東京での襲撃の後、都内で戦闘を行った宿毛湾・佐伯湾所属の艦娘たちはすぐに列車に乗って帰路に着くこととなった。
東京での防衛力の不足が指摘されている中を、彼女たちは呆気ない幕引きであったあの深海棲艦の攻撃に、やや不完全燃焼さを残したまま母港に帰っていく。
「ではまたお会いしましょう」
「ああ、演習の時はよろしく頼むぞ」
岡山で彼女たちは別れると、四国である山郷等宿毛湾泊地の艦娘達はそのまま瀬戸大橋を通って南下をして四国に入ると、そのまま最終目的地の宿毛湾まで向かう。
「海を上を通ったらすぐに会えるのになあ…」
「まあ本来場所は近いからな。宿毛湾と佐伯湾は」
阿賀野の山郷は答えると、貨物列車は客車と艤装を乗せた貨物列車とともに宿毛湾泊地の敷地内に入っていく。
「わーい!
そして列車は停止すると、その直後に阿賀野が飛び出した。
「やっと帰れたか…」
「はい。おかげさまで」
泊地にあるターミナルで山郷と大淀は駅を降りると、艤装の運搬や新たな補給物資の確認を大淀に一任してから彼は泊地の施設を歩く。
「摩耶、帰ったぞ」
「おう、お帰り〜」
そこで泊地に戻ると、そこでフードを目深く被っていた摩耶が出迎えていた。
「どうだった?」
「はぐれた奴以外は見当たらなかったぜ」
「そうか」
泊地に帰還した彼らは、そこで妖精さん達が清掃をしてくれていたことで清潔に保たれていた。
「はあ…」
その後ろで黒岩は荷下ろしされて行く彼女達の艤装を見ながらため息を漏らす。
「大丈夫か、副司令?」
「まあ…うん。ちょっと揺られて疲れただけだから」
彼女は大波にそう答えると、その後にやや重い足取りで帰還して行く。そして彼女が暮らしていた寮のドアを開ける。
「「「おかえりなさーい!」」」
「うおっ!!?」
その時、部屋の中では多数の妖精さんが彼女を出迎えており、その様子を見て黒岩は声にならない驚愕をした。
「びっくりした…」
「たいいおどろいてこしぬかしてる」
そして地面にへたり込んだ彼女を見て妖精さん達はそこで言い合いを始める。
「だからいったじゃんか!」
「たいいおどろかすつもりはなかったの!」
そこで彼らは大喧嘩でもしそうな勢いで言い合いをすると、黒岩は手ぶらで部屋に入る。
「あれ、たいいにもつは?」
出て行く時に持っていた鞄がないことに首を傾げると、黒岩はこうなった事情を話す。
「深海棲艦の砲撃で丸焦げになっちゃった」
「「「「「おおぅ…」」」」」
彼女が遠征の時に持ち出した荷物は、あの東京襲撃の際に工具箱以外は全て消失してしまっていた。
「だいじょうぶだったんですか?」
「まあ、なんとかね…」
妖精さんに彼女はそう答えると、その直後に彼女は寮のベッドに倒れる。
「居なかった間、何か変なことなかった?」
「だいじょうぶです!」
「いじょうなし!」
「しいていえばしざいほかんこのかぎをあけようとしたところでしょうか?」
妖精さん達からの話を聞き、黒岩は苦笑気味に言う。
「それはやめて。みんな困っちゃうから」
「だいじょうぶです!」
「みんなあきらめましたから」
「うん…そっか…」
そこで黒岩は部屋の席に座ると、その後に机の引き出しを開ける。
「みんな、この後大淀さん達の艤装の点検と扶桑さん達の改装があるから、先に工廠に行ってて」
「りょうかいしました!」
敬礼をして妖精さん達は部屋を出て行くと、全員がいなくなったことを確認してから、彼女は引き出しからヤオビクニの原液を入れた薬瓶を取り出すと、それを部屋に用意していた殺菌済みの注射器を取り出して中身を開けてから薬液を注入する。まだこの薬品は使用期限に問題がない安全な薬品であることは分かっていた。
「…ものは試し、かな」
そこで彼女は薬液を入れた注射器を軽く弾いて空気を抜くと、その後に自分の腕の静脈にそれを打ち込む。
「…」
そして深海棲艦の血清を材料に作られた薬品を自分の体に打つと言う狂気的とも言える行為を彼女は試していた。
基本的に深海棲艦の血液というのは、血液型が合わない人間の血を入れた時と同様、溶血性輸血反応によって赤血球が免疫反応によって破壊されることがすでに確認されている。その為、艦娘の血液も同様に人との相性が関わってくる。
特に深海棲艦の血液の場合、人間には体内に入っただけで危険であることも既に言われていた。
「っ!!」
その直後、彼女は途端に背筋が凍るような寒気を感じて身が震えたが、少しするとその寒気も治った。
「…そう」
意外に試してみるものだと彼女は脈拍を図りながら思っていると、部屋の扉を大淀がノックした。
『大尉、工廠で妖精さんが来ていないと言っていますよ?』
「あ、はい!すぐに行きます!!」
呼びかけられて彼女は顔を上げると、広げていたものを片付けて部屋を出る。
「大丈夫ですか?」
「は、はい…幾分、東京にいた時の服とかが丸ごと燃えてしまったのがちょっと大変ですけど……」
「あー、なるほど」
元々荷物が少なかった人だしな、と大淀は黒岩の荷物が消失したことで服が無くなりそうな事態をやや哀れむ。
「足柄さんも悲鳴をあげてましたからね…」
そこで大淀は黒岩が帰ってきてバタバタしていた理由を聞いて察してから、直後に深海棲艦の砲撃で脱線・火災となって購入したブランド品が全部消失したという大惨事を前に発狂していた足柄を思い出す。
何せ楽しみにしていた最新のトレンドファッションであったために、彼女は補償で渡される金以上の心的外傷を受けてきた。
「何もないですからね、ここは」
「まあ…はい……」
大淀の言葉に黒岩は否定できなかった。何せこの場所は四国は田舎も田舎のすごい場所。そもそも驚きの電化率0%の四国の鉄道を見てわかる通り、この地は悲しいほどにファッションとは程遠い、恵まれない環境である。
通販という手もあるが、足柄曰く『通販なんて頼んだものが来るとは限らないじゃない!!』とご尤もな返答をされて何も言い返せなかった。
「少なくとも暫くは荒んでいるでしょうね…」
「ええ、しかも艦娘を外に出していたこともこれでバレてしまいましたからね」
「うわぁ…完全に事故起こしているじゃないですか」
他の鎮守府などでも同様に行われていたという艦娘の処置をめぐって、政治家や活動家が勝手に喚き散らしているという。
まあその話を聞いて軍人や艦娘を知っている面々がブチ切れているという話だが、それよりも東京が深海棲艦に襲撃されたことに対する責任問題で凄まじいことになっていた。
「責任のなすりつけが凄まじいですね」
「上山大将が全て責任を負われて辞任されるそうです」
「…」
そこで二人は携帯電話で外の情報を収集していた。そこでは国会での査問会で吊し上げのように壇上に立たされている上山大将の映像があった。
「悲惨ですね…」
「まあ、今総選挙を行っても危険ですからね」
「…散々汚職で言われている人じゃありませんでしたか?この大臣」
彼女はそんなことを言いながら糾弾している内閣総理大臣を見ると、大淀は言う。
「でも不安定な政権なのも問題だと思いません?」
「え、どうなんでしょう…?」
逆に聞かれて黒岩は返答に困ってしまうと、彼女は工廠に入る。
「連れてきましたよ」
「たいいおそいよ〜」
「ごめんなさい。少し片付けしてて…」
妖精さん達に少し文句を言われながら黒岩は、工廠の中で艦娘達の艤装を見て行く。
「よろしくお願いします」
「あ、はい。任せてください」
そこでこちらに来ていた扶桑達に挨拶をされると、黒岩も頭を下げて作業に入ろうとする。
「ひぎゅっ?!」
しかし直後に躓いて最大に二人の目の前で転けてしまう。
「大丈夫ですか?」
「は、はい…はぁ」
扶桑が手を差し出すと、大きく溜息をついたので、そのため息の理由を隣で山城が深く良く理解しているように頷く。
「大丈夫です。気持ち、よく分かりますので」
この不幸に対して同郷の民を見る様子で山城は黒岩を見ると、同じ悩みを抱える同士を見たような気がしていた。
「で、では…これから作業に取り掛からせてもらいます」
「はい、お身体にはお気をつけくださいね?」
早速転倒してしまった黒岩は自信があるように答える。
「大丈夫ですよ。頑丈なのが唯一の取り柄ですので」
果たしてそれは褒められる特技なのだろうかと疑問に思いながら彼女達は設計図を書いて行く黒岩を見た。
基本的に艦娘の改装に必要なのは資材と設計図だ。そして艤装技師は艦娘の改装に必要な設計図を引いて妖精さんに渡す事で艤装の改修を行うことができる。
「えっと航空戦艦への改装工事は…あ、あったあった」
製図台に座って図面を書いて行く彼女は、書き上がったものから順番に妖精さんに渡して行く。
「あたらしいせっけいずだぞ〜」
「いそげいそげ!」
そして工廠で妖精さん達が改装工事を行なって行く。後部の甲板を丸々改装する計画のため主砲の砲撃力はなくなるが、航空戦力の増強が行えた。
「かんさいきはどうしますか?」
「余ってる瑞雲と零式偵察機があったはずだから、それ載せちゃって」
「りょうかいです」
艤装の改修作業は妖精さんに丸投げして黒岩は一人で設計図を書いて行く。その間、扶桑と山城は加賀達から艦載機運用のための講習を受けていた。
「艦載機は多分瑞雲でしょうから、水上機は他の子達の方があっているような気がするのだけれど…」
「でも艦載機の運用ですから、航空戦艦への改装であるなら加賀さんの方が適任かと…」
羽黒にそう言われて彼女はややため息混じりに扶桑達に艦載機の運用方法を教えて行く。
「改装は順調なそうだな」
「ああ、流石は明石が認めた腕前ってとこだろうね」
部屋で山郷は練習で扶桑達に発艦を行わせる様子を見下ろしていると、後ろから摩耶が話しかけた。
「艤装の点検も工廠でやってくれる。まあ、暫くは演習で忙しいかな?」
「そりゃあな、航空戦艦に改装するんだ。明日にはもう終わるんだろう?」
摩耶はそこで改装期間を思い出しながら聞いたので彼は頷いた。
「その時は、お前さんにも対空番長として出てもらうぞ?」
「おう、任せときな」
彼に摩耶は自信がある様子で歯を見せた。
今後の展開、読んだらどれかに投票してほしいです。
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ハッピーエンド
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微ハッピーエンド
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モヤモヤエンド(?)
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全部書け。