ゆりの手帳   作:Aa_おにぎり

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その日、太平洋の洋上をMQ-9B シーガーディアンが四機編隊を組んで飛行していた。

 

「CP。こちら、シーガード1。現在目標海域上空。送れ」

 

無人攻撃機の操作を行っている陸上基地で空軍所属のパイロット達がガンカメラを使って監視任務を行なっていた。

元々、海上保安庁や防衛省で採用されていた機体であったが、米軍でも使用されていたものを格安で売り渡されていた。

 

『こちらCP。了解した。シーガード隊はそのまま上空警戒を維持。事前の作戦に従い、敵性存在に対する無制限攻撃を許可する』

「シーガード了解」

 

日本空軍機所属の証でもある日の丸(ミートボール)が尾翼に塗装された無人攻撃機は、ハードポイントに対戦車ミサイルやレーザー誘導爆弾を装備していた。

 

「…あれか」

 

そしてガンカメラで映し出される映像にはIFFに反応した護衛対象(船団)を見る。

 

「駐留米軍をまとめてごっそり引き上げるとはね」

「海を奪われて帰国できなかったんだ。仕方ないだろう」

 

その中に乗り込んで今も機関銃の銃口を大海原に見せているのは星条旗を掲げる兵士たちだ。

 

「元はと言えば外人部隊でしたがね」

「まあな、とは言っても米軍のやったことは最前線で俺たちに教育をすることだったが」

「ちげえねえ」

 

戦争が始まり、制海権を喪失した世界各国においてかつて『世界の警察』と言われたアメリカ軍は、すべての駐留米軍がそのまま置き去りにされてしまっていた。

 

「今回の成功を受けて、大西洋でも同様の計画が行われていると言う話だ」

「こっちとしても、色々と米軍の卸売品が使えてありがたい話ですけどね」

 

基地で無人機の操縦を行っていた彼らはそんな話をしながら船団や護衛している艦娘達の頭上を越えて行く。

 

「まあな、深海棲艦(海産物)にも効果を出せる歩兵装備を大量に売り払ったって話だろ?」

「Mk153 SMAWだな。イ・ロ・ハ級に複数撃ち込んで撃破した記録はあるがな」

 

空軍軍人達は、そこで戦争で本土に爆撃や砲撃が行われている中で陸上自衛隊の頃の記録を思い出しながら話していた。

 

「俺たちの01式じゃ無理なのか?」

84mm無反動砲(カール・グスタフ)撃ち込んだ方が早え」

「その方が安いしな」

 

人類が使用する通常兵器の中で数少なく対抗できる手段の一つである無反動砲やロケットランチャー。特に携帯式の誘導兵器として沿岸部の防衛戦などでその真価は発揮されていることは、世界中で確認されていた。

 

「今回のアレで色んな国の大使も帰るんだろう?」

「ああ、こっちからも大勢の大使館員とかが帰国しているからな」

 

彼らはそう言いながら、アメリカ国内に取り残されていた国連職員や滞在中であったりした邦人などがアメリカから出港した船団に乗り込んでいることを思い出しながら無人機を操作する。

突如として始まり、世界中に戦線が拡大したことで多くの訪日外国人や大使館員などの駐在員は本国に帰還することができていなかった。

日本海を奪還したことで、欧州や中東などの国々はシベリア鉄道に乗って帰国を果たしていたが、アメリカの場合は海が寸断されていたことで不可能となっていた。この船団も、第二陣に多く乗り込んだのはそうした駐在員であった。

 

「まあ、国に帰れるなら幸せなことなんだろうな」

「全くだ」

 

そして日本も他の国々と同様に、この深海棲艦の攻撃によって国内の全てが機能不全に陥ったことで、一時は中央政府の機能が喪失していた。

それを立て直し、新たな憲法による国家改造や南方海域へに進出とその後の物資輸送などによってなんとか持ち堪えさせたことで、十年掛でようやく本格的な反抗作戦が展開されようとしていた。

 

「北方海域での戦闘が終わったんなら、そろそろ本格的に始めるのか?」

「さあな、お偉いさんの話なんて俺に振るんじゃねえ」

 

彼らはそう話していると、新たに司令部から無線が入った。

 

『こちらCP。シーガード隊は現時刻をもって単冠湾・幌筵泊地所属の艦隊が直掩を開始する』

「了解。これより撤収する」

 

奪還した海域となった千島列島から、深海棲艦との競合海域の近くなるアリューシャン列島を前に、機体を旋回させて他の編隊と共に後の護衛を任せて離脱していった。

この海域の奪還に成功したことで、嘉手納や岩国、横田などからこの戦争を生き残っていた米軍機なども総動員して人員輸送を行っており、予定通りに人員輸送は進んでいた。

 

「はあ、あっ。そういやあ今度海軍で昇進があるって話だったよな?」

「ああ、護衛機で参加してた連中が軒並み昇進さ」

「かぁ〜、羨ましいことだね」

 

彼らはそんなことを言いながら羨望すると、パイロット達が口々に言う。

 

「海軍が一番人数が多いんだ。まあ我慢しろ」

「へいへい、どうせ俺らは花形でもねえさ」

「おう、かわいい艦娘を守れずに殺したら俺が直々に引導渡してやるよ」

「おお怖」

 

そこで隊長からの一言に全員の背筋が凍ると、無人機は新千歳空港に帰還する。

戦争が始まり、軒並み航空会社は深海棲艦からの攻撃を恐れて滅多に飛ばすことはなくなってしまい、国内に整備されていた空港や航空機は全て軍用飛行場に接収を受けていた。

石油製品の使用制限も戦時下による統制の影響をもろに受け、各旅客航空会社はほぼすべての旅客機を輸送機に改造した上で物資輸送に従事していた。

 

「着陸確認」

「よーし。タキシングして、タートルネックに交代して俺たちは休憩だ」

「やっと終わったか…」

「もう疲れたぜ」

 

そして長い滑走路に無人機が着陸を行ったことを確認すると、タキシングを起きないながら無人機編隊はバンカーに移動を始める。

雪の降る新千歳の中、プロペラの音は滑走路の粉雪を舞い上がらせていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

襲撃事件により、防衛省では大規模な再編が行われていた。

北方海域での作戦成功により、これからは南方に戦力を集中させる作戦が今後の国家戦略として決定されていた。

 

東京襲撃に際し、南方に展開予定であった大和型戦艦は二人とも首都防衛の為に本土に残地となり、必要な場合にのみ派遣が決定される運びとなった。

 

「…」

 

その日、深海棲艦の砲撃で破壊された防衛省の施設で無事だった場所で後場は報告書を読んでいた。内容は、艦娘に装備する長10cm連装高角砲に使用する砲弾の改修に関する内容であった。

 

「近接信管装備の対空砲弾か」

 

その報告書を読んで彼は、その一種の精密機械とも言える炸裂砲弾の信管を見ながら舌を巻く。

 

「流石だな…彼女は」

 

そしてその新型装備の開発報告書を書いた人物の名を指でなぞって彼は言う。

 

『すまんが、艤装技師を前線から引き抜くのは無理だ』

 

それは上山から言われた言葉であった。

かつてこの研究所に所属していたある女性研究員を元々いた場所に戻せないかと上官に持ちかけた際に言われた言葉だった。

 

『君の気持ちもわかるがね、今は艦娘の艤装の改修作業を行える艤装技師の数を確保したいのだ。これは現在の国防力増強に直結する』

 

そう返した海軍大将は資料を渡す。

 

『現状、明石学校を卒業できた技術陣の少なさはわかっているはずだ。既に彼等は艤装の改修やら修復で引っ張り凧だ』

 

では大規模な鎮守府に集中的に配属すべきなのでは?と聞くと、彼は困った様子で答える。

 

『それも考えた。だが最前線の泊地の艦娘を優先的にバックアップできる体制の方が効率が良いという判断が下された。欧州で、敵の攻撃で艤装技師が集っていた修理工場をピンポイントで破壊されたこともある』

 

そう答え、押し問答引き問答のような状態になって平行線になった異動の話。むろん研究も必要ではあるが、今は目の前の巨大な問題に取り掛からなければならないことは分かっていた。拡大した戦線を維持する為に莫大な人員と予算を注ぎ込んでいることを知っていた。

 

「…何もかも足りない、か」

 

そこで彼は、半壊して修復作業の始まった施設を前に呟いていた。

その卓上には朝潮と並んで立っているツーショットの様子が写った写真が立てられていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

雪は降らないが、それでも息が白くなってくる頃合いの季節。

 

「…ふぅ」

 

小さく吐息をすると、その口から白い息が吹き出る。

 

「流石に冷えるね…」

 

宿毛湾泊地の中にあった道場。そこで黒岩は制服を着て正座していた。その側にはあの大太刀があり、腕の鈍ることを防ぐための定期的な鍛錬を行っていた。

自分を引き取って育てた、あの奇怪な老人から譲り受けた唯一の肩身とも言えるこの大太刀を持って彼女は鍛錬を終えて道場を後にすると、遠くでパンと音を立てて当たった音が聞こえると、そこでは加賀が弓を引いて発艦の練習を行っていた。

 

「おはようございます。加賀さん」

「おはようございます。副司令」

 

話しかけられて加賀は黒岩を見ると、彼女は黒岩が背負っていた大太刀を見て首を傾げた。

 

「珍しいものをお持ちなんですね」

「これですか?」

「ええ、そのようなものを持っているとは思っていませんでしたので」

 

彼女はそう言い、すこし彼女の普段のイーメジでは想像がつかないようなものを背負っていたことで驚きながら聞いた。

 

「刀剣がお好きなのですか?」

「いえいえ、私はそんな趣味と言えるほどのことではないですよ…ただ、ある人から貰ったというだけなんです」

「…そうですか」

 

加賀はそこで自分が練習用に持っていた大弓を持つと、この宿毛湾泊地の狭い弓道場で唯一の空母である彼女は黒岩に話す。

 

「貰ったものは大切に扱うことね」

「あ、はい…それはもちろんです」

 

そこで黒岩と加賀は話す内容が無くなってしまうと、お互いに口数が少なくなる同士であったので、黒岩は言った。

 

「先、行っていますね。今日は私が作らなければなりませんから」

「分かりました」

 

その時、僅かに加賀は眉を動かした。

 

「因みにだし巻き卵は出ますか?」

「は、はい。昨日、大波に言われたので」

 

黒岩は加賀に朝食の内容を聞くと、彼女は背中を向けて弓道場に戻ると、黒岩も自分の寮に向かっていった。

 

そして黒岩が居なくなったのを確認してから再度弓道場で新しい弓矢を取り出すと、和弓を大きく引いて冬の寒さが訪れる時期に、静かに矢の放つ音が響いた。

 

「…」

 

その時、放たれた矢は赤く塗られた的の中心当たった。

今後の展開、読んだらどれかに投票してほしいです。

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  • 微ハッピーエンド
  • モヤモヤエンド(?)
  • 全部書け。
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