アウラ、ノースティリスに行け。   作:ぷろぷろマスター

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冒険者アウラ

 

 

 

 アウラは500年以上生きた中でも一番と言えるような悪夢を見ていた。

 

 具体的にはフリーレンに”服従させる魔法”を使って彼女に支配されたところから始まり、様々な方法の自害やそれに並ぶ尊厳破壊をされる命令を受けるという内容である。

 

 死んだら即時間が巻き戻ったかのように自害を命じられる前のシーンでリスポーン。あのときのような激痛はないが、それでも段々と体から力が抜けていく感覚を何度もやらされるとは思わなかった。

 

 最初は自害方法を変えるだけだったが途中で毛色が変わってきた。フリーレンではなく左手に謎の模様がある聖職者と思われる男に自害を命じられたり、自害ではなく自炊や自活といった自○という単語の命令をしてきたりしたが、とうとうこんな命令をしてきた。

 

 

 

「アウラ、仲間になれ」

 

 

 

 仲間というものが下僕、ティリスのペットという認識になってきているアウラはこれからの展開に恐怖した。

 

 その後フリーレンがやってきた仲間の二人に対しアウラを「自分の魔法の効果によってアウラは私のいいなりだ。すでに人間に攻撃しないことと”服従させる魔法”の使用を禁止した。つまりアウラはもう私たちの仲間だ」

 

 むふー、とドヤ顔を見せるフリーレンに仲間の二人は

 

「それはすごいな!」

 

「素晴らしいです。フリーレン様」

 

 アウラはこの二人の人間の性格を知らないがとりあえずこういったことを言わないだろうと思った。

 

 

 

 

 

 その後アウラは仲間という名の荷物持ち、フリーレンの世話役と化していた。

 街中では宿の部屋でだらしなくなるエルフの介護をし、魔物や魔族を相手にする場合大抵先鋒としてどんな相手か探ってこいと言われた。ちなみに宿でエルフの世話をしている間、他の二人はいちゃついてたらしい。

 

「ふざけるな!私は500年以上生きた大魔族だ!」

 

 

「私は1000年以上生きた魔法使いだけど?」

 

 命令で人に攻撃できない上に雑用をさせられ続けた結果、怒りを溜めすぎたアウラは限界に達し爆発した。雇用主への反抗である。労働者の権利を行使した。

 

「命令権があるからって好き放題言い過ぎなのよあんた!だいたいフェルンも言ってたじゃない。きちんとした生活をしろって!」

 

「アウラ、お前は疲れてるんだよ。つい先日覚えた魔法で”朝までぐっすり眠る魔法”があるんだ。最近は確かにアウラをちょっと酷使してたと思う。よく休んでよ」

 

 違う、そうじゃない。いや違わないかもしれないが、アウラが欲していたのは命令取り消し、あるいはいっそのことまた自害でもさせて欲しかった。まだこれが続くのかという絶望の中、アウラの意識は闇へと沈み

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ノースティリスの自宅、ベッドの上で覚醒した。

 

 

 

 

「何だったのよ…アレ」

 

 吐き捨てるアウラ。目覚めは最悪である。何度も自害させられる中、「死は終わりではない」がこういう事なのかと達観し始めた中、エルフ介護をやらされた。あの時のフリーレン一行はやはり夢を見ているアウラのイメージから湧いた代物なのか、前の世界というよりはイルヴァ的な、どこか頭のおかしいことを言っていたように感じる。

 

「この現状が夢であったら良かったんだけど」

 

 フリーレンに魔法を使う前まで戻ってくれないだろうかと考え始めたが、そんなことに意味はない。

 本当の意味でもう一度死なないために、アウラはノースティリスの冒険者として活動しなければならないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「太陽光がないとどれくらいの時間なのかわからないわね」

 

 ティリスの住宅事情を知っている者であれば購入したばかりの物件は家具はおろか窓すらないということは周知の事実である。

 太陽が生物に齎す影響は大きい。大まかな時刻の把握もその一つだ。以前制圧し利用していた建物はどれも外の天気を確認できるくらいの穴があったが、この家にはそれが無いため現在の時間が分からないのだ。

 体内時計はどうしたと言えば先ほどの悪夢に叩き起こされたのか、それとも普通に目覚めたのか判別がつかなかったのである。

 

 

 

 首無しを伴って外に出てみれば、すでに日は昇っており、恐らく時刻にして9時ほどだろう。アウラはパルミアで依頼を受け金を稼ぐために出かけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 再びやってきた王都パルミア。幸いなことに道中は盗賊や冒険者に喧嘩を売られることはなかった。

 王都に行くにあたってアウラは服装を変えていた。初めてパルミアに来た時、好奇の目を向けられたのでできる限り目立たない服装にしたのである。魔力で簡単に服を編み出せるので使わない手はない。

 現在のアウラの服装は初めて都に来た村娘、あるいは新人冒険者の少女と言った仕上がりのワンピース姿である。これはこれでそう言ったジャンルが好きな変態に目を付けられそうだが仕方ないだろう。それに大きな問題が残っている。

 

「角はどうしようもないわね」

 

 正直服装よりも目立っていると思われる角に関してはアウラは隠す術を持っていなかった。弱い魔族ならいざ知らず、七崩賢に数えられる大魔族なのでわざわざ魔族の証である角を隠す必要などなかったのだ。角が小さければ帽子や兜で隠すこともできたのだが。

 元の世界に帰る魔法よりも角を隠す魔法の開発が急務かもしれない。そう考えながら依頼が張り出されているという掲示板を目指して歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ティリスの街にある依頼を受けるための掲示板。そこには多くの依頼が貼り出されており、モンスター討伐に人物の護衛から物品配達、演奏依頼に作物の収穫、料理のリクエストなど様々な依頼があった。

 目を付けたのは討伐依頼と作物収穫。まず先に討伐依頼を片付けるべく貼られている用紙に触れる。

 

 

 すると依頼主である市民の前に移動した。依頼を円滑に進めるために以前見た術者の姿が掻き消える魔法(テレポート系の魔法)の技術が応用されているようだ。この魔法も有用そうなので解析したいが、まずは金を稼がなくてはならないので依頼をこなすことにする。

 

「あなたが依頼主ね?」

 

「そうです。自宅の周りにモンスターがいて困っているのです。依頼を受けてくださるのでしょう?報酬は金貨と魔法書です」

 

「やるわ。その場所に案内なさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 案内された場所には総勢10体ほどのモンスターの姿があった。石でできたゴーレムに口から冷気を出している犬、巨大な食虫植物などだ。どれも簡単に勝てる相手だろうが今後のことも考え首無し(ペット)との連携を考えた戦い方をすることにした。

 

 そもそもアウラの戦い方というのは、支配した首無しの騎士たちを使った数の暴力がメインである。数の暴力と言えば脳筋に聞こえるが、戦場全体を俯瞰し最適な場面で必要な数を動かして敵を圧殺するというものだ。だが現在のアウラは軍勢と言えるほどの手駒たちは従えていないし、不死の軍勢の大きな強みも恐らくこの世界ではあまり効果は期待できないだろう。そこについては後で実験するとして、手駒がこの首無しの元冒険者しかいない今はどうするべきか。それは、

 

「行きなさい」

 

 その言葉と共に首無しが群れに突撃しモンスターへ攻撃を始めた。

 

 そう、アウラの取る戦術は戦士を敵陣で暴れさせ、後方の魔法使いが攪乱、あるいは致命傷を入れるべく魔法を撃ち込むという対峙した人間のパーティが行っていたものである。

 アウラもこのような戦い方をするのは初めてでないが、これほどまでに弱い相手に単騎の手駒のみでやるのは初めてだ。不死の軍勢の首魁と言えるアウラが前線に出るのは勝利を確信した場面か、出張らなければ軍勢に深刻なダメージが入ると思われるときである。

 

「死になさい」

 

 首無しに注意が向いている間にアウラは魔法を使う。”人を殺す魔法”ではなく自己流も混ざった炎のいかづちを放つ魔法(ファイアボルト)である。

 

 

アウラはファイアボルトを詠唱した。ボルトはアイスハウンドに命中し焼き尽くした。

 

 

 

 

 

 

 とまあこんな感じに近接で剣を振るい戦う首無しがヘイトを稼いで、アウラが後方で魔法を使うという模範的な冒険者っぽい戦い方であった。討伐対象のモンスターの中には燃え盛る木(火炎樹)もいたため、そいつは首無しに任せた。アウラに支配されてしまったが、彼は中堅クラスの冒険者でありここいらの相手では苦戦することはなかった。飼い主とペット共に楽勝だったと言える戦闘である。

 

 

 

 

 

 

 

「終わったわ。早く報酬をよこしなさい」

 

「ええ、もちろんです。無事依頼を終えたようですね。感謝します。こちらをどうぞ」

 

 何かが足元に転がってきた。渡し方に思うところがあるが、依頼をしてくるような人間は殺した場合悪評が付くらしいのでやめておく。食料調達に関してはパーティで教えてもらったことを参考にして殺せばいいだろう。

 さて、肝心の報酬なのだが

 

「金貨14,232枚に魔法書…何の魔法かは言わなかった(未鑑定)わね」

 

 金貨は財布に突っ込んでおいた。財布は首無しが持っていた物を強奪した。ペットの持ち物は飼い主の持ち物。常識である。だが問題なのは魔法書。何の魔法が書かれた本なのかは言っていなかった。どんな魔法が載っているのか気になったがこれまたパーティで教えてもらったことを思い出した。

 

――魔法書はできるだけ安全な家の中で読もう!

 

 確かに魔法書を読むにはそれなりに時間がかかるものだろう。戦闘中なんて論外だし街中でも何が起こる分からない以上確かに邪魔が入らない家はいい場所と言える。

 

 

 その後他の討伐依頼をこなしたり、収穫依頼では首無しに収穫をやらせてアウラ自身は寄ってくる害獣を排除したりといった連携を見せ、次々と依頼を完了させた。

 

 そしてある程度の金、4万辺りの金貨を稼いだところで今日の所はパルミアを離れることにした。

 税金の支払いのために金貨は必要不可欠だが、今のアウラのような活動して間もない駆け出し冒険者の税金はどれだけ高く見積もっても1万程度だろうとのことだ。何か自宅以外の施設や乗り物を購入していた場合は分からないそうだが、そのようなものを所有する予定はない。もちろん明日以降も依頼をこなし、ある程度金を貯め、まとまった時間を捻出して元の世界に帰る魔法などの研究に充てるのだ。

 

 

 アウラは初日ほどではないがパルミアの人々や冒険者たちにそれなりに注目されていた。だがまあペットとなった男のように絡みに行く者もいないし、圧倒的な実力というわけでもないので戦闘狂にも特に目を付けられなかった。

 ”服従させる魔法”に関しては目にした者が話題に挙げることがあったが、 なんだそりゃ あのナンパ野郎ざまあねえぜ! 美少女に命令されるとかご褒美か? と本気にせず、有名なナンパ男の死に様について興味を持っていた。

 そのため今のアウラの評価は新進気鋭の美少女冒険者と言った具合だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 行きと同じく何事もなく自宅に帰ってきたアウラ。やろうとすることはただ一つ。貰った魔法書を読むことである。

 

 ウキウキで魔法書を開き読んでみる。

 

 

 

 

――難解だ!

 

 

 アウラはこの魔法書の内容が理解できなかった。つまり読書スキルが足りなかった。直接発動した魔法なら直接術式を再現した方が簡単に魔法を使える上に、人間の編み出せるような生活魔法ならそもそも覚える必要がないので、魔法書を読む機会はそんなになかったのだ。

 

「頭が痛いわ…どうなってるの?」

 

 並の魔法なら即座にラーニングできる自信があったが、この結果である。難しい内容によって若干頭が混乱しているがそれでも魔法の探究者として引くわけにはいかなかった。

 

「もう一度よ」

 

 2回目の挑戦。果たして結果は、

 

 

 

――アウラはマナを吸い取られた!

 

 

 

 体中から魔力が吸い取られすっからかんになってしまった。魔族にとっては致命的すぎる症状である。魔力によって多くが決まる魔族にとってこれは本当に恐ろしい効果だ。”服従させる魔法”を使おうものなら自分の支配権を差し出すようなモノだろう。いや、そもそも発動させる魔力すらないか。ともかくこれで安全な家で魔法書を読むことの重要性は理解できた。

 

「なによ…これ…おかしいじゃない…」

 

 ある意味で死に大きく近づいた瞬間でもあるため、トラウマを刺激されたアウラは魔力回復もかねてふて寝することを決めた。予定していた実験は後回しである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうしてアウラの冒険者生活1日目は終わった。依頼を終えるとこまでは順調だったが魔法書を読んで一気に失速した形である。

 

 ちなみにアウラが読んでいた魔法書は支配の魔法書。数ある魔法書の中でもかなりの読破難易度を誇り、”服従させる魔法”があるアウラにとって有用性がない魔法の一つだろう。

 

 




《夢》寝る時に発動。アウラが見たような悪夢はゲーム中では起こらない。悪夢と言えば金を盗まれるか悪性変異を引くくらいか。基本的には能力が上がったり、魔法を覚えたり、低確率でアイテムがもらえたりするいいイベント。

《魔法書》読むと対応する魔法のストックが増える。読書レベルが足りていない場合失敗し、MP減少、ショートテレポート、魔力の渦によるモンスター召喚などが行われることがある。
 なおElonaplusではノルンの 家で魔法書を読もう 発言は、「予期しないアクシデントが起こることもあるから家の中で魔法書を読むのはやめておこう」と変更されている。

依頼主のもとに移動する際にログでは移動したとしかないですが、テレポートのSEが鳴っていたのでテレポートしていると解釈しました。

あと税金の計算は本家から少し違っているのですが、それは次々回あたりにやりたいと思います。


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