特級呪術師『垣根帝督』   作:ヘキサメチレンジアミン

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【閑話】

 

 

「ケヒッ、面白い術式(もの)を見た」

 

 生得領域で王が邪悪に笑う。

 

 受肉したことによって1000年ぶりに復活を遂げた両面宿儺ではあったが、自由に動くことはできなかった。何故か器が宿儺の意識を抑え込むことができ、現状動くことができた時間はごく僅かだった。

 

 そんな中でも収穫はあった。すなわち、『未元物質』という未知なる術式との対峙である。術式とは往々にして人によって違うもので、同じ血筋でもなければ同じものが発現することはほとんどない。だから、宿儺が見たことのない術式があること自体に何もおかしいことはない。

 

 宿儺の興味を引いたのはその異質さだった。構築術式のように無から有を生み出す性質を持ちながら、大して呪力を消費していない。呪力効率が良いというわけではなく、術式自体が要求する量が出力に対して明らかに少ないのだ。

 

(だが、どんな場合においても出力にはそれに見合った消費が必要だ。呪力がそれほど消費されていないというのであれば、呪力以外の何かを消費しているということになる。もしくは手印や詠唱のような何かの余分な作業を行うことを縛りとしているかだな)

 

 少なくとも手印と詠唱ではない。『呪いの王』の目を欺くことはできない。宿儺に見えなかったということは、実際にそれは行われていないのだ。

 

(やはり情報が足りんな。戦った時間が10秒にも満たないというの短すぎる・・・小僧が少しばかり早く切り上げたせいだが。実際あのまま行けば指1本分は失われていたかもしれんが、少しは核心に近づくことができたかもしれんというのに)

 

 さすがの両面宿儺も現在の情報だけで結論を出すことはできなかった。

 

 宿儺の斬撃を防ぐほどの硬さを持ち、しかもそれが手足のように自由に動かせる上に伸縮性まで持つ物質。(よろず)の使う液体金属に似ているようにも感じたが、だとしたら他の光源もなしに発光することに説明がつかない。

 

(まぁ良い。機会はまだいずれ来る。どのみち肉体の死の前に小僧の心が先に死ぬだろう。それを待つことにしよう)

 

 

────────────────────────

 

 とあるファミレスにて、額に縫い目のある袈裟を着た長い黒髪の男と顔左半分に刺青がされている獰猛な目した金髪の男が向き合っている。どちらもファミレスの雰囲気には少し似つかわしくない風貌だ。

 

 特に何かを注文している様子はなく、2人を挟むテーブルには2人分の水しか置かれていない。

 

「『宿儺の器』の出来は想像以上だったよ。私だけではあそこまで 完成度を高くすることはできなかっただろう」

 

「だァから言っただろうがよォ。オカルトだけじゃァいいもんは作れねェ。やっぱ科学とオカルトを融合した技術じゃねえとなァ」

 

「相変わらずだね。術師の家系でありながら、科学に傾倒した異端者達。でも、君たちが作るものはやはり面白い。私のノウハウに君たちの知識を加えたからこそ、『宿儺の器』は完全を超えたものになった」

 

 両面宿儺の指を取り込んだ虎杖悠仁は体を乗っ取られなかった。彼が自分の意志で代わった時を除き、宿儺は一瞬たりとも表に出て来れなかったのだ。これは適応能力の高さによるものだった。

 

「これならおそらく指を10本同時に飲ませたところで、宿儺が活動できるのはせいぜい数分だ。縛りも相当に条件を厳しくしなければ、主導権を握ることはできないだろう」

 

「つかァ、てめェは宿儺を復活させてェのかさせたくねェのかどっちなんだァ?」

 

「最終的にはさせるつもりさ。裏梅との契約もあるしね。ただ、そのタイミングがいつなのかは測りかねている。五条悟の封印に失敗すればそれは早まるだろうけど、基本的には宿儺には私の計画の最終段階で活躍してもらうつもりだよ」

 

「そォかよ。あの小僧、いや、今は小娘だったか?まァどっちでもいいか。あいつはなかなか役に立ってるぜ。そんじょそこらのモルモットよりもよっぽどな」

 

「気に入ってくれたようで何よりだよ。ただあまり雑には扱わないでくれ。あまりひどい扱いをすると宿儺の怒りを買ってしまう」

 

「別に脳を掻っ捌いてる訳でもねェンだ。そのくらいでブチ切れてたら『呪いの王』の名が泣くぞ」

 

「あぁそれと、特級呪霊達と正式に手を組むことになった。君にも近いうちに会ってもらうことになる。向こうは君と会いたくないようだけど、作戦のために渋々飲んでくれたよ」

 

「俺としてもくだらねェプライドを持ったモルモットどもと会うのはお断りなんだがなァ」

 

「そう言わないでくれ。彼らは君にとっていい研究材料になるはずだ」

 

「仕方ねェ。あんまり面倒なことにはすんなよ」

 

 そう言って金髪の男は席から立ち上がって、外に出て行く。

 

「やれやれ、本当に分かってるのかな。次会った時に裏梅が死んでないといいけど。何しろ『木原』ってやつは加減を知らないからね」

 

 

 

 

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