北海道での任務を完了させた宿毛湾艦隊。北方海域と接続を行う海道を設置したことで、早速多数の米軍兵士の帰国が始まっていた。
そんな作戦の大成功の喜びに沸く中、その立役者の一人である山郷勲率いる宿毛湾艦隊は、一路南下を続けていた。
「この駅弁美味しい!」
「そりゃ良かった」
新幹線用の軌道を使って高速で運ばれていく彼女達。戦前に整備されていた貨物新幹線で彼女達は直ちに宿毛湾に帰るダイヤを選定されていた。
その車内、艦娘や軍関係者が移動時に使用する客車で佐伯湾と宿毛湾所属の艦娘がトランプゲームやお菓子を食べあったりして楽しんでいた。途中まで目的地が同じという理由で彼女達は同じ列車に乗り込んでいた。
戦争初期に被災した新幹線車両を改造し、艦娘が全国何処でも簡単に機動するために組成された専用の貨物列車は、貨客混載列車の機関車牽引方式が取られていた。
「こ、これで…」
「ふむ…」
その車内の一角で、黒岩は篠海とパソコンを開いて勝負を行なっていた。
「何してんだ?」
「戦略シミュレーションゲーム。うちの提督と黒岩大尉でね」
「へえ〜」
天龍は背もたれにもたれかかりながら二人がお互いに見合ってしていたゲームを前に『今時の兵棋演習か』と思い出したように呟いていた。
「で、戦況はどっちが勝ってんだ?」
彼女は隣に座っていた龍田に聞くと、彼女は答えた。
「うちの提督…って言いたいけど、実際は五分五分ってところかしらね」
「へえ…そりゃあすげえな」
そこで天龍は驚いた様子で黒岩の画面を見つめると、画面ではある海域で艦隊へ魚雷攻撃を行って新たに一隻の駆逐艦を撃沈していた様子が映し出されていた。
「よくできているじゃないか」
「あ、はい…ありがとうございます…」
その様子を前に山郷は嬉しげな様子で彼女に話しかけると、黒岩も少しだけ顔を赤くしていた。
「提督、押され気味なんじゃないの?」
そこで撃沈判定を受けたことを受けて天霧が篠海の隣に座って話しかけると、彼女は答える。
「安心しなさい。佐伯湾の艦隊はいかなる敵でも敬意を持って相手するのが流儀です」
「ほほ〜、頼もしいねえ」
天霧は戦力をじわりじわりと減らされても動じた様子を見せていない、いつもの彼女に相変わらずの頼もしさを感じていた。
「しかし副司令、随分と慣れててきたじゃないか」
「はい。提督の教育の賜物です」
山郷はそこで黒岩の兵棋演習の腕前を褒めると、そこで彼は聞いた。
「最初の頃から知ってたみたいだから、少し意外ではあったがな」
彼はそう言うと、黒岩に聞いた。
「大尉、どこでこの兵棋演習の使い方を学んだんだ?」
「あ、それは…」
その疑問を投げかけられた時、黒岩はふと昔のことを思い出した。
「…昔、私を引き取った人が教えてくれました」
「へえ、じゃあその人物は元軍人か?」
山郷はさらに聞くと、彼女は首を傾げた。
「さ、さあ…特に何も教えてくれることはありませんでしたね」
「…そうか」
黒岩はそう答え、山郷はそれ以上聞くことはなかった。
宿毛湾泊地においていくつか聞いてはいけない質問というのがあったりするが、彼女の過去のことを聞くのもその中の一つである。
なにせ過去の凄まじい経歴は、見ただけで人間の醜さを凝縮したような歴史だ。迂闊に踏み込んではいけないことは誰が見ても自明であった。
その時、新しいターンで篠海が戦艦による砲撃を行うと、その砲撃は自分の旗艦に命中して撃沈判定を受けてしまった。
「あっ…」
黒岩は撃沈判定を受けたことで敗北が決定すると、その事実に黒岩は愕然となった。
「運が悪いな…相変わらず」
「いつもの事ですよ。はあ…」
そこで演習を終えると、そこで篠海は二人の間に置かれていたビールを手に取る。
「ビール頂きです」
「おう、おめでとさん」
そこでよく冷えたビールを開けて篠海は車内で飲んでいく。
「帰ったらまた仕事でいっぱいですね…」
「なあに、いつもの事よ」
そこで車内でワイワイと色々な場所で盛り上がっている中、羽黒や足柄、扶桑と山城といったお姉様方は酒盛りで妖精さん達と盛り上がっていた。
「今回はあまり目立って活躍できなかったのが悔しいですね」
「そんな日もあります。いちいち気を落としていては身が持ちません」
大鳳と加賀は山盛りの駅弁を食べながら窓の外の景色を見つめていた。
現在、東北新幹線の路線を使って帰路についていた彼女達は、高速で次々と通過していく駅や街並みを見つめる。
「提督、この後東京で止まるんですよね?」
そこで座っていた高波が聞くと、山郷は頷く。
「ああ。東京新幹線車両センターで機関車交換のために一度停車する」
戦争が始まり、日本全国の幹線に張り巡らされた新幹線網も、国有鉄道に全て再合併したことによって、北海道から九州までを事実上一本で移動できるように改修が施されていた。
東海道新幹線はすでにリニア路線に旅客が移動して久しく、戦時下になって貨物輸送以外で使われることはめっきりなくなってしまっていた。
「じゃあ、その時って…」
「時間までに戻ってくるならいいぞ」
少し期待したような様子もあった高波に二つ返事で山郷は頷くと、隣で山郷は喜ぶ高波達を見ながら驚いていた。
「え、良いんですか?」
「何がだ?」
その疑問に逆に山郷は不思議がっていた。
「だって…規則では艦娘の軍施設以外の外出は…」
彼女は軍規則に乗っていたルールを思い出しながら口にすると、そんなの知ったことかと言わんばかりに山郷は言った。
「別に艤装つけてねえし、私服で行きゃあそうそうバレねえよ」
「ええ…」
そこでやや困惑顔になると、反対で篠海も言う。
「ええ、私も外出許可を出していますからね」
「ほれ、私服もちゃんと持ってきたんだぜ?」
天龍はそう言って持ち込んでいた荷物から私服を取り出すと、山郷は言う。
「機関車の付け替えには時間がかかる。まあ全員に携帯電話を持たせていざって時にすぐに戻れるようにしておけばいいさ」
「…大丈夫ですかね」
「大和達がちょくちょく出かけてバレていないんだ。問題ないだろう」
どこか楽観視しているようにも見えた山郷に黒岩は不安を拭えない様子でパソコンで新しく試合を始めた。
数時間後、関東地方の東京都北区にある東京新幹線車両センターに貨物列車は到着する。
「わーい、着いた〜!」
そして到着した途端、車内で私服に着替えた阿賀野は飛び出していく。その後を慌てて追いかける矢矧は声を荒げる。
次々と貨物列車から艦娘達が下車をしていくのを山郷達は見ていく。
「では行ってきます」
「ああ、引率を頼んだぞ」
最後に大淀が言うと、山郷も敬礼をしてから時計で時刻を確認して事前に決められていた運行計画の通りに戻ってくるように言う。
「列車進発は二一三〇時…」
「かなり遅めですね」
「ああ、予定で来るはずの牽引機が遅れているらしい」
そこで彼らは車両基地を後にする艦娘達を見送ってから自分たちをここまで運んだ貨物列車を見る。
艦娘の艤装を格納したコンテナや南方の泊地や鎮守府に送る物資。先の作戦で破損した兵器などを運ぶために何度か停車しており、国内に多数作られた修理工場にそれらは送られていた。
「ダイヤ、遅れているんですか?」
「らしいな。まあそもそも先の作戦でだいぶ北に戦力を割かなければならないから、こう言う軍用列車がだいぶ北に向かっちまったからな」
「政府の決定事項ですからね、ましてや駐留米軍ともなれば…」
その隣でため息混じりに篠海は今の状況にため息を漏らす。
「まだいい方だぞ?俺たちは第一便で帰郷できるんだからな」
「洋上をボート使って帰る訳にもいきませんしね…」
少なくとも途方もない体力を消費してしまうため、三人は『それは勘弁』と同じ考えで頷いていた。
「と言うより、車両基地から子供達が出てきて違和感持たれません?」
「大丈夫だろ。他の泊地でも同じことしてるし」
「ええ…」
「いざとなれば我々が始末書を書けばいいだけですよ」
そんな提督達の話にややげんなりとなって黒岩は二人を見上げた。
車両基地を出た艦娘達は、田端駅から山手線に乗って東京の街に出る。
「どこに行く?」
「月島とかどうや?ウチもんじゃ食べたい」
山手線の車内で曙の問いかけに大波が言うと、彼女達は高層ビルの立ち並ぶ東京の街並みを見上げる。
「もんじゃですか、良いですね…」
大波の提案に阿賀野が乗ると、隣で矢矧が言う。
「姉さん、さっきは雷門に行くとか言ってませんでしたか?」
「んん〜、両方行くとかダメ?」
「多分、時間がないですよ。一つに絞らないと…」
「うーん…」
そこで東京を前に嬉々として話している彼女達を前にほかの乗客達は観光に来たのだろうと推察しながら彼女達を見ていた。そして山手線は西日暮里、鶯谷を越えて上野駅に到着する。
「では私たちはここで」
「ええ、気をつけて」
上野駅で動物園や博物館に行きたいと言った面々と分かれると、足柄達は有楽町駅で降りて銀座に向かう。
「さあ、新しいトレンドファッションでも見てみようかしらね」
「最近のおすすめはえっと…」
そこで羽黒や足柄は銀座のブティックを歩いて見て行く。
彼女達にも給金はもちろん発生しているため、提督達の黙認によってこうした休暇時は私服に着替えて、艦娘とわからないようにしてから市井に紛れていた。
「二一〇〇までに田端駅まで帰らないといけませんからね」
「ええ、分かっていますよ」
大淀は扶桑達に軽く注意を入れると、彼女達も分かっている様子で神田の街に消えて行く。おそらく飲屋街で散々出来上がって帰ってくるに違いない。
「つってもまだ午前中だろう?」
「ええそうよ、でもなかなかお仕事で東京なんて来れないでしょう?」
新橋駅の近くで天龍と龍田はそう話していると、駅前で群衆が道路を占拠していた。
「何アレ?」
「さ、さあ?」
汐留から大江戸線に乗って月島まで行く予定だった大波と高波はその群衆に首を傾げると、彼らは駐留米軍の撤退を反対するデモ活動を行っていた。
「やれやれ…」
「面倒な人達ですよ」
そんな彼らをやや冷めた様子で見ながら天龍は鞄を背負って言う。
「行こうぜ」
「「「「はーい」」」」
彼女の引率に他の艦娘達は頷くと、全員は汐留駅のホームに向かった。
今後の展開、読んだらどれかに投票してほしいです。
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ハッピーエンド
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微ハッピーエンド
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モヤモヤエンド(?)
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全部書け。