キヴォトスの若鷲(エグロン)   作:シャーレフュージリア連隊員

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第一帝政イベント盛りだくさんの12月2日ですね!
戴冠式と言う事で、初心に帰りプロローグ戦を。

このお話は4章2部以降完成した、お話です。
本当の第一話は次の話になって居ます、4章2部外伝として読むのも、プロローグとしても見れるようにはしております。


3月末 シャーレ始動
目覚め


 

ヴァルキューレ警察学校本館、公安局の部屋でコノカ副局長は黙々とタイピングをしていた。

カンナに任せるには気まずいがやらねばならない仕事、公安局としての仕事がある。

既に夜の闇が外を満たしていた。

やるべき仕事、要するにシャーレの監視報告である。

何故か?簡単だ、”今は良いけど誰がシャーレを止めれるの?”という事である。

大人は卒業しない以上当然であるし、第三の武装勢力であるのは事実なのだ。

明日遂にブちぎれて連邦生徒会永久解散なんかされては本当に困るのだ、それを恐れているはずの役員は居るはずだが、カヤの失脚以来の騒動が更に連邦生徒会の能力に疑問を抱かせている。

カヤに付和雷同していた役員たちは見苦しい自己弁護に終始し、日和見主義者は右往左往、事大主義者は勢力バランスが滅茶苦茶になってバグっている。

懸念か安心か未だに判断しかねているカイザーとの停戦も拍車をかけている、停戦期間中に何か、例えば権力の集中、つまり独裁への道……などと考えても不思議ではない、何をやるか分からないのだ。

 

「会長も面倒な組織遺しましたねえホント」

 

コノカは沸かせた湯でコーヒーを作り、コップ一杯分を一気に飲み干した。

カフェインのお陰で多少眠気が収まる、似合わない書類仕事をしているのは彼女なりの上司への信愛ゆえである。

正直な所、カンナ局長にやらせてもより罪悪感を拗らせてしまうに違いない。

酷いのがこの仕事は真実真っ当かつ正当な理由である点だ。

仕方ないから、こうしてコノカがやる事になる。

 

少なくともコノカは同性を性愛の対象とはしないが、誰かを必要としているし、彼女にとってそれがカンナである。

本音や弱音や悩みを話せる対象は必要である、ハナコにとってのコハル、ノアにとってのユウカがそうである様に。

ある種の語弊を気にせず言うなら、コノカはカンナを愛してるともいえる。

 

「しかしあの先生フルタイムで誰かを殴り飛ばす計画してんのかな……」

 

コノカは大量の事件報告書やAAR、その山々のフォルダーを見ながらつぶやいた。

ある時はガス弾乱射、ある時は壁を爆破してエントリー、時折家ごとドカンパー。

よくまあこれで民間人被害を出さないものだと思う、吹き飛ぶ家の賠償は生徒会持ちであるが……。

 

コノカは気まぐれにフォルダーの山から適当に手にとって読んでみた。

するとある事に気付いた、日付やスタンプに署名が違う。

書類の入れ違いではなく、先生最初の戦闘であった。

そういえば、シャーレと言う組織はそもそもガワしかないハコモノ超えてハコオンリーだった、自治権ガン無視の動員権限もあるが、これでOK通したのはいったい誰だ?いい訳無かろうに。

 

SRT隊員たちの引き抜きもコノカ達からすれば「養えるのか?」と疑問符が多かった、同僚の白河とかいう奴なんか妹が行くという話を聞いて「あいつそんなバカだったか?」と驚いていた。

そのバカは今なんだかんだ戦闘団を率いてる、世の中分からないもんである。

それからは瞬く間に状況が変わり始めた、アビドスから始まる大騒動でヴァルキューレ警察学校そのものが変わる羽目になった。

強権を有する大人の組織が拡大するのを横目にしてたら、大騒ぎが延焼してウチも丸焼けになりかけた、スキャンダルを更にスキャンダルで延焼させて来るのは予想外だ。

 

少なくともそのおかげで装備や訓練がまともになり出したし、リエゾンが改善されたし、うちの上司に一丁前になんか偉ぶってたアホどもがコテンパンにされていた、ざまあみろ。

仕事もせずに賄賂ばかり考える馬鹿とそれにおもねるしか能がないアホが叩きのめされて、代わりにまともなマニュアルが来て、装備が来て、治安改善が進んだ。

なんだったか、先生の方策を説明に来たあの組織の会計がこう言っていた。

 

「食料は与えない、釣り竿と釣り方は教える」

 

実際的な話をするとそう簡単じゃないんだが、綺麗な要約だ。

少なくともシャーレに支援を仰ぐ回数は下降している、直接支援以外の情報や副次的サポートはこの先もあるだろうが。

そう考えると……。

コノカはおかしくなって笑った、なるほどつまりこの最初の間だけが”シャーレがヴァルキューレに支援を頼んだ”時期かと。

馬鹿らしくなったコノカは、フォルダーを開いて戦闘記録を読み始めた。

 

 

 

【先生キヴォトス起床から40分後】

 

先生にとって何もかもが未知と驚愕と言う、ある意味未経験の時間が過ぎて少し、先生は少なくとも納得するものがあった。

この大暴動において連邦生徒会、つまりこの政府は何も対応が出来ていない。

政府施設であるはずのシャーレが占領されている?どういう事だ?憲兵や軍の展開は?なぜわざわざ別の場所からヒナとかいうのを呼ぶんだ?政権首班なのだろう?

先生の疑問は渡されたタブレット端末起動以来増え続けているが、直近最大の疑問はそれである。

 

「何故政府であるのに鎮圧できない?大半の暴徒は大砲をぶちかませばビビって逃げ散る根性無しだろう?」

 

呆れた様に呟いた。

リンというらしい行政官、現在政権首班代理らしい者が驚愕という目で見ている。

少し先生の眼を見て、真剣に発言しているのを理解したリンは言った。

 

「先生……私は代行なんです」

「だから?前任は知らんが君が責任ある地位にあり、暴動は今起こっている。」

「つまりですね、その命令を誰が正当と考えるかなんですよ。タワーの機能も停止して指揮能力もないのです」

「はあ?徒歩でも伝令を走らせ数枚の手紙を書き、鎮圧行動に出ればよいのでは……」

 

連邦生徒会は事実上その指揮や行政が停止していると。

リンはきっぱりとこう告げた。

人に向けて顔面紫封筒してきたよくわからん変な女も知らんが、ここも滅茶苦茶でもう知らん。

バカな敬意も無いアホが自由に無秩序してるなんて我慢ならない。

 

「……リン代行、この手紙の権力を信じる限り連邦生徒会の会長の権力、例えば非常事態対応も俺の指揮権に有るんだよな?」

「そうなりますね」

「という事は俺が鎮圧全般を始めても合法になるという認識でよろしい?」

「はい、間違っては無いですね。」

 

リンは内心で「本気か?」と首を傾げていた。

この大暴動を沈静化、本気で言っているのか?

その考えを打ち切る様に扉が開く。

 

「リン行政官!会長は何処で何してんですか!」

「あ、ちょうどよかった。」

「はい!?」

 

現れた数人の生徒に、リンが手短に先生を説明した。

 

「ああ、それはそれは……ではなくて!会長は!?」

「行方不明です、所在不明。現在私が代行と言う形になってますが……」

 

遠くから爆発音が響いた。

 

「残り少ない連邦資産をまあ……失礼、それで、先ほど先生が今回の暴動に対して何か案があると」

 

ゆっくりと立ち上がり、数名の生徒を先生が見る。

 

「治安担当者は?」

 

何人か手を挙げた。

 

「トリニティの正義実現委員会です」

「ゲヘナ風紀委員会です」

「トリニティの自警団です」

 

挙げてない生徒が居たので、誰か尋ねた。

 

「早瀬ユウカ、ミレニアムの生徒会に当たるセミナーの会計です」

「計算が特技か」

「はい」

「よし全員採用、連邦生徒会長から与えられた権能を以て君たちを臨時で連邦捜査部シャーレに編入する」

 

先生は「地図だ!まずは警察からだ」と言うと、生徒たちを連れて部屋から出ていった。

正直なところ、リンには一抹の不安があった。

部屋から出ていくその大人の背中に、底知れぬ何か、何か恐ろしいものが漂っていた。

 

 

 

 

ヴァルキューレ警察学校や防衛室の人間が行きかう指揮本部に乗り込んで、30km離れた外郭地域のシャーレ本庁予定施設奪還を持ち込んだが、暖簾に腕押しであった。

ヴァルキューレの警備局はあちこちで暴徒鎮圧作戦中だし、足りないからって生活安全局の非番まで駆り出しているのだ。

戦力が無いと話すヴァルキューレの担当者に、じゃあ一番近い部隊は何処だと尋ねると、近隣で観測されたワカモとか言う生徒を追ってるカンナ公安局長の部隊だという。

 

「じゃああれだな?ワカモとかいうのをしばいて、そののちカンナたちを借りてシャーレを取り返せばいいんだな」

「ま、まあそうですけど……」

 

出来りゃ苦労しねえよと防衛室の人間が呟くのが聞こえるが無視した。

更に机に広がってる地図を見て、各所で展開中の部隊、交戦状況、敵性勢力の情報を尋ねていく。

だが質問の返しは状況不明、混乱で不明、詳細不明、配置された展開部隊の駒すら怪しい。

 

「じゃあなにか?お前ら確かめもせず図上演習同然か!?」

 

そのまま先生は部隊通信符牒や周波数リストを回収し、居るだけ無駄だと退室した。

あの地図上では全滅していた部隊、撤退していた部隊が無数に無事そこにある様子だ、幸い指揮能力も無いから邪魔も出来んな。

そのまま外に出ると、彼は地図を見ながら早足で歩き始め、ハスミから借りた筆で地図にぶつぶつと言いながら書き込んでいる。

 

ユウカは書かれていく文字がノアと同じく外国語であるのに気付いたが、悪筆だなとも感じた、ノアの字が綺麗すぎるのも知っているが。

シャーレに近づくにつれて、銃声が遠くから聞こえるパーンという間延びしたものから、ダダダ!という重い連続した銃声に変わる。

やがてシャーレへ繋がる大通りに出ると、カンナ公安局長が指揮する公安局部隊が展開していた。

 

「第三小隊は現在機関銃に制圧されてます、このままでは第二中隊は孤立しますよ!」

「クソ!増援はどうなってる!」

 

カンナが苦虫を嚙み潰した様に言い、後ろから先生が言う。

 

「指揮本部は状況を把握してないぞ、部隊の戦力も状況も何も把握してない。」

「……誰です一体?シビリアンは下がっていただきたい」

「先生だ、連邦生徒会の会長から全権委任状を貰っている」

 

それを聞き、カンナは敬礼した。

地図を開いて、カンナに部隊の配置を尋ねる。

 

「現在の我々はおおむね3個中隊が定数、しかし……」

「ああ、定員割れか?何割いる?」

「2と3は一応8割、1は抽出もあり5割……」

 

無能の証明だなと、カンナが内心で自らに毒づいた。

 

「分かった、指揮能力にも士気にも異常をきたしてないなら大丈夫だ。良く持たせたな、良い士官だな」

「はい?」

「お前は自分の指揮下の1中隊から転出させて2個中隊をマシにしたんだろ?判断は正しいが、それを運用する司令部が3流だったのが悲劇だな」

 

呆気に取られる全員に気にもかけず、大通りを見る。

炎上する警備車両と、青く塗装されたM41が近くで待機しているのが見えた。

大半の市民は隠れ潜んでいる、そうであるなら前面に居るのは概ね犯罪者と認識できる。

 

「現在第二中隊が暴徒から側面攻撃を受けています」

「暴徒は計画性を有さんもんだが……何処から湧いて出てるんだか」

「偵察情報では脱走犯が扇動したらしく……」

「扇動でこうなるなら政治家の責任だな、バカじゃないのか?」

 

言いにくい事をはっきり言うなコイツ……。

またもや全員の困惑を無視して、装備品を確認する。

 

「カンナ、砲あるか?」

「はい?」

「あるかないかだ、言え」

 

背筋が震えた、教育生時代ですらあまりしなかった恐怖だ。

迫撃砲があると頷き、弾薬類を確認する。

CSとHE、WPと一応ある事を報せると先生は射程や精度を確認した。

概ね諸元が正しいなら8割から6割は当たると言うと、顔を明るくさせて楽し気な顔をする。

 

「いいニュースだ、では孤立した中隊から回収するぞ。この地図に距離やマスごとの狂いはちゃんと無いんだな?」

「公的な地図ですから」

「よろしい、なら良い。」

 

地図を見ながら、指揮車両に乗り込む。

まるでそこが自然な定位置と言いたげで、恐ろしく似合ってみえた。

 

「……遠慮と言うのがありませんね、いや、決断が速いと言うべきですか?」

 

チナツが困惑している。

ユウカは困惑と言うより、何か底知れない感情があった。

全てを一切合切粉砕して再建築するあの辣腕、さっきからそうだが、あの大人は情報を詰め込むと直ちに行動している。

あのような大人、そうだ、私が恐らく誰かに従うならああいうのが良い。

自分の才覚と才能を全て使える様な大人。

半年後にはある意味、変容している憧憬であった。

 

 

そこからの先生は正に鉄拳というべきものであった。

まず第三小隊に現在位置で止まる様に指示すると、自身の率いる第一中隊を回り込ませ、ガス弾投擲で”後方”から追い込んだ。

突然のガス弾に暴徒が混乱し、混交状態を作り出すと、先生は次と第二段階を指示した。

混交状態の真上に迫撃砲弾を叩き込んだのである。

いくらキヴォトスの住民が頑丈だろうと、心がへし折られては武器も無力である。

 

「な……あ……」

 

目の前で繰り広げられているのは間違いなく最早一方的な制圧だった。

迫撃砲の弾着と同時に特型警備車を伴い、囲んで撃滅していく。

 

「各員浮浪者などを優先的に銃撃しろ、有産階級市民は後々面倒だ」

「よ、よろしいのですか?」

「よろしくないわけあるか、公権力の恐ろしさを見せつけて一気にへし折る!恐怖を不要とするほど人間は哲学的じゃないんだよ」

 

先生の眼に浮かんでいたのが間違いなく蔑視であったのが生徒たちには理解できた。

 

「良いか、奴らは自ら法の外に出た、自らだ。戦う相手への敬意も覚悟も無く、ただのケダモノだ、のさばらせるな、奴らは破壊と死しか生まん!」

 

そのまま前線へ歩いていくのを、慌ててハスミが止める。

 

「先生危ないですよ!」

「うるせえ俺より身長あったとしても、こういう時の経験はお前よりしてる!」

 

ハスミが今まで言われた事のない言葉の波に思わず動作を停止した。

 

「それに医者もいるんだろうが」

 

なら何を心配する必要がある。

死んだらそれはそこまでだよと、まるで空腹を満たしにコンビニへ行くような気軽さで市街戦を歩いている。

ようやくバグったハスミがリブートし、必死に考えて言う。

 

「先生が撃たれて死んだら我々が困るんですから、勝手に歩かないでください」

 

我ながら赤子みたいな言い方だとハスミがやや自戒するが、それを聞いて先生はむうと言った。

 

「それを言われると困るな、分かった」

 

急に素直に聞くようになってまあ。

足元で苦吟している暴徒たちをまるで夏のセミ程度の顔で無視する先生なのに。

しかし間違いなく優秀なのは分かる、この大人は忽ちに、そして次々と暴徒を各個撃破していく。

だがこうも思わずにはいられない。

……このリヴァイアサン、いやもしかしたらタイラントを野放しになんかしたら、もしかしたら本当に不可逆的な何かが起きるんじゃないのか。

 

「……連邦生徒会長は今までも分からない人でしたが、更に分からない人ですね」

 

シャーレが見える頃になると、800名近い検挙者、200名近い気絶・昏倒負傷者という戦果になっていた。

ある意味異常な数字であった。

基本的に戦闘では死者1につき負傷2の計算式となる、つまり死傷が30なら負傷20の死者10の前後だ。

こうした戦闘の根幹の数式は人が人である以上変わらない、正しいなら多くて検挙者は500程となる。

それが数倍に膨れている理由は、各所で士気がへし折られて戦意を失い、逃げる事も出来なかったからだ。

つまり、これまでナポレオンの最強の戦法にして孫子曰く最高の兵法たるもの、戦意をへし折るが完璧にキヴォトスでも成立したのである。

 

「おめでとうございます先生、大半の暴徒は各所で士気が崩壊しています!」

 

敗走と壊乱が伝染していた。

各所の暴徒は「連邦生徒会長が全軍糾合して徹底弾圧にのりだした」とか「ヒナが出た」とか、噂が広がり崩壊している。

まるで鼠だ、クラッシュへ突き進み自殺していくネズミの様に蹴散らされている。

なんてことだ、なんて大人を解き放ったんだあの会長は。

カンナは思わず背中が震えた、あれが治安の守護者というのか?なんなのだあれは。

 

「弱いものと集団エゴでしか戦えんカス共が、あんな連中相手に40分以上もかけてしまった。10年の離島暮らしで俺もかなり鈍ってるな。ヴァンデミエールは3分で壊乱させたのだがな」

 

カンナに申し訳ないと言いたげに言う姿は、全員にある意味衝撃的であった。

勝利に際しての反応は人が出る、しかし彼にとってこの勝利はまるで。

まるで害虫退治。

そして全て納得した。

この大人は、何もかも変えてしまうと。

 

 

 

ワカモが各所での崩壊を聞いて、まず感じたのは違和感であった。

情報をつぎはぎして、頭の中で組み立て、そして疑問が明確になった。

これは何処のやり口でもない、違和感、未知!しかし分からないのは誰という点だ。

傍受情報などを聞く限り連邦生徒会からやってきた大人、らしいが。

それにしては動きが良い、判断も早い、手段を厭わない。

あの白服のアホどもにそんな決断や指揮能力もあるはずがない、自身の首都の大火をSRTではなくゲヘナに頼ろうとか言う馬鹿みたいな連中だ。

本当はそれをネタに更に連邦生徒会をバカにして統治体制を破壊してやるつもりだった、事実を申して破壊される体制のメンツならば捨ててしまえばいい。

しかし30分しない内にワカモの想像より事態は動いていた、何もかもぶち壊して進んでいるではないか!

 

「見に行くしかありませんわね」

 

屋上を伝い、身軽にコンクリートの無機質で冷たい街々を進んでいく。

そこにあったのはLe Chant du départ, hymne de guerreを口ずさみながら、暴徒をいなしている大人の姿であった。

300ばかしの暴徒が群れを成して、シャーレの前から突撃を始める。

ワカモは前衛の銃列の後ろにあるものを見て、本気だろうかと考えた。

 

「前列左右へ移動、撃てェい!」

 

バン!バン!バン!と連続した砲声が響く。

各所で合流したヴァルキューレの部隊から連れてきたMk19自動擲弾銃のフレシェット弾一斉射撃である。

たちまちに前衛数列に横殴りの豪雨が襲う。

 

「第二中隊、射撃開始!」

 

左右の建物に配置した機関銃が火を噴いた。

混乱で足が止まり、竦んだ暴徒が群衆、そして個人へ変わり潰走していく。

 

「逃がすな!突撃!車両部隊前へェ!」

「一斉検挙ぉ!突っ込めェ!」

 

暴徒の後方へ迫撃砲弾が振り落ちる。

雑踏は混乱、狂乱、壊乱へ移り、逃げ惑う暴徒が叩きのめされ、戦意を完全に喪失した。

目も眩むような一撃、あの大人はこうして来たのか。

高まる動悸と心臓を落ち着けて、ワカモは自らを恥じた、あのようなものが破壊と混乱であるか、これだ!私の理想!忽ちに遮る何もかもを一切合切に粉砕していく!これこそやりたかった事。

あれが連邦生徒会のイヌだと?あの白服、あれが”人間”に見えるのか!?眼が見えないのだろうか。

少し下着が重くなるのを感じながら、手合わせを願いたくなった。

 

 

 

逆襲を挑んできた暴徒をカウンターで袋叩きにして気分がいい。

横流し戦車だろうと戦う前に戦意を挫いてしまえばそれでいいのだ。

暴徒がヤケクソで逆襲発起しているのはやや驚愕したが、ワカモの扇動なのだろう、にしてはあいつは何処なのか。

もしかしたら吹き飛ばしてしまったのだろうか?まあ後で分かるだろう。

シャーレに入ると、意外と施設に破壊の痕跡は薄いのが驚かされた。

まあ燃やす以前になんもないんだからしょうがない。

地下室へ進むと、扉が開いていた。

 

「おう誰か居るのか?」

 

渡されたこの時代の拳銃を手に取る、置いていくにしてもあそこじゃマズかろうと思い、一応持っていた。

部屋に入ると、不可思議な石板の機械を背景にして、一人の生徒が立っていた。

衣類から見て高級品らしい、という事は何かの偉いさんか?にしてはなげえライフルだ。

 

「あ、あら?」

「邪魔してすまんが、お嬢ちゃん誰だ?」

 

少し少女は停止すると、ぴゅっと風の様に走り去ろうとした。

一瞬ワカモとか言う奴かと思ったがそうではないらしい、こんなへにゃへにゃな奴が扇動するとは思えない。

首根っこを掴んで制止する。

 

「恥ずかしがり屋か?一応ここね、連邦の施設なんだわ、ご理解?まぁ避難してたなら仕方ないか」

 

コクコクと頷き、手を離す。

そのまま走り去る背中を見ながら、まあキヴォトスだし無口な恥ずかしがり屋くらい居るかと納得して、ついたと連絡する。

その後、起動したアロナとクラフトチェンバーにとって最初の仕事は、大規模暴動鎮圧となった。

 

 

 

後の事はコノカも覚えている。

16時に先生がヴァルキューレに回線をつないで、データリンクをして3時間しない内に全てケリをつけた。

20時ごろになると雨が降り出し、戦闘の終結を報せるように、洗い流していく。

22時に、シャーレ最初の公式会見が始まった。

今回の暴動は統治システムの問題であるのは事実であり怒りは当然だが、破壊行動や暴力行動は容認しないという、先生と言うより戒厳司令官の言い方だった。

良いのかなあれと考えていたら、当然だが大騒ぎになった。

ヴァルキューレの一部から「権限の横槍だ!」と声が上がり、防衛室は「専横!」と憤慨し、連邦生徒会の役員は「新参が偉そうに!」と怒声をあげていたが、無論先生は気にしていない。

 

そして数日しない内に、SRT閉校を聞きつけて隊員を引き抜きだした。

当然だがこれを聞いて皆が度肝を抜いた。

連邦生徒会長直属の私兵を引き抜く?本気かあの大人は、連邦生徒会どころかその上も関係なしか?

あらゆる妨害を「しかしだね、私はその生徒会長当人から承認を受けている」という権威と、「使わない、使えないなら精兵は不要だろ」とボロクソに批判していった。

ミレニアムの会計を伴いながら「あれとあれと、それも貰い受ける」と装備品まで持っていった。

……そういえばあれか、あのアホのスズもあの時引き抜いたんだったか。

あいつ「コネあるし今のうち」と公安局に研修来てたのに、自己志願で入るんだもんなあ、アホだと思ったがあそこまでアホとは。

 

SNSでは大騒ぎであった、ある意味時代が待ち望んでいたかも知れない存在だったが、劇薬の類だ。

最近はやりすぎたと思っているのか、政治的根回しも良くしている。

少なくとも最悪の状況、銃口を突き付けての連邦生徒会解散宣言はまだ起きていない。

だが一番恐れているのは、合法的に権力を得る時なのだ。

誰がその時、止める事が出来るんだ?

あれは番犬じゃない、保護者の眼をしている……。

そういえば、カヤ失脚に際して聞いたな。

 

「先生。もしかしてっスけど、カヤの後釜になる気すか?」

「混沌より悪政のがマシだというだけだ、それに、権力の座につく気ならもうしてる。俺は赴任初日に事実上キヴォトスの支配権を握って、そして手放した。」

「……ならいいんすけどね」

「あと昔二回くらい最高権力者をやった、色々あったが、三回目はごめんだ」

 

多分あれが本音なのだろう。

 

 




これは戴冠式の分です、今日はアウステルリッツの戦勝もあるので20時にバニーチェイサーを予定しております。

ご意見ご感想は力になります。

本編や最終巻発売前だけどアビドス編まで出した方が良い?

  • 誤字脱字確認したら出せ
  • ゆっくり見直して出せ(ちょっと遅い)
  • 近代化改修して出せ(遅くなる)
  • 本誌完結まで待て
  • 最終巻まで待て
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