ゆりの手帳   作:Aa_おにぎり

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鹿屋基地で二人が話している頃、洋上では大和率いる種子島防衛艦隊は深海棲艦の第二次攻撃に警戒していた。

 

「っ!!来やがった!第二波だ!」

 

外角を務める佐伯湾泊地所属の朝霜が報告を上げる。

 

「総員戦闘開始!艦隊旗艦に連絡!」

 

そこで扶桑は指示を出す。その直後に補給を終えた大鳳から航空機隊が発艦して行く。

 

「こちら扶桑。敵の第二波を確認。これより攻撃に入る」

『了解、積極的攻撃は避け。防衛に注視されたし』

「了解」

 

無線を切り、そこで扶桑は改めて今回の作戦に不満を覚える。

 

「しゃおらぁああ!!何べんでもかかってこいやぁっ!!」

「あっ!待って天龍!!」

 

そう叫びながら駆け出していく天龍を慌てて朝霜が追いかけ始める。

基本的に血気盛んな艦娘が集まりやすい佐伯湾泊地、おそらくそれは確実に自分たちの提督が関係しているとしか思えない。多分あの人は毘沙門天に愛されているんだと思う。

出なければ、建造しても気性の荒い艦娘ばかり出てきたり。提督自身クソ重い戦艦用のトレーニング器具を余裕で動かしたりできないはずだ。

 

「だからこそ、宿毛湾の大尉に会いたかったのだけれど……」

 

世間一般的には恐らく彼女が普通の女性なのだろう。提督を見てひどく怯えていたが、艦娘にはそれなりに愛情があるようで。実際、艤装も素晴らしい出来栄えだった。

 

「今度改修を依頼してみようかしら?」

「どうしたの?一人でぶつぶつと……」

 

すると横で大鳳が少し訝しむように見てきており、そこで扶桑はそんな彼女の疑念を晴らすように答えた。

 

「帰ったら黒岩大尉に改修してもらおうって話よ」

「ああ、なるほど。でしたら私もお願いしたいところですね」

 

扶桑の返答に大鳳も納得していると、扶桑は砲口を向ける。

 

「撃てっ!」

 

そして主砲が発射され、放たれた砲弾は現れた敵艦隊に向かって飛んで行った。

 

 

 

 

 

その頃、大和達はまたも通信を受けていた。

 

「新たな敵艦隊発見。支援要請あり」

「了解。これより支援砲撃を開始します」

 

大淀の通信が真価を発揮し、連絡のある艦隊に向けて大和や加賀達が救援に向かう。

 

「行ける?」

「ええ、問題ありません」

 

足柄が不知火に聞くと、いつもの二人はそのまま速度を上げて突撃していく。

 

「お待たせ〜」

「失礼します」

「えっ?!」

「速っ!?」

 

救援に駆けつけた二人はそのまま加速をさらに続けると、そのまま深海棲艦に向かって砲撃を開始する。

 

「発射!」

「撃て」

 

そこで二人の主砲がそのまま至近距離で命中すると、駆逐を一隻沈め。そのまま不知火が急速に通過すると、Uターンしそのまま後ろから砲撃を叩き込む。

砲塔が後ろに向き、そのまま不知火に砲撃が向かうが、彼女の抜群の加速力はその追随を許さなかった。

 

「あら、前がお留守よ」

 

そしてその瞬間を足柄が待っていたと言わんばかりに砲撃を加える。そして最後に残った軽巡に不知火は少し距離をとった後に一気に加速。そのまま一瞬()()()後に軽巡の顔面から蹴り倒していた。

あっという間に敵の艦隊を倒した二人に唖然となる他の艦娘達。

 

「これが…最前線で鍛え上げられた艦娘……」

「あり得ない動きだよ……」

 

思わずそんな言葉が漏れてしまうと、一通り倒し終わり。若干だが、深海棲艦の返り血で衣装が青くなった足柄は無線を繋いだ。

 

「羽黒、そっちの状況は?」

 

そう聞くと、別の艦隊の救援に向かった羽黒達から返事があった。

 

『問題ありません。敵の哨戒艦隊は倒し切りました』

 

そう答える彼女の近くには倒された駆逐艦の残骸があった。羽黒は秋月と涼月を率いて別の部隊の対応に当たっていた。

 

「今度、大尉に天龍みたいな武器を求めようかしら?」

「良いんじゃ無いんですか?足柄は私と違って手持ち武器はないですし」

「なんですって……?」

 

少し小馬鹿に答えた不知火は手に持っている長10cm砲を見せると、足柄は軽くデコに青筋を立てていた。

するとそこで割り込むように無線が入る。

 

『お二人とも、今は戦闘中です。それ以上喧嘩をするなら……』

「はいはい、分かっているわよ」

「流石に大淀に叱られるのは苦手ですから」

 

二人はそう言い、大淀のガチ説教で四時間正座させられた日のことを思い出しながらすんなりと引いていた。

 

『次の救援要請が出ています。お二人はそちらに向かってください』

「了解」

「了解です」

 

そうして二人はそのまま別の海域に移動をし始めていた。

 

 

 

 

 

「二回目はかなり広範囲だな」

「ですね、各地から救援要請が鳴り止みません」

「……潜水艦がいるのかもしれないわね」

 

大和は薄くではあるが、広範囲に接敵報告があった事実を鑑みて予測を立てると大淀が進言してきた。

 

「偵察出します?」

「ええ、よろしく頼むわ。こちらも水中探信儀を使います」

 

大和はそう言い、一旦支援砲撃を中止するとそのまま水中の探信儀を使用して潜水艦の捜索を始める。

 

「……見つけた」

 

種子島近海で琉球海溝があると言えど、戦闘時において敵の位置を探るためには浮上する必要がある。おかげで隠れている潜水艦を見つけられた。おまけに大陸棚に逃げ場がほぼない。

 

「近海の天霧に連絡、爆雷投射」

「了解、天霧に連絡します」

 

そこで大淀は天霧に連絡を入れると、遠くで天霧が爆雷を投射し。そのまま海面に着水、その後投げられた分だけ海面に水柱が浮かび。その後、しばらくした後に大和はその音を聞いた。

 

「……浸水音確認。沈降して行きます」

「……」

 

潜水艦が海域に隠れていた事に少しの驚きを感じながら他の潜水艦がいないかの警戒を呼びかけていた。

 

「しかし、こんな隠れるような場所もない海域に潜水艦ですか……」

「珍しい光景ですね」

 

そこで大淀と大和はそう溢すと、そこでまた新たに艦隊が現れた報告が上がった。

 

「発射までどのくらいですか?」

「あと二時間といったところです」

「わかりました」

 

そこで大和は頷くと、大淀は無線で状況を聞いていた。大淀は比較的戦力としては足柄などに比べると低いのであまり前線に出ることは無い。あくまでも指揮通信の要としていた。

 

「このまま戦闘を続けていると、補給も少し心配になってきますね……」

 

大淀はそんな懸念が生まれていた。

 

 

 

 

 

同じ頃、『くにさき』では遠くで起こっている戦闘音を聞きながらその艦橋で艦長と副長はやるせなさを感じていた。

 

「副長」

「はっ!」

「艦はこのままだ」

「……はっ」

 

艦長の意図は分かっていても体は前に動きたいと叫んでいた。

この戦場となった海域で今でも艦娘が命をかけて戦っている。自分達の役割はあくまでも後方の補給と回収要員だ。ここで沈んでは彼女達を鹿児島まだ無補給で帰らせることになってしまう。

 

「そもそも俺達では深海棲艦の良い的だ。まともな抵抗すらできんぞ」

 

特に現代艦と言うのは大戦中の軍艦と比べても装甲は紙に等しい。現代艦の戦闘方法は超遠距離からの攻撃とその防御であり、それ故に迎撃の為の時間があるのだ。

それに比べて大戦中の軍艦は距離が短い代わりに砲弾の速度は早く、外郭も硬いので迎撃は不可能だ。巡洋艦の砲弾が一発でも当たれば瞬く間に撃沈してしまうだろう。

 

「彼女達に無理をさせたく無いのなら、俺達はここに止まるべきだ」

「分かっています」

 

副長はそう答えると、そこで艦長は鉄帽を被り直すと指示を出した。

 

「とは言っても、流れ弾には気をつけろよ」

 

そう言い艦長は戦闘海域とは反対側の種子島にて移動を終え、発射台に固定されたロケットを見ていた。

 

 

 

 

 

その頃、鹿屋の司令室では各所方面に対応している艦娘の状況をまとめ上げていた。

 

「各艦隊、防戦一方ですか」

「元々の任務だ。仕方ない……航空隊の様子はどうだ?」

 

副司令の島の言葉に四宮が頷いた後に聞くと、一人の空軍士官が報告する。

 

「Q-1無人戦闘機隊が攻撃を既に開始しています」

「F-15J偵察機も小型無人機を発進させました」

 

Q-1は日本が戦前に独自に開発した無人機の事で、元は大型のラジコン飛行機だ。主武装はAGM-114ヘルファイアやAIM-92スティンガーであった。

F-15J偵察機は既存のF-15Jを改修し、翼下に無人偵察機を二機装備した機体だ。

 

「了解、偵察は怠らないでください」

 

四宮が答えると、島はそこで彼に聞いた。

 

「艦隊が突破される可能性は?」

「今の所無いかと」

「ロケットに傷一つでも付いたら飛べませんよ」

「そんなのは重々承知しています。だから、敵の射程圏外の50キロ地点を絶対防衛ラインに設定したんです」

 

基本的に確認されている中で最大の主砲は16inchであり、50キロと離れていては届かなかった。今回派遣された艦隊の数を鑑みての行動だが……。

 

「佐世保からも艦隊が出ていれば良かったのですがね……」

 

島もおそらくは勘づいているその懸念に思わず愚痴をこぼす。

佐世保はかつて山郷が居た地であり、今は軍艦派の軍人が取り仕切っていた。そしてこの作戦に軍艦派の人間は一人もいない。居るのは中立派と軍人派の人間だ。

 

そして軍艦派の目的はこの作戦が失敗したことを糧に中立派の人間を軍艦派に取り込む事だ。ヤオビクニと言う強い力を手に入れた軍艦派からすれば売り込みをかけるチャンスでもあった。既に四宮の手で世界中にヤオビクニの情報を流した今、深海棲艦の血清を材料とした薬に危険視する声も少なからずあった。

 

「(国内での派閥を取るために世界を巻き込むか……)」

 

四宮は軍艦派の、今の情勢だからできる大胆な行動に苦笑せざるを得なかった。

 

 

 

 

 

その頃、洋上では徐々に激化していく戦闘に流石の足柄達も疲労を感じ始めていた。

 

「であぁっ!!」

 

足柄が敵のツ級の首を掴んで艤装の20.3cm砲を発射して撃破する。

 

「あとどのくらい?」

「まだまだ居ますよ。発射っ!!」

 

そこで不知火も汗をかきながら持っていた長10cm砲を撃つとナ級を撃破する。

 

「軽いのばかりだけど、数が多すぎるわ…ねっ!」

 

接近した新たなツ級を殴り倒して海面に叩きつけると、突如足柄達の周りに無数の大きい砲弾が着弾した。

 

「っ!?」

 

その方を見ると、そこには新たな深海棲艦の艦隊……それも、戦艦を含んだ高火力の艦隊がこちらに向かってきていた。

今後の展開、読んだらどれかに投票してほしいです。

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  • 微ハッピーエンド
  • モヤモヤエンド(?)
  • 全部書け。
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