「嘘でしょ……!?」
新たに増援として現れた敵の主力艦隊。そこにはツ級の他にタ級も含まれていた。
「足柄っ!!」
「っ!」
唖然となった足柄に不知火が叫ぶと、その瞬間砲撃が飛んできた。
「うわっ!!」
「足柄!?」
そこで砲撃を喰らった足柄は水柱が晴れると、艤装の至る所が破壊され、彼女自身頭から血を流していた。
「くっ…!!」
「足柄!」
「大丈夫よ…それより救援は?」
「もうした。直ぐに大和がやってくる」
「そう…それなら安心ね」
怪我を負った足柄はそこで懐から白いツールロールを取り出した。中には針無し注射器とアンプルが入っていた。
「ここまでやられたら仕方ないわね」
「いいんですか?」
「この状況よ?」
そう言い彼女は中破した自分の艤装と身体を見せた。それ見て不知火は軽くため息をつくと、彼女の首元に注射を施した。
「まさかこんなに早く使う機会が訪れるとは思っていなかったわ」
「ええ、まったくです」
そう言い不知火もその薬品…開発者が『緊急補修剤』と名付けた薬品のアンプルが足柄の体内に入って行くのを見ていた。
出撃前、宿毛湾泊地にて出撃する加賀達は白い赤十字のマークの入ったツールロールを渡していた。中身は針無しの圧力注射器とアンプルであり、何だろうと思っているとそこでそれを手渡した黒岩が説明を入れていた。
「これの中身は緊急補修剤と言う薬品です」
「?」
「用途は貴方達が大怪我を負った時に使うの。できれば大きな血管のある首元に刺すのが一番効果的だけど……最悪腕にでも打っても同じ効果はあります」
すると説明をあらかじめ受けていたのだろう大淀がその続きを説明した。
「大尉が開発した新薬です。安全性は妖精さんのお墨付きですから心配はいりません。ただ、使用後は四時間ほど時間を空けて使用してください。連続で使用すると体に負担が掛かるそうですので」
なるほど妖精さんのお墨付きの安全性なら問題はなさそうだ。
前にヤオビクニの解毒薬開発で生まれた薬が泊地で出回って妖精さんが薬漬けになった大惨事(加賀達も楽しんでた)があったように、ヤオビクニの解毒薬開発の過程で新たな新薬が生まれていたのだ。しかも、どれも副産物なのによく使える薬品ばかりだった。
「それを考えると、あの人は優秀な薬学者なのね」
「ええ、おかげで助かっていますよ」
そう言い、黒岩謹製の回復薬が入り切ると、ボロボロだった艤装はそのままだが、足柄の身体中の傷は徐々に回復していた。
「おお…」
即効性があると思っていると、そこで足柄はすぐに副作用が出た。
「あっいわね」
「火照っていますね。大丈夫ですか?」
「ええ、このくらい何とも」
そう言い、急速に傷を直したからか、少し熱が出た彼女はそのまま立ち上がると不知火が言った。
「一旦下がりましょう。あの数相手は厳しいでしょう」
「ええ、悔しいけど。今はそうするしかなさそうね」
そう言い二人は接近してくる戦艦を後ろに撤退を始めた。
すると怪我したのを聞いたのだろう、大淀が近づいてきた。
「大丈夫ですか?」
普段から泊地の戦力の要の一人が中破したと聞き、居ても立っても居られなかったのだろう。
そんな彼女に足柄は軽く手を振って答えた。
「大丈夫よ、あの学者さんの薬のおかげでね」
そう言い血を海水で軽く洗い流すと、大淀は黒岩から渡された薬を使ったのかと納得するとともにその効果に少し驚いていた。
「でも正直あの戦力は厳しいです」
そこで不知火が溢すと、後ろにいる戦艦達をみていた。
「軽装甲の艦隊で疲弊させた後に本命ですか……」
「してやられたわね」
そう言い、三人はそのまま近づいてくる艦隊を見ているとそこで突如艦隊に砲撃が飛んできた。
『大丈夫ですか?』
無線で聞いて来たのは大和だった。砲弾が飛んできた方角を見ると、そこには大和を先頭に佐伯湾泊地の艦隊や羽黒達が向かって来ていた。
「もうこっちに……!?」
大淀が驚いていると、得意げに天龍が言った。
「おうよ!とっとと片付けて飛んで来たぜ」
「足柄姉さん、大丈夫?」
「あまり無理は行けませんよ」
羽黒と涼月がそう聞くと、足柄は苦笑しながら答える。
「無茶をするのはいつもの事よ?」
そう答えると、加賀も少し苦笑していた。
「相変わらずね。飢えた狼」
「ふんっ!これがいつもの私よ」
足柄は得意げにそう返すと、加賀は続けて聞いた。
「戦闘はできるか?」
「勿論……と言いたいけど、これは少し厳しいかもしれないわね」
そう言い彼女はグチャグチャになった砲塔を見た。それを受け、加賀は足柄に言った。
「一旦後方に下がれ。くにさきで修復しろ」
「ええ、そうするしか無さそうね」
足柄は悔しげにそう答えると、加賀は不知火を見た。
「不知火、貴方は佐伯湾の天龍と行動しなさい」
「分かりました……宜しく頼みます。天龍さん」
「おう!安心してアタシに背中を任せな」
天龍はそう返すと、扶桑は簡単に指揮官を他の艦隊に渡した加賀の判断の速さに少し驚いた。
「扶桑さん、不知火を任せます」
「はい…ですが良いのですか?そちらの数が減ってしまうのでは……」
「構いません。こちらは羽黒達でなんとかします」
そう言うと彼女は弓を引いて艦載機を発艦させた。
幸いにも向こうには大和という最強の艦娘がいる上に秋月型という対空に特化した艦艇がいる。艦隊防衛の面でもそれほど心配もいらないのだろう。対潜に関しても大淀がいるので問題なかった。
そう判断し、扶桑もそれ以上強く言うことはなかった。
「不知火、無茶しないのよ」
「ええ、分かっています」
加賀の忠告に不知火はそう答えるとそのまま自分の武装を確認する。
「あまり激しい行動はできませんね……もう少し訓練すべきでした」
弾薬の数が心許なく、これ以上の長期戦は厳しいものがあった。
「仕方ないわよ、ここまで長い戦闘は経験した事ないんだし」
「……」
足柄がそうフォローを入れると不知火も思っていた感情をグッと抑えて足柄を見た。
「変にヘマしないでくださいね」
「ええ、分かっているわよ。そこまでノロマじゃ無いわ」
そう答えると足柄は海域を離れて行った。
「では、このまま作戦を始めます。一斉砲撃!」
そう叫び、一斉に艦隊全員で射撃を加えて接近してくる艦隊を迎撃する。所々損傷はあるものの戦闘継続は可能であり、積極的攻勢も無い事から足柄のような大きな損傷は無かった。
「撃てっ!」
そこで大和の号令で一斉に砲弾が放たれると、艦隊の戦艦級に命中。
敵艦隊から応戦してくるように砲撃が飛んできた。
「戦艦しかいないの?」
そこで艦隊を見た扶桑が思わず首を傾げると、大淀も首を傾げた。
「変ですね…空母が居ないなんて……」
大淀が不審がっていると、加賀が聞いた。
「偵察はどうなっているの?」
「まだ戦闘海域に空母の確認はできていません」
大淀の艦載機の紫雲からの報告がない事実に少し疑念を抱きながらも、加賀は艦載機を上げる。
「念の為、加賀さんは戦闘機部隊を一つ残してください。大鳳さんもお願いします」
「了解」
「了解です」
そう言い、二人は烈風改と零戦五二型を上げた。
その間も大和や扶桑などの主力艦の砲撃が飛び、その中には大淀も含まれていた。
「せっかく無理して乗せたのなら、使いませんとね」
そう溢す大淀に秋月達も珍しい大淀の戦闘を見ていた。
大淀は作戦前にバルジの追加と機関出力の強化。そして武装を15.5cm三連装砲から20.3cm連装砲に換装しており、重巡並の火力を手にしていた。
「発射!」
その瞬間、軽巡には似合わない砲声と四発の砲弾が敵艦隊に向かって飛んでいった。
「爆撃開始」
「雷撃隊、攻撃開始」
そして今回の主力空母である加賀と大鳳は雷撃と爆撃を行い、確実に戦果を上げていた。
流星改と九七式艦爆は魚雷を投下するとそのまま離脱していく。
「……はぁ、羨ましい。流星…」
思わず大鳳は充実した装備を持っている加賀にそんな羨望の声が漏れると、横で加賀が言ってきた。
「宿毛湾は艦娘は居ないけど、装備は充実しているわ。今度融通を効かせてあげようかしら?」
「そんなこと出来るんですか?」
装備を渡す事はできるのかと疑問に思うと
「飛行訓練と言って長距離で飛ばした後にそのまま自分の所属機にするの」
「それを規制する規則もありませんからね」
横で話を聞いていた涼月がそう答えると、大鳳は納得した表情を浮かべた。何も書かれていないのなら、その行為をしたところでそれを罰する事もできないと言う事かと納得できた。
「幸い、うちの所は他にも機体が余っているから」
「ありがとうございます」
そこで大鳳は加賀計らいに思わず頭を下げていた。
するとそこで大和から新たな指示が飛んだ。
「これより敵主力を叩きます。最大船速!」
そう指示を出すと、艦隊は敵や主力艦隊に向かって前進を始めた。
今後の展開、読んだらどれかに投票してほしいです。
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ハッピーエンド
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微ハッピーエンド
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モヤモヤエンド(?)
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全部書け。