東京での襲撃事件に巻き込まれた事で数日の遅れが出てしまったが、無事に改装を始めることとなった佐伯湾泊地所属の扶桑と山城。
「艦載機、発艦始め!」
そう叫び、火薬式のカタパルトから次々と発艦を始めて行く瑞雲。二人は改装を終えて航空戦艦になり、改装後の処女航海と艦載機運用訓練を開始していた。
「艦載機着水。起重機で回収して」
二人は阿賀野、矢矧、秋月、涼月、高波、大波の宿毛湾泊地所属の駆逐艦と艦隊を組んで哨戒任務を行っていた。
「やっぱ瑞雲って便利ね」
「哨戒・偵察・爆撃、一通りの艦載機としての能力はありますからね」
「兵器において万能って、大抵失敗作の元になる気がするんですけど…」
ガンカメラで発艦を行った瑞雲を見ながら観察していた山郷達は言うと、編隊を組んだ艦載機が続々と降下を始めて敵役の摩耶に突撃を始めて行く。
『オラオラオラオラァッ!なめんじゃねえぞ!!』
そこで高角砲の照準を合わせて射撃を行って行く摩耶は興奮した声を無線に乗せていた。
「あーあー」
「完全に上がっちゃってますね、これ」
山郷と大淀はため息混じりに空に展開される模擬弾の炸裂する色付きの煙玉を見る。
「大丈夫なの?」
「多分…」
足柄と羽黒はやや不安げにその様を見る。
「流石に摩耶さんも撃退まではしないのでは?」
不知火もガンカメラを覗き込んで空中戦を見ていると、煙玉に当たって撃墜判定を受けた瑞雲は離脱し、残った編隊から演習弾が投擲されて行く。
「二発…三発だな」
そして水柱を確認すると、山郷は手元のサイコロを振って出た目で判定を行う。
「ただいまの着弾、小破」
『了解しました』
そして演習弾を投擲した編隊は離脱して行くと、瑞雲は水面に着水をして扶桑達は機体を回収して行く。
「艤装は後ろ半分を丸々飛行甲板に変更し、砲撃力は半減しました」
そこで改装を担当した黒岩が詳しい諸元の説明を行っていく。
「搭載機種は瑞雲と零式水上偵察機です。瑞雲は艦上爆撃機として使用可能で、要望があった場合は全て瑞雲に載せ替えます」
「ああ、この航海が終わったら相談してみよう」
山郷は爆弾投下訓練を行う様子を見ながら改装を請け負った黒岩を見ると、彼女は一仕事を終えた後だと言うのにピンピンしていた。
「東京から一週間ほどしか経っていないと言うのに、元気だな」
「いえいえ、嫌いな仕事ではありませんので」
「そうか…まあ、無茶はするなよ?」
「はい」
彼の言葉に黒岩は頷くと、隣で大淀が念を押していった。
「今度また無茶をすれば大波さんを研究所に突撃させますので」
「うっ、はい…」
そこで念を押された黒岩は少し困りながらも頷くと、その後に訓練を終えて帰還する連絡があった。
改装を終え、帰還した扶桑達はそこで新しい艤装の様子を確認した。
「どうですか?」
「艦載機は全機瑞雲にして欲しいかもですね」
「ああ、やっぱりですか…」
そこで話を聞いた黒岩は納得したように頷く。
「ではこちらで艦載機の編成は行いますね」
「大丈夫なんですか?」
「そちらも瑞雲を艦載機として運用しているはずでは?」
簡単に黒岩は瑞雲を提供してくるので、扶桑達は足柄などの巡洋艦の艦載機に瑞雲を使用していることを思い出しながら聞くと、彼女は無問題と言って答えた。
「大丈夫ですよ?この泊地の瑞雲は私が改造を担当したので、2/3のパーツで戦闘を行えるように改装しています。ですので数に余裕があるんです」
「しれっととんでもない事言わないで」
「え?」
黒岩はそこで改造をしたという瑞雲に首を傾げると、その様子を見て呆れたようにため息を漏らしていた。
「まあ良いわ。それより、その艦載機の変更はどれくらいで終わるのかしら?」
「ざっと半日もあれば…」
「半日?」
予想外に長い時間を取られる事に二人は驚いて黒岩を見ると、彼女は申し訳なさそうに言う。
「はい。先ほどの航行の際に若干の加速度に遅れが出ていましたので、機関の調整を行う予定です」
「え?これで十分じゃないの?」
「いえ…その、調整しないと落ち着かないと言いますか。すみません」
彼女の言い分を聞き、扶桑と山城二人は『ああ…』と妙に納得できてしまった。
「はぁ…全く…」
「良いわよ。深海棲艦が来ない間は」
「ありがとうございます」
黒岩は許可を得て頭を下げると、その直後に早速二人の艤装の調整を初めていく。
二人の艤装の大きさと言うのはよく聞いており、かつて佐世保湾基地で艤装を外し忘れた扶桑達が鎮守府の入り口を破壊したと言う話も聞いていた。
「このボイラーの排熱をもっと効率化しておかないと…」
艤装の半分を甲板に変え、水上機を運用する設備を一通り備えた改装を終え、宿毛湾泊地自慢の溢れんばかりの妖精さんによる人海戦術によって改装作業は簡単に終えていた。最終的な微調整も、黒岩が施した気分的なものに過ぎず、何度も微調整を終えては扶桑達は出撃をして高速度試験を行っていた。
「あーあー、理系の悪い部分出ちゃってるわ」
「計算通りに動かないことに不満なんだろう?」
摩耶と山郷がそこで見える範囲の洋上で煙を上げながら航行する扶桑達を見る。
「機関は大きな煙突一本に変えて、第四主砲から後ろは全部航空機格納庫かよ」
「これでだいぶ艦載機は積めるようになったんだぞ?いっそのこと、全通式甲板でも備えれば良いのにな」
「提督、それはもはや航空戦艦じゃなくてただの空母だぜ」
二人は楽しげにそんな話をしていると、山郷は軽くため息を吐く。
「やれやれ、佐伯湾も提督が負傷して大変だな」
「ああ、大丈夫なのか?」
「まあ、あれだけ元気だからな。一週間でもしたら無理やり退院でもして佐伯湾に帰ってくるだろう」
「ええ…それで良いのか?」
そんなやや投げやり気味な様子の山郷に摩耶は苦笑気味に彼を見ていた。
「まあ、この前の東京襲撃で全国的に大きく動揺している。その間に攻勢があった場合など目も当てられんよ」
「やれやれ、上山大将も苦労するもんだね」
「俺たちを庇ってくれたんだ。感謝しきれんよ」
彼はそう言い、先ほど見たニュースでも語られていた上山大将への査問会の招集と、今回の襲撃事件への対応の
「まあ、今回の事件で玉体の京都移動も本格的に提案されている話だ」
「余程のことなんだな」
「これほどの大騒動になっちまったらな」
そこで山郷は黒岩大将へ責任追及を行っている政府の責任逃れすら感じさせる反感すら持ち始めている軍と警察の反応に少し危機感を感じていた。
「まあ、今の政権を存続させるためにも必要な事だと言うのはわかっているはずだ」
「良いのか?下手したら神尾学校の人間が飛ばされる可能性がないか?」
「無理に決まってる」
摩耶の懸念に山郷は即答すると、彼は話す。
「今のこの国の防衛策の基礎を作ったのが神尾元帥だ。今更、あの人の考えをちゃぶ台返なんてやろうものなら、たちまちこの国は亡んじまうさ」
「…それを思うとあの人って怖えな」
「そりゃそうだ。深海棲艦の攻撃で亡国の危機にあった世界を救った英雄なんて言われちゃいるがね、実態は多くの報道機関を潰したヘイト要員さ」
彼はそう言い、自分も一役買って不動産の全没収という戦時下の混乱による蛮行を行うために警察関係者に協力を持ちかけた時のことを思い出す。
当時は大混乱の最中にあり、新聞やニュースの媒体なども満足に昨日していなかったことが幸いし、多くの旧来の報道機関は不動産や放送権を国に奪われてしまっていた。そのおかげで政府の立て直しや現在の鎮守府制度の導入を行うことができていた。
「で、全部を否定すると国が守れなくなるように思想を植え付けたわけね」
「そりゃあな、今艦娘の運用を行っている基地であの人の思想を受け継いでいない人なんていないさ」
そんなことをすればたちまち全国の軍人が反旗を翻し、責任という形で辞職を出すだろう。少なくとも現在いる多くの提督の中には、彼に憧れて、あるいは命を救われてその職になったという人物もいるほどであった。
「軍艦派と軍人派でいがみ合っているのには?」
「そこは仕方ない。国を守るという大義名分の中、戦時下で時に司令官は非情にならざるを得ない時もあるってことだ」
「ああ、そうだな…」
摩耶はそこで東シナ海での油田海域での戦闘を思い返す。
「あの後、提督は引きずってたわけだしな」
「それはまあ、そうだが…」
その時、彼の元にいた艦娘は全員が戦死扱いとなった。彼はそれ以降、佐世保鎮守府からその宿毛湾泊地に異動して競合海域を航行した深海棲艦の迎撃を行っていた。
「はあ、疲れる」
「だろうな」
やることがとにかく目白押しに降り注いできた現状に山郷は軽くげっそりとした様子でいると、隣で摩耶が言った。
「今度、南鳥島にあるレアアース泥精錬基地に物資輸送船団を編成するそうだ」
「また任務か?」
「いや、そっちは下総達の方でこなすそうだ。大和と武蔵を連れた横須賀艦隊も含めた船団だな」
「おほ〜、そりゃあすげえや」
随分と豪華な編成で出撃をすると摩耶は感心していると、山郷は言う。
「で、その間に他の太平洋側の基地には全艦で南鳥島に向かう船団から注意を逸らすために
「鼠輸送ってか?」
摩耶の言葉に彼は首を横に振った。
「いや、そこまで悲惨なことじゃない。ただ太平洋に件の深海棲艦が現れた以上、襲撃をされた場合に少しでも戦力を減らしておきたいそうだ」
「あーね、中々にヤバかったって話だが?」
「やばいってモンじゃねえ、ありゃあ恐怖そのものだった」
その時、彼の顔は途端に鋭くなった。その顔を見て、摩耶は余程のことなのだと警戒度が自然と上がった。
「陸上型の深海棲艦だが、積んでいた兵装が尋常じゃない。大和達の話では、あれはまだこちらでも試作段階の51cmクラスの主砲だそうだ」
「それは怖えな」
ガンカメラで鮮明に映し出された敵の映像を前に防衛装備研究所の解析結果による敵の特異体の推定諸元を前に多くの軍人は顔を青ざめさせていた。
「そもそも陸上型は洋上での動きが鈍いはずだと言うのに、あの敵は襲撃開始からわずか二時間で東京上陸だ。恐ろしいほどに早いやつだよ」
山郷の軍人としての、昔よりもより洗練されて抑え込まれた闘争心を見て摩耶は彼が若返ったように見えた。
今後の展開、読んだらどれかに投票してほしいです。
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ハッピーエンド
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微ハッピーエンド
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モヤモヤエンド(?)
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全部書け。