【完結】(白面)ノ 剣【神様転生】   作:器物転生

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【あらすじ】
蒼月潮と姉ちゃんとシャガクシャは、
「白面の者」の婢妖を追い払うために、
杜綱悟の体内へ潜ります。


蒼月潮は魂を食われて獣と化した

 わしゃー、長飛丸だ。今はシャガクシャなんて妙な名前を付けられている。まあ、それも小僧を食らうまでの辛抱よ。この獣の槍を持っている小僧を、隙を見て食らっちゃる……なのによう、なんでこいつは死にたがるかね? 今も見ず知らずのニンゲンのために、おのれの寿命を削ろうとしてやがる。意味分かんねーぜ。そんな事するくらいなら、とっととわしに食われろや!

 

「どっ、どこから入るのかな?」

「頭にいる婢妖を倒せば、他の奴等は逃げて行くんだろ?」

 

「うっ、うん……この人の体は霊的に鍛えられてて、居心地が悪いんだって……」

「そりゃー、目から入った方が手っ取り早いに決まってんだろ」

 

 わしとうしおとガキは、杜綱ってニンゲンの目玉から侵入する。目玉の裏側を通って、脳ミソへ向かった。そこで待っていたのは人の形をした婢妖が1体だ。あいつが婢妖の大将か。1体で迎え撃つたぁ、よっぽど自信があるらしい。さっさと親玉を倒して、こんな狭苦しい所から出ちまおうぜ!

 

『よく来たな……私は、婢妖を率いて脳に棲む――血袴(ちばかま)』

 

 血袴は片手に弓を構える。そこから射出された婢妖が、わしの体に食い付いた。だが、うしおは婢妖を避け、ガキは斬り落としている……ちっ、避け損なったのはわしだけかよ。うしおとガキは血袴へ迫る。だが、周囲の血管が触手のように伸びて、わしらの体に絡み付いた。こんなの雷でェ……!

 

『ははははは、抵抗もせねばな? やるがいい。脳で多数の血管破裂だ!』

 

「シャガクシャ、待てええ!」

「ああ!?」

 

 バチィッと雷が走る。それはわしらを捕らえていた脳の血管を破壊した。化物と違ってニンゲンは、この程度で壊れちまうのか? わしらは血管から逃れ、脳ミソから目玉まで後退する。うしおが血管を傷付けるなって言うから、そのまま外へ逃れた。ニンゲンってめんどくせーな。

 

 

「――そんな奴が槍に魂をくれても、杜綱を助けようとしてんだ! 助けられねぇわけがねえんだよ!」

 

「に、にいちゃん………ちょっとただいま」

「蒼月ィ!? もう戻ってきたのか!?」

 

 なにやらナガレが、うしおについて熱く語っている場面に戻ってきたらしいな。どいつもこいつも気まずそうな顔してやがる。そりゃーこの世の別れみてーなツラして突っ込んだやつが、一時も経たずに戻ってきたら呆れて物も言えねーだろ。わしの知ったこっちゃねーけどよ。

 

「あいつら杜綱の血管を使ってくるから、下手に攻撃できないんだ」

「真っ先に頭の婢妖を潰せれば話は早かったんだが、そう楽には行かねぇか」

 

「まずは血管に取り憑いてる婢妖を倒さないと……」

「おそらく心臓か脊髄だな。そこに取り憑いている婢妖を排除すれば、制御を奪えると思うが……」

 

「ありがとう、流兄ちゃん。また行ってくるよ」

「ああ、また行ってこい」

 

 締まらねぇな。今度は目玉から入るんじゃなくて、指先からだ。腕を通り、心臓へ向かう。体の組織から飛び出る婢妖を倒しながら進んだ。そーいやずーっと昔、人に取り憑く妖怪がいたなぁ。あいつらが居りゃあ楽なんだが、今どこにいるのかも知れねぇ……案内役が居れば体に入り直すなんて面倒は省けたかもな。そろそろ肺を抜けて心臓だ。

 

『くっくっく、これは驚いた。よりにもよって君達の方から、こっちへ御足労くださるとはな……白面の御方は、この人間を操って君達を葬れとおっしゃったが、これで直接殺せる……やれ、うれしや』

 

 心臓に棲まう婢妖が言った。脳ミソにいた婢妖みてーに、他の婢妖と形が違うな。そいつは血管を伸ばして、わしらを捕まえようとする……だがなぁ、その手は二度目なのよ。うしおの投げた槍が、血管を避けるように曲がって、婢妖を貫いた。全開状態の槍に突かれた婢妖は、その場で消し飛ぶ。

 だが、そこでうしおに異変が起こった。うしおの腕から無数の毛が飛び出る。獣の槍に魂を食われたうしおが、獣と化して行く……わしは化物になる前に、獣になる前に、うしおを食らうと言った――それが今か? ガキを見ると、うしおに向かって神剣を構えている。

 

 

「……行くぜ」

 

 なんだ「まだ」か……じゃあ、しゃーねーな。わしは安心して、うしおの後を追う。ガキも安心して、剣を納めた……なにも、おかしな事はねえ。次はナガレの言ってた脊髄って所だ。そこには心臓みてーに変わった婢妖はいねぇ。だが、大量の婢妖が待ち伏せしていた。うじゃうじゃいやがる!

 

「獣の槍よォ、オレの体が変わったっていい! 力を貸せ!!」

 

 まーた、あのアホは槍に魂を食わせてやがる。だが、婢妖の数が多すぎた。雷で纏めて吹っ飛ばせりゃいいんだが、このニンゲンの肉体を傷付けるとうしおがやかましい。すると、外から力が送り込まれた。なんだ? 外のぼーずどもが、なんかやったのか? その力で婢妖どもの動きが鈍る。うしおが婢妖どもを倒すと、残った奴等は体内から逃げて行った。

 さーてと、ここを登れば脳ミソだ。さっきと変わらず、血袴って奴が待ち構えていた。さっきみてぇに血管を使ってはこねーが、婢妖弓って厄介な代物を持っていやがる。おまけに血袴は、かなりの腕前だ。うしおでもキツイな。まともに対抗できるのはガキだけか。

 

『剣よ。なぜに、その剣を振るって、白面の御方に敵す?』

「うっ、うしおが、この人を助けたいって言うから……」

 

『ふむ、ならば槍の伝承者に聞こう。なぜに、その獣の槍を振るって、白面の御方に敵す?』

「バカヤロウー! おまえらが勝手に襲ってくるだけだろが、白面の者に直接恨みなんかねーや!」

 

『そうか、了解した。ならばここでは殺すまい。おまえはその槍を置いて去るがよい』

「ふざけんなっ、人を殺すような奴等に獣の槍を渡すかよっ!」

 

『人を殺すような奴等か……ははは、ならば仕方あるまい。白面の御方は人も生物も妖も、すべてを滅ぼせとおおせだ。どうせ白面の御方に、おまえが敵すべくもない。この場で葬ってくれよう!』

 

 なかなか決着がつかねぇ。血袴1体に、うしおとガキの2人がかりだ。それでも血袴を仕留め切れなかった。そうしていると血袴が、うしおに何かを見せる。幻術か? 何かを見たらしいうしおは、びびって使い物にならなくなった……なにやってやがんだ、あのアホは!

 そんなうしおを庇って、代わりにガキが切り伏せられる。胸を斜めに斬られて、血が溢れ出た。ガキの手から剣が零れ落ちる。そんなガキと血袴の間に、わしは飛び込んだ。すると血袴の放った無数の矢が、わしの背中に突き刺さる……ぐおおおお、こいつはァいかん!

 

「うしお……ずっと……」

「獣の槍ィィ! 残りの魂くれてやらあ!!」

 

 キィィィィィィ!!

 

 獣の槍が唸る。血袴に向かって、うしおは突っ込んでいった……あのパーが! なんの考えもなしに突っ込んで勝てる相手かよ! 案の定、うしおは血袴に押さえ込まれる。わしは全身に突き刺さった婢妖に食い付かれて動けん。ガキは胸から血を流し、ヒューヒューと苦しそうに息をしていた。

 

『邪魔が入ったが今こそ! 去ねい! 伝承者ああ!!』

 

 グサリと――

 

 

 ――血袴の背中に剣が突き刺さった

 

『がああっ、剣ィィィ!! きっさまあああ!』

 

「これで終わりだ、血袴ァ!!」

『かっ、かあああーっ!』

 

 今のはガキの仕業か? その隙にうしおは槍で、血袴の中心を突き刺した。血袴は体の中心を抉り取られ、上半身と下半身の2つに分かれる。傷口からボロボロと崩れる血袴は、間もなく消滅した。杜綱に取り憑いていた婢妖の最後だ。あー、終わった終わった。わしはボロボロのうしおとガキを引きずって、目から外へ出る。

 

「うしお! 麻子ちゃんもか!」

「オレは平気だよ。それよりも姉ちゃんを……」

 

 わしはニンゲンの治療なんてできねーからな。うしおとガキはナガレに任せる。ガキは胸を深く切られちゃいたが、あいつは純粋なニンゲンじゃねーからな。あの程度の傷なら、布かなんかで縛ってくっつけとけば、そのうち治るはずだ。うしおも槍を使っている間の傷なら、短い時間で治る。あーあ結局、うしおを食い損ねちまったなー。

 

 

 キィィィィィィ!!

 

 

「な、何だ!?」

「婢妖かっ!?」

「うしおくん、気分悪いの!?」

「どうした、うしおっ!」

 

 近くに化物もいねぇのに槍が鳴る。すると、うしおを中心に風が巻き起こった。うしおやガキの治療を行っていたニンゲンたちが弾き飛ばされる……こいつァ、妖気の風だ。うしおから強烈な妖気が噴き出ている。槍を使っている時だって、こんなに強い妖気を感じた事はなかった。

 

「そいつに近寄るなァ! 今のそいつは、バケモンよ!」

 

 獣と化したうしおが、わしに飛びかかる。突き出される槍を、わしは避けた……ちぃ、わしが分からんのか! ぶん殴って、正気に戻しちゃる! うしおの狙いはわしだけらしく、他の者には見向きもしねぇ。その間に周りの人間達は、ちょこちょこと動き回っていた。

 

「シャガクシャ、そこから離れろっ! こいつらの結界に閉じ込められるぞ!」

「わかったぜ!」

 

 とは言ったものの、うしおを引き離せねぇ。わしが空に飛べば、うしおは追って来れねぇだろう。だが、うしおがボケーと突っ立ってくれるか? そうなると別の奴が標的になるはずだ……ここにはわしの他にもう1匹、混じりもんがいる。ああ、くそっ、めんどうくせぇ。

 

「このままやれえっ!!」

 

「くうう、しゃーねえ。杜綱、やるぜ!」

「ああ。みんな、朏の陣をとる!」

 

「――朏の陣!」

 

 わしらを取り囲んだニンゲンどもから法力が放たれる。だが、うしおが槍を一閃すると、その力は砕け散った……ダメじゃねーか! そのままうしおはわしを切り付け、わしに背を向ける。逃げる気か? その先には体を起こしたガキがいた。麻子と名乗る混じりもんが――、

 

「うしお……」

 

 胸の傷が開いて、ボタボタと血が零れ落ちる。そんな体でガキは倒れるように、前へ一歩進んだ。両手を開いて伸ばし、うしおへ向ける……おい、ちょっと待て。おめーの剣は何所にやった? 見ると剣は、ガキの足下に落ちている。バッカ……死ぬ気か!? うしおといいガキといい、どいつもこいつも、なんでてめーの命を投げ捨てやがる!!

 

「うしお……」

 

 

――獣の槍が、その体を貫いた。

 

 

 地面から飛び上がった白い剣が、槍を弾く。だが、ガキの脇腹に槍は突き刺さった。そこがボンッと爆発して、ガキの腹が弾け飛ぶ。辺りに腹の中身がブチ撒けられた……あのガキは純粋なニンゲンじゃねえ。その部分に槍が反応したんだ。ガキと擦れ違ったうしおは、ガキの体を突き飛ばして、そのまま走り去る。その背中にわしは、声を投げ付けた。

 

「なにやってんだよ、うしおー!!」

 

 だが、うしおは振り向きもしやがらねぇ。あのアホが……ぶったおれたガキの側に、ニンゲンどもが集まる。ガキが妖気で編んだ服も吹っ飛んでいたから、ガキの傷口はよく見えた。ニンゲンだったら即死だろーな。だが、完全な化物だったら、槍が反応して半身が吹き飛んでいた。混じりもんのガキは運良く、まだ息がある。

 

「おい、ガキ……死ぬのか?」

 

 答えはなかった。

 

「死ぬな……」

 

 どうして、そんな事を言ったのか。わしにも分からん。そもそもこのガキは、わしにとって何だったのか。うしおと同じで厄介な剣を持つガキだ。石食いの時に礼として「かじってもいい」と言ってきた。だが混じりもんの肉なんぞ食っても上手くねぇ。そう言うとニンゲンの食い物を作ってきた。あんなんで腹が膨れるかよ……だがまァ、足しにはなったさ。わしにとってこいつは――、

 

 

――死ぬな……死ぬじゃない……こんな傷くらい、すぐ……治る

 

 

「うれ……しい……。初めて……やさしいことば……かけて……くれた」

「なんだよ……元気じゃねーか」

 

「ご……めん……なさい。すぐ……元の姿に……もどるから」

「いーから……とっとと戻りやがれ」

 

「きらいに……ならないで……」

 

 

 ガキの化けの皮が剥がれる。足の先からニンゲンの皮が剥がれ始めた。その下から現れたのは肉の塊だ。中に骨の入っていない、単なる肉の塊さ。足の皮が剥がれ、太ももの皮が剥がれ、手の皮が剥がれ、腕の皮が剥がれ、胸の皮が剥がれ、頭の皮が剥がれる。そこには目も、歯も、唇も、髪の毛もない、肉だけで出来たバケモノの姿があった。目のあった場所は空洞になっている。単なる肉塊。こいつがガキの本性だ。

 

「ひっ!?」

「こいつはァ……」

「人間じゃない……?」

 

「おい! おまえは、こいつが人間じゃないって知ってたのか?」

「あぁ? 化物同士は臭いで分かるから当たり前だろーが。なにを、そんなに驚いていやがる?」

 

 ガキの腹に開いた傷は、急速に治りつつある。危うくニンゲンのまま死ぬ所だったぜ……ったく、わざわざ弱っちいニンゲンの姿に変化するなんて、なに考えてんのか分かんねーや。最初から、その姿でいりゃーよかったんだよ。そうしてガキの傷が治るまで待っていると、空から爆音が聞こえてくる。ありゃー、へりこぷたーってやつか。

 

「拙僧は光覇明宗の僧、蒼月紫暮! 麻子どのはおられるか!」

 

 空飛ぶ機械から飛び降りて来たのは、うしおのオヤジだった。うしおのオヤジは地面に横たわる肉塊を見ると歩み寄る。このオヤジは初対面の夜に、ガキに本性を明かされていたからな。知らねぇのは、うしおだけだ。本性を見られると「恥ずかしい」ってのは、よく分かんねーよな。

 

「麻子どの。うしおを救うために、麻子どのの力を貸してほしい」

『ばジぎゃぶグが』

 

 肉の塊が出した声は、ニンゲンのものじゃねぇ。ガキは本性のままじゃ、ニンゲンの言葉を喋るのは難しいらしいな。やっぱ、まだ生まれたばかりのガキだ。腹の傷が完全には治ってねぇが、ガキは人に変化した。黒い髪が生え、空洞だった穴が目で埋まり、人のような唇が形作られ、人のような歯が生え、皮が張り付き、全身に骨が入る。そして黒い着物を体に被せて、ガキの変化は終わった。

 

「はっ、はい……」

「ではヘリへ。シャガクシャ殿も……他の者も陸路で神居古潭(カムイコタン)へ向かってほしい。うしおも其所へ向かっている」

 

「紫暮殿、よろしいのか? うしお殿は獣の槍を奪った大罪人とされているのでは?」

「お役目様より、じきじきにお話をたまわった。獣と化したうしおを人間に戻し、真に獣の槍の使い手であるか否かを、我々は試さねばならぬ……そのためならば、彼女が『白面の剣』である事にも一時は目を瞑ると」

 

 そうしてへりこぷたーで移動した先には、別の女もいた。たしか中村麻子と言うたか。そこで女とガキは、うしおを元に戻す手順の説明を受ける。その方法は簡単だ。うしおのオヤジが持っていたクシで、うしおの長く伸びた髪を梳くらしい。おい、そんなんで本当に戻るのかよ?

 

「ただ、うしおに縁のある女性の数が足りませぬ。ここにいる中村麻子どのと、麻子どのだけなのです」

「そっか……真由子がいないから……」

 

「……じゃっ、じゃあ私が先に行くよ? なっ、なんとかするから……」

 

 

 そういう訳だ。うしおの進行方向で、わしとガキは、うしおを待ち受ける。もう1人の女と他の法力僧は別行動だった。ぼーずどもがいりゃ、結界でうしおを押さえられただろーに……日は傾き、夜が近くなっている。婢妖の姿は見当たらねー。使い手が獣になっている隙に、槍を破壊しようとは思わんかったのか? まー、封印状態なら兎も角、今の槍は赤い布の封印がねー。まともにやっても婢妖ごときにゃ倒せんと、分かってるんだろ。

 

 さて、うしおが来たぜ。

 

「行くぞ、ガキ!」

「はっ、はい! シャガクシャ様」

 

 るぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん

 

 ガキの剣が唸る。白い剣が七色の輝きを放った。これが神剣の全力解放ってわけか。ぼーずどもを遠ざけたのは、これが理由だな。この音色を聞きゃー、ニンゲンは勝手に死んじまう。800年前に白面と戦った時も、ニンゲンが大勢死んだっけな。まァ、化物には関係ねーけどよ。

 

 キィィィィィィ!!

 

 るぅぅぅぅぅん!!

 

 耳を引っ掻くような高音と、腹に響く重低音が重なる。そうして獣の槍と神剣が、キィンッと打ち合った……うしおの状態は悪化してやがる。全身にヒビが入っていた。わしは火を吹いて、うしおに掴みかかる。ガキが言うにゃ、雷は弾き返されるらしいからな。押さえ込むのは槍を持っている、うしおの左腕だ。

 

「うしお、私はね? うしおになら殺されてもいいって思ってたの」

 

 ガキは腕を振り下ろす。

 

「でも、やっぱり、私が、うしおを——」

 

 七色の光を放つ神剣が、

 

「――愛したい」

 

 

 獣の槍を叩き斬った。

 

 

 月夜の下、うしおの髪を女が梳く。髪が抜ける度に、うしおはニンゲンへ戻っていく。うしおの妖であった部分が、ニンゲンの女に引き抜かれていた。眠るうしおの頭を、女が膝に載せている……その様子に背を向けて、視界に入れないようにして、ガキは座り込んでいた。

 その側には、真っ二つになった獣の槍が置かれている。槍は刃の部分が、斜めに切断されていた……あのクソ忌々しい槍が、今はこの有様だ。わしが蹴っ飛ばしても、まるで石ころみてーに大人しい。ぶっこわれてやがる。今の内に仕返ししてやるぜ、ほーれほーれ!

 

「おめーはうしおの毛を千切らねーのか?」

「わっ、私は人間じゃないから、うしおの『人間』も引き抜いちゃうと思うから……」

 

 そんで膝を抱えて丸くなっているわけか……獣の槍がガラクタと化した今が、うしおを食らう絶好の機会だ……なんだろーが、これまで「獣の槍を使ううしお」に悩まされてきたんだぜ? 「獣の槍を使ううしお」じゃねーと張り合いがねぇじゃねーか。あー、それにうしおを食らおうとすれば、このガキが邪魔するだろーし……ちっ、しゃーねーな。あいつを食らうのは、また今度にしてやるぜ!




▼『セリア』さんの感想を受けて、「名前がとらになっていた件」に気付いたので修正しました。
 とら→シャガクシャ

▼『セリア』さんの感想を受けて、「主語が分かりにくかった件」に気付いたので修正しました。
 『白面の剣』である事にも一時は目を瞑ると→彼女が『白面の剣』である事にも一時は目を瞑ると


【おまけ】
(問8)杜綱悟の体内へ潜る際、最初に通った場所は何所でしょう?

選択A、指先
「これから、この内蔵の隙間を通り抜けて、脳に行くんだ」
「肩を抜けて肺に入る。心臓が見えるぞ!」

選択B、目
「どっ、どこから入るのかな?」
「頭にいる婢妖を倒せば、他の奴等は逃げて行くんだろ?」
「うっ、うん……この人の体は霊的に鍛えられてて、居心が悪いんだって……」
「そりゃー、目から入った方が手っ取り早いに決まってんだろ」

選択C、おしり
「アッー!」
「蒼月は兄ちゃんに何をしたのよォ!」
「体に巣食う婢妖を倒すために……蒼月は兄貴の体内にイッた」


(答8)選択A、手
「これから、この内蔵の隙間を通り抜けて、脳に行くんだ」
「肩を抜けて肺に入る。心臓が見えるぞ!」

「脊髄は、脳から出てる神経の束で、体の各部を脳に結ぶ中枢連絡路よ」
「自律反射の中枢だから、内臓や血管のコントロールもするんだぜ」
「だから、オレらイズナは人間の体に入る時ゃ、まずここを押さえるのよ」
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