ドラゴンクエスト 陰の実力者があらわれた!   作:暇乃 ゆり(お)

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前回のあらすじ

僕は異世界に転生した。それもドラクエの世界に。魔法力を手に入れたことにより瞬間移動ができるようになった。これで『陰の実力者』プレイが捗ること間違いなし! 次は防具を揃えたいけど、戦闘をスタイリッシュかつカッコよくできるやつがあればいいなぁ。


陰の実力者とスライムの巻〜スライムって意思表示できるんだね〜

 

「スライム……!」

 

 僕は目の前に現れた存在に目を奪われていた。何故か。それは前世で剣と魔法のマスコットキャラクターとして有名な『モンスター』。最初の『モンスター』の代表、青いスライム!

 

「ピギー!」プルン

 

「あまりプレイした事無かったから気が付かなかったけど、ここはドラクエの世界なんだね。前に初代だけはやった覚えがあって、なにか見覚えがあるなあと思ってたんだ。こうして君が出て来てくれたおかげで確信できたよ」

 

「ピギ、ピギィ!」

 

「こらこら、今君をどう倒すか検討中だから体当たりしないの」

 

「ピギ……」

 

 え? スライムの動きが止まった? まってこの子話が通じるの? 『モンスター』って凶暴で人を食糧としか認識してないんじゃ……。

 うーん攻撃してこない上に話が通じる相手を倒すのは気が引けるなあ。

 おや? この子の『魔法力』……。

 

「ちょっとごめんよ」

「ピギィ!?」

 

 僕は目の前のスライムに触れて自分の『魔法力』を流してみる。抵抗もなく自然とスライムの『魔法力』と混ざり合い、そして。

 

「ピギィィィ……」

 

 スライムのHPが回復した。どういう理屈なんだろう。だけど分かったこともある。このスライムの『魔法力』伝導率が100パーセントに近い!

 

「おいおいこれは使えるわ。1つ考えていた事があるんだ。状況に応じて自由自在に変化し陰に潜んで行動可能な装備……『スライムボディスーツ』をね!」

 

 僕は手をかざしてスライムに混ぜていた自分の『魔法力』を使いスライムを手繰り寄せる。

 

「ピギィ!」

 

 スライムが鳴き声をあげると同時に僕の身体に巻き付きーー黒いボディスーツへと姿を変えた。そのままでは青いボディスーツになってしまうからそこら辺の黒い石から取った黒い色素を取り込ませた。思惑は上手くいったみたいだね。

 

「うん、凄くいい。身体に馴染んでいるのがよく分かるよ。これなら攻撃手段も増えるし、防御力だって上がる。これでようやく活動が始められそうだ」

 

(ピギ、ピギィ!)

 

ゴロゴロゴロ……。

 

「あれ、なんだか雲が集まってきたような。それにこの『魔法力』は」

 

 直後だった。僕の頭上に大きな積乱雲が生成されて雷が落ちたのは。

 

「え、ちょっと待ってこの『呪文』は雷系でとっても強力な<ギガデイン>じゃ」

 

 刹那の衝撃。電撃が僕が先程まで立っていた地面を貫通しそこそこ大きな穴が空いてしまうほどの破壊力。僕は咄嗟に<ルーラ>で背後に避けていたから無事だった。少しでも反応が遅れ直撃していたら消し炭になってたかも。

 

「それよりも君、僕の『魔法力』を貸りて『呪文』を行使したね?」

 

(ピギィ……)

 

 威力は僕に敵わないとはいえ強力な『呪文』の発動ができて意思疎通を図れるスライムか〜。

 

「よし決めた。これから君は可愛いから『スラりん』と名乗れ。そして『陰の実力者』になる予定の‥…修行中の身だから僕は『スタイリッシュ•盗賊モンスター•スレイヤー』とでも名乗ろう。正式に僕の右腕兼相棒兼ボディースーツとして生涯を共にしてもらおう。よろしくね『スラりん』」

 

(ピギ、ピギ、ピギィイイイイイイイイイ!)

 

まるで嫌がっているかのように、強力な『呪文』を大量に出して僕に当てようとしてる。手の焼ける右腕だなぁ〜。

 

 

 

 

 

 『スラりん』と出会ってから5年後、この世界に転生から10年目を迎えた。

 スラりんボディスーツを試すため『魔の森』を中心に広域で多くの『モンスター』に資金調達のついでで『盗賊』に出会ってきたけど、なかなか骨のあるヤツがいない。会って1分と持たずに倒してまうのがほとんどだ。今回だって目の前に『盗賊』がいるけど……。

 

「ヒャッハー! お前ら金目の物出しやがれぇ!」

 

 目の前にいる盗賊A、B、Cへ手元から『スラりん』を針状に数本変化させ撃ち出し倒していく。

 その攻撃を察知して背後から襲い掛かってくる盗賊CとD。でも僕のスラりんボディスーツは変幻自在。背中にハリネズミのような突起物出して伸ばす!その突起物は盗賊たちを串刺しにしていく。

 『スラりん』と僕の相性は前よりも良好だ。最近では僕によく話しかけてくれるけど、残念ながらスライム語は分からないため答えてあげられないのが残念。

 今回もお宝だけ頂いて、さっさと撤収しようかな。そう思って残りの盗賊を狩っていたら。

 

「おうおう、そこのクソガキ。よくも仲間をやってくれたじゃねえか」

 

 拳を鳴らしながらこちらに近づいて来る巨漢。力こそ暴力って感じの見た目と噛ませモブのテンプレ発言! だけど歩き方とかオーラとかで分かる。他の人よりも僕を楽しませてくれそうな雰囲気!

 

「クソガキ? まあガキではあるけど、君よりかはクソではないかな」

 

「あぁ!?」

 

「いいね。沸点低いのもマッチョなモブとして高評価だよー」

 

「ガキが舐めてると潰すぞ! 俺はあの『カール王国』の騎士団として魔王討伐の前線に出ていた『マッチョ•ツヨイ』様だぞ!」

 

「おぉ〜本当にマッチョとは」

 

 『カール王国』? どこかで聞いたことある気がする。『カール王国』の騎士団って勇者アルト? アルミ? が所属していたような。 でもまさかそんな人が『盗賊』さんと手を組んで悪さをしているなんて。これを知ったら悲しむだろうな〜。僕が代わりに成敗してお宝を頂いておこう。

 

「その余裕な態度、いつまでも取れると思うなよ!」ガチャッ

 

 マッチョは僕に剣を向けて腰を落とした。どうやら僕相手に真正面から来てくれるらしい。僕も『スラりん』を剣状に展開し向かい合う。

 先に名乗られてしまったが、このビッグウェーブに僕も乗らなければ!

 

「僕の名前は『スタイリッシュ•盗賊モンスター•スレイヤー』。マッチョよ『カール王国』騎士団とやらの剣、見せてくれよ!」

 

 僕がセリフを言い切った瞬間、マッチョが間合いを一気に詰め剣を突き刺してくる。僕はそれに合わせて剣身で受け流し剣を弾いて追撃を試みる。

 だが流石元騎士団所属。切り返して僕の連撃を捌いている。何度もぶつかり合い火花が飛び散る攻防。

 

「なかなかやるね。ならこれでどうかなッーー!」

 

 剣を空に向け敢えて大振りの一太刀を振り下ろす。そうする事で隙が生じ相手の技を引き出せるから。

 

 僕は父さんから聞いた事がある。『カール王国』の騎士団には正統な構えがあると。

 

 マッチョは機を逃さない。すかさず持っていた剣を地面に突き立てた。

 

 

 

「悪いなクソガキ! 俺は大人気ないんでなァ!」

「カール騎士団正統! 初撃ィ!」

 

 

 

 どんな攻撃であろうと相手を一閃する伝統の一撃があるとーー!

 

 マッチョは突き立てていた剣を掴み直し僕に対して切り上げる。

 

 

 

   「豪破一刀ゥ!!!」  

 

 

 

 『カール王国』の騎士団の正当な構えから放たれる『呪文』すら一閃してしまうという伝統の一撃『豪破一刀』。その一撃は目の前の『スタイリッシュ•盗賊モンスター•スレイヤー』を切り裂いた。

 

 

 

 

 

 砂塵が舞ってそのガキがどうなったかは視認できないが、手応えは十分にあった。

 

「やったか!?」

(これで死んでなかったらそれはもう人間じゃねえ。あの『アバン』と『ロカ』の野郎を除いてこの一撃を耐えられる人間はーー)

 

「やるね。僕じゃなかったら即死だったよ。とっても良い攻撃だった」

 

 パチパチと手を叩きながら砂塵の中を歩いて来たガキ。確実に腹を切り裂いて体を両断していた筈。

 

「なんで平然と立ってやがるんだ!?」

 

「なんで、か。まあネタバラシをしちゃえば僕が纏ってるこのスラりんボディスーツのお陰なんだけどね」

 

 奴が纏っているスーツが震える。こいつ、スライムを手懐けているのか!?どこからか剣を出したと思ったが変形させていたのか!

 

「どうやら僕の『魔法力』とスラりんの『魔法力』が混ざると『回復呪文』の効果があるみたいで。その影響である程度の攻撃なら受けても自動で回復しちゃうんだ。これぞ『不死の陰の実力者』だね」

 

 コイツの発言は全て意味が分からねえ。だが嫌でも理解させられる事がある。

 

「テメェなんぞに騎士団の技が防げてたまるかァーー!」

 

 俺じゃコイツには勝てねえ! ならせめて、最後に一撃を与えてスラりんスーツとかいう装甲を押し切ってやるッ!

 

「ウォォォ!!!」

 

「自分の奥義が破られてもなお喰らいつく姿勢。ただのゴリ押し大好きなマッチョなモブとばかり思っていたけれど、技も併せ持つ君は立派な物語序盤で活躍する強キャラだ。考えを改めるよ」

「……今の僕が出せる限界を、君に見せよう」

 

 奴は先程出していたスライムの剣を顕現させ俺の攻撃をいなす。そこに奴の体からあり得ない量の『魔法力』が放出され剣に収束する。

 

「<メラゾーマ><ベギラゴン><バギクロス>」

 

 剣に『呪文』を……!? そんな芸当『人間』には出来やしねぇ! その上『呪文』の重ね掛けなんて見たことも聞いたこともーーーー!

 

 

 

 

「アイ……」

 

 

 

 

 僕が目指している『陰の実力者』になるためには足りていない物が多い。今から繰り出すこの技もまだ未完成の技だ。

 

 

 

 

「アム……」

 

 

 

 

 現時点で僕とスラりんが出せる『最強』。いつか必ず自力で到達してみせるよ、本当の『最強』に。

 

 

 

 

「アトミックソードもどき」

 

 

 

 

 僕は『呪文』が込められたスラりんソードで前方を薙ぎ払う。青紫色の閃光がマッチョと木々たちを飲み込んでーーーー。

 次に僕の目に映ったのは広範囲で全てが跡形もなく消し飛んだ大地の姿だけだった。

 

 

「これで盗賊狩りは完了。 お楽しみの報酬確認と行こうか!」

 

 




次回 そうだ。君たち人間に友好的な魔族は魔王の配下の者に超魔生物の実験体として姿を変えられてしまったんだの巻

「アイ•アム•アトミックソードもどき」
•「アイ•アム•アトミックソード」の劣化版。まだ核の領域に辿り着けていないため「アイ•アム•アトミックもどきソードもどき」が正式名称である。
『魔法力』だけではなく『呪文』で威力を高め完成形に近付けてはいるものの本人は納得していない様子。この世界において『魔法剣』はとある者達にしか扱えないのだが、それはまた別のお話。
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