ゆりの手帳   作:Aa_おにぎり

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海に出た宿毛湾艦隊は大淀を先頭に洋上を進んでいた。

 

「先制攻撃は抑えてください。まずは私から話しますので」

「……了解」

 

少し間を置いて渋々と言った様子で加賀は頷くと羽黒がやや驚愕した様子で聞く。

 

「でもそんな事があるんですか?」

「正直分かりません……ですが、提督の指示です。従うしか無いでしょう」

 

そう話すとそこで大淀の無線に山郷から通信が入る。

 

『……大淀』

「はい……」

()()()()

「…そうですか」

 

話を聞き、大淀は軽く頭を抱えた後に山郷に言う。

 

「間違っても飛び出さないでください。何かあった場合、大尉の一件もありますから」

 

そう言うと山郷は答えることなく無線を切った。それを受けて大淀は軽くため息を吐く。

 

「(先に手を打っていて正解でしたね……)」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

その頃、山郷は泊地にある一隻の小型艇に乗り込む。

元は民間のプレジャーボートだったのを徴用した物で提督の移動用に一隻は置かれていた。

 

「……」

 

そしてその小型艇のエンジンのキーを持って乗り込み、エンジンをかけようとすると反応が一切なかった。

 

「?」

 

そこで疑問に思って何度か回すもボートが動く気配は一切なかった。

 

「どうしたんですか少将?」

 

するとそんな山郷に黒岩が話しかけ、山郷はそこ違和感を口にした。

 

「あ、ああ…動かなくてな。何か分からんか?」

「あー、それなら……」

 

そこで黒岩は納得した様子でプレジャーボートの機関部を見た。

 

「点検のために妖精さん達がエンジン持ってっちゃいましたよ」

「は?」

 

山郷は唖然になって聞き返すと黒岩は山郷に言う。

 

「…少将、気持ちはよくわかります。会いたい人が目の前に現れた時に居ても立っても居られないのは……」

 

その時の黒岩の目は優しさのある目をしていた。まるで知っているかのような目をしており、山郷に同情していた。

 

「ですが、少将が死んでしまったら加賀さん達はどうするんですか?」

 

そう言われ、山郷は大淀にしてやられたと同時にその後ろで走ってくる足柄達を見ていた。

 

「……」

「きっと大淀さん達が何とかしてくれます。艦娘に手を出さないのが一流の提督なんじゃないんですか?」

 

黒岩はそう言うと山郷はボートからゆっくりと降りるとそのまま泊地の桟橋に降りた。

 

「……そうだな、君の言う通りだ」

 

山郷はそう答えるとそのまま海を見る。なんとも恥ずかしい話だ、教え子に教えられるとは。

 

「すまんが俺はここに居る。何かあれば……」

「はい、分かっております」

 

黒岩はそう答えると安堵した様子で去って行った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

その頃、洋上を進む大淀達四人は視界に一人の重巡棲姫を見た。

大淀が見ると、その重巡棲姫も砲は向けるも撃ってくる様子はなかった。

 

「……やっぱり、撃ってこない」

「こちらから撃たない限りは仕掛けないんですね」

 

大淀の呟きに羽黒も信じがたいといった様子で答えると大淀は少し息を吸った後でその重巡棲姫に話しかける。

念の為羽黒達はいつでも攻撃できるように砲をその重巡棲姫に向けていた。

 

「私たちは攻撃をするために来たわけではありません」

「……ほう?」

 

するとその重巡棲姫は興味深そうに大淀を見た。

 

「ならば何をしにここまできた」

「…貴方が徘徊をしている理由を聞きに」

 

いつでも攻撃できるように上空では妖精さん達が四式重爆のイ号一型甲誘導弾装備機に乗って準備を整えていた。

 

「貴方は見つけた艦娘の艦隊を見つけては単独で壊滅させた後に『山郷と言う人を探している』と言っているそうですね」

「……ああ、そうだ」

 

その重巡棲姫は頷くと大淀はさらに聞く。

 

「あなたは何故そのようなことを?単艦で艦隊に挑むなどと言う無謀な事をしてまでその人物を探しているのですか?」

「お前たちには関係のない話だ」

 

深海棲艦にしてはあまりにも流暢な日本語。大淀と満足な会話ができる異質なこの深海棲艦は大淀にそう答えると大淀は言う。

 

「私たちは山郷勲を知っています」

「……」

 

大淀のその言葉にその重巡棲姫は明らかに驚いた様子を見せた。そこで大淀はさらに踏み込んだ問いかけをする。

 

「そして貴方は…かつて山郷勲少将の秘書艦を務めていた摩耶さんではありませんか?」

「……」

 

そんな大淀の問いかけにその重巡棲姫……いや、深海摩耶と呼ぶべき存在は間を置いた後にゆっくりと頷いた。

 

「……ああ、そうだ。私は嘗て佐世保鎮守府所属の高雄型重巡洋艦摩耶()()()艦娘だ」

「そんな……!!」

「……」

 

羽黒は驚き、加賀も少なからず衝撃を受ける。確かにドロップと呼ぶ深海棲艦からの転化で艦娘になる者もいるが、そう言った艦娘は深海棲艦の頃の記憶は曖昧なことが多い。

まあ、こんなドロップ艦がいるからこそ軍艦派などと言う艦娘をいまいち信用出来ない連中が現れるわけなのだが……。

しかし、深海棲艦の状態で艦娘の頃の記憶があると言う事実に大淀も予想していたとはいえ驚きを隠せなかった。

 

「君は、今山郷勲を知っていると言ったね?」

「……はい」

 

大淀はその迫力にやや恐れを感じると、その深海摩耶は問いかける。

 

「今、山郷提督はどうしている?」

「それは……」

 

そこで大淀は素直に居場所を言うべきなのか一瞬迷ってしまった。もしかすると目の前にいる深海摩耶は実は嘘をついていて、山郷を狙っているだけなのかもしれないと言う不安が残っていたのだ。

 

「何だ、教えてくれないのカ?」

 

その間が命取りとなった。

 

「?!」

「大淀!」

 

加賀が叫ぶと羽黒が発砲し、至近距離での砲撃ゆえに全て命中するも、その深海摩耶は羽黒の砲弾を避ける。

 

「なっ!?」

「ドコダ、何処ニイルンダ!?」

 

深海摩耶は頭を抱えながら錯乱した様子で腕を払うと艤装の8inch砲が火を吹く。

 

「…提督ハ、提督ハ何処カ教エロ……!!」

「っ!!」

 

そして暴れる深海摩耶は逃げ出す大淀に向かって手を乱暴に伸ばす。

 

「危ない!」

「邪魔ダ」

 

そして深海摩耶の放った砲弾が矢矧に命中する。

 

「きゃあっ!!」

 

重巡の砲弾をまともに受けた矢矧は腹を貫通した砲弾のせいで血が流れる。

 

「撤退!」

 

加賀がそう叫ぶと羽黒達も砲撃をしながら深海摩耶を背にしようとする。

 

「逃ガスモノカ!」

 

そう叫び彼女は砲撃をすると数発が羽黒や加賀にも命中する。

 

「ちっ…」

 

加賀は鬱陶しいと思いながら艦載機を飛ばそうとすると先に上空で待機していた四式重爆が深海摩耶に誘導弾を撃っていた。

 

「ガァァアッ!!小癪ナァッ!!」

 

豹変した深海摩耶はその攻撃に苛立って上空の爆撃機に向かって対空砲火を浴びせる。

 

「今のうちに逃げましょう」

「そうね、上の子たちにも撤退命令を。羽黒」

「煙幕行けます!」

 

羽黒はそう答えると中破した艤装から発煙弾を発射して煙幕を張る。

 

「二度モ同ジ過チヲスルモノカ!!」

「なっ!!」

 

煙幕の向こうから深海摩耶が飛び出し、彼女の艤装は羽黒の右手を噛みちぎった。

 

「ぎゃあっ!!」

「羽黒!!ちぃっ!!」

「撃てっ!!」

 

その時、大淀が連装砲を艤装に向かって撃つと怯んだ艤装はそのまま引っ込んだ。

 

「羽黒さん、大丈夫ですか!?」

「はい…でも手を持っていかれました」

「すぐに止血しますから…!!」

 

赤い血がドバドバと流れ、大淀は羽黒の腕を根本から縛る。艦娘は体を損傷しても入灌すれば失った部位も元通りになる。だから泊地まで帰還すれば……。

 

「纏メテ沈メテヤル」

「っ!!」

 

そう言い深海摩耶が治療する大淀に照準を合わせた時、

 

ドドドドンッ!!

 

「!?」

 

摩耶の近くに数発のロケット弾が着弾し、彼女の背中で爆発した。

何があったかと思った瞬間、上空を一機のP-1が現れた。

 

『降下!降下!』

 

そして同時に後部ハッチから大きな三つのパラシュートを付けた人影が降りて来た。

 

「あれは……」

 

その影を見た時大淀達はまたも別の意味で驚いた目を向けた。そしてその人影は海面に着水するとそのまますかさず深海摩耶に向かって砲撃を仕掛ける。

巨大な砲弾に流石の深海摩耶も命の危機を感じたのか後ろに飛んで避けていた。

そしてパラシュートを取った彼女は大淀達の前に立った。

 

「大和型戦艦一番艦、大和。推して参ります!」

 

そして、空から降下してきた艦娘はそう名乗ると深海摩耶をやや鋭い目で見ていた。

今後の展開、読んだらどれかに投票してほしいです。

  • ハッピーエンド
  • 微ハッピーエンド
  • モヤモヤエンド(?)
  • 全部書け。
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