【完結】(白面)ノ 剣【神様転生】   作:器物転生

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【あらすじ】
蒼月潮は自首をすすめたものの、
姉ちゃんの死刑判決に納得できず、
光覇明宗と敵対しました。


斗和子さんによる獣の槍破壊実験

 シャガクシャの目は夜でも見通せるらしい。夜明けを待たず、目的地へ向かった。姉ちゃんの実家は山奥に建っている。とても大きな洋館だ。東館と西館に分かれていた。だけど真夜中なので明かりは見当たらない。外と同じで真っ暗だ。月の明かりを頼りに、オレは地面へ下りる。

 

「シャガクシャ、運んでくれてありがとよ」

「勘違いすんなよ、小僧。そのガキが死んだら、わしへの貢ぎ物が減るからな」

 

 姉ちゃんのみそ汁の事だ。シャガクシャは裏切った僧侶に脅されて、姉ちゃんを背中に乗せた。だけど途中で落とそうと思えば落とせただろう。シャガクシャが食おうと思えば食われていた……そのときギィーと扉が開いた。オレの目の前で洋館の扉が、内側から開く。そこから姿を見せたのは、黒衣の女性だった。

 

「夜遅くにすいません。ここが麻子の家と聞いて……」

「ええ、そうよ。私の名前は斗和子。総本山では大変だったようね。ここは安全だから安心してもいいのよ」

 

「オレの名前は蒼月うしおです」

「ふふふ。まさか、こんなに早く獣の槍と会えるなんて思わなかったわ……」

 

 真夜中だったけれど姉ちゃんの「お母様」は出迎えてくれた。どうやら総本山で起きた事は、すでに知っているらしい。お母様の案内で、オレは姉ちゃんの部屋へ案内される。そこは机も本棚もない殺風景な部屋だった。ベッドしか置かれていない。ここは本当に姉ちゃんの部屋なのか?

 

「大変だったわね。だけど大丈夫。この様子なら、日が昇る頃には回復するわ」

「そっか。よかった……」

 

 お母様は姉ちゃんの剣を手に取り、姉ちゃんの肌に指を沿わせる。姉ちゃんの服は僧侶たちに剥がされたので無くなっていた。すると、お母様の指先から黒いものが広がって、黒い着物へ変化する。姉ちゃんは眠ったまま、いつもの黒い着物の姿になっていた。これは石食いの体液で、姉ちゃんの服が溶かされた時のようだ。

 

「あら、見た事があるようね。この術をアサコに教えたのは私なの……何回この子の肌を見たのかしら?」

「い、いや、オレは、その……」

 

「ふふふ、気にする必要はないのよ。化物と戦っていれば服が破れる事もあるわ……今回の相手はニンゲンだったようだけれど」

 

 あの術はお母様から伝授されたものだったのか。姉ちゃんはお母様から、みそ汁も伝授されている。少し表情に陰があるけれど斗和子さんは、優しい母親に思えた。オレにも母ちゃんが居たらなぁ……だけど母ちゃんは、オレが生まれて直ぐに死んでしまった。墓参りにも行った事がある。

 

「それにしても、まさか蒼月紫暮と須磨子の子供が、獣の槍に選ばれるとはね」

「オレの母ちゃんを知ってるんですか?」

 

「ええ、とある大妖を封じる3代目のお役目様――日崎須磨子」

「え? お役目様……?」

 

「その様子だと、父親から何も聞いていないようね。聞きたい?」

「……いや、いいよ。死んだ母ちゃんの事なんてオレは知らないし、どうでもいい」

 

「死んだ? 須磨子が?」

「オレが生まれて直ぐに死んだってオヤジが言ってた」

 

「――ふふふ、そんな訳ないじゃない」

 

 オレの心にピシリと、ヒビが入る。なにを言っているんだ、この人は……まるで母ちゃんが生きているかのようにお母様は言う。そんな訳がない。そうだとしたら――どうしてオレの側にいない? 生きているのだとすれば、どうして死んだ事になってるんだ? そんな事はありえない。

 

「ウソだろ」

「ウソじゃないわ」

 

「オヤジは死んだって言ってた」

「貴方の母親は生きている」

 

「母ちゃんの墓だってあるんだ。そんなウソつくなよ!」

「生きているわ。今も3代目のお役目様として、海で働いている」

 

「そんなの信じられねぇよ……!」

 

 そうだとしたら――オレは母ちゃんに捨てられたって事になるじゃないか。死んだのだから会えないのは仕方ない。居ないものを気にしても仕方がない。母ちゃんが居なくて辛い時もあったけど、そう思って生きてきた。なのに、姉ちゃんのお母様は否定する。オレの母ちゃんの生存を肯定して、オレの心を否定した。

 

「ごめんなさい。つらい思いをさせてしまったわね」

 

 そう言ってお母様は、オレを抱きしめた。温かい感触を感じて、息が詰まる。その温もりはオレの心に染み込んだ。その態度にオレは戸惑う。体に電気が流れたような、心地いい感触を感じた。お母様と触れた部分がムズムズする。心臓がドキドキと鳴って、体が熱かった。

 

——天にまします 神さまよ

——この子にひとつ みんなにひとつ

——いつかは恵みをくださいますよう

 

 優しい子守唄が聞こえる。その優しさにオレは溺れていった。逆らいがたい、深い眠りへ落ちていく。今だけは、すべてを忘れてもいいのだろう。許されている気がした。シャガクシャが如何しているのか、オヤジが如何しているのかなんて、不安が消えていく。オレは力を抜いて、姉ちゃんのお母様に全身を預けていた――あぁ、あったかいなぁ。かあちゃんみたいだ。

 

 

 朝になって姉ちゃんは目覚める。喜んで走り寄ったオレは、その勢いのまま姉ちゃんに抱きついた。斬られるかと思ったけれど、姉ちゃんは石のように固まっている。よく見ると、姉ちゃんの剣がなかった。オレは剣に触ってないし、お母様が持って行ったのだろうか?

 

「目覚めたようね。無事で良かったわ、麻子」

「うっ、うん……ただいま」

 

 姉ちゃんの部屋を訪れたお母様は、姉ちゃんに剣を返す。すると姉ちゃんは剣を、大切そうに抱きしめた。だけど、その剣があるとオレは姉ちゃんに触れない。あの剣は姉ちゃんにとって心の支えだから、無理に引き離すことはできなかった。また触れ合えなくなった事を残念に思う。

 その後、オレと姉ちゃんは朝食の席に招かれた。テーブルに着いているのは、オレと姉ちゃんとお母様の3人だ。だけど食器は4人分用意されている。どうやらシャガクシャも数に入れているらしい。席に着いたオレは「いただきます」と言って、朝食をいただいた。

 

「あっ、あれ? パンじゃないんだ。珍しいね?」

「今日はお客様が居るから和食にしたの。うしお君の家の宗派は光覇明宗だから、洋食を食べる習慣はないのでしょう?」

 

 テーブルに並んでいるのは白い御飯とみそ汁だ。姉ちゃんによると、いつもはパンらしい。オレだってパンは食べるけど……好んで食べるのはクリームパンと牛乳の組み合わせだ。だけど、本物の「母ちゃんのみそ汁」には代えられない。感動のあまり出そうになる涙をこらえつつ「うめぇうめぇ」と言いながら、おいしくいただいた。

 

「キッ、キリオは?」

「あの子なら、今は妖怪退治のために出ているわ」

 

「そっ、そうなんだ……」

「姉ちゃん、キリオって?」

 

「わっ、わたしの弟だよ? 血は繋がってないけど……」

「4人しかいない獣の槍の伝承候補者なの。私の自慢の息子だわ」

 

「あれ? 姉ちゃんは斗和子さんの子供じゃ……?」

「血が繋がっていないのはキリオなの。でも、そんな事は忘れるくらい、私の息子だと思っているわ」

 

 つまりキリオは、オヤジの血もお母様の血も引いていないのか。オレとキリオに血縁関係はない。まあ、そんな事とは関係なく、キリオと仲良くしたいけどさ。ところで獣の槍の伝承候補者って何だ? 食事を終えたオレはお母様に聞いてみる。オレ達を逃がしてくれた僧侶は「獣の槍の伝承者」とオレの事を呼んでいた。

 

「光覇明宗に使い手として選別された才能ある者が「獣の槍の伝承候補者」よ。四師僧と呼ばれる上位の僧が1人ずつ選ぶから、その数は最大で4人しかいないの」

「生徒会みたいなもんか。キリオって凄いんだな」

 

「生徒会というよりは、日本代表の選手と思った方がいいわね」

「そんな凄い奴等が使い手として選ばれる獣の槍を、オレが持ってるのか……」

 

「いずれ現れる白面の者を打ち倒すために、光覇明宗は伝承者を育てているの」

「白面? そういえばあいつら、麻子の事を『白面の剣』とか言ってたな」

 

「白面の者――それは800年前、200年に渡って人や妖と戦争を繰り広げた獣の名よ。『白面の剣』は白面の者に寝返った者を指す言葉なの」

「じゃあ、麻子が……その……『白面の剣』?」

 

「いいえ、勘違いされた原因は麻子の剣ね。伝承によると『白面の剣』は『人間を殺すための剣』を武器として戦っていたの。だから、その剣も『白面の剣』と呼ばれ、その剣を持つ者も『白面の剣』とみなされるわ」

「ややこしいなぁ……」

 

 かつて『白面の剣』と呼ばれる裏切り者がいて、『白面の剣』と呼ばれる剣があって、今も『白面の者』に加担する者は『白面の剣』と呼ばれる。剣の方は『白面の剣』で、裏切り者の方を『白面の使い』と呼んだ方が分かりやすいんじゃないか? どうして裏切り者を、わざわざ『白面の剣』なんて紛らわしい言い方をするんだ?

 

「もしかして『白面の剣』って、オレ達を助けてくれた人なのか……?」

「助けてくれた? その人は、どんな人だったのかしら?」

 

「普通の僧侶に見えたけど……『魂を食われた人間の末路』とか何とか言って、西洋甲冑になっちまった。オレ達を逃がすために残ったんだ……」

「剣に魂を食わせたのでしょうね。剣に魂を食わせた人間は化物となって、人間に対する憎しみに支配されるわ。完全に化物となったのならば、元に戻す方法は存在しない」

 

「……あれ? ちょっと待ってくれ。そんな危険な剣を、姉ちゃんは使ってるのか?」

「うしお君の槍も似たようなものよ。獣の槍に魂を食われれば化物となって、化物に対する憎しみに支配されるわ。剣と同じように完全に化物となったのならば、元に戻す方法は存在しない」

 

「斗和子さんは……いや、姉ちゃんも魂を食われるって知ってるのか?」

「うっ、うん。人間を殺すための剣なんて言われてるけど、宿ってる神気のおかげで化物にも有効だから……べっ、べんりでしょ?」

 

 いや、便利って……姉ちゃんは魂を食われても良いのだろうか? と思ったけれど、獣の槍を使っているオレも姉ちゃんの事は言えない。魂を食われると分かっても、オレは獣の槍を使い続けるだろう。「姉ちゃんに戦って欲しくない」なんてセリフは、姉ちゃんを守れるほど強くなってから言うべきだ。

 

「ところで、うしお君。私は妖怪退治に有効な法具を開発しているの。そのために少し、獣の槍で実験させてもらえないかしら?」

 

 槍を手放すとなると、シャガクシャの様子が心配だ。そう思ってシャガクシャを見ると、シャガクシャのために特別に用意されたこんがり肉を頬張っていた……あの様子だと大丈夫か。それに獣の槍を預けている間は、姉ちゃんが守ってくれるという。そこまでされたのならば、お邪魔している身分で断る理由はなかった。

 

 

 準備が整ったらしく、オレは東館へ移動する。そこには大きな井戸があって、よく分からない液体が煮えたぎっていた。オレはお母様に獣の槍を渡す。槍を手にしたお母様は嬉しそうだ。るんっるんっとしながら獣の槍に、なにやら赤い布を巻いていた。そして吊り下げ機にセットすると、井戸へ獣の槍を落とす――そして1分ほど経って上げると、獣の槍は跡形もなくなっていた。

 

「え?」

 

 よく見ると、吊り下げ機の先端が溶けている。まさか獣の槍は溶けてしまったのか? そんな訳はないだろうと思って、オレはお母様を見る。すると慌てる事なく、ジィーと炉を見つめていた。この様子なら大丈夫だろう。まだ慌てるような時間じゃない。そう思っていると、横から姉ちゃんの呟きが聞こえた。

 

「おっ、お母様って、ちょっとマッドだから……」

「姉ちゃん、マッドって?」

 

「きっ、気が狂ってるっていうか……けっ、研究のためなら見境がないっていうか……」

「姉ちゃん、そういう事は先に言おうよ!?」

 

「麻子ったら……きっと大丈夫よ、うしお君」

「なんで『きっと』なんて付けた!?」

 

「落ち着いてちょうだい。獣の槍は使い手が呼べば応えてくれるわ。炉の中で溶けてしまった獣の槍に、呼びかけてみましょう」

 

 聞き間違いじゃない。今、『溶けてしまった』とお母様は言った。溶けると知りつつ放り込んだのか? だけどオレが呼べば応えてくれるという。獣の槍滅失の危機に、オレは動揺していた。後ろでシャガクシャが「ぎゃはは」と大笑いしている……お前は黙ってろ! ちょっとお母様に疑いの目を向けつつ、オレは獣の槍を呼んでみた。

 

「獣の槍よ、来い!」

 

 シ~ン

 

 

――来なかった

 

 

「はははははは! アホ面さらして、『獣の槍よ、来い!』だってよ! ひー! ひー!」

「シャガクシャ……てめー、後で憶えてろよ……!」

「だっ、大丈夫だよ! きっ、きっと獣の槍も応えてくれるよ!」

「あらあら」

 

 のんきなお母様だ……とにかくオレは獣の槍を呼び続ける。姉ちゃんの声援に後押しされて、恥ずかしさに耐えて呼び続けた。だけど、なにも変化が起きない。これは不味いんじゃないか? だけど諦めたら、そこで獣の槍は終了だ。だから諦めずに、オレは呼び続けた。

 獣の槍がなかったら、オレには人並みの力しかない。姉ちゃんを守るなんて事はできないだろう。少なくとも姉ちゃんよりも強くならなければならない。それでも強さは足りない。みんなを守れるように、誰も死なないように、オレは強くなりたいんだ。人を捨ててでもオレ達を助けてくれた、あの人のように!

 

 

 ドオォン

 

 

 井戸が内側から破壊される。そうして姿を見せたのは獣の槍だった。お母様の言う通り、オレの呼びかけに応えてくれた。本当に無事だったのか……ちょっとお母様の事を疑ってしまった。そこで違和感を覚える。獣の槍はオレの手に戻ってくるのか? この方向は、まるでお母様を狙っているかのような……!

 

 るんっ

 

 お母様へ向かって飛んでいた槍を、姉ちゃんの剣が弾く。獣の槍は勢いを失って、地面にガランと転がった。危ない所だった。獣の槍には意思のような物がある。槍を使うと頭に響く声があった。初めて使った時も、二千年も昔の中国で作られた事や、人の魂を力に変えて妖怪を討つ事を教えてくれた。だから井戸に放り込んだお母様を、槍の意思は敵と見なしたのだろう。その気持ちは分かる。

 

「麻子、よくやったわね」

「えっ、えへへ……」

 

「……まさか赤い布で封じた上に、あの井戸に沈めても復活するなんて」

 

 そんなお母様の呟きを聞いて、オレは思った。この人に獣の槍を預けるのは止めよう。槍を壊すような実験を、平気でやるに違いない。いい母親なのだろうけれど、実験になると見境がないらしい。本当に獣の槍を滅失していたら、どうするつもりだったんだ? その後も「電気を流してみたい」とのたまうお母様を、オレは振り切った。その電気というのは高電流の事に違いない。獣の槍が蒸発してしまう。

 

 

 その日の昼、姉ちゃんに誘われた。話したい事があるらしいので、姉ちゃんの部屋へ向かう。ベッドしかない、殺風景な部屋だ。不思議に思って聞いてみると、学校へ行った事がないらしい。中学校は卒業していると思っていたけれど違ったようだ。それは不味いんじゃないか? もしかして姉ちゃんの言動が幼い理由って……?

 

「うっ、うん。そうじゃなくて、あっ、あのね。私はね」

「姉ちゃん、落ち着いて」

 

「うっ、うん。私は正確に言うと、人間じゃないの」

「姉ちゃんは人間に見えるけど」

 

「マッ、マテリアっていうのに、ホムンクルスを付け足した生物なの」

「それって、人間と何か違うのか……?」

 

「えっ、えっとね。私は有名な法力僧だった、うしおのお父様の……」

「オレのボケオヤジの?」

 

「……せっ、せーえきから作られたの!」

「ひらがなにしても、そんなこと言っちゃダメだからな!?」

 

「マッ、マテリアを作るのに上手く行かなくて、成功していたホムンクルスを混ぜてみたんだって」

「よく分からないけど、それって斗和子さんがやったのか……?」

 

「ちっ、ちがうよ。引狭(いなさ)って人。もう死んじゃったけど……」

「そうなのか……」

 

 顔に火傷の痕がある僧侶の言った「人形」というのは、この事なのだろう。

 

「だっ、だから、あのっ。ごめんなさい……本当は、うしおのお父様の子供じゃないの」

「え? いや、オヤジの……遺伝子から生まれたんなら、そんなに変わらないんじゃないか?」

 

「そっ、そうかな……?」

「オレは、そうだと思ってる。オレの姉ちゃんだって思ってる」

 

「うっ、うしお……」

 

 姉ちゃんがオレに飛びついた。いつものように斬られるかと思ったオレだったけれど、剣先は飛んでこない。姉ちゃんは剣を手放し、オレの体に抱きついていた。剣は床に落ちている。プルプルと震える姉ちゃんは――カタカタと歯を震わせていた。ああ、そうか。やっぱり姉ちゃんは恐かったんだ。今も人を恐がっている。

 

「あっ、あのね。そっ、総本山でうしおと繋いだ手を引き離されて、法力僧たちに体を潰されそうになった時、わたしは殺されてもいいかなって思ってたの」

「たしかに姉ちゃんは羽生さんを殺した。だけどオレは姉ちゃんに、死刑になって欲しくなかったんだ」

 

「わっ、わたしは生きてもいいのかな?」

「オレは姉ちゃんに……麻子に、生きて欲しい」

 

「うっ、うん……」

「オレが姉ちゃんを守る剣になるよ。姉ちゃんが誰も傷つけなくてもいいように」

 

 オレは姉ちゃんを抱きしめる。とても歳上とは信じられない、小さくて臆病な姉ちゃんだ。それが、とても愛おしかった。マテリアだとか、ホムンクルスだとか、そんな事は如何でもいい。オレの目の前にいる姉ちゃんが全てだ。オレが選んだ事だから、最後まで姉ちゃんと一緒に行こう。

 

 

 その日の夜、オレと姉ちゃんとお母様は夕食の席に着く。オレと姉ちゃんは、このまま洋館で暮らすのだろうか。少なくともお母様は、光覇明宗へ報告する気はないらしい。この洋館で隠れ住んでいれば見つからないだろう。だけどお母様が、姉ちゃんを一人で修行の旅に出すような性格だった事を忘れていた。

 

「北海道の旭川にあるカムイコタンへ行くといいわ。そこに貴方の母親について教えてくれる者がいる」

「母ちゃんの……」

 

 オレの母ちゃんは海で働いていると、お母様は言っていた。だけど北海道の旭川と言えば、周りに海なんてないだろう。どういう事なんだ? お母様の言っている事は本当なのか。これまでのお母様を考えるに、ウソではないだろうとオレは思う。オレは母ちゃんの事を知りたい。だけど、おそらくオレと姉ちゃんは、光覇明宗に行方を探されている……それでも行けと、お母様は言っていた。

 

「後悔したくないのならば隠れ潜むよりも、思い切って前へ進むといいわ」

 

 そうしてオレと姉ちゃんは旅立つ事になった。あとシャガクシャも。翌日の朝、オレと姉ちゃんは洋館を出発する。短かったけれど、心安らぐ休息だった。これから先は困難な道が続くだろう。だけど恐れず、進まなければならない。行ける所まで行ってみよう。いつか終わりの日が来るとしても、姉ちゃんと繋いだ手は放さない。




【おまけ】
(問5)白面の者について教えてくれた人は誰でしょう?

選択A、東の長
「その妖怪――その姿は金色に輝き……白き面の大化生!!」
「九つの尾を持つ獣の姿、白面の者……」

選択B、お母様
「白面の者――それは800年前、200年に渡って人や妖と戦争を繰り広げた獣の名よ」

選択C、ルシフェル
「彼には72通りの名前があるから、なんて呼べばいいのか……」
「そう、あいつは最初から言う事を聞かなかった」


(答5)A、東の長
「その妖怪――その姿は金色に輝き……白き面の大化生!!」
「九つの尾を持つ獣の姿、白面の者……」
「今思い出しても震えがくる……こない妖はないだろ」
「それほど、ヤツは強大だったのだ……」
「すさまじいものだった。日本中の妖怪たちを巻き込んだ、その戦いはその後――」
「200年間続いた……」
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