駐留米軍の帰還を行う第一便がアメリカがから派遣された艦隊と合流した一報を受けた防衛省や総司令室では大きく安堵した雰囲気で満ちた。
「直ちに政府に」
「畏まりました」
苫小牧の総司令部で海原は艦隊接触の一報を政府に打電させた。
「噂の新型深海棲艦が現れなかったのは僥倖ですね」
「ああ、念のため信濃を送り出していたのだかな…」
そこで彼は艦隊護衛のために多数の航空機を発艦させている自分の秘書艦を思い浮かべる。
「ただ、驚くほどにアイツ運がないんだよな…」
「司令官…」
「おっと…まあそれも十分な支援があれば乗り越えられるだろう」
彼はそんな事を言いながら陸地伝いで構築された北方海域の地図を見る。
「アメリカより派遣された船団はカムチャッカ半島を千島列島沿いに南下します」
「ああ、途中に艦娘含めた艦隊による護衛を展開している」
「現在、ベーリング島、占守島、択捉島に拠点を構築し、強襲揚陸艦による臨時拠点設営を開始しています」
「了解した」
艦娘の補給・整備を行える臨時的な拠点として、ドック型強襲揚陸艦を建造するのが最近の世界的な建造事情だ。
今も建造が続けられている改おおすみ型強襲揚陸艦は、今後行われる太平洋海域奪還作戦を前に艦娘を運用する拠点として改修作業が行われて、老朽艦であるおおすみ型もこのように引き摺り回されていた。
「幌筵島ににほんばれが揚陸しました」
「了解した。空軍はどうかな?」
「現在、小牧基地より第1航空輸送隊が物資を積載して沙那空港に到着しています」
そこで離陸したC-130Hが次々と着陸し、泊地設営の準備を行っている事が確認できた。ビーチングによる揚陸作業も開始され、確保した千島列島に次々と日本軍関係者が上陸して行く。
長年にわたって領土問題で揉めてきた結末がこれかと、関係者は肩をすかした様子で日本に帰属が決定した島々を確保して行く。
「最低限の設営が完了次第、以降部隊は単冠湾や幌筵島での補給を開始せよ」
「了解しました」
指揮の関係で一時的に苫小牧に司令部を設置した北部方面艦隊。そこで海原は拠点構築を急かせると、前線で命を張っている後輩を案じていた。
アメリカ側から派遣された船団というのは、この北方海域という荒れた海を航行するのには少し不安が残るほどに巨大であった。
「すごく大きいんですね…」
「ええ、流石にね…」
そこで低視認迷彩に塗装された巨艦を前に足柄達は顔を上げる。
『艦隊、右一八〇度。一斉回頭』
『宜候』
彼女達と繋げている無線で山郷が指示を出すと、全員が了承をした上で大きく弧を描いて旋回を始める。
何せ三十二隻の客船という大部隊だ。これからは海域を確保したアメリカ海軍の支援を受けながら日本まで彼らの船団を護衛する必要があった。
「これでベーリング海と太平洋を分けた事になりますね」
「ええ、だからこそいつまでも気が抜けないってことよ」
大淀の呟きに足柄が反応をすると、そこで偵察に出していた瑞雲の回収を行う。
「艦載機、収容完了よ」
「了解しました」
大淀は頷くと、すぐに羽黒がカタパルトに瑞雲を乗せる。
「羽黒、艦載機。発艦します」
そこでカタパルトから艦載機の瑞雲が射出されると、プロペラの音を立てて艦載機は偵察と着弾観測の為に大空を飛翔する。
「…?」
ふと最後の客船が通り過ぎた時に不知火が気が付いた。
「船団より発光信号」
「何と言っていますか?」
大淀はそこで不知火に予定外の通告を聞いて首を傾げると、彼女はその発光信号を読み上げる。
「A・RI・GA・TO・U、アリガトウ…有難うと言っています」
「…了解」
その発光信号を前に大淀達は少し微笑むと、彼女は指示を出す。
「こちらも返信を。『無事の帰国を祈る』と」
「りょうかい!」
そこで妖精さんによって返信がされると、距離をとって離れる船団の甲板では複数の兵士が手を振って離れる日本の艦娘を見送っていた。
「無事に第一便は送り届けられたか…」
「これがあと十四回…」
「途中、単冠湾にて補給を行うように司令部から連絡です」
「了解した」
そこで離れて行くブルーリッジを見送って、山郷は次に曇天の広がる空模様を確認する。
「これより我が艦は本国に帰還する」
「了解致しました。作戦、最終段階に移行します」
そこで唯一派遣されていたおおすみ型輸送艦を囲むように洋上を進む艦娘。
「現在、海域確保を行なった艦隊は一部が戦闘状態にあります」
「ああ、分かった…」
報告を聞き、山郷は少し警戒しながら付近の海域図を見つめていた。
「黒岩大尉」
『はぃっ!!』
そして無線で話しかけると、一瞬彼女は驚いた様子で返してきた。
「今の修理状況と全艦の状態を」
『は、はい…!』
そこで聞かれた彼女は次々と艦娘の補給と損傷具合を報告する。
「緊急補修剤を使って加賀さんは出しました。現在、宿毛湾艦隊は全艦大きな損傷は確認されません」
『了解した。間も無くこっちに艤装技師含めた米軍に派遣れていた技官が戻ってくる。気を付けろ、まだ南下をしたという新型深海棲艦は確認されていない』
「わ、わかりました…」
すこし緊張気味に黒岩は頷くと、彼女は次に補給作業中の艦娘を見つめていた。
帰りは人の乗っていない船舶であるが故か、以下よりも高速で移動することができた。
千島列島、カムチャッカ半島、アリューシャン列島。
いずれの島続きに北方海域に航路を確保した海軍は、待機させている船団の全てが帰還するまで維持する必要があった。
「艦影捕捉しました」
一人が報告をすると、長門は遠くから現れる複数の巨大な艦影を視認した。
「来たか…」
ベーリング島沖合でベーリング海と太平洋を睨んでいた彼女達は、無事に帰還してきた艦隊を前に安堵していた。
「長門さん」
すると彼女の前に大淀が現れて話しかけた。定時連絡と諸々の報告を行う為だ。
「アメリカより派遣された艦隊の収容を完了。これより苫小牧まで護送を行います」
「うむ、こちらも深海棲艦による攻勢は散発的だ。この海域の安全は今の所問題ない」
「了解しました」
その上空では信濃から発艦した紫電改が四機編隊を組んで艦隊を護衛していた。
「後続で到着した工作部隊を乗せた部隊が千島列島に展開している。帰りに補給を行う際は立ち寄ってくれ」
「了解しました」
そこでおおすみ型輸送艦が通過をして行くと、多数の客船を引き連れているのを見て驚いてしまう。
「流石にでかいな…」
「第二回は約一万人を移送しますからね。これでも米国で生き残っていた客船をかき集めたそうです」
「そうか…」
そこで長門は次々と単縦陣で通過していく客船を見つめる。
ーー米国の物量、ここに極まれり。
そう言ったところだろうか。目の前の客船に人の気配はなかった。
「推進器音探知」
その時、その報告を聞いてすぐに長門は問いかける。
「電探!」
「駄目です。電探反応ありません」
長門は返答を聞いてすぐにそれが潜水艦で、尚且つこの海域に潜水艦の派遣する旨は書いていなかったので、敵であると察する。
「対潜戦闘用意!」
「了解。対潜戦闘用意!」
「爆雷投射準備!」
そして戦闘命令を下すと、長門は次に大淀に言う。
「気をつけてくれ。敵は潜水艦まで持ち出してきた」
「了解しました。長門さんもお気をつけて」
「ああ」
そこで大淀は長門に確保した海域の防衛を一任すると、通過した船団を追いかけるように洋上で加速を始めた。
「…速いな」
去り際、長門は加速がいつも以上に速く見えた大淀に感嘆した様子でつぶやいた。しかし彼女はそんな呟きを気にすることなく無線で問いかける。
「状況を知らせてください」
その質問に羽黒が答えた。
「方位一二〇度、距離二〇キロ地点に推進器音探知。電探に反応なく、これを潜水艦と断定。大波以下、駆逐戦隊による爆雷攻撃を実施します」
長門と諸々の確認を行なっている間に指揮官を委任していた彼女の報告を聞いて、大淀は頷いてから指示を出す。
「駆逐戦隊に直ちに爆雷投射を命令してください。船団の一隻でも失う訳にはいきませんので」
「了解」
そこで大波を旗艦にした駆逐戦隊は他の泊地の駆逐戦隊と陣形を組むと、大波は指示を出す。
「爆雷投射!」
その直後、艦隊から一斉に爆雷が射出されると、複数の爆雷が海中に投下されて時限式で次々と起爆して行く。海域に水柱が上がると、大波は主砲を一つ潰してまで手に入れた高い探知能力で潜水艦の状況を把握して行く。
「水面に気泡確認。重油の流出視認」
爆雷攻撃の後、戦果の確認を航行していた駆逐艦が伝える。すると大波はすかさず新しく探知した情報を伝えて行く。
「新たな探知目標。方位七〇。距離…二五!」
「直ちに当該海域に急行する」
そこで駆逐戦隊は対潜戦闘を行っていくと、直後に不知火が反応する。
「っ!魚雷音探知!雷数二、方位一五〇度、距離二〇!」
「取舵!回避運動!」
そこで潜水艦の襲撃を前に艦隊は魚雷攻撃を回避する。
「撃て!」
おおすみ型輸送艦の甲板に並んだ99式自走榴弾砲から砲撃が行われると、放たれた砲弾は海面に着水して榴弾が時限信管で起爆して魚雷が誘爆を行う。
凄まじい水柱が海面に上がると、巻き込まれて他の魚雷も撃破される。
「魚雷迎撃!」
「くそっ、今度は潜水艦か…」
そこで山郷は帰還途中の千島列島沖の襲撃に歯噛みをしながら太平洋を見る。その直後、信濃から発艦した艦上爆撃機部隊が爆弾を投下すると、着水した後に爆発を起こす。
「新たな潜水艦を撃破」
「敵部隊は?」
「今のところ、確認されていません」
そこでおおすみ型輸送艦の甲板から無人攻撃機が発艦を行う。
「無人攻撃機、発艦しました」
「艦隊防空を行わせろ。防空戦隊は敵艦載機の襲来を警戒」
CICで山郷は矢継ぎ早に命令を下すと、他の指揮下の提督らもその指示に従って攻撃命令を下していく。
「新たな部隊を確認」
「砲撃せよ!」
篠海は指示をすると、扶桑と山城は仰角を合わせて砲撃を敢行する。
放たれた35.6cm砲弾は着弾をし、交互撃ち方で長年の経験からすぐに夾叉に持ち込み、そのまま撃沈した。
「爆発を確認!」
「爆沈した模様」
千島列島に入った艦隊は、そこで本土から飛来してきた陸上爆撃機の援護を受けて退避に成功した。
今後の展開、読んだらどれかに投票してほしいです。
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ハッピーエンド
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微ハッピーエンド
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モヤモヤエンド(?)
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全部書け。