貨物列車の上から砲撃を開始した大淀達。新幹線の路線上で列車砲のような運用を開始した彼女達は、東京の空に無数の砲弾を飛ばしていく。
「艦載機、発艦します」
加賀はそこで弓を引いて艦上爆撃機を発艦させると、彼女もラーメン椅子に座ったまま発艦作業をするというやや滑稽とも言える様子が映し出されていた。
「主砲、副砲、撃てえっ!」
扶桑が指示を行うと、一斉に巨大な艤装から砲撃は行われる。その発砲時の衝撃で付近の架線は吹き飛び、周辺に砲撃音が響き渡る。
「ヒィィ…」
その轟音と振動を前にヘッドホンで耳を防護した状態で黒岩はやや悲鳴混じりに貨車の上で砲撃を行っている艦娘を見ていた。
「ふはははっ、流石にここまでくると壮観な眺めだな!」
その様子を楽観視しているようにも見えている山郷が隣で言うと、篠海も頷いた。
「ええ、扶桑達がこれほど活躍しているのを目の前で見られると言うには嬉しいことです」
「よくそんな軽口が言えますね…!?」
二人の提督達は砲撃を行なっていく彼女達を前に、まるで真心を込めて育てた子ども達を見ているような視線で客車から砲撃を見ていた。
「しかし、さすがは山郷提督。このような奇策を思いつかれるとは…」
「元々、艦娘の陸上運用の模索はされていたからな」
その直後、大淀達の20.3cm連装砲の砲撃によって放たれた砲弾が東京の街を越えて上陸を敢行しようとした深海棲艦に降り注いでいく。
元々、
「これも摩耶さんで取れたデータのおかげですね…」
「ああ、おかげでな」
そこで桟橋に腰掛けて深海棲艦の迎撃を片手でやってのけた摩耶を思い出していた。
彼女は宿毛湾泊地にて多数の実験を行なっており、艦娘でも深海棲艦でもないことから黒岩によって多数の検査と実証実験が行われ、半ば実験艦のような扱いを受けていた。
そこで分かった意外な事実として、椅子に座って艤装を展開させても砲撃が行えるというものだ。背中の主機関は艤装の可動や航行に必要な出力を出すのに必要であるが、陸上では移動砲台として軌道上のみ運用ができるということが判明していた。
「上陸を敢行しようとした深海棲艦はまず間違いなく、北極海で確認された個体だそうだ」
「やはりそうですか…」
山郷は事前の作戦通りに貨物列車に雑に設置された椅子に座って砲撃を行う艦娘を見ながら話すと、隣で篠海は苦虫を潰したように見る。
「若洲に展開した朝霞の第一偵察戦闘大隊が砲撃を行い、もうすぐ九十九里浜に展開していた第一師団が到着する」
「しかし東京で水際防御とは…」
「まだ抑え込めているだけマシだと思え」
篠海に彼は言うと、目の前で砲撃を行う大淀達を前に制帽を被り直す。
「少なくとも、街全体が破壊されるほどの砲爆撃はないんだからな」
「「…」」
彼の深く意味のある、重たい言葉に聞いていた黒岩と篠海はその意味を十分に理解していた。
「よーし、第二砲撃地点に移動する」
「射撃止め。射撃止め!」
無線で通達を行うと、砲撃を行なっていた扶桑達は周辺を硝煙の香りの漂う環境に一変させる。
「こちら臨時編成部隊。大和、こちらは第二射撃地点に移動を開始する」
『了解。こちらも加賀さんと大鵬さんの艦載機の交戦を確認。現在、支援砲撃中』
大和はそこで一人の深海棲艦を相手に砲撃を敢行しており、支援砲撃の最中はその深海棲艦から距離をとっていた。
その頃、新常磐橋付近での砲撃の一報を首相官邸で総理大臣は聞いた。
「何だと?」
その報告を聞いた総理大臣は驚愕した。
「すぐに止めさせたまえ。市街地で砲撃を行うなど市民に怪我人が出る」
そして次に出た発言に聞いていた閣僚達は驚愕して顔を上げた。
「総理、すで沿岸部を中心に多数の被害が出ています。これ以上の被害を防ぐためにも、国会での事後承認を前提に作戦を承認すべきです」
「ダメだ。それでは軍部の暴走を引き起こしてしまう」
「しかし総理、事態は刻一刻を争います。今この時点で、すでに敵は東京に上陸せんとしているのです」
防衛大臣が説得を行うが、総理大臣の意向は固い様子だった。
「そもそも民間人の避難が完了していない中で市街地で砲撃など危険だ」
何で今になってこの総理は…と聞いていた官僚も困惑気味に総理大臣を見た。
「駐留米軍に要請は?」
「不可能かと。すでに駐留米軍の撤収作業は完了しており、主力は北海道に集中しています」
総理大臣の問いかけに駐留米軍の誘導を担当していた内務大臣は答えた。
そして内務大臣と防衛大臣は顔を合わせると、総理大臣に詰め寄った。
「しかし今回は地震や台風と違い、明確な脅威である深海棲艦です」
「しかも接近中の深海棲艦は北極海でロシア軍を圧倒した特異体の深海棲艦です。総理、今この瞬間に首相官邸が砲撃されてもおかしくないのです」
二人の追求を受け、総理大臣は冷や汗をかいた。
「すでに警察による避難誘導は困難であり、すでに市民に砲撃による被害も多数出ています」
「総理。国民を守ることが第一です」
ついには官僚からも突き上げを受けると、渋々と言った様子で総理大臣は返答した。
「…艦娘による市街地での砲撃は禁止しろ」
ここでも固執するかとその総理大臣に官僚や閣僚達は同じ感情を抱いた。
総理大臣による承認を受け、防衛省では水際での防御作戦が展開される。
「対戦車ヘリコプターはどうしている?」
「現在、霞ヶ浦駐屯地より第110飛行隊が離陸。AH-1S、並びにMQ-8Bを離陸させています」
防衛省で指揮官らは次々と報告を聞いていた。
「陸軍の展開はどうなっている?」
「現在、若洲にて16式改が展開して砲撃を行なっています」
そこで本当の水際防護を行っている現状に四宮達もここがいつ狙われてもおかしくない状況に首相官邸からの命令に正気を疑っていた。
「引き続き、現運用部隊は救護と避難を優先させます」
「どのみち歩兵科では対処ができん」
「ああ。そもそも方面軍を率いても勝てるかどうか分からん奴なんだぞ」
軍人達は司令部で軌道上を移動する山郷率いる臨時編成部隊のフリップを見る。
今現在、彼らが相対している深海棲艦はあの強力なロシア陸軍を僅かな艦隊とともに圧倒した怪物なのだ。そのことを肌感覚で知らないのかと彼らは怒鳴りたかった。
「対戦ヘリの現着は?」
「約三〇分です」
四宮は首相官邸から艦娘による市街地での砲撃を禁止され、歯噛みしながら現状を見つめ直していた。
「そもそも奴は何故こちらを狙わない」
「首相官邸、防衛省、他に中央政府省庁に被害は?」
「現状は確認されていません」
四宮の問いかけに付近にいた将官が答えると、次に襲撃を行った深海棲艦を見る。
「敵の動きは?」
「中央防波堤埋立処分地沖、約十キロ地点で停止。特別編成部隊、並びに木更津艦隊、陸軍部隊の攻撃による足止めを敢行中」
そこでその深海棲艦は激しい反撃を行い、その流れ弾が次々と市街地に着弾している報告も受ける。
「…何を考えている?」
その敵の動きを前に四宮は不気味に大和のガンカメラに映し出される深海棲艦を見つめる。爆炎と黒煙が濛々と立ち込めて視界不良となった現状に多くの不気味な現象を感じていた。
「…」
火災の発生による黒煙であると見ていた将官たちは想定し、その黒煙を上空から撮影した映像も流れてきた。撮影を行ったのは海上保安庁所属のヘリコプターだ。
「しかしだいぶでかい黒煙だな」
「ああ、大和と武蔵の砲撃に空母艦載機の砲爆撃だ。むしろこれで耐えている奴がいる方がおかしい」
「黒煙がひどいから艦載機の攻撃中断させている」
「これじゃあ目標が見えんぞ」
その映像を前に司令部に参集していた彼らは口々に言うと、四宮は市街地に大量に流れている黒煙を見て違和感を感じた。
「おい、黒煙はどっちに流れている?」
彼はそこで部下に問いかけると、すぐに返答があった。
『こちら保安163、現在黒煙は北西方向に向かっています』
「…おい、おかしいぞ」
その報告を聞いて、四宮は忽ち視線を鋭くさせた。
「この時期、秋の東京は基本的に北西の風向きのはずだ」
「…」
その呟きは、聞いていた将校達の顔を容易に蒼白たらしめた。
「今の風向きを調べさせろ!」
「は、はい!」
そこで将校が部下に命令を下した直後。
「「「「うわぁああっ!!?」」」」
施設全体が大きく揺さぶられ、大きな地震が起こったと錯覚するほどの振動が司令部を襲った。
「くそっ、一歩遅かったか…!!」
四宮はその振動を受けてすぐに理解した。そしてすぐに無線機に手をやった。
「大和!すでに敵は上陸した!」
『っ!!?』
「現在位置は不明、黒煙に紛れて東京に上陸した!今、市ヶ谷近辺に着弾した!」
敵は黒い煙幕を大量に焚き付けて自分の姿を隠し、武蔵などの迎撃に来た艦隊による火災と誤認させて密かに北上していたのだ。
ただそのことが分かったとして、陸上に上がった深海棲艦を前に艦娘は洋上からの砲爆撃以外に攻撃手段を持ち合わせていなかった。
「足元に気を付けてください!落ち着いて下さい」
「早くここから離れて!急いで下さい」
市街地では民間人の避難が行われていると、直後に彼らの頭上を砲弾がすり抜けていく。
「ひっ!!?」
そして放たれた砲弾は都内の高層ビルを貫通して爆発。爆炎と火災を引き起こして付近には瓦礫が散乱する。
「浜松町に砲撃を確認!」
「八潮付近より上陸した模様!」
ビル一棟が砲撃を受けたことで大まかな所在が判明すると、市街地に流れ込んだ大量の黒煙は上陸した深海棲艦を隠していた。
「大和!」
『現在追跡中。加賀航空隊による索敵を開始します』
大和も即座に警戒していた海域を離脱して東京港を通過していく。
「大井コンテナ埠頭より上陸の可能性大。敵視認不可能!」
しかしところどころで火災も活性している現状、大和は敵を視認できなかった。
今後の展開、読んだらどれかに投票してほしいです。
-
ハッピーエンド
-
微ハッピーエンド
-
モヤモヤエンド(?)
-
全部書け。