能な限り謝るように!」
「わかってるよ、あたしらも悪いことしたと思ってるよ…。おっとワリィ、ずっと胸倉掴んだままだったな…」
「いいよこのぐらい。気にしないで」
「そうか?ありがと先生。…じゃぁまたな」
そう言って手を開き、胸倉から手を話そうとするスケバン。
「またね」
別れの挨拶をする私。
「あ」
そして銃を暴発させるモモイ。
モモイの暴発した弾は、奇跡的にもスケバンの横っ腹に当たり、スケバンは軽く吹っ飛んだ。
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
「おいいいいい!?なんで撃ったの!?ちょっと!?撃ったのどっち!?」
「お、お姉ちゃん!!!」
「ミドリにも原因あるでしょ!?」
「キミ!?大丈夫!?」
「いきなり横っ腹がイテェ…」
モモイに撃たれて軽く飛んだものの、流石ギヴォトス人。
素早く傷の患部を確認すると、どうやら打ち身程度で済んでいて、骨折や内臓の破裂などは無い様だ。
ギヴォトス人丈夫すぎか?
「だ…大丈夫?」
「生きてはいるみたい…」
「モモイなんで撃ったの!?」
あとミドリは物騒なことを言うじゃありません。
「だって!先生が掴まれてピンチに見えたから!ミドリと相談して助けに行くかどうか伺ってたの!!そしたらミドリと助けに行くか、様子を見るかで揉み合いになって…それで暴発しちゃったの!!」
「先生が心配で居ても立っても居られず…」
「何やってるのさ!?モモイも助けに来てくれるのは嬉しいけども、銃はまずしまっておいてよ!?」
「違っ!?銃構えて乗り込もうとしていたのはミドリ!私は止めてたの!!」
「ミドリさん!?」
「先生に仇名すところに私ありです」
「かっこよさそうなことをそれっぽく言ってもダメ!」
「おーいこっちから銃声が聞こえたんだが?」「大丈夫か―?」
「「「あ」」」
モモイの放った銃声(原因はミドリ)に反応して離れていたのだろう、スケバン達がぞろぞろやってくる。
そんなスケバン達が裏路地で見るのは、
1,知らない大人
2,銃を手に持った双子
3,地面に倒れる仲間
『あたしらが助けるために募金で金が必要なんだよ!』
『良かった…あたし達の他にも助けてくれるやつらがいたんだな…』
『あたしらも悪いことしたと思ってるよ…』
「そういえば仲間がいるようなことは言ってたね…」
スケバン達の怒号と共に私たちはひとまず裏路地から逃げるのだった。
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
そんなこんなでスケバン達から逃げつつ、使っていない古い施設に逃げ込んだのはいいが、向こうのスケバンは多く、こちらは二人。
何とか迎撃をしていたが、数の多さで徐々に追い込まれていき、冒頭に至るというわけだ。
「さーてもう逃げ場なんてないぜ?」
「お姉ちゃん!ピンチだよ!」
「どうするの!?先生!」
すっかり取り囲まれた古い施設の一室。
一応逃げながらも、シッテムの箱で応援を呼んでみたが、近くにいる生徒はおらず、助けに来るのが遅くなりそうであった。
その為、情けない話だがモモイとミドリを守るためにも、どうやってでもすぐに誰か生徒に来てもらうしかない。
やるか。
「モモイ、ミドリ」
「なに?」「どうしましたか?」
「忍者の話しは覚えてる?」
「さっきの話!?今必要!?」
「それがどうしたんですか?」
「その話の続きだよ。先生もね一つだけ使えるんだ、忍術」
「「忍術…!?」」
「見せてあげよう!私の忍術を!!」
そう言って私は持っていた十徳ナイフで親指を少し切る。
「何をする気だ!?」
突然の私の行動にスケバン達は目を見開いて驚いていたが、私はそんなスケバンの行動をよそに印を結ぶ。
結ぶ印は、亥 戌 酉 申 未 !
「忍法!口寄せの術!!」
古くなった施設の床に、血のついた私の左手を押し当てる。
するとどこからともなく、大量の白煙がボフッと上がった。
「全員銃を構えろ!」
突然の白煙に戸惑いつつも代表的なスケバンが他のスケバンに指示を出す。
銃を構え警戒するスケバン。警戒している間に白い煙が晴れていく。
煙が晴れ、そこにいたのは先生と、もう一人。
「これが…」「先生の忍術…」
ピンクの髪。おさげのように垂れた羽。元の制服から改造されたナース服を思わせる制服。
その人物は、呼び出した先生のすぐ後ろで、黙って腕を汲み笑顔で先生を見下ろしていた。
「なんだ!誰かと思ったらナースかよ!」「何をするのかと思ったら拍子抜けだぜ!」
ハハハ!とあざけるように笑うスケバン達。
「先生この人は…」
「この子の名前は…鷲見セリナ」
「この人が…!?」「鷲見セリナ…!?」
モモイとミドリは鷲見セリナの名を聞いて驚いた。
事前に先生の話を聞いていたため、どんな人物だと思っていたら、なんてことない小柄で優しそうな人物であったからだ。
「ナースに何ができるんだよ!」
笑うスケバン。
「「先生…」」
呼び出された人物に不安を抱く才羽姉妹。
「………」
地面に手を打ち付けた姿から動かない先生。
モモイとミドリは絶体絶命の文字が浮かんだ。
鷲見セリナが口を開くまでは。
「 先 生 」
「「「……ッ!!」」」
それは誰もが底冷えするぐらい冷たい一言。
たった一言でそこにいる誰もが、背筋が凍るような恐怖を感じた。
「私、言いましたよね?お体を大切にしてください、って」
セリナが話すたびにプレッシャーで重苦しい重圧が、ここにいる全員に躊躇なくのしかかってくる。
「私を呼んでくださるのは構いません。ですが、ご自分で、ご自分の、指を切るってどういうことですか?」
「………」
「私が何回言っても食生活を守らず、インスタントやエナドリばかり飲む。徹夜で仕事をして身体を壊す。挙句の果てには今回のように自分で指を切る。先生、私の、看護師の言葉が守れないのはどういうことですか?」
「………」
「どういうことなのかって聞いてるんですよ!!!」
セリナが叫んだことで部屋の重圧は最高潮を向かえる。
スケバンの何人かはこの重圧に耐えられずに、膝をついてしまっていた。
「いや、その今回は悪ふざけというか…」
「悪ふざけで先生は、ご自分の指をお切りになるんですね」
「ハハハ…」
「なに笑ってるんですか」
「誠に申し訳ありませんでした」
「…救護が必要な場に救護を」
「セリナが言ってた言葉だね」
「ええ、大切な言葉です。…先生、今回のことと言い、いつもの生活と言い、私が言っても改めないなら。私考えました」
「な、何を…?」
「救護が必要な場に救護を。つまり先生の横に常に私がいられるように、先生を常に救護が必要な状態にすればいいじゃないかって」
「ヒェッ!」
「ふふっ冗談ですよ」
冗談じゃない。これはセリナの最後通牒のようなものだ。
要するに、おめぇ次はわかってんだろうな?ということだ。
「大事な先生にそんなことするわけないじゃないですか」
そう言うとセリナはまだ床に手をついて中腰の先生の背中に抱きつき、肩から胸へと手を回した。
「セリナ…」
そして回した腕をだんだんと上に持っていき、
「大事な先生…。でも言いつけを守らない患者さんにはお仕置きが必要ですよね?」
首まで持ってきた時点で、腕全体を使って首を絞める。
チョークスリーパーの構え。抱きついてきたセリナに完全に油断していた先生には完全に決まった。
「テメェ…、先生を離せ…」
セリナの腕の中でバタバタと暴れる先生を助けるため1人のスケバンがセリナに銃を向ける。
「……邪魔をしないでください。さもないと」
セリナは銃を向けたスケバンにゆっくりと視線を合わせ、
「あなたも 救 護 し ま す よ 」
「あ、あぁああ…」
威圧されたスケバンは、足を震わせ、立っていられなくなり、身体ごと床に崩れた。
「おやすみですか?身体を休めることはとても大事なことです。おやすみなさい」
倒れたスケバンに労いの言葉をかけるセリナ。
「おや?先生も大人しくなりましたね」
先生を締め落としたことを確認すると、さてと、っと言い、勢いづけて先生を担ぐ。
「では、皆さんさようなら。喧嘩も良いですがくれぐれも怪我などには気を付けてくださいね?」
床に倒れ伏したスケバンを見ていた他のスケバンたちは、何も言えずコクコクと頷く。
カツカツと靴音を鳴らしながら出ていくセリナ。
しかし、何かを思い出すと部屋の中を振り返った。
「そういえば…モモイさん、ミドリさん」
「「は、はい!」」
今までセリナの重圧に負け、お互い半泣きで手を繋ぎ合って震えていたモモイとミドリは、セリナに呼ばれ、反射的に返事をする。
「お二人も先生のようにあまりお粗末な生活をしてはいけませんよ?健康的な食事を心がけて、ゲームのしすぎで夜更かしなんてせずに、エナジードリンクもなるべく控えるようにしてくださいね?」
ヤバい。この人、私たちを認識している。救護対象になりうるか識別している…!
「……返事が、ありませんね?」
「「はい!これからは生活習慣を改めて生活していきます!!!」」
「はい、頑張ってくださいね」
伝えたいことも伝え終わったのか、セリナは再び靴音を鳴らし、部屋から出て行った。
「なんか…ごめんな…。追いまわしたりして」
「ううんこっちが悪いから…ごめんなさい」
「あたしたちも話をよく聞いとけばよかったな」
「私たち逃げちゃったしさ…、お互いさまってことで。……ねぇ、このあとさ、時間があったら一緒にゲームしない?」
そうして私たちは、大勢でゲーム開発部の部室に戻り、みんなで目いっぱいゲームして遊んだ。
あの時の怖かった気持ちを忘れるように。
もちろん夜更かしはしなかった。
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
出口なんてないさ♪
逃げ場なんてないさ♪
あら先生、起きましたか?
おはようございます先生
ここですか?ここは病室ですよ?
きょろきょろと見まわしてどうしたんですか?
窓がない?そうですね
だって看護師さんの言うことを効けない先生は、逃げちゃうかもしれないじゃないですか
逃がしませんけど…
いつ退院できるか、ですか?
そうですね。患者さんが看護師さんの言うことをきちんと守れるようになったらですかね
心配しないでください
先生が健康的な生活を守れるようになるまで、私がなんでもしてあげますから
食事も、お風呂も、排泄も、もちろん……ね?
ではこれから一緒に入院生活頑張りましょうね、先生!
でも私のチェックは厳しいですからね?
先生がここから出れるのはいつになるんでしょうか?
ふふふ
出口なんてないさ♪
逃げ場なんてないさ♪
必要な救護を、施してあげよう♪
ブルアカT 4作目
最近職場の自販機にコーン茶があることに気づきました
どんなもんかなと思って買ってみると、これがまぁ旨い
トウモロコシの甘さと旨さが凄く感じれて、しかもお茶と言うだけあって、ポタージュやスープにはない美味しさを楽しめます
確かノンカフェインだしでおすすめ
しかし小さいペットボトルで売られてるんですが、飲むと凄いトイレに行きたくなります
まったく関係ない話でしたね
では拙き作品ですが宜しくお願いいたします