ドラゴンクエスト 陰の実力者があらわれた!   作:暇乃 ゆり(お)

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前回のあらすじ

 『盗賊』を狩っている僕たちの前に立ちはだかった1人のマッチョ。どうやら彼は『カール王国』の騎士団に所属していたらしく、その腕っぷしはかなりのモノだった。流石の僕も興が乗って思案中だった究極奥義の1つを試してみたけど……完成度が低い! これでは核に対抗するどころか『陰の実力者』としてスマートに敵を倒す事もままならない。力を制御出来ていない『陰の実力者』なんてただの『厨二病』と変わらないじゃないか! ここは1つ『陰の実力者』として在るべきムーブを見せよう。


そうだ。君たち人間に友好的な魔族は魔王の配下の者に超魔生物の実験体として姿を変えられてしまったんだの巻

 

「〜〜♪」

 僕は上機嫌に戦果の金貨や宝石達を集めていた。というのは、物足りなさを感じながらも『陰の実力者』としての実力を発揮出来たからだ! 強い『モンスター』や『盗賊』に会えておらず、僕が今どれぐらいの高みに居るのか測りかねていた。今日会えなければ世界の何処かにいる『勇者』とか死んでしまった『魔王』を蘇らせて試そうと思っていた所に中々の手慣れ、元騎士団のマッチョが自分から来てくれて本当に助かった。資金も全然足りなかったしありがとう。君の荷物は僕が大切に預かっておくよ。

 

 そうして美味しい『盗賊』たちの荷物を漁り終えた時ーー。

 

(ピギィ!)

 

纏っていたスラりんが話しかけてくる。スラりんは何処かに指? を差して訴えている。その方向を見ると、僕1人分くらいの檻の中に閉じ込められた人型?をしている新種の『モンスター』らしき物が。近付いて様子を窺う。

 

「これは……見たことのないモンスターだ。なんていうか、複数の『モンスター』を無理矢理繋ぎ合わせた感じかな。酷い有様だ」

 

 ハッキリと言ってしまうとなんかうようよしてて気持ちが悪い。正直触れたくもないけど、あんなに強い人が守ってたってことは、実は貴重な生物か何かなのかも? それによく見ると『魔法力』の流れが歪だ。これはちょっとした暴走状態になってるのかな。

 

 『回復呪文』と言っても様々だ。傷を癒すのもあれば毒や麻痺、混乱状態を治すものまで。果てには蘇生可能なものまで。僕は『陰の実力者』になる予定のため状態異常には耐性を付けているつもりだ。もし耐性がなく『魔法力』を封じられて状態異常の『呪文』を唱えられ、嘔吐や痙攣とかしてる姿を想像してみて。とてつもなくダサいからね。

 

 話は逸れたけど要するに、明らかに様子のおかしいこの『モンスター』を治療してみようって事だ。人型で『魔法力』の流れに異変が生じてるってことは何かの実験で無理に『モンスター』と結合させられたに違いない。それか『モンスター』にも姿を変えられる『呪文』の<モシャス>が影響してるかもしれない。

 

(ピギ、ピギィ!)

 

「スラりん、君が言っていることは伝わらないけどこの子は僕たちが丁寧に扱おう。貴重な実験台として!」

 

(ピギィ!)

 

こうして僕たちは謎の人型存在を手に入れた。これは治療したら面白いことになるかもね。今から楽しみだ。

 

 

 

 

 

「どうしてこうなった」

 

 あれから1ヶ月が経った。人型の『モンスター』の治療に明け暮れていた。今日まで『回復呪文』から『補助呪文』、果てには『攻撃呪文』の1つである<ライデイン>をショック治療として施すなど試行錯誤を重ねた結果。

 

 なんとびっくり、金髪の色白エルフの美少女が蘇ったではありませんか。あんなに手遅れな状態からよく回復できたね。僕がやっておいて言うのも申し訳ないけどさ性質的に失敗したら死ぬ可能性が高くて灰になって散っていく運命だったはずなんだ。

 

「んっ……」

 

 おっと困った。意識を取り戻しつつあるみたいだ。さてどうしようかな。いきなり「今日からお前は僕の元で働け!」なんて言っても従ってくれるはずがないし、ここは『陰の叡智』を以てして『陰の実力者』として説き伏せるのが道理だろうーー。

 

 

 

「もう私は故郷には戻れない。あそこはもう魔王軍によって無くなってしまったから。だから助けてもらった恩は返させてほしいの」

 

 

 

 どうやら説き伏せなくても従順な配下となってくれたらしい。彼女は僕と同じ10歳という年齢ながら僕よりも知的に見えてくる。

 さてその青い瞳はどんな答えを待ち望んでいるーー?

 

「そっか。それじゃあ今日から君はアルファと名乗るんだ」

 

「わかったわ」

 

 彼女は頷いてくれた。それじゃ、ここからが『陰の実力者』としての初舞台だ。彼女に伝える設定を1つでも間違えれば、僕の『陰の実力者』としての物語が破綻してしまう。物語の根幹を揺るがす事態とならないよう、慎重に設定を口にしていかないと。

 

「アルファ。真実を話しておこうと思う」

 

「……! ええ、教えて! 私にも関係があるようだから」

 

 おお〜いい反応。よし、ここから失敗は許されない。

 

「そうだ」

 

 

 

「君たち人間に友好的な魔族は魔王の配下の者に超魔生物の実験体として姿を変えられてしまったんだ。だからさっきまで君は意識を失って超魔生物のなり損ないの『モンスター』となっていた」

 

「そん、な……」

 

 僕の告げた真実に驚きを隠せない様子。微かに手と耳が震えている。だが恐れている暇はない。まだ設定は始まったばかりだ。

 

「超魔生物は様々な『モンスター』を組み替えて作り出される兵器だ。簡単に人間や魔族を殺す事だって出来てしまう。それを生み出そうしてるのには訳がある。とんでもない野望を果たす為の1つのピースとして、ね」

 

「とんでもない野望……」

 

「その野望とは、地上からすべての『人間』や『魔族』や『モンスター』といった存在の排除ーーーーこの地上そのものを消滅させようとしているからだ!」

 

「地上を消滅させる!? 不可能だわそんなこと!」

 

「僕だって最初は信じられなかった。でも、どうだろう。それを可能とする力と地上の代わりになる大地があれば不可能じゃない」

 

「ーーまさか大地の下にあると言われている『魔界』のこと? 私も聞いたことしかないけれど」

 

「その通り。『魔界』は実在している。その昔、神は魔族のために暗黒の地を与えた。そこに秩序など無く、あるのは強さの序列のみ。果てしなく続く不毛の大地。当時そこには冥竜王に魔人、そして『黒幕』が『魔界』の覇権争いを繰り広げていた。そして今『魔界』だけに飽き足らず、地上にまで手を伸ばそうとしている」

 

「でもそんな力を持つ存在なんて……」

 

「さっき超魔生物について話したよね? 部下に超魔生物を研究させているのはあの『魔王』ハドラーだ。そして彼を裏で操る存在が全ての『黒幕』さ」

 

「『魔王』ハドラーを操る? 奴はもう『勇者』に殺されているのよ?」

 

「『魔王』ハドラーは生きている。何故ならその『黒幕』によって命を救われたから」

 

「あり得ない……と言いたいけど、私の故郷を滅ぼしたのは魔王軍の『モンスター』。大人しくなっていた彼らがまた凶暴になったのには理由があると思っていた。それがまさか『魔王』ハドラーの復活によるものなんて」

「その『黒幕』とは一体何者なの?」

 

「その『黒幕』とは」

 

 真剣な眼差しで僕を見つめてくるアルファ。どうしよう『陰の実力者』の初舞台だから設定盛りすぎちゃって、最後の最後まで詰め切れていなかった。

 

「その『黒幕』は、名前を言ってはいけない。君にもその牙を向ける事だろう」

 

「それでもいいわ! あなたに救われた命、あなたの為に死ねるなら本望よ!」

 

「そう……か。ならば教えてやろう。そいつの名前は」

 

 

 

「『大魔王』バーン!」

 

 

 

「敵は『大魔王』バーンと『魔王』ハドラーを含めた配下たち。この地上を消し去り『魔界』を地上に浮上させようとしている。彼らに故郷を滅ぼされた君は憎くて堪らないはずだ」

 

「当然よ。出来ることなら今すぐにでも奴らを殺したい……!」

 

「しかし敵は強大な力を持っている。だからこそ我等『シャドウガーデン』はそれに対抗する力を得るため陰に潜み『大魔王』バーンという陰を狩る」

 

「シャドウガーデン……とてもいい名ね」

 

「困難な道のりになるだろう。それでも我の手を取って共に歩んでくれるか、アルファよ」

 

「ええ当然よ。あなたがそれを望むなら、私はその命を賭けましょう。いつか必ず故郷を滅ぼした『大魔王』に裁きと鉄槌を与えましょう……」

 

 よっしゃぁぁぁ! なんとかなった〜! 後は強そうな『モンスター』を『大魔王』バーンに仕立て上げて『魔王』ハドラーは駒として切り捨てられ殺された設定にすれば万事解決! 誤魔化せなかったら最悪『魔王』ハドラーは蘇らせればいいし。

 

「一先ずアルファ、『呪文』と剣術の特訓を僕と一緒にしよっか。聞くところによると『魔王』は両方の技術を持ち合わせているようだから、基本を勉強しないとね。それにこれからは僕がメインに戦って、雑魚たちの処理をアルファにお願いしたいし」

 

「その通りね。戦力の底上げは必須。他にも私のように友好的な魔族はいる。おそらく実験台にされている子だって……。その子たちの捜索も行わないと」

 

「あ、うん。ほどほどにね。その前に強くなるための特訓から始めていこうか」

 

 僕はどうのつるぎをアルファに投げて渡す。彼女曰く戦闘は素人らしい。鍛え甲斐がありそうだ。しばらくは彼女との特訓がメインになるだろうから趣味の盗賊狩りはもう少し後かな〜。

 

 しかし僕の盗賊狩りにアルファが参加し出したのは1週間後の事だとは今の僕が知る由も無かったーー。

 




「僕抜きで面白い事始めちゃダメだからねアルファ」

「ふふ……あなたって意外と子供っぽい所あるわよね」

「まあ年齢的には子供だし、間違ってはいないけどね。ただ予感がするんだ。そう! ビッグなイベントが起こる予感がね!」

次回 結成、シャドウガーデン! 家族旅行の裏で……の巻
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