種子島沖に展開している宿毛湾艦隊は今回の艦隊旗艦である大和傘下の直掩艦隊となり、大淀は通信を担当していた。
『大淀。こちらワイバーン、現在警戒海域に敵影を認めず。送れ』
すると偵察中のF-15Jから無線が入る。
「了解、引き続き警戒せよ」
大淀がその通信に応えると、横で大和が気さくに話しかける。
「そう警戒しなくとも、打ち上げまではまだ時間がありますから」
「ええ…ですが、いつ来るかわからないですからね」
今までの打ち上げ三回のうち、一回はロケットが深海棲艦に撃ち落とされている。その為、司令部も深海棲艦の攻撃には緊張していた。
それを分かっているが故に大和も納得した後で軽くため息をつく。
「全く、ロケットなんて無理に打ち上げなくても良い気がしますがね……」
「ですね、こんなに警備するくらいなら…安全な場所から打ち上げられるんですし…そっちに任せたほうがいいのではとは思ってしまいますが……」
大淀もそう話すと、後ろで加賀が注意を入れる。
「あまり無駄話は避けたほうが良いわよ?」
「ははは……」
「それもそうですね」
かれこれ作戦が始まってからと言うもの、時折偵察機の連絡があるだけでこれと言った変化もなく。島から五〇キロ以上離れているのでロケットも見ることはなく……言ってしまうと暇なのだ。
発射まで残り六時間と言った具合で、いまだに戦闘は起こっていなかった。
「でも何もする事がないのも事実よ?」
「ですね、まさかこんな任務だとは思っていませんでしたから……」
そこに足柄や羽黒も混ざると、大和はそこで彼女たちに思い切って聞いてみることにした。
「ところで如何ですか、大尉が来てからの様子は?」
大和は偶に宿毛湾に仕事で訪れた事があり。宿毛湾泊地艦隊の面々とは顔見知りであり、大和にとっても数少ない話しかけやす艦娘だった。
大和に聞かれ、大淀達は自分たちの艤装を見ながら満足げな様子を見せていた。
「今までほぼノーマルの武装だったから、大尉が色々と手を加えたお陰で戦いやすくはなったわね」
「ですね。大尉、偶に思いもよらない改造をしたりしますけど……」
「普通、艤装バラバラにしてパーツになんてしないわよ」
半分呆れたように足柄が溢すと、大和も興味津々で加賀たちの装備を見ていた。
「しかし、随分と色々なところに手を加えたんですね」
「ええ、機関砲も四〇ミリとかに換装しているから。対空も上がりましたしね」
「まあ、その分資材も喰うようになったわけだけど……」
足柄がそう溢すと、そこで無線が入る。
『こちら司令部。大和、状況を知らせろ』
「はっ!現在、海域は平穏なり」
『了解、次の連絡あるまで現海域で待機』
司令部との定時連絡を終え、大和は無線を切るとそこで改めて大淀が出撃前の話を持ち出した。
「あの…どうして出撃前に大尉のことを聞いたのですか?」
「え?ああ、それは……」
そこで大和は一瞬話そうかどうか悩んだが、今更な話かと思い大淀に返した。
「黒岩大尉が装備庁に居た時に、例のヤオビクニの一件で大尉の居た研究室の状況を把握した提督が、そのまま彼女を斡旋したのはご存知かと思うのですが……」
「はい」
「ええ」
「そうね」
もはや周知の事実である黒岩の前歴の話だが、そこで大和はそこまでの手続きで感じた違和感を口にした。
「黒岩大尉を斡旋する時、提督はいつに無く早い行動だったんです。最初は私専門の艤装技師にしようとしていたくらいですしね……」
大和がそう話すと大淀たちはやや驚いた様子を見せた。
「そうだったんですか……」
「ええ、でもそれだとあまりにも勿体無いからと、私から提督にここに派遣させるように進言したんです」
「そんな経緯があったの……」
「ええ、面白いことに。提督はとても黒岩大尉の事を気にかけていました」
大和はその接し方に違和感を感じていた。
「なんと言うか、彼女に対して提督は何処か特別な思いがありそうな雰囲気でした」
「どう言うこと?」
「知り合いなの?」
足柄と秋月が首を傾げると、大和も首を傾げた。
「さぁ、私もそこまではわかりませんが……」
大和がそう答えた時だった。無線が入ると共に砲声が聞こえた。
『敵艦視認!接敵しました!』
今回の作戦に参加した佐伯湾艦隊の扶桑が無線でそう叫ぶと、大和たちも一斉にその方角に目を向けていた。
『敵艦視認!接敵しました!』
扶桑の報告を聞き、司令室で山郷たちも一斉に目線がガンカメラの映像にに移動していた。
「来たか……!」
「発射まで六時間あります」
「航空隊に連絡、直ちに支援攻撃開始」
「種子島に連絡。発射シークエンスの簡略並びに戦闘開始の報告だ」
それぞれが報告に走る中、四宮は画面に映る艦隊を見た。
「敵を目視で確認。戦艦二、重巡三、軽巡六、駆逐八」
「現在、佐伯湾外郭艦隊と戦闘を開始した模様」
その報告を聞き、四宮はその方角を見る。
「敵は南東から来ましたか……」
「当然だろう、そっちの方が安全に進める」
現在、東シナ海は比較的平穏であり、深海棲艦の支配域では無い。その為、艦隊を攻撃させるには一台拠点のある沖縄を抜ける必要があり、種子島攻撃は至難の業だった。その為、太平洋に面した海域からの侵攻とあらかじめ予測されていた。
「撃てっ!!」
扶桑が改装された35.6cm三連装砲を放つ。その近くでは天龍達が片手に片手に剣を持って深海棲艦の艦隊に急接近する。
「おらおらおらぁっ!!」
そして接近して敵の軽巡ト級を切り付けて撃破する。
「まだまだこんなもんじゃねえだろう!?」
天龍がそう叫んでまた更に近くにいた深海棲艦を剣で切る。
その様子を見ていた足柄達は少し首を傾げた。
「この前の演習と全然違いますね」
「ええ、なんだか強く無いですか?」
そう首を傾げると扶桑がその訳を答える。
「うちの天龍型は接近戦が大得意ですからね。演習じゃああまり本気出せないんですよ」
「な、なるほど……」
接敵を受け、救援に駆けつけた旗艦直掩艦隊はその戦い方に唖然となっていると大和が前の二基の主砲を前に向けた。
「主砲!発射!!」
その瞬間、力強い46cm三連装砲から砲弾が飛び、その凄まじい衝撃波で海面が大きく揺れていた。
そして発射された砲弾はそのまま艦隊に向かって飛んでいくと、離れていてもわかるほど高威力な水柱と共に爆炎が広がった。
「ーーーーーっ!!」
そんな悲鳴と共にル級一隻が轟沈すると、残った艦艇は一斉に大和に目を向けるが、そこで加賀の飛ばした攻撃機が殺到した。今回、偵察は大淀に任せているので加賀は攻撃に全力を回すことができた。
「全機攻撃を開始!」
そして流星や彗星が一斉に攻撃を加えると、佐伯湾艦隊の大鳳も攻撃を開始する。
大鳳の九九式艦爆と加賀の彗星。双方の艦載機が急降下で爆撃を敢行していた。
一列の綺麗な隊列を組んだ急降下爆撃機は艦隊に綺麗に順々に降下していくと、そのまま爆弾を落としていく。
一時的ではあるが艦隊に戦艦のいる宿毛湾艦隊は強力な大和型の火力に物を言わせた波状攻撃を展開していた。
「艦隊を単横陣に移行。大淀と加賀は後方に」
「「了解っ!」」
そこで二隻は後ろに距離を取ると、大和を中心に横陣を展開し、そのまま前進を始める。
「前進!今のうちに戦艦を叩きます。他は残りの残存艦艇を」
『『『了解っ!』』』
そこで佐伯湾泊地や他の泊地所属の艦娘が攻撃を開始し、あっという間に接近してきた艦隊は撃破されてしまった。
「戦闘終了、第二派に備えてください」
大和は最後に無線でそう話すと、艦隊はその場で軽い補給を行う。
「初陣から重装備ですね。まさか戦艦を出してくるなんて……」
先ほどの編成を見て思わず大淀は苦笑する。
「ええ、確かに重装備な艦隊でした。……損害は?」
「大和さんが真っ先に飛び出したので大きなものはありません。小破三のみです」
大淀がそう報告を上げると、大和は続けて指示を出す。
「これから長期戦になる可能性があります。小破した艦艇は出来る限り修復を急がせてください」
「了解、全艦に連絡を入れておきます」
大淀がそう答えると、強化された通信設備を使って海域全体に連絡を入れていた。
「初手から戦艦を出すとは思わなかった」
司令室で山郷がそう溢すと、横で四宮も頷く。
「ああ、よっぽど打ち上げられたくないのかもしれんな」
そう答えると、周りにいる士官達はそんな二人の呟きに耳を傾けていた。二人は軍人派の人間であり、片方は宮家の血も引くほどの高貴な家だ。そしてもう片方は日本や周辺国を滅亡から救った東シナ海の英雄。部屋にいるだけで存在感がある二人にすでにさまざまな思惑も交錯していた。
「今後の作戦案を変更するかもしれん」
「ああ、その為の立案は早めの方がいいな」
そう言うと、四宮は席を立った。
「次に艦隊が現れたら連絡を頼む」
そう言い残すと二人は部屋を後にしていた。
司令室から廊下、そして階段に上がるとそこで四宮は山郷と話す。
「今回の作戦、お前はどう見る?」
「……」
四宮の問いかけに山郷は少し考える。
「…正直、意外だと言わざるを得ない。まず初めに、深海棲艦の艦隊は軽巡を中心とした偵察部隊が出てくる」
そこで山郷は感じた違和感を口にする。
「しかし今回現れたのは主力艦を編成した艦隊だ。おかしいと思わないか?」
「ああ、おまけに今の所偵察部隊の確認はされていない」
「なあ、まさかだが……」
そこで山郷が口にした言葉に四宮は先制した。
「やめてくれ。そんな事あったら国が滅ぶぞ」
「しかし今後の状況次第では冗談で済まされんぞ。現に、今回の作戦の副司令は俺じゃなくて中立派の人間だ」
それに、今回参加の指揮官に軍人派の人間はごく少数で。大半は中立派の人間だった。
「……分かったよ。調べさせる」
そこで四宮は携帯(傍聴対策済)を取り出してある場所に電話をかけていた。
「裕翔か?」
「いや、彼奴は今は公安委員会に外人部隊誘導のロジを詰めている。手が回らんよ」
そう言い、彼は別の友人に連絡と依頼をしていた。
「さて、この予測が当たっていた場合はどうする?」
「そうだな……一人信頼できるのがいる。そいつに話をつけておこう」
「了解だ」
二人は手短に話を終えると、そのまま司令室に戻って行った。
今後の展開、読んだらどれかに投票してほしいです。
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ハッピーエンド
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微ハッピーエンド
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モヤモヤエンド(?)
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全部書け。