八月十二日
太平洋洋上
その日、洋上を六人の艦娘が航行していた。
編成は加賀、羽黒、阿賀野、矢矧、秋月、涼月であった。改装工事が終了し、改二の訓練や諸調整も終わり。ある程度動かせるようになったと言うことで軽い腕慣らしと阿賀野達の実践訓練も兼ねて海に出ていた。
「今日は何事もなければ良いですね」
「そうかしら?何事も実践あるのみよ」
羽黒の言葉に加賀はそう返すと後ろにいた阿賀野が少し引き攣った表情で言う。
「あのぉ……お手柔らかにお願いしますね?」
そう話すよ横にいた矢矧が阿賀野の肩を持った。
「姉さん」
「ん?」
そこで矢矧は少し悪い笑みを見せると加賀に言った。
「加賀さん、厳しめでお願いします」
「ちょっとぉっ?!」
矢矧の意見に阿賀野は驚いていると、矢矧は姉を見ながら言う。
「私たちはもっと経験を積む必要がありますから」
「でもだからって……」
そう二人は話していると、羽黒が軽く微笑んだ後に話しかける。
「大丈夫ですよ。今日の哨戒航路は比較的深海棲艦も出にくい場所ですから」
「そ、そっか……それなら安心ね」
阿賀野は羽黒の言葉にややホッとしていると加賀が水を刺すように言う。
「でもそれだけ強力な艦娘が現れるかも知れない可能性があるわ。それこそ、嵐の前の静けさのようにね」
「ええっ?!」
「もう、加賀さん……」
そんな加賀に涼月は軽くため息を吐くと、加賀はやや厳しめな口調で言う。
「これは訓練じゃない。実践なの、いつ奇襲を受けても無事なようにしなさい」
「了解です」
秋月がそう答えると艦隊は深海棲艦との競合海域を哨戒していた。そしてそんな海を見ながら羽黒は溢す。
「ここから見える海は未だ制海権は敵の手中なんですもんね……」
「腹立たしい限りだわ」
加賀がそんな羽黒の言葉にそう返すと、加賀の彩雲から報告が入った。
「っ……敵発見」
「嘘っ……!」
「珍しいですね」
まさかのフラグに羽黒達は驚いていると詳しい報告が入る。
「敵は……一隻」
「一隻……?!」
「逸れたのかしら?」
「なら撃破は容易ですね」
涼月はそう答えると偵察していた彩雲はその深海棲艦から激しい対空砲火を受けていた。
「っ!もう見つかった」
「「「!!」」」
すぐさま彩雲に撤退を命令するも、激しい攻撃に遭い。加賀の彩雲は撃ち落とされてしまった。
「くっ、堕とされたわ……」
「そんな、加賀さんの彩雲が……」
加賀の彩雲が落とされたと言う事実に驚いていると、艦隊は警戒度をやや上げ、すぐに通信をした。
「やれやれ、ほとんど出ない海域に深海棲艦とは……」
「運がいいじゃありませんか」
「それよりもレーダー係は何をしているのやら……」
深海棲艦に対し既存の軍艦では対応できないと言うことから、かつての護衛艦のレーダーなどは陸上に移設されており。それらは太平洋に向けて年中無休で早期警戒を行なっており、その為にP-1哨戒機も飛ばしていた。
そして深海棲艦の反応があるや否や通信で担当海域の泊地に出撃命令が飛ぶ防衛システムのはずだ。
「まあまあ、どうしたってレーダーに穴はできてしまうものです。現状OTHレーダーも使えませんしね」
「はぁ……」
OTHレーダーは超水平線レーダーではあるが、深海棲艦に侵略された海域は謎の電波妨害の影響でその全容は明らかになっていなかった。
「まあ、それでも文句の一つは言わせてくれ」
そう答えると山郷はパソコンを立て、泊地に残っていた足柄や不知火が司令官室に駆け上がってきた。
二人は改修作業を行なっており、出撃するにも最低三日は必要だった。
「深海棲艦ですって?」
「ああ、単艦らしいがな」
「私達は……」
「どっちにしろ出られませんよ。まだ改修作業すら終わってないんですから……」
黒岩がそう話すと足柄が文句を溢す。
「なんでもっと早く出来無いのよ」
「それは……」
少々強めに言うと黒岩はその後の言葉に詰まってしまっていた。それは怯えているようにも見えた。
それを見て山郷は代わりに言った。
「馬鹿言うな。急かして艤装ぶっ壊したら俺が殴るぞ」
「うぐっ」
「それは……」
足柄達は山郷にどつかれるのは勘弁と言った様子でそれ以上追求する事は無かった。
「そんな訳だ、お前達は大人しくしとけ。幸い、飛行場から爆撃機は飛ばしたしな」
そう話すと上空を妖精さんの乗る四式重爆が飛んで行っていた。
「本当、艦娘以外は装備が充実している事で……」
「ええ、全くです」
足柄達は軽く嫌味をそう溢すと山郷もなんとも言えないと言った表情で飛んでいく航空部隊を見ていた。
「俺はここから映像を見る。大淀」
「はい」
そこで大淀は山郷に麦茶を手渡す。
基本的に見ているだけの山郷は指示をほぼ出さない。少なくとも私が派遣されてから指示を出しているところを見た事が無かった。
「お酒はよしてくださいよ?」
「馬鹿言え。俺もそこまで呑兵衛じゃねえよ」
山郷もそう答えるとやや苦笑気味に加賀達のガンカメラを見ていた。
「……来たか」
洋上に一人立つその深海棲艦は遠くから近づく艦娘を見た。
「撃てっ!!」
加賀の指令で羽黒達は一斉に砲撃する。
「発射っ!!」
「このまま火力で押し倒せば……」
阿賀野達も訓練の成果を見せる為に持っている15.2cm連装砲を向けて放つ。
まだ練度の関係で艤装の大規模改修を施していない阿賀野達はほぼ未改修だった。一応、大淀と同じ15.5cm三連装砲を搭載する案もあるが今はまだ練度不足であった。
「航空隊発艦」
そして加賀も改二になった事で飛行甲板が装甲化され、出力も大幅に強化されていた。
「まだ完璧に慣れていないわね……」
発艦時の衝撃で少し痺れた手を見ながら加賀はそう溢していた。
「各機、直ちに攻撃始め」
そして発艦した彗星が急降下を始めると、その深海棲艦は対空射撃を始める。
「なっ……!!」
そしてその猛烈な対空砲火で急降下を始める彗星は瞬く間に堕とされてしまう。
「加賀さんの航空隊が……!!」
「何て対空なの!?」
あっという間に落とされた航空機に羽黒達は驚いているとその深海棲艦は落とした航空機を見ながら溢す。
「腕は上々のようだな……」
全機落として何言っているんだと言いたい所ではあるが、その深海棲艦は種類はおそらく重巡棲姫。しかし対空が明らかに可笑しかった。
「新型か…」
おそらく、この前番号付きとなった『HC-11』と呼ぶ個体だ。
「……お前達に、聞きたい事がある」
すると相対する重巡棲姫は加賀たちに話しかけると、加賀は警戒心を表に出して叫んだ。
「問答無用!!」
そしてその瞬間に羽黒が砲撃を行うとそれに続くように阿賀野達も砲撃を開始する。
何より初実戦の阿賀野達は額に冷や汗をかきながら砲撃をすると、その重巡棲姫は近距離の砲撃を軽々避けた後に初めに阿賀野を見た。
「まずはアンタから」
「きゃあっ!!」
砲撃が飛び、阿賀野に着弾した砲弾は一撃で彼女を大破に持ち込んだ。
「姉さん!」
「次はお前だ」
「くっ!!」
そして間入れずに重巡棲姫は矢矧を狙うとそれを庇うように真横から羽黒が砲撃を入れると、その重巡棲姫は一旦距離を取った。
「一撃で……!!」
「何て火力なの……」
大破した阿賀野を介抱しながら秋月達はその火力と動きに驚いていた。
「羽黒」
「分かっています」
羽黒はすぐに答えると先ほど狙われた矢矧を見た。
「矢矧、行けますね?」
「ええ勿論…姉さんの仇を取らないと……」
そう言い矢矧の目が真剣になると鋭い目で重巡棲姫を見ていた。するとその重巡棲姫はややため息を吐くように小さく溢す。
「やれやれ、君達も問答無用来るとは……私はある人物の居場所を聞きたいだけなのだが……」
そんな言葉に加賀は弓を構えながら話す。
「その人物の居場所を聞き出して殺す算段なのでしょう?」
そう答えると加賀の意図に合わせるように羽黒が飛び出し、矢矧もそれに少し遅れつつも続いた。
「矢矧さん」
「はいっ」
「撃てっ!!」
そして羽黒と矢矧は同時に引き金を引くと重巡棲姫は回避行動を行い、凄まじい加速で避け始める。
「なんですか、あの加速?!」
「重巡棲姫で……あんな速度なの?」
加賀ですら思わず驚いた声を出しているとそんな重巡棲姫の周りに小さめの水柱が多く着水し、その方を見るとそこには秋月達が砲塔を向けて砲撃していた。
「こちらで注意を引きます。その間に加賀さんは……」
その瞬間、重巡棲姫から砲声が響き、秋月と涼月にほぼ同時に命中した。
「秋月!涼月!」
思わず叫ぶと煙が晴れた先で大破した二人が姿を現した。
「ぐっ……!!」
「ごほっ!」
そして大破になった二人は今の自分の状況を鑑み、加賀に申し訳なさそうに言う。
「すみません。これ以上の戦闘は……」
「もういいわ、あなた達は撤退しなさい」
するとその瞬間、無線が入った。
『艦隊は直ぐに撤退してください!』
「っ?!」
通信に驚いていると、大淀が続ける。
『今から四式の爆撃も始まります。加賀さん達はその隙に撤退をお願いします』
「くっ……わかったわ」
加賀も艦隊の半分がやられた現状を見て渋々撤退という選択を選ばざるを得なかった。
すると空からエンジン音が響き、妖精さんの乗る四式重爆が爆弾を落とし、羽黒達も無線を聞いていたのだろう。煙幕を焚き、周囲を一瞬で真っ白に染め上げていた。
「撤退するわよ」
「はいっ!」
一撃で駆逐艦を大破まで持ち込める強力な重巡棲姫の登場に加賀達も戦慄していた。
時は少し戻り、阿賀野が一撃で大破に持ち込まれた時まで戻る。
「阿賀野が一撃で?!」
軽巡が一撃で大破となった事実に黒岩は驚き、山郷も同様を隠しきれていなかった。いくら練度が低いとはいえ、前線で戦う分には問題ないくらいであったはずだ。それなのに……。
「すぐに阿賀野の入灌準備だ」
「は、はいっ!!」
黒岩が慌てて司令室を出ると撤退中の阿賀野のビーコンを確認する。
「どういう事だ?一体……」
そこで映像に目をやった瞬間、山郷は動きがぴたりと止まった。大淀はその違和感に一瞬で気づくと声をかけた。
「提督?」
「っ……!?」
そして明らかに動揺し始めた山郷はガンカメラに写る重巡棲姫を見て小さく溢した。
「……摩耶…?」
正確にはその重巡棲姫が頭に付けている赤いアズマギクの髪飾りを見ていた。
今後の展開、読んだらどれかに投票してほしいです。
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ハッピーエンド
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微ハッピーエンド
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モヤモヤエンド(?)
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全部書け。