ゆりの手帳   作:Aa_おにぎり

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何ともあっけない幕引きであった。

 

『よって羽田空港は全便が欠航中ーー』

『芝消防署管内、浜松町にて新たな火災発生ーー』

『都内各所で運転を再開。なお東京モノレールは終日運転見合わせをーー』

 

ニュースや無線では黒煙の立ち上る東京で昼夜問わずサイレンの音が鳴り響いていた。

 

『各国首脳から哀悼の意と支援が送られておりーー』

『援助物資やスタッフの受け入れを東京都の防災課と至急調整してくれ』

『東京証券取引所は通常通り取引を行い、特別な事は計画していないと発表しました』

 

混乱と恐怖に満ちた一日を終え、太陽の登った東京の市街地。朝日に照らされる中、都内を回る鉄道は安全確認の後に運転を行っていた。

 

『東海道新幹線は品川駅で折り返し運転を行なっております』

『現在、防衛省は深海棲艦の襲撃が北極海で確認された個体であることを受け、新たな防衛部隊の編成をーー』

『逃走した深海棲艦は太平洋上に姿を消しーー』

 

普段は満員電車で人がひしめき合っている東京の鉄道。それは今日も変わらないが、今日は携帯を取り出してニュースを見ていた人数が多かった。

 

『昨日の襲撃による死者、行方不明者は一〇〇名以上に登ると見られ、今後さらに数は増えると見込まれています』

『港区、品川区の火災はほぼ鎮静化され、現在防災担当大臣をはじめとした視察団が被害にあった地域の確認を行っております』

 

彼らは突如として降り込んできた戦争を目の前にして、誰もが無関係ではいられない現実をまざまざと見せつけられていた。

 

 

 

東京都 東品川 品川埠頭

深海棲艦上陸による被害現場

深海棲艦被害現場政府調査団

 

その光景を前に大臣や官僚達は絶句して見ていた。

 

「上陸から一時間程度でこの有様か…」

 

そこで彼らは倒壊して運河を塞いでいるタワーマンションを見る。他にも横浜や横須賀にも着弾を確認しているが、最も被害が大きかったのがこの東京であった。

破壊された現場では、救助犬を率いて消防隊員や軍人が逃げ遅れた人々の救助活動を行なっていた。

 

「練馬駐屯地、市ヶ谷駐屯地。浜松町ほか複数の高層建築物への着弾で、新幹線は分断された」

 

瓦礫の山となったその光景を前に政府閣僚は苦虫を噛んでその光景を見ていた。

 

「この事件の対応をめぐって、上山大将は事後処理を終えたら辞任をするそうだ」

「官邸の命令を無視したと言う話だ」

「無理もないだろう。これだけ混乱していればな…」

「そもそも東京が襲われることが想定外だ。仕方あるまい」

 

防災担当大臣は他の官僚閣僚達に言うと、内閣府係員が告げた。

 

「時間ですので、報道関係者の取材を始めます。大臣はこちらへ」

「分かった」

 

そこで大臣他官僚達がその場を後にしていくと、残った四宮裕翔は瓦礫の山となった戦場跡を見る。

 

「こっちにドリル回してくれ」

「倒すぞ。気をつけろ」

「せーのっ!」

 

防衛省の関係者で内閣府に出向していた彼は陸軍の戦闘服を纏いながら、まるで地震が起こった後のような惨状となっている現場を見つめていた。

 

「突然日常を奪われ、家族や職場を失う恐怖か…」

 

襲撃を行った深海棲艦は、その後東京湾で防衛戦を展開していた横須賀艦隊を背後から一突きして、防衛線に穴を開けた後にそのまま支配地域の太平洋に逃げ込んで行った。

彼の足元をふと見ると、そこには土を被った家族写真が転がっていた。

 

「酷い有様だな」

「西洲…」

 

その写真を見つけていると、隣に内閣府の作業着を着た男が現れた。

 

「内調の仕事は良いのか?」

「ああ、そこは公安が見張っててくれる。心配はいらない」

 

彼はそう答えて裕翔を見る。

 

「まあ、この有様で盗難被害が多すぎると東屋が悲鳴をあげていたがな」

「だろうな…」

 

そこで二人は黒焦げになった自動車を見つめる。

 

「東京がこんなことになるとはな…」

「ああ、まさか東京湾要塞を突破してくるとは思っていなかった」

 

彼らは救助活動中の現場を背にしながら歩く。

 

「正直、政府施設が砲撃されなかったのが不思議でならない」

「ああ、おかげで俺は今も二本足でここに立っているぜ」

 

西洲は裕翔とそんな話をしながら今も香るこげた匂いを前にため息を吐く。

 

「あれほどの重装備なら、東京が戦場になることはないと思っていたのだがな…」

「無理もない。元々、深海棲艦に通常火器で対抗することが難しいんだ」

「ああ、まざまざと思い知らされたもんだ」

 

そこで救助活動を行っている中で、鉄骨を軽々と放り投げる少女の姿があった。

 

「彼女は?」

「ああ、親父の秘書艦の大和さんと、山郷少将のところの足柄さんだ」

「ほお…、じゃあアイツらが艦娘か」

 

簡単に瓦礫を退けている様子を見て西洲は驚いた様子で見ていた。

 

「初めてなのか?」

「生で見たのはな。羨ましい限りの美人揃いじゃねえか」

 

そんな事を話しながら艦娘達を見ていると、裕翔はそんな彼にやや半眼で見返しつつも瓦礫の中を歩いていく。

 

「この十年で、世界は変わったもんだな」

「そりゃあそうだ」

 

二人は話し合うと、立ち止まって目の前で担架に乗せられて救助された民間人を優先させる。

遠くでは担架に縋り付いて泣く女性と子供。担架は外から見えないように全体を布で覆い隠されていた。

 

「…今は戦時下なんだな」

「当たり前さ。もう十年も戦争をしているんだぞ?」

 

そこで遠くでヘリコプターの音を聞きながら二人は戦場を後にした。

 

 

 

相模湾 伊豆大島沖

日本海軍 もがみ型フリゲート FFM-1 もがみ

 

深海棲艦の襲撃後、最前線である太平洋の哨戒任務を行なっていた艦隊は、設置した部位やソナーやレーダーを用いて新たな襲撃を警戒していた。

 

「両舷、前進強速」

「両舷、前進強速」

 

航海長の命令に航海員が復唱をしながら操舵を行う。

 

「対潜、対水上警戒を厳となせ」

 

そこで命令を行うと、その船体後端では、普段は機雷やUUVなどを発艦させる場所から艦娘で編成された戦隊が出撃を行っていく。

 

「気をつけろよ〜」

「「は〜い!」」

 

択捉型海防艦の『隠岐』『天草』の二人は手を振って出撃していくと、見送った軍人達はその直後に軽くため息を漏らした。

 

「全く、どうしてあんな子供を戦場に送らにゃあならんのかね…」

「いつ帰ってきても良いように、俺たちがなんとかするんだよ」

「はっ、当たり前のことを言うんじゃねえよ」

 

そこでハッチが閉鎖されながら彼らは、基地内では神の如く崇め奉られている艦娘達を想っていた。

洋上ではSH-60Lが展開し、吊下式ディッピング・ソナーを下ろして敵の潜水艦を警戒していた。

 

「現在、襲撃を行った深海棲艦は離岸後に太平洋に逃げ込み、捜索は困難と推測されます」

「現在、監視態勢を強化し、千葉沖と相模湾の哨戒を海軍が担当していますが、太平洋に逃げ込んだ以上、早期発見は困難です」

「いつまたどこに現れるか分からん、ということか」

 

報告を聞いた総理大臣は少しばかり緊張気味に報告を聞いていた。

 

「再襲撃の備えはどうなっている?」

「現在、陸軍主導による防衛網強化を行っております」

 

そう答え、防衛大臣が今回の襲撃を踏まえた反省点をまとめた資料を渡した。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

襲撃が沈静化した後、山郷達は都内の病院に搬送されていた。

 

「大丈夫ですか?」

「ああ、大した怪我じゃない」

 

その病室の中で黒岩はベッドで固定されている篠海を見舞っていた。

 

「肋逝ってて軽傷とはね」

「別に肋を折るなど学生時代に良くやっただろう?」

「そんな状況ですか…それ」

 

少なくとも彼女が自分の知る学生生活を送っていたいことは確実に言えると断言できた。まあ自分も言われてしまうと、まともな学生生活を送れたとは言えないのだが…。

 

「あら、提督はいつもこんな感じよ?」

 

そこで龍田が椅子に座って篠海を見ていた。彼女は目を離すとすぐに退院(脱走)をしようとするので、医者や看護師から頼まれて黒岩は天龍達を呼んで彼女を監視させていた。

 

「しっかし、大尉はすぐに退院できたんだな」

「はい…目立った傷もありませんでしたし、昔から体は頑丈でしたので」

「あら、そうなの?」

「はい…」

 

龍田が聞くと、彼女はゆっくりと頷いた。

 

「タクシーに跳ね飛ばされても傷一つ付きませんでしたから」

「マジかよ…」

 

その頑丈さが意外な硬さだったことに天龍は驚いていた。するとドタバタと音を立てながら病室の扉が開いた。

 

「提督!」

「肋折ったって聞きましたよ!」

 

そう言いながら部屋に入ってきたのは天霧と曙。佐伯湾に所属する艦隊で二人しかいない駆逐艦だ。

基本的に戦艦と巡洋艦が充実している佐伯湾泊地だが、駆逐艦の数は足りていなかった。そこで逆に駆逐艦の数が揃っている宿毛湾泊地に彼女達が哨戒を行う際は増援を求めることが多かった。

 

「大丈夫ですか?」

「肋が一本いかれたくらいで騒ぐことでもあるまい」

「あははっ、さすがは提督」

 

天霧はいつもの調子で今にも制服を着そうな雰囲気の篠海に笑った。

 

「…流石ですね」

「ええ、佐伯湾泊地をこれ以上開けておくわけにもいきませんので」

 

キッパリと彼女は言うと、そこでまた扉が開かれる。

 

「血気盛んなのは良いが、いきすぎた闘争心を抑えるのもまた提督を拝命した者の宿命だぞ?」

「山郷少将…」

 

部屋に入ってきた彼は、そこでタブレットを片手に二人に話し出す。

 

「防衛省から通達があった。昨日、東京を襲撃した深海棲艦を特異体と認定した」

「でしょうね」

「あれだけの被害を出せばそうなるでしょう」

 

そこで特別な呼称が与えられるのに十分な理由に遭遇したことをってい振り返りながら二人は納得する。

 

「『北極海要塞水鬼』それが彼女に与えられた呼称だ」

 

彼はそこで呼称が与えられた新しい深海棲艦の名前を反芻した。

 

「…」

 

名前を聞き、彼女は一瞬少しだけ俯いた。

 

「黒岩大尉?」

「ハイっ、なんでしょうか?」

 

その仕草に山郷が気がつくと、彼女はやや声が裏返って驚いた様子で反応をした。

彼女に不意打ちで話しかけたかと思うと、山郷は伝えることだけを伝えた様子で黒岩を見る。

 

「黒岩、そろそろ帰りの列車が出る」

「わ、分かりました」

 

そこで彼は黒岩を連れて病院を後にすると、出る際に篠海が艦娘に囲まれ…監視されながら山郷達に言った。

 

「少将、大尉、お気をつけて」

「はい!」

「ああ、お前さんもな」

 

近い者同士で彼らは病院を後にした。

今後の展開、読んだらどれかに投票してほしいです。

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  • 微ハッピーエンド
  • モヤモヤエンド(?)
  • 全部書け。
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