故郷への片道切符を手にした在日米軍兵士たちは、自分たちを守ってくれる日本の艦娘に対して全力で報いようと考えていた。
深海棲艦は既存の誘導兵器では小さすぎ、またドローンよる攻撃程度では傷つかない最強の生物である。
現在、駐留米軍を本国に帰還させる一大作戦が展開されている中、先行して艦娘は千島列島沿いに北上を続けていた。
「酷いな…」
そんな中、択捉島沖合で艦隊は無人島となった島を山郷は見つめる。
「沖合に船も出せず、陸地での農業も深海棲艦による砲撃で危険と判断されていたようです」
無人偵察機で艦隊周辺の哨戒飛行を行っている艦隊は、そこで住民が全滅した北方四島を見る。
島は全域にわたって砲撃の跡が残されており、家屋は八割が廃墟となっていた。そんな状況を前に総司令官の海原が話しかける。
『そりゃあ
そんなまともに住めるような環境ではない島内を、ほぼ譲り渡す形でロシアはこの『余計に戦力を取られる場所』を見捨てた。
「そもそも、モスクワで徴兵が始まった時点で国家存亡の危機的状況なのは確定している」
『まあな…』
司令を行う『それいゆ』のCICで山郷は島民が全滅したそれら諸島を見ながら航行をしていく。
現在、オホーツク海は深海棲艦との戦争がいまだに続く激戦地でもある。現在、ロシアは北極海全域で陸上近くで深海棲艦と戦争を行っており、主な戦場がそちらに移行しているというのも、このオホーツクの現状を物語っていた。
「例の新型の確認は?」
「いまだ発見できず」
苫小牧に設置した司令所で海原は確認を取らせると、ロシア側の状況が入ってくる。
「現在、ウラジオストクより太平洋艦隊出撃。オホーツク海奪還作戦を開始しました」
「了解した。戦況は?」
「現在、艦隊は敵二個機動部隊と交戦。戦局は優位に立ちつつあり。です」
「そうか…」
海原は報告を聞いて少し眉を顰めた。あの国のことだ、いささか誇張し、その誇張で覆い隠されてこの報告になっている可能性を察した。
「(つまり戦況はあまり良くないな?)」
元々海軍の運用が二の次的な陸軍大国のロシアだ。現状、国土防衛で手一杯であることは諸外国が見ても重々見てとれた。
「(上は、ロシアの戦力をせいぜい削っとけってことか…はっ、良くやる)」
そこで防衛省からの作戦要綱を前にその意図を察する。現状、この作戦によって日本海軍は単冠湾や占守島、幌筵島を中心に防衛拠点を構築し、周辺海域の防衛を行うようにするという報告が上がっている。
「まるで狩猟だな…」
差し詰め、この千島列島は追い込み漁の網といったところだろう。
「現在、艦隊は得撫島沖合を通過中」
「最前線はどうなっている?」
「順調に作戦は遂行中です」
そこで展開中の艦隊が攻撃を行っている様子を見ながら提督達の奮戦を前に満足げに彼は笑みを見せる。
「どうせなら四宮と下総のところから大和と武蔵も連れてきて欲しかったが…」
「やめてください。そんなこと…」
そこで海原の提案に副官がため息を吐く。
「大和は西日本の、武蔵は東日本防衛の戦力の要なんですから、その戦力は深海棲艦の威嚇用で無闇に動かすわけにもいかないですよ」
「我々が喜んでも、国は喜ばないということです」
「ああ、分かっているさ…」
海原は頷いてから再度帽子を被り直すと、進行中の艦隊のフリップを見つめていた。
その頃、作戦中の船団で黒岩はノートを開いて作業を行なっていた。
「…」
無数の数式や構造式を記していたその牛革のカバーの付いたノートを見つめながら彼女は考え事をしていた。
「黒岩大尉」
「ひぅっ!!?」
その時、背中から話しかけられて心底驚愕した様子で顔を上げると、そこでは篠海が立っていた。
「ど、どどど、どうされましたか…?」
そこで猫のように怯えて鋭い眼光を持った彼女に問いかけると、相変わらずの反応に流石に心も傷つきそうになると思いつつ話しかけた。
「そろそろ戦闘を終えた部下が帰ってきますので、その出迎えに来ました」
「あ、ああ…そ、そうですか…」
彼女は少し慌てた様子でノートを閉じると、篠海は水で満たされたウェルドックを見つめる。
「損害の方は聞いていますので、すぐに修理に入らせてもらいます」
「よろしくお願いします」
黒岩に篠海は頭を下げると、そこで北方の冷たい潮の香りを感じながら帰還する艦娘を前に彼女は軽くため息をつく。
「今は何をされておりましたか?」
「え?あ、えっと…」
そこで彼女は聞かれたのでどうしようかと少し返答に困ると、少し戸惑いながら答えた。
「こ、個人的な研究です」
「ああ、そうでしたか…」
そこで篠海は彼女の足元が僅かに震えていることに違和感を感じつつも、彼女のいつもの人馴れしていないあれだなと納得していた。相変わらずな様子の彼女に、篠海は次の話題を持ち出した。
「今回は米海軍のトリポリ、ニューオーリンズ、サンディエゴ、ラシュモアも艦娘運用母艦として作戦に従事し、トリポリ以外はアリューシャン列島で船団護衛基地としての運用…」
「アッツ島沖合で合流すると聞いています」
黒岩はそこで事前に山郷から渡された作戦要綱を思い出しながら話すと、篠海は頷いた。
「ええ、アメリカから派遣された艦隊と合流した後、事前のポイントで臨時の基地として運用されます」
篠海は頷くと、船団を囲んで護衛を行っている星条旗を掲げる艦隊を見る。
残存していた米第七艦隊全てを引き上げさせて、船内に多数の生存していた駐留米軍を乗せて、その甲板で冬の
「この様子なら、真冬に実行しなくて正解だったかもしれません」
「元々、この北海は荒れている海ですからね…」
そこで彼女達は白波の立ち始めている駆逐艦を見ながらそう話す。彼女達が指揮を行っているおおすみ型は日本海軍の船舶であるため、日本人以外に乗り込んでいる面々はいない。しかし米海軍所属の四隻の強襲揚陸艦には、帰還するために人員に絞って多数の兵員が乗り込んでいた。
「提督〜!」
すると波を切ってウェルドックに扶桑達佐伯湾所属の艦隊が次々と帰還してくる。
彼女達の装備する艤装はパッと見たところで大きな損傷は確認されない。ひどくでも小破といった具合であったため、待機していた黒岩をはじめ妖精さん達は安堵しながら帰還した艦隊を見る。
「すぐに作業初めて」
「りょうかいであります!」
黒岩は言うと、一斉に待機していた妖精さん達は水を抜いたウェルドックで、固定具で取り外された天龍たちの元に向かった。
その頃、ニューオーリンズでも同様の光景が広がっていた。
「こっち、そろそろ帰還するぞ」
「了解」
直前に配置変えでこちらに移動した宇野は、本来はLCACが格納されているウェルドックにて帰還した自分の所属している艦隊の艦娘達の補給と整備を行なっていく。
アメリカ海軍所属の強襲揚陸艦で、今は艦娘を運用する母艦として改修が施された艦艇。帰還した艦娘の艤装を外して補給と修繕を行なっていく。
「手伝うぜ?」
「ああ、すまない」
そこでアメリカ軍の軍服を纏った黒人が言ってきたので宇野は少し警戒しつつもおおすみ型から持ち込んだ修理部品を使って修復作業を行なっていく。
「なんでここまでぐちゃぐちゃになるんだ…」
「えへへ…ちょっと敵の攻撃に当たっちゃって…」
そう言って少し誤魔化そうとするのは白露。どうやら敵の攻撃…おそらくは駆逐艦だが、その砲撃が命中したのだろう。
「馬鹿。被害を受けたら言えつってんでしょう?」
「でももうちょっとで敵部隊が撃滅できそうだったの!」
彼女はそう言い、すぐに帰還しなかった理由を説明したが、彼には関係なかった。
「阿呆!最後っ屁で手痛い反撃受けたらどうするんだよ!」
「その時はうのっちがなんとかしてくれるでしょ?」
「…はぁ」
そこで絶大な信用をおいてくれている様子に宇野はため息混じりに破壊された艤装を見る。
「とりあえず、白露はしばらくの間出撃禁止」
「えっ!?どうして!!?」
「こんな損傷すぐに治るかあ!丸ごと交換して、その間に提督に言って休ませるぞ。OK?」
「うぅ〜…」
そこで不満げに白露は宇野を見るが、彼が不動の心を持っていることはよく知ったことであったのでおとなしく休憩用に用意されていたドック近くの仮眠室に座る。
「あ、また怒られたっぽい?」
「うっさい!」
そこで夕立に見つかって彼女に言われると、少し強めに言い返していた。
そんな彼女達の様子を見ながら共に乗り込んでいた軍人達は、興味と哀愁が漂っていた。
そもそも彼女達艦娘の容姿というのは痛いけな女学生や若目の新兵の容姿に近い。家族を連れてアメリカに帰還しようとしている兵士や故郷に家族もいる兵士もいる中で、彼女達が自分たちでは手も足も出なかった深海棲艦を前に戦っていることを想像すると、自分たちの中にあってすでに遠くの昔に燃え尽きていたと思われていたヤンキー魂に火をつけられていた。
「Good luck!」
甲板では機関銃の前で引き金に手をつけながら北の海を疾走していく少女達に手を振ると、その仕草に気がついた一人の艦娘が手を振り返してきた。
「お前ずるいぞ!」
「はっ、やらなかったお前らが悪いんだよ」
彼らはそんなことを話しながら、増設された
そんな護衛されている船団の先鋒では、艦娘による進路警発を行なっていた。
「撃て!」
後方で指揮を担当する大淀が指示を行うと、羽黒や足柄はその指示に従って砲撃を行う。
そして放たれる20.3cmの砲弾。戦艦相手にも長年の戦闘経験がこれを封殺していく。
「艦載機、投下!」
敵艦隊の上空で加賀率いる航空部隊が急降下爆撃を開始すると、投下された爆弾は次々と駆逐艦や敵戦艦に命中打を与えていく。
「第一次攻撃隊の収容完了」
「第二次攻撃隊、発艦します」
後方では秋月や涼月などの護衛を受けながら加賀や信濃などの空母部隊が次々と発艦と着艦を行なっていく。こういう時、信濃の広い甲板は、熟練の搭乗員によって着艦と発艦を同時に行えていることに少し羨望していた。
今後の展開、読んだらどれかに投票してほしいです。
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ハッピーエンド
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微ハッピーエンド
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モヤモヤエンド(?)
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全部書け。