特級呪術師『垣根帝督』   作:ヘキサメチレンジアミン

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【第4話】

 

 

 

 垣根の入学は認められた。特級術師としての肩書きはそのままに、3年生の初めからやり直すことになったのだ。

 

「同級生も担任もいないってのはどういうことだ?」

 

「いや、同級生はちゃんといるんだよ。停学中だけど」

 

「何をやらかしたら停学なんてことが起きるんだよ」

 

 垣根はよく同級生の問題児2人を引き合いに出すが、彼自身も1年生の頃はかなりのやらかしをした。未元物質の暴発によって辺りの建物が蒸発したこともあれば、ムカついて某御三家の当主の嫡男に全治半年ほどの怪我をさせたこともある。それでも、せいぜい反省文が関の山だった。

 

 普通なら退学さえあり得るような問題に対しても、人手不足が原因で重い処分を下せないのだ。特に特級には。

 

「去年に保守派の人物と揉めて、ボコボコにしちゃったんだ」

 

「その程度のことで停学とは随分と平和になったじゃねえか。それも上の判断か? 腐敗ぶりは相変わらずだな」

 

「僕も金次ほどの術師を腐らせておくのは惜しいと思う。綺羅羅も結構いい術式を持ってる。ただこれはどう理屈をこねても防ぎようがなかった」

 

 五条が特に目をかけている秤に関しては出力にムラはあるが、最大値を見れば特級に迫るほどの実力がある。術式が気に入らなかったのか、それともよほどの要人に危害を加えたのか、どちらにせよこの状況はもったいないと言わざるを得ない。

 

「それでどうせ1年間停学だから担任も不在ってか? オレとしても わざわざ必要もない授業を受けるのは面倒だから、好都合ではあるが」

 

「そんなわけで、1年生と一緒に授業受けてね」

 

「は?」

 

「だってほら、任務だけの1年間とかあまりにも寂しいし、そこらの術師じゃ垣根に教えられることなんてないでしょ」

 

「お前が担任とかどんな罰ゲームだコラ」

 

GTG(グレート・ティーチャー・五条)と呼ばれてる僕に対してとんだ言い草だね」

 

「それお前の自称だろ。前も言ったろ。お前に教師は向いてねぇ」

 

「いやいや、僕は立派な教師やってるでしょ」

 

「寝言は寝て言えよ。お前が生徒の気持ちに寄り添えるような人間かよ」

 

 五条は傷ついた。

 

 

 ────────────────────────

 

「…………」

 

「…………」

 

「ちょっと2人とも暗くない? これから一緒に授業を受けるんだから、挨拶とかしなよ」

 

 垣根が伏黒と会うのは2回目だ。だが、お互いにあまり良い印象は受けていなかった。

 

 伏黒は虎杖を躊躇なく殺そうとした垣根を苦手なタイプの術師と判断した。自分も同じことをしようとしていたが、それは苦悩の上での行動だ。垣根が間違っているとは思わないが、それはそれとして決して反りが合わないだろうとは感じていた。

 

 一方、垣根はとある『強者』を思い出していた。夏油と五条が揃って敗北したと知った時は本当に驚いた。結局、垣根が彼と直接戦うことはなかったが、その時に感じた何とも言えない異物感を一生忘れることはないだろう。

 

 伏黒の顔は『あの男』と瓜二つだった。体格の方は比べるべくもないが、初めて会った時には一瞬思わず身構えてしまった。事前に五条が彼の息子を育てているとは聞いたが、見れば見るほど似ている。

 

「一年の伏黒です」

 

「三年の垣根だ。ヨロシク」

 

「え、それだけ?」

 

「こんなもんだろ。お前の自己紹介に比べたら100万倍マシだ」

 

「昔の話でしょ」

 

「俺にとってはまだ2年前だ」

 

 当時の五条はわがままの権化だった。それはもう悪態の連続で、誰に対しても舐め腐った態度を取っていた。当然最初の自己紹介もまともなものであるはずはなく、その場にいた者を雑魚呼ばわりして、挙句の果てには自分一人で十分だという始末。

 

 五条にとってははるか昔の青春の記憶でも、垣根にしてみると、少し丸くなったクソガキというのが五条であり、未だに当時の印象が抜けていなかった。

 

「最近まで死んだって思われていた特級術師ですよね。五条先生の同級生の」

 

「そだよ。不良みたいな格好してるけど、一応そこそこ真面目なやつだよ」

 

「誰が不良だコラ」

 

「前から言ってたけど、その服センスないよ。しかも術式使うとメルへンな翼まで生えてくるし。ミスマッチ感半端ないって」

 

「確かに」

 

「てめえも何同意してんだ」

 

「まぁこんなナリだけど、悪いやつじゃない。結構強いし、戦い方を見ると恵にとってもいい勉強になると思うよ」

 

「つっても『十種影法術』は特殊だから、アドバイスしてやれることは少ねえぞ。呪力操作なら五条に習え」

 

「別に特別なことをしてほしいわけじゃないよ。術式の質は全然違うけど、拡張性が高いっていう意味では同じだから、何か参考になるところがあると思うってだけの話」

 

「はぁ」

 

「あと、垣根の近くでなら魔虚羅を出しても大丈夫」

 

「!?」

 

 五条のとんでもない発言に伏黒は驚いた。

 

 魔虚羅を出すことは伏黒の最終手段であり、自爆だ。ほぼ確実に敵を葬ることができる代わり、術者の伏黒も魔虚羅に殺される。

 

 ただし、五条のような魔虚羅を倒すことができる者が近くにいれば、代わりに倒してもらうことによって事なきを得られる。垣根もその一人だと五条は言っているのだ。

 

「ふざけんな。誰が魔虚羅の相手なんてするかよ。面倒くせえっつーの。お前も絶対やめろよ。死ぬなら一人で死ね」

 

「……こう言ってますけど」

 

「なら垣根も調伏の儀に巻き込んだらいい」

 

 そもそも近くに魔虚羅よりも強い味方がいるなら、わざわざ魔虚羅を出す必要さえない場合が多い。だが、垣根のように協力的でないのならば、無理やり巻き込むという方法もある。

 

「そんなことしたら魔虚羅の前にお前を殺すぞ」

 

「後輩には優しくしなよ。適応される前なら魔虚羅くらい倒せるでしょ」

 

「実際に戦ったことはねえよ」

 

「まぁ、冗談はさておいて。いい感じに自己紹介もできたことだし、そろそろ行こうか」

 

「どこに?」

 

「『宿儺の器』のところに」

 

 

 

 




エタります
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