先生と陸八魔が変なモノを食べる話   作:ゲヘナ野食部

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キスは無いけどコイならあるよ

「そろそろタンパク質を摂らないと死ぬね」

 

「ええっ!?」

 

カンナとユウカが帰った後、一息ついた先生はアルに残酷な真実を突きつけた。

 

「流石に野草でタンパク質は摂り難いし…どうしたものかな」

 

顎に手を当てて悩む先生を見て、アルがあわわと慌てる。

そんな時だった、こんこんと部屋の扉が叩かれたのは。

アルと先生は顔を見合わせ、首を傾げながら先生がドアを開けて来客を確認する。

 

「やっほー先生」

 

「やあムツキ、どうしたんだい?」

 

扉の前に居たのは美しい白髪の少女、浅黄ムツキだった。

 

「んー、色々あるんだけど…説明するのも面倒だしー

単刀直入に聞くけど、此処にアルちゃん居ない?」

 

「陸八魔?」

 

先生はさも不思議な事を聞かれたとばかりに首を傾げる。

 

「陸八魔がどうかしたの?」

 

「いやー、だから色々あってね

探してるんだけど……先生、本当に知らない?」

 

普段の悪戯な笑みは鳴りを潜め、冷たい眼光が先生を射抜くように向けられる。

 

「ムツキ、陸八魔が居なくなってからどれぐらい経つかわかるかい?

実はさっきまでカンナと一緒に居てね、まだ連絡はつく筈だよ…公安局の力を借りればきっと」

 

「あー、いいよいいよ…そんな大事にしなくても

んーー、先生の所だと思ったのに…当てが外れちゃった」

 

ムツキは鋭かった視線を一気に軟化させるとぐっと伸びをして踵を返す。

 

「先生、もしもアルちゃんが来たら言っといてー

私達はなんとも思ってないから早く帰ってきてねって」

 

「もちろん、私も出来る限り探してみるよ」

 

踵を返し去っていくムツキににこやかに手を振る先生。

こんな事を言いつつもすぐ後ろにはアルが居る、とんだ詐欺師である。

 

「……せ、先生…」

 

ムツキが完全に去ったのを確認し、扉を閉めるとアルが居所なさ気に手をお腹の前で忙しなく組み換えながら口ごもっていた。

 

「どうしたんだい陸八魔、そんな『依頼自体は達成したけど自分のせいで最終的に依頼の報酬が無しになってしまったから責任を感じて全財産を三人に残して颯爽と一人で依頼をこなして名誉挽回を図ろうとしたけど結局上手く行かなくて、でも見栄を張って出てきた手前帰るに帰れない状態だったところを私と出会って今に至る』……みたいな顔をして」

 

「もう全部言われた!!??ねぇ、私そんなに顔に出やすいかしら!?」

 

白目を剥いたいつもの驚き顔である。

 

「流石に顔ではそこまでわからないよ…でもまぁ、カンナに言ってた事とかムツキの態度を見れば…多少はね?」

 

先生は言いながらアルの頭を撫でる。

 

「それで…?自分のミスのせいで三人はカップ麺を分け合ってるのに自分は知らないところでしっかりとご飯を食べてる事に罪悪感を感じた…ってところかな」

 

「うぅ…そ、そうよ……」

 

アルがしょんぼりと肩を落とす。

先生は優しく微笑みながら、アルの頭を自分の胸にあてて軽く抱き締める。

とくんとくんと、規則正しい心音と柔らかな体温がアルの心を落ち着かせていく。

 

「陸八魔、君は例えば…ハルカが失敗したら怒るかい?」

 

「ハルカが…?そんなの怒るわけ無いじゃない、部下の失敗は社長である私の責任よ」

 

先生の胸元を弱々しく掴みながら、ぽつりぽつりと答えるアル。

 

「そうだね…じゃあ、ムツキがいつもみたいに悪戯してきたら…嫌いになるかい?」

 

「そんなの…ありえないわよ、ムツキは私が本当に嫌がる事はしないもの…それに、そんな事で嫌いになんてなるわけ無いじゃない」

 

徐々に、胸元を掴む手と語気が強くなっていく。

 

「なら…カヨコがあの時みたいにまた一人で無茶してたら、陸八魔は放っておくかい?」

 

「そんなの…そんなの、ありえないわよ!

私達は四人で便利屋68なんだもの!一人だって欠けちゃ駄目なんだから!!」

 

バッと先生の顔を見ながら声を張り上げる。

 

「なら陸八魔…その言葉を自分に向けてあげられないかな?」

 

「自分に…?」

 

「部下の失敗が社長の責任なら…社長の失敗は部下の責任で

陸八魔が失敗しても、そんな事で三人が君の事を嫌いになんてなるわけ無くて

便利屋68は一人だって欠けちゃ駄目なんだ」

 

優しく微笑みながら、先生はアルの頭を撫でる。

それは正に、生徒を諭す先生のようで…

子を慈しむ親以上の滅私で、心からの言葉だった。

 

「先生…私、私…」

 

「それ以上は言わなくてもわかるよ、陸八魔」

 

アルが言葉に詰まりながら…それでも必死に喉を動かす。

先生はそれを見ながら、優しく微笑む。

 

「先生…!」

 

「晩ご飯は綺麗な川で魚を捕まえたいんだね!」

 

「全然違うわよ!!!!!」

 

 

 

───────

 

 

 

「さてと…ここら辺で良いかな」

 

ぶらぶらと歩いて辿り着いたのは、いつもお世話になっている河川敷とは逆方向…山手の方にある川だった。

 

「ほ、本当に川まで来ちゃった…」

 

困惑しながらもお腹が空いては仕方ないと先生に着いてきたアルは周囲をキョロキョロと見回していた。

 

「大丈夫だよ陸八魔…ほら、ご覧」

 

先生が指差した先には…三人の人影があった。

 

「あ、アル様っ!!ご、ご無事でしたか…!?」

 

「だから大丈夫だって言ったでしょ…社長は昨日から先生と一緒に居たって何人かの生徒から目撃情報もあったしね」

 

「もう〜、先生ってばムツキちゃんに嘘ついたんだ!」

 

伊草ハルカ、鬼方カヨコ、浅黄ムツキ…便利屋68のメンバー達は一足早く川でアル達を待っていた。

 

「み、みんな…?」

 

「ごめんよムツキ…でも、こうして連れて来た訳だし許しておくれ」

 

困惑するアルの背を押して三人のもとへ歩み寄る。

しかし、それよりも早く突っ込んで来たハルカをアルが少しうめき声をあげながらも受け止める。

 

「うっ…ご、ごめんなさいハルカ…心配かけたかしら?」

 

「申し訳ありませんアル様!アル様がお一人で依頼を達成すると仰られたのに…私、私……!」

 

「ハルカが爆弾持ってうろうろしだしたから丁度良かったよ

これ以上遅くなってたらまたオフィスが吹っ飛んでた」

 

アルに縋りつき涙ぐむハルカとそれを見てやれやれと目を細めるカヨコ。

後ろではそんな三人を見てにやにやと笑いながら自分もと突っ込んで行くムツキ。

先生は四人を見ながら安心したように微笑むのだった。

 

 

 

───────

 

 

 

「さて、そろそろ日が暮れるから…その前に魚を獲ってしまおうか」

 

バケツとタモ網、そして人数分の釣り竿を手渡しながら先生は四人を見る。

 

「ふふ…任せてちょうだい先生!便利屋68に不可能は無いわ!!」

 

およそ1時間弱程に渡って三人から揉みくちゃにされた結果、普段通りの自信満々な状態に戻ったアルは堂々と胸を張る。

 

「あっ、ちなみに何も捕れなかったら蛇とか捕まえる事になるからね」

 

「ヘビ!??」

 

「あっはっは!良いね〜ソレも面白いかも!」

 

「そんな訳無いでしょ…ほら、社長も固まってないで捕まえに行くよ」

 

「い、いざとなれば私が潜ってでも捕まえて来ます…!!」

 

わいわいと騒ぎながら川へ針を投げ入れる四人。

先生はそんな姿を見ながら、ゆっくりと離れて行く。

 

「う、うぅ…釣りって案外難しいのね…全然掛からないじゃない」

 

「まだ始まったばっかりだよ…あと、あんまり喋ってると魚が逃げるよ社長」

 

「ん〜、待つだけなんてつまんない…いっそ爆弾とかでサクッと捕まえちゃう?」

 

「それじゃ魚も粉々になるでしょ…」

 

「や、やっぱり私が潜って…!!」

 

「この川、結構流れが早いからやめといた方が良いよ」

 

四人があーでもないこーでもないと苦戦する中、先生は乾いた枝や落ち葉を集めて火を熾していた。

大振りなサバイバルナイフで比較的真っ直ぐな枝と木の板に摩擦を増やす用の切りこみを入れて、ひたすらに擦る。

回数ではなくスピードを意識し、板を足で固定し枝を押し付けるように擦る。

数分後、煙が立ち上った瞬間に火種を消さぬようそこら辺に落ちていた乾いたボロ布で包み一気に振り回す。

爆発的に供給された空気に火種が一気に炎へと変わる。

先生はそのまま同じく落ちていた段ボールや木の枝、木の葉を集めて作った即席の組み木へ布ごと投げ入れると枝を使って器用に炎を燃え移らせていく。

 

「川魚だし火はしっかり通しておかないとね…」

 

太い枝にも十分に火が燃え移ったのを確認し、更に何本かの焚き木を追加すると先生は川の方へ様子を見に戻…ろうとした。

 

「あ、アル様がこんなにも待っていらっしゃるのに…!

ゆ、許せません!!」

 

先生が振り向いた先には、爆発音と共に豪快に舞い上がる水柱があった。

 

「…………うん、まぁ…ダイナマイト漁とかあるしね」

 

遠い目をしながら水飛沫から焚き火を守る先生。

ちなみに、現在では環境保護や生態系の破壊に繋がるとしてダイナマイト漁は多くの国で禁止されている。

勿論日本でも禁止されているので諸兄も真似しないように。

 

「さてと…確かダイナマイト漁って浮き袋が破れるから魚が沈むんだっけ?

にしては浮いてるのもいるし…流される前に回収しておこうか」

 

タモ網を手に駆け出すと、浮いていた魚をひょいひょいと回収していく。

 

「良くやったわハルカ!さぁ…何が捕れてるかしら!」

 

「え、えへへ…!」

 

ずぶ濡れになったハルカをタオルで拭きながらアルはるんるんと先生を見る。

 

「ふふふ…マグロとか捕れてたりして!」

 

「川なんだし居るわけ無いでしょ」

 

「ふっふっふ、アルちゃん〜川なんだからサーモンだよ!」

 

「それもこんなトコには居ないと思うけど」

 

三人にワシャワシャと拭かれて満悦のハルカとワクワク顔の二人に呆れ気味のカヨコ。

便利屋68は今日も通常運転である。

 

「うん、多分これで全部かな…?

鯉とナマズに、小さいのは多分フナかな?魚は同定が難しいから自信ないけど…こういうところのは多分交雑もしてるだろうし」

 

沈んでいた分も含めれば、便利屋と先生の五人で食べても問題ない量が捕れた事に胸を撫で下ろしながら川辺に上がると持ってきていた竹串を準備していく。

 

「あら…?先生、ここで料理するの?」

 

「うん、鯉とかナマズとかの大物は帰ってからにするけど…

せっかくだし小さいのはここで焼こうと思ってね」

 

捕った魚を真水で綺麗に洗い、一匹一匹丁寧に竹串をうっていく。

よく見かける鮎の塩焼きとは魚のフォルムが異なるので見栄えとしては今ひとつだが…散々動き回って腹ペコの生徒達からすれば些細な問題だろう。

 

「ね、ねぇ先生…もう焼けたんじゃないかしら?」

 

「こらこら…駄目だよ陸八魔、川魚はちゃんと火を通さないと死ぬよ」

 

「クローバーは生で食べてたのに…」

 

「クローバーには肺吸虫も広東住血線虫も居ないからね」

 

川魚の生食はマジで危険なので諸兄も気を付けよう。

便利屋メンバー(ほぼムツキとアル)からのお腹すいたコールを無視して、遠火でじっくり20分程焼いていく。

 

「うん、小ぶりだしこのぐらいで十分かな?」

 

一番大振りなものを火から外し、紙皿にとると箸で身をほぐしていく。

多少の藻臭さは感じるものの、大した処理も無しにこの程度ならば及第点だろう…大物の調理も難航せずにすみそうだ。

 

「ちゃんと火も通ってるね、さぁもう食べ」

「「「「いただきます!」」」」

 

「…ていいよ」

 

瞬く間に串を掴み取ると四人ははふはふと熱がりながらも食べていく。

 

「お、美味しいです!その、なんというか…えっと……」

 

「久しぶりに野草以外を食べてるって感じがするわ!

でも……ちょっと味が薄いかしら?」

 

「そうだね、皮にしか塩をかけてないから中まで味が入ってないみたい」

 

「んん~、最近はカップ麺を三人で分けたりだったからこれでも十分美味しいけどね」

 

本来は味を馴染ませる為に塩を擦り込んで寝かせたりする工程を丸々省略している上に、動き回って塩分が足りない今の四人には少し物足りない味付けではあったが一心不乱に齧り付いている。

先生は少し迷って…行儀が悪いが、食べながら帰路につく事にした。

 

 

 

───────

 

 

 

「さて、ここからは私の腕の見せ所だね」

 

シャーレに戻った先生は川辺で〆ておいたナマズと鯉を丁寧に捌いていく。

 

「うん、臭いもあんまりしない…アタリだね」

 

「アタリ?魚にアタリハズレがあるの?」

 

「うん、ハズレの鯉は雨上がりの路上みたいな臭いがキッチンに充満して『なんで私はこんなものを食べようと思ったんだ』って後悔するぐらいキツイよ」

 

「そんなに!!?」

 

アルがいつもの驚き顔を披露しているのを尻目に、先生はメニューを考える。

 

「んー…昼の天ぷらに使った油があるし、食べ盛りの生徒が四人

よし、今日は唐揚げでいこう!!」

 

「唐揚げ!?さ、魚の唐揚げ??」

 

「カレイとかなら聞いた事あるけど…ナマズや鯉のは聞いた事無いね」

 

「面白そうだしムツキちゃんは先生におまかせで〜!」

 

「わ、私はアル様が召し上がられるのならば何でも…」

 

了承を得た先生はナマズを三枚におろし、皮をひいて一口大より少し大きめのぶつ切りにしていく。

衣は鶏の唐揚げ用のものがあったので流用する。

唐揚げ用の粉を表示より少し少なめの水で溶き、粘度を確認する。

箸ですくうと少し重ために感じる程度の粘度に調整し、ナマズの身を浸けていく。

油が温まったのを確認し、油温が下がらないように3〜4切れずつ揚げていく。

揚がったものは新聞紙の上にキッチンペーパーを敷いた皿に乗せ…食べ盛りの四人のもとへ運ぶ。

 

「さぁ、今日のメイン『ナマズの唐揚げ』だよ」

 

ほかほかと炊き立てのご飯と共に出されたのはこれでもかと大皿に盛られたきつね色の唐揚げだった。

 

「とっ、とても良い匂いです…!」

「美味しそう…!」

「すご~い!思ってたよりずっと美味しそう!」

「ムツキ、失礼だよ…」

「えー?褒めてるんだから良くない?」

 

騒ぐ四人に、先生は手を合わせて微笑む。

 

「さて…私はまだ次の料理があるけど、四人は先に食べておいてくれるかい?

出来立てが一番美味しいからね」

 

「「「「いただきます!」」」」

 

揃って手を合わせ、そう言うと躊躇なく箸が皿へと我先に伸びていく。

 

「美味しい!!凄いわ先生!カラッと揚がってるのに中は凄く柔らかくて…!」

 

「お、美味しいです…!!な、なんというか…じょ、上品な味…?です!」

 

「ん〜!ちょっとジャンキーな感じがご飯に合うねぇ」

 

「うん、ナマズ自体はクセが無いけど…脂もしっかり乗ってて美味しい」

 

カラッと揚がった唐揚げは、ナマズの上質な身質も合わさり外はカリっと中はジューシーの理想的な食感を実現。

クセが無い…言い換えればパンチの足りないナマズを唐揚げ粉に入ったスパイス達が補い、ジャンクに偏り過ぎるかと思えばナマズの脂が更にそれを補う事で見事な調和をもたらす。

泥抜きをする暇が無かったが…清流だった事もありもとより臭みの少なかった身は油とスパイスで完全にマスキングされており瞬く間に四人の胃へと収められた。

 

「良い食べっぷりだね…さ、次は『鯉の松笠揚げ』だよ」

 

皿に盛られたのは、まるで透明なペットボトルビーズのようなモノを纏った鯉の切り身だった。

 

「うっ…!す、凄い見た目ね…」

 

「松笠揚げ…確か、鱗を取らないで揚げる料理だっけ?」

 

「うん、カヨコは物知りだね…その通り、ちゃんと死ぬ気で洗ったし火もしっかり通ってるから食べても大丈夫だよ」

 

先生はそう言うと松笠揚げを一つ摘み口へ放り込む。

ザクザクバリバリと、まるでスナック菓子を食べているような音と共に咀嚼し飲み込む。

 

「うん、鯉は鱗煎餅なんてのもやるからいけると思ったけど…甘鯛とかの松笠揚げとは結構別物になったね

コレはコレで結構アリかな」

 

先生がそう言うと、ムツキが真っ先に箸を伸ばした。

 

「へぇ~!面白い食感!!ポテトチップスとかよりちょっと堅いけど香ばしくて美味しい!」

 

「うん、鱗も面白い食感だけど皮目の脂がかなり乗ってて…あっさり目の味付けが良く合ってるね」

 

「??え、えーと……お、美味しいです、とっても…」

 

「よくわからないけどとっても美味しいわ!!」

 

しっかりと揚げられた鱗は、松笠揚げの名の通り松ぼっくりのように開き特異な形状へと変化している。

しかし、見た目の奇抜さ以上にその食感が面白い。

ザクザクとした鱗の歯触りはポテトチップスと煎餅の間程、咀嚼のたびにバリバリと豪快な歯応えを返してくれる。

更に、味も負けてはいない…皮を取り除かない調理法故に皮目にたっぷりと蓄えられた脂の旨味と振り掛けられた天日塩の僅かな苦味が奥深さとなって口の中で一体となり完成する。

唯一と言っていい歯触りと、それにも負けない味の両立。

これには四人も箸が止まらず、おかわりだと空のお茶碗を先生へ渡すのだった。

 

 

 

───────

 

 

「ふぅ…お腹いっぱいだわ!」

 

「と、とても…お、美味しかったです…!」

 

「美味しかったし、面白かった〜!ムツキちゃん大満足!」

 

「確かに美味しかった…先生って実は元料理人だったりするの?」

 

「ははは、まさか…私はただの料理好きだよ」

 

カンナから貰ったお米をほとんど食べ尽くした四人はせめてものお返しとばかりに洗い物をかって出ていた。

 

「で、アルちゃんはこれからどうするの?」

 

「えっ!?え、えーと……そ、それはやっぱり依頼を達成して…」

 

急な話題転換にアルがしどろもどろに答える。

 

「でも、私達無一文だよ?」

 

「ええ!?わ、私の全財産は…」

 

「残念だけど、家賃の引き落としで無くなったよ」

 

「え、えー!?じゃ、じゃあ…私達明日からどうすれば…」

 

「アル様…!だ、大丈夫です!いざとなれば私が…!」

 

「だ・か・ら…」

 

ふっと先生の方へ振り向くと、ムツキは悪戯な笑みを浮かべる。

 

「これからは、アルちゃんだけじゃなくて私達四人分のご飯…お願いね、先生」

 

先生は少し驚いたように目を見開くが、直ぐに微笑みながら…ニもなく答えるのだった。

 

「もちろん、私で良ければ喜んで作らせてもらうよ」

 

 

 

───────

 

 

 

〜今回の食材〜

 

 

食材名:フナ(同定出来ず)

入手難度:容易(北海道〜九州の河川や湖沼に分布)

食味:淡白な白身であり、身質はしまっていて上々。しかし水質の影響を受けやすい為臭みのある個体が多い

調理の手間:普通(淡水魚の為、生食は避ける)

歩留まり:まずまず(鱗は薄い為、取らずとも食べられるが胆嚢は取ったほうが食べやすい)

栄養:白身である為、タンパク質が豊富

総合評価:地域によっては刺し身が販売されていることもあり、雌の卵を刺し身と和えた子まぶしは非常に美味…だが野生のものは当たり外れが大きい為気になるならば市販品を買うべし

 

食材名:ナマズ(マナマズ)

入手難度:容易(北海道〜九州の河川や湖沼に分布)

食味:身は淡白な白身であり、クセは無いが旨味も少ない(反面、皮にはしっかりとした旨味があるも独特な風味もある)

調理の手間:かなり手間がかかる(泥抜きや皮のぬめり取り、硬い骨の除去等)

歩留まり:やや悪い(野生のものならば基本的に可食部は身のみで内臓は捨てた方が良い)

栄養:タンパク質やビタミン、カルシウム等非常に多くの栄養を含む

総合評価:手間はかかるが食べて損はない、また油を使った料理と非常に相性が良い

 

食材名:コイ(ヤマトゴイ)

入手難度:非常に容易(日本全国の河川や湖沼に分布)

食味:白身ながら非常に強い旨味がある、また鱗や内臓も非常に美味とされる

調理の手間:かなり手間がかかる(泥抜きを丹念にしなければ食べられない)

歩留まり:かなり良い(鱗や内臓が好んで食される数少ない淡水魚、しかし野生個体ならば内臓は寄生虫のリスクがあるので注意)

栄養:脂質を多く含み、亜鉛やカリウムといった栄養も豊富である

総合評価:野生個体は当たり外れが非常に大きい為、飲食店で食べる方が無難である

しかし、提供出来る飲食店も少ない為どうしても味わいたいならば出来るだけ綺麗な川で捕獲ししっかりと泥抜きをすること

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