ゆりの手帳   作:Aa_おにぎり

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宿毛湾泊地所属の艦娘は現在十一人。

増えたと言っても他の一般的な泊地と比べても圧倒的にその人数は少なく、運用を行うのはかなりの疲労が伴う人数だった。

 

「艦隊帰投でーす!ふぅ…」

 

大洋から帰還し、司令室に帰還した阿賀野は敬礼もそこそこに山郷を見ると。そこで彼は帰ってきた阿賀野に軽く和かに笑みを浮かべながら頷いた。

 

「うむ、ご苦労だった」

 

短く、いつも通りに帰還した艦隊に山郷は司令官室で片手にコーヒーを飲みながら聞いた。

 

「それでどうだった。初めての連勤は」

「はい!とても有意義だたと思います!」

 

阿賀野は溌剌とした様子で答えると、ついてきた矢矧も同意した様子で目を軽く閉じていた。

 

「そうかそうか。だが経験しておかない訳にはいかんからな」

「わかっています!」

 

そして報告を終えて司令室を去った阿賀野達を見送ると、部屋にいた摩耶が話しかける。

 

「困難い忙しいなら、私も出ようか?」

「いや、お前さんは出さんよ」

「でもよぅ、こんな人手不足じゃあ…」

 

すると山郷はそんな摩耶の懸念を遮るように割って答えた。

 

「問題ないさ。佐伯湾泊地の生娘に協力を仰いでいる。あそこと組めば本土防衛の補完くらいできる」

「太平洋側はほぼ手付かずですからね…」

 

そこで少し苦笑気味に大淀がお茶を出した。そして出てきた湯呑みを傾けながら山郷は頷いた。

 

「あぁ、安全なのは日本海側だけさ」

 

深海棲艦と呼ばれる海からの怪物が海を奪って十年以上、未だに世界最大の大洋である太平洋は奪還できていない。

そもそもまともに船が航行できる海の方が少ない現状、太平洋と言う紺碧の大鍋に戦力を投入する事は今の状況では不可能に近かった。

 

「まだまだどこの国も、戦力の立て直しの最中さ」

 

ただでさえ先の攻勢で欧州では多くの被害を出し、その上艦娘を育成する為の余力も残す為に残された資源をやりくりせねばならず。悲惨な状況になりつつあると言う。

 

「戦争が始まってもう十年以上経っている。第二次世界大戦でも結局は五、六年で終わった。その倍の期間戦争を始めていれば…」

「国自体が限界を迎える…」

 

摩耶に山郷は頷いた。

 

「戦費は膨れ上がり、増版された紙幣の影響でインフレは永遠と続いている」

 

そして今読んでいる新聞も全て検閲された状態の新聞であり、国内の新聞社やニュースサイトは数える程度になっていた。

元々戦争の始まりによって多くの通信所が被害を受けたことで国内でインターネットの使用制限が行われ。今では政府関係者以外でのインターネットの使用はできない始末だ。

 

「今自由に購入できるものって何がある?」

 

配給制になって久しい今日。日用品のほとんどは国からの配給であり、自由経済は無いに等しい。

しかし政府が大量に紙幣を発行するために娯楽品といった配給以外の品々は売れると言うなかなか不思議な自体が起こっていた。

 

「しかし、」

 

そして新聞を読み進めていくと山郷は軽くため息を吐く。

 

「また摘発か…」

 

そこには宗教団体を摘発する警察を写した記事が書かれていた。

 

「宗教法人は昔から資金を貯めていますからね」

「世も末だな」

 

国が公然と合法的に財産没収を行っているような状態に摩耶も苦笑するしかなかった。

 

「いつの世も狙われるのは政治と金って事だな」

 

そう締めくくって新聞を畳むと、山郷は外を見る。

 

「ここは静かでいいもんだ」

「えぇ、」

「そうだな」

 

広大で静かな海を前に大淀と摩耶は頷くと、山郷と同様にその景色を見つめていた。

 

 

 

 

 

その頃、工廠では帰ってきた艦娘達の艤装の点検の為に走り回る妖精さん達の姿。

 

「そっちのぱっきんもってきて!」

「こっちはてっぱんもってきて!!」

 

喧騒が聞こえて破損した艤装の修復を優先して行っており、今回の哨戒任務で戦闘になった駆逐艦を中心に修理を始めていた。

 

「全く、これじゃあ一発デカいのをやったのかと思いたくなりますよ」

 

ブツブツと文句を漏らしなながら壊れた装甲板の取り替えをしている黒岩に工廠に残っていた大波が話しかけてくる。

 

「今回の敵さんは中々強かったで」

「そうですか」

 

工廠に大波がいる事にもはや違和感を感じる事なく、また黒岩も突っ込む事なく仕事を淡々とこなしていた。

任務から帰ってきて艤装を外しても、彼女は工廠に入り浸っていた。

 

「今回やり合ったんは重巡とか駆逐艦の機動部隊やったな」

「なるほど、深海棲艦の機動部隊ですか…」

 

基本的に太平洋の深海棲艦は分からない事が多い。まぁ元々太平洋奥地に開戦以降踏み入れた事が無いからと言うのがあるのだが…。

 

「太平洋にはいつか攻め込むのでしょうね…」

「だとしても暫く先やろなぁ」

「でしょうね…」

 

深海棲艦との戦争が始まって以降、彼らに対抗しうる戦力である艦娘の数は無限では無い。

現在、太平洋を挟む日本とアメリカの艦娘達はその戦力をそれぞれインド洋と大西洋に向けられており、太平洋は防戦一方であった。

 

「さて、次は貴方の艤装ですよ」

「おっ!そうか!」

 

そし大波の艤装に移動するとそこで軽く黒岩は絶句した。

 

「何ですかこれは…」

 

それは対空電探が大きく破損した大波の艤装があり、なぜか後部の砲塔までグチャグチャに壊れていた。

 

「あぁ…これはな…」

 

そこでそんなグチャグチャの艤装を前に少し言いずらそうにしつつも手を後頭部に回してこうなった事情を話し始めた。

 

「さっきの任務でな、一戦交えたわけやん」

「はい」

「順調に深海棲艦を倒すやん」

「はい…」

 

なんとなく嫌な予感のした黒岩は少し目元が暗くなる。

 

「そん時に重巡の流れ弾が当たってしもうてな」

「…」

 

それで艤装が破壊されたと話す大波。

 

「いやぁ、運が無かったわぁ〜。まさか最後の一撃に当たってまうとは…ん?」

 

その時大波の腕をガッと黒岩が掴んだ後にそのまま裾を捲られた。

 

「あっ、ちょ…」

 

そして腕を捲ると、服の下から包帯を適当に巻いた雰囲気の包帯に血が滲んでいる傷口があった。この艦娘、怪我をしているのにも関わらず工廠で黒岩の元を離れていなかったのだ。

 

「…」

 

そしてそれを見て黙り込む黒岩。

 

「あっ、ふ…じゃなくて。く、黒岩さん…?」

 

その時の表情を見て冷や汗が出る大波、すると黒岩は

 

「何考えているんですかっ…!!」

「「っ!?」」

 

突然の大声に工廠にいた誰もが驚いた様子で黒岩と大波を見ると、直後に黒岩は大波の胸を掴んだ後にそのまま全ての作業を放っぽって工廠を出る。

 

「うわっ」

「怪我を放るなんて信じられない…!!」

 

そう言ってがっしりと掴まれた腕を離そうとするも、一切動かない腕力に大波が驚いていると、そのまま医務室に突入してベッドの上に座らされ、戸棚から黒岩が慣れた手つきで包帯とガーゼ、テープを取り出す。

 

「全く…」

 

そしてそれらを手に持って大波に近づくと彼女に聞く。

 

「他に怪我をした所は?」

「あっ、えっと…」

 

黒岩に聞かれて少しキョドッている大波に軽くため息をついた後に彼女に言った。

 

「言わないなら上を脱いでもらいますよ」

「わっ、わかったって!」

 

黒岩に少し強めに言われて軽く息を吐いた後に腕だけと言うと、黒岩は有無を言わさずに少し血の滲んでいた腕の包帯を取ってガーゼを剥がす。

 

「痛っ」

 

しかし血が固まってガーゼに張り付いていたので少々悲鳴が漏れてしまった。

 

「全く、直ぐに治さないからですよ…」

 

そう言うと近くにいた妖精さんにバケツを持ってきて欲しいと頼むと大波が巻いていたガーゼや包帯を取った後に入渠をしていた阿賀野達が噂を聞きつけたのか医務室にやってくると怪我を放置していた色々と理解できたのだろう、大波を見て言い放った。

 

「ダメですよ大波ちゃん!」

「はぁ…姉さん」

 

いくらか飛ばして言い放った一言に矢矧が呆れてため息を漏らしていた。

 

「話が飛びすぎです。それでは大波も困惑しますよ」

 

実際、阿賀野にいきなりダメと言われて困惑している大波。そんな彼女を前に阿賀野はお構いなしな様子だった。

 

「大尉を好きすぎるのも良いですが。自分の事を大事にしなさい!」

「あっっっとぉ…はい」

 

そんな阿賀野に取り敢えず考えることを放棄した大波は取り敢えず頷くと阿賀野は大波がわかってくれたと思って満足げに笑みを浮かべて医務室の入り次から去って行った。

そしてそれを追うように矢矧も一度頭を下げた後に医務室から去って行った。

 

「…」

 

そんな嵐のような勢いだった阿賀野を前に黒岩も一瞬動きが止まっていると妖精さんがバケツを持ってきてくれて、その中には高速補修材が入っていた。

 

「じゃあ、これ使って直してくださいよ」

「おう」

 

そんな阿賀野を前に大波も黒岩も何も無かったかのように妖精さんの持ってきてくれたバケツを使っていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

その頃、遠く離れた極寒の大地では…

 

ドーンドーンドーン!!

 

地面に大きな土煙が上がり、衝撃波が一体を襲う。

 

「くそっ!」

 

その塹壕に隠れるようにして待機していたロシア兵士。

 

「海産物がっ!!」

 

そこで砲撃をしながら前進していたT-14一両が砲撃の衝撃で破壊される。

 

「やられた!」

「死守だ!撤退は許されんぞ!!」

 

塹壕から顔を覗かせ、そこから装填していたRPG-29を発射すると少しした後に爆発音を確認してペリスコープで外の様子を見ると視界の先に映るのは異形のモノクロの艦隊。

 

「撃て撃て!!」

 

その直後に後方から発射されたBM-30による300mmロケット砲が着弾する。この一斉射で陸地に接近していた駆逐艦が小破していた。

 

「畜生!!」

 

周囲には肉塊となった兵士が塹壕の底に埋もれるように斃れており、明らかに損害が見合っていないのが見受けられた。

 

ここは北極海沿岸部のロシア。世界最大の領土面積を誇るロシアにとって、その殆どが北極海に面している。

かつては永遠の氷に閉ざされた海であったが、近年の温暖化により。北極海航路と呼ばれる船舶が航行できる海が広がった影響なのか、沿岸部のほぼ全域が深海棲艦による攻撃を受けていた。

 

「逃げるな!徹底抗戦だ!」

「逃げる奴はFSBに殺されるぞ!」

 

海からの襲来者はロシア沿岸部を襲撃しており、その被害は既にかつての戦争による戦死者を超すほどであった。

冬将軍による援軍も僅かに深海棲艦による襲撃を減らすだけで、以前として一線交えるだけで夥しい戦死者が出ることに変わり無かった。

今後の展開、読んだらどれかに投票してほしいです。

  • ハッピーエンド
  • 微ハッピーエンド
  • モヤモヤエンド(?)
  • 全部書け。
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