それいけ! 東光学園IF~高坂あおいルート~   作:赤月暁人

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第4話 新入生

 新暦2010年の4月、ついに野球部にも新入生が入部してくる。

 

 夜月もあおいも先輩として気合を入れ、新入生を迎えて新チームが発足する。

 

 選手だけでなく、マネージャーにも入部者が一人いて、そのマネージャーにも会いに行く。

 

 新入部員の自己紹介を全員分終え、主将の中田はマネージャーにも自己紹介してもらおうとする

 

「選手の入部者はこれで全員だな。最後はマネージャーの入部希望者の自己紹介を頼むぞ」

 

「はい。幸中学校出身、浅倉舞衣です。中学時代は新体操をやってました。憧れの野球部のマネージャーに慣れて嬉しいです。精一杯サポートします」

 

「なるほどな、じゃあマネージャーとして頑張ってもらうぞ。新入生はいきなりだが体力テストを行う。言っておくが、これは入部試験ではなく、あくまで入部者の身体能力の参考記録を測るものだから、結果がダメで入部できないってことはねえから安心しろ」

 

「中田、口の利き方が怖いぞ。緊張してるのか?」

 

「田中は黙ってろ。じゃあ早速行くぞ!」

 

「「「はい!」」」

 

 中田の指示で体力テストを行い、夜月の後輩である木下は走力で高いポイントを稼いでいた。

 

 スタミナもかなりある方で、走ることには誰にも負けないプレースタイルだったのだ。

 

 しかも留学生だけでなく在日外国人も入部していて、他の高校ではなかなかいない国際的な世代となった。

 

 体力テストを終えて新入部員は全員疲れ果て、上原とあおいが先輩マネージャーとしておにぎりを振る舞う。

 

「新入生のみんな、お疲れ様。私たちが作ったおにぎり食べて回復してね」

 

「ありがとうございます……」

 

「それにしてもあおいちゃん、おにぎり作るの上手になったね」

 

「上原先輩の教え方がよかったんですよ」

 

「だとしても夜月くんに何度も試食させて振る舞ったんでしょ?」

 

「それは……はい」

 

「あなたの夜月くんへの入れ込み具合は私でもすぐわかったよ。あおいちゃん、夜月くんのことが好きなんでしょう?」

 

「ふえっ!? すすすす、好きって……!?」

 

「ふふっ、当たったね」

 

「上原先輩ひどいですー!」

 

 先輩マネージャーの上原はあおいの夜月への好意に気付き、少しだけ先輩としてからかったりする。

 

 あおいは夜月の一生懸命さとリーダーシップ、そしていざという時の頼り甲斐に惚れていた。

 

 しかし夜月は甲子園を目指す選手なので、恋愛はしないんだろうなと諦めもあった。

 

 それでも夜月はあおいが自分に好意があることに気付いていて、夜月も練習に身が入らなくなっていた。

 

「どうした夜月! 集中力が切れてるぞ!」

 

「すみません!」

 

「新入生が入ったからって緊張しなくていいんだぞー!」

 

「は、はい!(何でだ……?バレンタインの日から調子がおかしい……!)」

 

「あいつ、自分の気持ちに気付いてないな」

 

「だな。俺たちで何とかするか」

 

「ああ」

 

 榊と園田はあおいに告白し、失恋した関係で夜月とあおいが付き合うようにサポートをするようになっている。

 

 夜月は自分への好意に敏感ではあるが、代わりに勘違いや退陣トラブルが怖くていつもあと一歩が踏み出せない臆病な性格なのだ。

 

 そのために一度も初恋をしたことがなく、今も夜月は野球に集中しようとしている。

 

 練習を終えて自主練の時間に入ると、榊と園田が夜月に声をかける。

 

「夜月、ちょっといいか?」

 

「ああ」

 

「最近調子が悪そうだな。何か考え事でもしてるのか?」

 

「それは……」

 

「俺たちの仲だろ? 正直に話してみろって」

 

「恥ずかしいけど隠しても無駄だな。実は……バレンタインの日さ、お前ら三人の会話をたまたま聞いてしまってさ、トイレから戻って戻りづらくて隠れちまったんだ。だけど高坂は俺のことが好きかもしれないって言われてから意識するようになって……。でも高坂はマネージャーで俺は選手だ。部内恋愛はチームのトラブルを生みそうで怖いんだよな……」

 

「やっぱり夜月はチームを第一に考え、恋愛には臆病だな」

 

「どういう意味だよ……?」

 

「さあな。とりあえず自分の気持ちに気付いたらいつでも行動してくれ。あおいは俺たち野球部だけでなく、他の男子にも人気だからな」

 

「お、おう……」

 

 榊と園田は夜月に先手を打ち、自分の気持ちに気付いたら告白するように促した。

 

 夜月はさらに心の迷いが生じ、考え事をするようにもなった。

 

 そんな時にチームにとって最悪な事件が発生した。

 

 隣のブルペンで天童が右肩を押さえてうずくまり、大量の汗をかきながら悲鳴を上げていた。

 

「どうした!?」

 

「うがぁっ……!」

 

「早く救急車を呼んで!」

 

「はい!」

 

 上原の指示に従い夜月は救急車を呼び、天童は病院へ運ばれた。

 

 自主練を中止して部員たちは病院へ駆けつけ、天童の診断結果を待つ。

 

 結果は疲労骨折と靭帯損傷で、入院とリハビリをこなせば回復はするとのことだ。

 

 ピッチャーで先輩の松井は自分のせいで酷使させたと自分を責め、田中もライバルがいなくなって寂しくなった。

 

 天才キャッチャーが戦線離脱することで戦力が大きく落ち、練習試合もあまり結果を残せなかった。

 

 そんな暗い空気の中で、あおいは夜月に気分転換を勧めるべく声をかける。

 

「夜月くん、最近疲れが目立つよ? 大丈夫?」

 

「あいつがいない分、俺がしっかりしないといけないからな。だから落ち込んでいられないんだ」

 

「でもまたそうやって自分を追い込みすぎると、天童くんみたいに壊れちゃうよ……?」

 

「っ……!? そうか、あいつも無理しまくったからケガしたんだよな……。高坂、俺はどうしたらいいんだ……? こんなこと言うのも男らしくないけど」

 

「それじゃあ少し付き合って。明日は部活が休みだし、どうしても来てほしいところがあるんだ。渋谷駅で待ち合わせしようね」

 

「わかった。高坂を信じる」

 

 あおいは夜月をもう一度デートに誘い、夜月はそれを承諾する。

 

 明日はグラウンドの設備調整のために部活が休みで、夜月は授業を終えてすぐに渋谷駅に向かう。

 

 制服のまま渋谷駅に着き、夜月はあおいが来るのを待った。

 

 その数分後にあおいが到着し合流する。

 

「お待たせ!」

 

「早かったな」

 

「制服のままだからね。夜月くんは甘いものとか大丈夫?」

 

「大丈夫だ」

 

「よかった、じゃあ一緒にカフェに行こう」

 

「わかった」

 

 あおいは夜月を渋谷のカフェに連れて行き、夜月はどんなメニューがあるのか少し楽しみだった。

 

 カフェに着くとそこはとてもモダンでおしゃれな雰囲気で、女子がたくさん通いそうなお店だった。

 

 夜月は緊張しながら中に入り、メニューを見て食べるものを頼む。

 

「ご注文はいかがですか?」

 

「私はスフレパンケーキとホットミルク。夜月くんは?」

 

「同じのでお願いします」

 

「かしこまりました。スフレパンケーキとホットミルクをお二つですね。今しばらくお待ちください」

 

「ここのパンケーキはおいしくてね、夜月くんにも食べてほしかったんだ」

 

「これが息抜きか?」

 

「男子はなかなかいないけど、疲れた時はスイーツを食べるのもいいと思うよ」

 

「確かに滅多にスイーツを食べないもんな。たまには自分にご褒美ってやつか」

 

「そうだよ。夜月くん、いつも一人で抱え込んで頑張りすぎるから、私からささやかなプレゼントだよ」

 

「すまんな、ここまで気を使わせて」

 

「マネージャーだもん、これくらいはさせてよ」

 

「ありがとう」

 

 夜月とあおいは二人でチームの今後について話し合い、天童がいなくてもチームを引っ張るようになると夜月は決意した。

 

 同時に天童への接し方も考えるようになり、夜月が部活を早退してまで地元の本屋に行き、天童にキャッチャーの本を大量に買い、天童に持って行ったことも話す。

 

 その時に天童は『入院中で野球ができなくても野球の勉強はできる』と希望を持つようになり、ヤケにならずに済んだとも話した。

 

 パンケーキが完成し、二人はパンケーキを食べながら野球の話をする。

 

 夜月がパンケーキをおいしそうに食べると、あおいはフォークでパンケーキをさして夜月の口元に差し出した。

 

「高坂……?」

 

「えへへ、一度やってみたかったんだ。あーんって」

 

「うぐ……恥ずかしいからあんまりやりたくねえな……」

 

「一回だけでいいから、ね?」

 

「わかった……あーん……」

 

「おいしい?」

 

「おいしい……。だが高坂にここまでさせて自分はやらないのは不公平だから俺もやるからな。ほら、食べな」

 

「う、うん……」

 

 夜月とあおいはお互いのパンケーキをお互いに食べさせ合い、他の客もあまりの初々しく甘い空気にニコニコしながら見守っていた。

 

 夜月とあおいは間接キスをしたことに後で気付き、目を合わせるとドキドキしてしまう。

 

 パンケーキを食べ終えて割り勘で払い、満足したのか寮まで戻る。

 

「今日はありがとな。おかげで少しは気持ちが落ち着いた」

 

「私こそ付き合ってくれてありがとう。私自身もリフレッシュになったよ」

 

「ここからは夏の甲子園に向かって頑張らないとな」

 

「うん! それとね、夜月くん……」

 

「ん? っ……!?」

 

 あおいは夜月に感謝を伝えると同時に、突然夜月に抱きついてくる。

 

 夜月は突然の出来事に何も考えられなくなり、あおいはそれでも強く抱きしめた。

 

 夜月はあおいに抱きつかれてドキドキし、しばらくしてあおいは夜月から離れた。

 

「甲子園……一緒に行こうね……」

 

「お、おう……」

 

 抱きつかれて気まずくなったのか、離れて寮に戻り、二人は顔を合わせられなくなったのか会話もしなくなった。

 

 しかし翌日の部活ではいつも通りに接していて、あおいは夜月を一生懸命サポートする。

 

 夜月はあれからあおいを意識するようになり、それでもあおいが好きって気持ちにフタを閉めたままだった。

 

 そんな気持ちで夏の予選を迎えるも、準決勝で横浜工業に敗退し、中田世代は引退した。

 

 そして夜月が主将に任命され、あおいもマネージャーで一番先輩になり、責任感が増したのだ。

 

 つづく

 

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