また、未実装艦を出す可能性がありますのでご了承ください。
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目が覚めると、そこは車掌車の中だった。
「……」
海辺の路線を走るこの列車は貨物列車であり、今回の赴任先に合わせてわざわざ繋げてもらっていたのだ。
「いやぁ、ここまで大変ですなぁ」
すると目を覚ましたことに気づいた同じ車掌車に乗る乗員がコーヒーを淹れ始める。
「コーヒーは大丈夫ですか?」
「あ、ありがとうございます。大丈夫です」
そこで目を覚ました女性は有り難くコーヒーの入った紙コップを受け取る。
「確か、東京から来なさったんでしたか?」
「ええ」
彼女はそう答えると、その初老の車掌は納得しながら聞いた。
「東京かぁ、今どんな感じなんで?」
「平時とそれほど変わりませんよ。いつも通り平和な場所です。ただ、人通りは少し減ったかもしれませんね」
「そうですか」
そこで短く彼は頷くと、窓の外を見てあっと反応を見せた。
「もうすぐ着くよ」
「本当ですか?」
そこで彼女も窓の外を見る。
旅客機が満足に飛べない今、鉄道輸送は重要なインフラの一部だ。おかげで深夜も騒音なんかお構いなしに貨物列車は全国を駆け巡る。
そして、この貨物列車も運んでいる荷物はこれから向かう先に必要となる物資であり、先頭には強力な電気機関車が繋がれていた。そして外には小さな港湾施設が見えていた。
「こんな時期に転勤とは、珍しいね」
「いえ、軍部ではよくある話です」
彼女はそう答えると、車掌はそんな彼女に笑った。
「はっはっはっ!軍人さんは忙しいねえ」
「ええ、忙しいのも。軍人の仕事のうちです」
そう言うと、貨物列車はゆっくりと分岐を別れ。
「着いたよ」
車掌はそう言い、車掌車の扉を開けると。そのまま女性を置いて先に降りて行った。
女性も少し間を置いて、片手にボストンバックと筒紙で埋まった紙袋、彼女の身長より大きい黒い筒を持って車掌車を降りると少しだけ伸びをする。
東京からここまで新幹線からの乗り換えで背中から音がよく響く。自分をここまで運んだ無数のコンテナをつなげた貨物列車はすでに荷物を下ろすためのクレーンがコンテナを釣り上げており、荷下ろしが始まっていた。
「……」
そこで彼女は片手に地図を持って睨めっこをした後にターミナルを歩く。
「おい!こっちだ!」
そこで反対側に行こうとした所を呼び止められる。振り返ると、そこには一人の初老の男とその側で立つ眼鏡を掛けた少女が立っており。男の方は軽く手を振っていた。
それを見て、女性は軽く駆け寄った。
「あっ!そこっ……」
そこで少女が注意しようとした矢先。女性は駅舎の浮き上がった煉瓦ブロックに足を引っ掛け。思い切り転倒し、持っていた荷物の殆どを前に盛大に放り投げた。
「痛っ!?」
そして思い切りずっこけた彼女はそのまま地面と熱いキスをかますと、それを見た二人は半分唖然となっていた。
「痛た……はっ!」
転けた彼女は初めに背中に持っていた黒い筒を見た後に次に放り投げたボストンバックや紙袋を手元に寄せていた。
「お手伝いしましね」
「あっ、ありがとう」
そこで少女も飛んでいった筒紙を集め始めると、そこで初老の男。白い海軍の制服に階級章は少将を示していたその男を見て女性は全ての作業を止めて立ち上がって敬礼をした。
「お初にお目にかかります!山郷少将閣下!命令により!本日より、この宿毛泊地に着任いたします!」
「ああ、初めまして。黒岩技術大尉」
「はっ!」
そう言い、女性こと黒岩百合大尉は反対に立つ山郷勲少将に敬礼していた。すると、足元で筒紙を紙袋に入れ終えた少女が立って話しかける。
「初めまして、黒岩大尉。私は、宿毛泊地所属の大淀と申します」
「よろしくお願いします。大淀さん」
そう言い、彼女は畏まった姿勢を崩す事なくガチガチになったままだった。そんな姿を見て山郷は豪快に笑い始める。
「はっはっはっ!そんなに緊張されてはこっちも困ると言うものだ」
「提督、普通の反応はこのようなものです」
横で大淀がツッコミをかけると、彼女は答えた。
「い、いえっ!だ、大丈夫です!!」
明らかに震えた様子で話す彼女に山郷は吹き出してしまう。
「何、ここで緊張することはないさ。気軽にやっていけばいい」
「はっ……!!」
するとそこでそんな彼女を見かねて大淀が山郷に話しかけた。
「提督、あとは私がしておきますので。お任せください」
「おう、頼んだ」
そう言うと、山郷はそのまま駅舎を歩いて去って行った。それを見て少し緊張が解れたのか、佐々は軽くため息を吐く。
「ふぅ……」
「大丈夫ですか?」
「はい……すみません。最初からお見苦しい所をお見せしてしまって……」
「いえいえ、私としても技術者が来てくれるのはありがたい話ですから」
彼女はそう答えると、黒岩は大淀に紙袋だけ持ってもらう。
「すごい紙袋の量ですね」
「はい、本部にいた時にあった荷物を全部持ってきましたから」
「データ化しなかったんですか?」
そこで大淀が首を傾げると、彼女は少し恥ずかしげに答える。
「はい……恥ずかしいお話ですけど。忙しくてそんな時間もなくて……」
「そうでしたか」
納得した様子で彼女は軽く相槌を打つと、そこで黒岩は大淀に聞く。
「山郷中将閣下は、普段からあんな感じなのですか?」
自分が噂で聞いている人物とは大違いだと思っていると、大淀も納得半分呆れ半分で頷く。
「ええ、仕事以外はおおざっばですよ。それこそ、そこら辺の親父と変わりませんし」
「……」
驚きで唖然とした表情を浮かべていると、大淀はクスリと微笑む。
「だって今も、せっかく新人が来たと言うのに私に仕事を任せていますしね。今頃、他の子達と遊んでいる頃合いじゃないでしょうか?」
「艦娘と遊ぶ……」
「ええ、駆逐艦の子達とね」
そう話すと、二人はターミナルから宿毛泊地に入る。
「しかし、せっかく来てくださったのですから。私の方から直接お迎えに行きましたのに」
「いえいえ、わざわざ迎えに来てもらう訳には行きませんよ。仕事には集中して欲しいですから」
「……」
そこで一瞬、黒岩の答えに少しだけ大淀の顔が曇った気がした。
「特に、世界中が困難に瀕している状況では」
そう言うと、彼女は泊地から見える大海原を見ていた。
深海棲艦
今から何年も昔に突如現れた海の怪物、彼らは世界中の海を漆黒に包み込んだ。
世界中の艦艇は彼らに真っ当に立ち向かうことすら叶わず、ミサイルもその速度と目標の小ささから攻撃がまともに当たることは無かった。
彼らは海が産んだ怪物であり、手当たり次第に彼らは船という船を沈め、世界各地の沿岸部を危険に晒していた。
さらに彼らは小型の航空機のような飛行物体も産み、空をも奪った。目標があまりにも小さく、通常の航空機ではミサイルを当てることすら叶わず。唯一の対抗手段は昔ながらの機関銃を発射することだった。これにより、深海棲艦の航空機は我々でも対抗が可能である数少ない防衛手段であった。
これにより、突如ミサイル万能論の時代は終わりを迎える事となってしまった。
世界が混乱に陥り、このまま滅びの時を待つかと思っていた時。そんな深海棲艦に対抗するが如く、我々人類の前に姿を現したのが艦娘と呼ばれる存在だ。世界各地に現れた彼女たちは人類の味方として日夜、深海棲艦と戦いを繰り広げていた。
世界中が突如として現れた怪物に対応に疑心暗鬼になり、また滅亡する国もあった。太平洋に浮かぶ小国のパラオなんかが良い例だ。
海を持たぬ内陸国はそれら深海棲艦の攻撃を受けることなく、世界で最も安全な場所となっていた。それ故に周辺国から疎まれ、散発的な戦闘も起こっていた。
そしてそんないざこざが有りつつも、世界に先んじて艦娘の能力を使い。深海棲艦の攻撃を退けたのがこの国、日本だった。
そんな日本の影響を受け、世界各国。特に深海棲艦による攻撃に悩まされた国々は艦娘を受け入れ、彼女らを円滑に動かすために既存の海自を流用した『鎮守府』を設立していた。
今までに損傷を受けていた艦艇は彼女たちの移動拠点や囮として重宝され、かつての運用思想からは大きく外れていた。
そんな艦娘の運用と、深海棲艦の攻撃などによる諸々の国内不安から日本は新たに王政復古の大号令を発表し。民主制から立憲君主制に政治体制が移行した。それと同時に憲法改正と法整備が進み、結果的に日本は再軍備を世界に知らしめる事となった。
世界で初めて艦娘を積極的に運用した日本は深海棲艦に対し、制海権奪取を何度か成功させていた。
それを見た世界各国は今まで深海棲艦の仲間ではないかと疑っていた艦娘を積極的に活用する方針に転換していた。
日本の生命線とも呼べるシーレーンはもはや艦娘無しでは安全に渡ることすら不可能で有り、戦争と艦娘は日常と化していた。
永遠と終わらないこの戦いに人々はもはや戦争と言う特異的な環境に慣れてしまっていた。
「ここが、大尉のお部屋です」
「ありがとうございます」
派遣された宿毛泊地にて、黒岩は案内された宿舎の部屋に荷物を置く。
ここは太平洋を拝む最前線の泊地の一つで有り、四国と瀬戸内海防衛のための拠点だ。
「仕事場も観に行かれますか?」
「はい。よろしくお願いします」
技術士官として派遣された彼女の担当は、主に配属されている艦娘の装備の改修作業や改造が主な仕事である。その為仕事場は泊地にある工廠だった。
「これで私も色々と助かります」
「そうでしょうか?」
「はい、何せ装備品を持て余しているような状態ですから。おかげで艤装の効率化ができます」
大淀がそう話し、彼女を泊地の工廠に案内する。
「他の艦娘達を見かけませんね」
「ええ、私以外はほとんど演習場に出て訓練をしていますから」
大淀はそう答えるとそのまま工廠の扉を開けた。工廠には妖精さんが多く存在し、彼らは暇を持て余して遊んでいた。
「「……」」
その惨状に思わず黙り込んでしまう二人。そして大淀が工廠に来たことに驚き、慌てて真面目に働いたふりをし始める妖精さん達。しかし時すでに遅く。
「何やっているんですかぁ!!」
そしてその直後、大淀からの怒号が工廠に響き渡っていた。
今後の展開、読んだらどれかに投票してほしいです。
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ハッピーエンド
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微ハッピーエンド
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モヤモヤエンド(?)
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全部書け。