ゆりの手帳   作:Aa_おにぎり

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佐伯湾泊地の艦隊と演習をする事となった宿毛湾泊地艦隊。

海に出た加賀達は所定の位置に移動し終え、そこで無線で準備が完了した報告を黒岩が入れていた。

 

『総員配置完了、これより演習を始めてください』

 

その合図と共に一斉に艦隊は動き出す。

 

「艦載機発艦!」

 

そこで加賀は早速彩雲を三機発艦させる。

今回の演習場は安全域での戦闘であり、それほど広い海域でもない。しかし太平洋なだけあって障害物はないに等しかった。

 

「見つけ次第全速。一気に距離を詰めるわ」

『『『了解っ!』』』

 

加賀はそう指示を出し、他の艦娘達も同様に準備を包めており。その間で足柄と羽黒はカタパルトから艦載機を発艦させていた。

 

「艦載機、全機発艦!」

「以後の指示を加賀に移管する」

 

そう言い、発艦した六機の水上機はそのまま上空待機をしていた。

 

 

 

 

 

同じ頃、演習相手の機関である扶桑は気合を入れていた。

 

「良い?相手は最前線で鍛え上げられた猛者よ。警戒を怠らないで」

『『『はいっ!』』』

 

荒くれ者の多い不良泊地と揶揄されることの多い自分達、佐伯湾泊地の艦隊だが。これでも何度か実戦には出ており、担当海域に深海棲艦が現れた場合は即座に出動していた。

しかしその前に大半は宿毛湾泊地の艦隊が片付けており、大火力の戦艦が居ない状態で深海棲艦の艦隊を数々葬ってきた。その実力を見て今回、演習を依頼したのだ。

噂通り、宿毛湾泊地の艦隊はわずか七名しかおらず。正直これで泊地を回していけている事実に驚きを隠せなかった。

 

「一体どんな重労働なのかしら……」

 

流石の自分達も二個艦隊を有し、交代制で仕切っていた。現在、泊地には妹の山城を旗艦とした予備の艦隊が詰めていた。

大きい場所だと四個艦隊を持っているところもあり、そう言った場所は大体鎮守府などだ。そしてそう言った鎮守府などは大体が軍艦派の連中が取り仕切っていた。

かくいう篠海自身、四宮中将に才能を見出されていなければ提督の地位にも成れなかっただろう。

 

「これだから軍の堅物連中は……」

 

おまけに最近はヤオビクニなる艦娘強化用の薬剤があるというが、その原料は深海棲艦の血清であると言う情報が四宮中将から入っており。その薬剤が渡ってきたが、篠海はそれをそのまま海に投げ捨てていた。

 

『薬に頼るような愚図に私はなる為にこの席に座っているわけではない!!』

 

そう言い放ってヤオビクニを捨てた彼女の意見に扶桑達も同感していた。力を求めて薬に頼るような連中は軍人の風下にも置けない。

 

「敵機視認!」

 

そこで上空警戒をしていた大鳳が報告を入れるも、驚いた様子を見せる。

 

「っ!!なにこの速度?!早すぎる!防空網突破!!」

「?!対空!撃て!!」

 

すると視界の先に恐ろしい速度で急降下態勢に突入した彗星の機影を確認した。それを受けて全艦で対空防御をするも、相手の彗星の尋常じゃない速度に爆撃をかなり喰らってしまった。

 

「ちっ…」

 

演習弾で少し汚れた服を見ながら遠くに映る艦影を見た扶桑は指示を出す。

 

「敵艦視認!」

「砲撃!撃てっ!!」

 

その瞬間、扶桑や天龍達の砲撃が飛んでいた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

その頃、宿毛湾泊地に建てられたテントでは山郷と篠海が少し離れた位置で座っており、山郷は篠海を見てふと溢す。

 

「あの准将、指揮してないな」

「それを言うなら少将もですよ」

 

そう言い、横で不測の事態に備える兼山郷から経験だと言う事で見習いとして見ていた黒岩が話しかける。大淀は山郷の代わりに提督業務の消化をしてくれていた。

 

「俺はあいつらに全幅の信頼をしているからな」

「じゃあ、篠海准将も同じ考えなのでは?」

「だろうな、あの年齢で艦娘に全幅を置けるとは。さぞ優秀なやつだろうな」

 

山郷はそう言うと、そこで黒岩にアドバイスを送る。

 

「良いか?自ら指揮を執って艦娘を動かしている時点ではまだまだ半人前だ。艦娘に全て託すことで、初めて一人前の提督になれる」

「なるほど……って、」

 

そこで思わず黒岩は山郷に言う。

 

「この前の兵棋演習と言い、今日の付き添いといい。まるで私を提督にするような勢いじゃありません?」

「仕方ないだろう。いくらあいつらの能力を上げているとは言え、限界がいずれ来るんだ。なるべく呉の艦隊には応援を遣したくないしな」

「え?なぜです?」

 

そこで黒岩は純粋に首を傾げてしまうと、そこで山郷は軽く呆れを交えた様子で言う。

 

「今の呉の艦隊にはおそらく全員にヤオビクニが打たれている。そんな奴らに活躍をされれば、ヤオビクニの性能を見せることになる。これでは、被害が拡大するだけだ」

「っ!!」

「だから何としてでも俺たちでこの海域を抑えなければならない。これ以上、軍艦派の連中を増やさない為にもな」

 

山郷はそう言うと、そこで黒岩はある懸念が浮かんだ。

 

「だったら、この演習も勝ったらまずいんじゃ……」

「何でだ?」

 

そこで黒岩は薬を始める人の心情から推測した自分なりの仮定をする。

 

「ほら、負けたから強くなるためにドーピングみたいな感覚で……」

「それはないな」

 

しかし、そんな黒岩の不安を山郷はキッパリと切り捨て。その後に篠海のしっかりとした芯を見ていた。

 

「あの若娘はお前と違って図太い芯があるしな」

「ちょっと!!」

「はっはっはっ!だが事実だろう?」

「うぐっ」

 

山郷にさりげなく心を抉られた彼女はなにも言い返せなかった。そんな彼女を他所に山郷は篠海を見てその時の思った感想を口にする。

 

「あの歳で佐伯湾の提督を務めているんだ。しかも女でな」

「……」

 

確かに、篠海准将の年齢は二八。そんな若さで、それも女性で准将という階級と共に田舎泊地とは言え提督をしている。その時点で偉い人に色仕掛けか圧倒的な実力を持ってのしあがったとしか考えられなかった。少なくともあの雰囲気で色仕掛けなんてまずありえないので確実に後者の道だろう。

 

「よっぽど強い精神力がなければあそこまで登るのは不可能だ。それにあの目、上が誰であろうと噛みつく目をしている。案外、足柄と気が合いそうだ」

「どっちかって言うと似たもの同士で相性が悪いパターンじゃあ……」

 

黒岩はその懸念を溢すと、山郷は思わず吹き出してしまっていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

同じ頃、演習海域では扶桑達佐伯湾艦隊が接近してくる不知火と足柄に砲撃を加えていた。

 

「くっ!」

 

天霧が持っている12.7cm連装砲の引き金を引くも、けたたましい水柱を立てて接近する不知火の遥か後ろに着弾していた。

 

「何で当たらないんだ?!」

「速度が速いんだわっ!」

 

するとその瞬間、反撃で飛んできた長10cm砲の射撃が天霧と龍田に命中する。

 

「ぬおっ?!」

「きゃっ!!」

 

そこで反撃で砲撃を加えると、その直後に大鳳が叫んだ。

 

「航空機来襲!!」

「っ!!」

 

上空を眺めると、そこには魚雷を抱えた流星改の姿が確認でき。そこで先ほどと同様に対空防御をしていた。

 

「魚雷投下確認!!」

「回避行動!!」

 

扶桑がそこで指示を出すもその瞬間に扶桑や天龍達の至近に砲弾が着弾し、一部は命中していた。

 

「ちっ!」

 

進軍中に妨害を受け、満足に回避行動できなかった艦隊は数発演習魚雷が命中した。

 

『龍田、轟沈判定!』

『曙、轟沈判定!』

 

そこで判定装置が動き、妖精さんが白旗を上げるとそこで龍田と曙は脱落してしまった。

 

 

 

 

 

同じ頃、二隻脱落させた加賀達宿毛湾艦隊は戦果を聞いて羽黒は軽く苦笑していた。

 

「相手が艦娘とはいえ、容赦ないですね」

「誰が相手でも、誠心誠意を持って戦う。それが私達の規則よ」

 

加賀がそう言った瞬間、空を見ていた秋月が叫んだ。

 

「っ!!上空敵機確認!」

「対空防御っ!」

 

そこで上空から太陽を背に現れた九九式艦爆はそのまま爆撃態勢に入る。秋月も改造された電探があったからこそ探知できており、もしなかったら気づかなかっただろう。それくらい、この爆撃機は音を消していたのだ。

 

「くっ!」

「痛っ!」

 

そして諸に爆撃を受けてしまい、そこで集中的に狙われた羽黒に白旗が上がった。その他加賀達も代償様々な損害を受けていた。

 

『羽黒、轟沈判定!』

「へぇ、なかなか相手もやるじゃないの」

 

その報告を聞き、加賀達はやや冷や汗を掻きながら敵を視認する。上空の戦闘はほぼ拮抗、しかしややこちらが優勢。

洋上の戦力は向こうが戦艦一、軽巡一、駆逐一、空母一。対してこちらは空母一、重巡一、駆逐三と言う編成だ。

 

「二隻倒したのにこっちは戦力をそがれたわね」

「仕方ないわ。足柄と不知火が向こうの妨害をしている間に。こちらも叩くしかないわね」

「幸い、軽巡二隻がいるようなものですしね」

 

涼月がそう言うと、加賀はそこで少し考えた後に指示を出す。

 

「まず戦艦を叩くわ。行くわよ」

「「了解!」」

 

そう言うと、残った三人は速度を上げた。

 

 

 

 

 

「敵艦接近!」

 

天龍がそう叫ぶと、扶桑は接近してきている加賀達を見てやや驚いた。

 

「空母で接近するの?!」

 

空母というのは通常は後方で移動基地のような役割をする艦種だ。そんな艦艇が接近してきている事に扶桑はやや驚いていた。

 

「撃て……」

 

即座に扶桑は加賀を狙おうとしたが、その瞬間に艤装に不知火の攻撃が当たる。

 

「旗艦は撃たせません」

「くっ!」

 

そこで不知火の尋常ではない速度に扶桑は驚く。するとその瞬間、大鳳は複数被雷した。

 

「っ!いつの間に?!」

 

魚雷を発射した雰囲気を感じていないことに驚いていると、大鳳も撃破判定を受けた。これで残るは天龍と扶桑のみとなった。

 

「これが最前線部隊の実力かよ……!!」

「さすがは山郷提督の教えを受けた艦娘……」

 

しかしその瞬間、驚くべき報告が上がった。

 

「敵機上空!!」

 

対空要員の妖精さんがそう叫ぶと、上空に浮かぶ六機の艦載機を見た。

 

「嘘!?」

「はぁっ?!」

 

加賀の艦載機が再発艦するにしては早すぎる出撃に驚いていると、その六機の瑞雲はそのまま急降下を開始した。

 

「た、対空防御!!」

 

咄嗟に防空をするも予想以上に現れた瑞雲は近く、撃破は困難を極めた。

そしてそのまま、六機の瑞雲の落とした演習爆弾はそのまま扶桑達に命中し、二艦は撃破判定を受けていた。

その直後、無線で演習終了の合図が海域に響いていた。

今後の展開、読んだらどれかに投票してほしいです。

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  • モヤモヤエンド(?)
  • 全部書け。
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