キヴォトスの若鷲(エグロン) 作:シャーレフュージリア連隊員
ケース1
生活安全局の無差別検問でアルご一行が保護された。何故また連中がと思いながらキリノが調書を取ったので見たが、何でも客の護衛で慌てて逃げていたらしい。
これ自体はまあ、普通の話だ。護衛相手を狙ってた連中自体は普通にヴァルキューレの連中にグロック拳銃撃ち込まれてぶちのめされ、敢え無くキリノの内申点へ変更された。
そうした理由もあって一応キリノから連絡はされた、シャーレとのある程度依頼があるのと、そちらの作戦に関係があるのか?というお伺いでもある。
無論関係はない、必要な時に依頼したり依頼をくれと強請られているだけだ。*1
ただ連中は毎度毎度変な目に遭う、だからそれとなーく探りを入れる。
「アロナ。便利屋周囲の通信傍受、怪しいのだけ取捨選択して見せてくれ」
「了解ですけど電波法に違反しません?」
「無作為の通信傍受は合法じゃなかったか?」*2
別段悪用しようという訳ではない、依頼主なりなんなりが白いならそれでよかったで済む。
正直なところ連中が意図せず何かするより、何かに巻き込まれてデカい事になる方が恐い。
それとなーく確認してるが、依頼人は何か闇市で探し物をしているらしく、夕方に何か競りに参加するらしい。
「先生便利屋の皆さんの今回のお仕事のログです」
「……なぁこれ闇オークションだよな?」
「そうですよねぇ……」
アロナが幾つかピックアップしてるが、始まる前から嫌な予感がする。
このオークションちゃんと商品あるのか?という点はともかく、なんというかそれとなーくだらしがない。
警備の連中はせいぜいがMP5やマカロフ、AK74Uみたいな安いのが中心で、しっかりしてるって雰囲気ではない。
まともに商品仕入れてねえだろ絶対!
「こいつ等が商品ちゃんと仕入れてんのかな」
「いくつかは仕入れてるでしょう、目録がいくつか書いていないのは演出もあるでしょうが、適当な品物で誤魔化す腹では?」
クソみたいな話だ、そう思いながら公安局のコノカに連絡しておくようスズへ伝えておく、あそこのスズの姉は胡散臭いから副局長のが真人間だ。
支援に幾つか突入部隊の編制命令を出す、一個小銃班も居れば良かろう。
便利屋68は自称アウトローのハードボイルド系カルテルである、他称に関しては名誉の為省略する。
無論誰彼構わず襲うのは陸八魔の趣味ではない、彼女は並外れた戦闘力は確かに有するが、自分より弱い奴から無差別に奪うのを好まない。
単純に善人と言うより、ここに関して自我を通せないならこんなコトしないという事なのだ。
そんな便利屋68だが、構成員の戦闘力は総計しても中々高いと言える、非学園武装勢力やコーポレートではない連中ならかなり上層だろう。
「なーんか嫌な予感するね社長」
ぼそっとカヨコが呟いた、便利屋の情報を纏め、計画立案を主にしている。
元々”かなり威厳と権威”を有する将校クラスと言うべき人間だったが、社長とこうしたことをすることに安らぎを見出している。
そんなカヨコの前髪がぴくっとした、何か起こる時、直感が浮かんだとき、彼女はそう反応する。
「一応予備弾を、装填しておくべきでしょうか」
「今のうちにしておいていいと思う」
ハルカの問いにカヨコは頷いた。
元々パンデモニウムの警護要員だった前歴があるハルカは便利屋では前衛を受け持っている、フロントマンは信頼が無ければこなせないし任せない。
「トラップ警戒と、有ったらカウンター手配頼むわね」
「はいよー」
ムツキがアルの指示に頷いて、先んじて建物に入る。
社長たるアルの幼馴染にして大親友だが、子猫やチェシャ猫染みた性格をしており、爆破にこだわりがある。
しかし彼女のセンスと発想力は高い物だ。ムツキ自体は楽しくないならばやりたくないという人間である、要するに快楽主義者なのだ。
ハルカとムツキを先行させて施設を確認させに行かせたのは、ムツキの護衛を兼ねている。
ぶっちゃけて言えばあの二人だけでも大概の敵は打ち倒せる、襲われてもカヨコとアルがいれば依頼人と逃げるくらい容易である。
オークションは半地下の喫茶店跡でやるため、そこそこ人は多い。
ただ、カヨコがスマホを開いて、アルの袖をつんつんと突いた。
「なにかしら」
立っているカヨコに、視線を向けて依頼人と着席しているアルは尋ねた。
「……斜め前、3列目の奴、インカム着けてる。」
カヨコがぼそっと言う。
「警備じゃない?」
「違うと思う」
カヨコは私見であるが述べた。
スーツを着ているが、こなれ過ぎている、育ちが良いというより荒事に対して慣れてるという雰囲気だ。
「公安かしら」
「恐らくね」
面倒になる前にふけるか、アルはそう考えて依頼人へ尋ねた。
ただ依頼人は「いやしかし、品物は欲しいんです」と言うので、まあやむなしかと続行を決める。
無論ハルカとムツキに少し離れて待機させるのは忘れない。フリーの駒は確保するのが陸八魔のインテリさが故である、サバイバリティかもしれないし、生き意地汚いともいう。
木槌が鳴らされ、オークションが始まった。
オークションが始まった、中にちゃんと公安局の人間は侵入している。
まだ突入はしない。コノカは「いいんすかァ」と聞いているが、今だと違法性が無い。
便利屋の依頼人はまだ競りに参加してないが、オークションは中盤を過ぎて盛り上がり始めた。
『さあというわけで、今回のオークションの、スペシャルゲストォ、そして商品!なんと!先生ご愛用の、あのオーパーツです!』
「フカシも良いトコじゃねえか!」
思わず指揮車両だが笑ってしまう。
ガッデム……シッテムの箱は俺以外起動しねえんだもん、ユウカですら起動しないのだ。
『5億よ』
100万単位で始めた奴は絞め殺したいが、アルちゃんせめて50億は言ってほしかったぞ、小心というか謙虚と言うか。
「先生のタブレット、20億らしいスよ。豪華っすね」
コノカが笑いながら指さした。
「俺が使用した筆ペンだけでそんくらい稼げるわボケ!」*3
「すっげえ自信」
呆れたとコノカがぐびっとコーヒーを飲んだ。
公安局員のマイク越しに、カヨコが「失礼ながら、あなた方はシャーレの備品をくすねたという認識でよろしい?」と尋ねているのが聞こえる。
それまで支払い能力で煽っていたオートマタは顔を固まらせた、迂闊な事言った瞬間何してくるか分からない上に制御不可能な台風が来るわけだ。
カヨコに理詰めの疑問を投げられて動揺するオートマタに、アルが気を持ち直した。
『さくっとまるっと全部オミトオシ、アウトローの観察眼舐めるんじゃないわよ!』
『くそっ!つまみだせ!進行妨害だ!』
「よし、面白くなってきた。突入」
一応号令は必要である。
Sirchie906RiotヘルメットにHRMベストを着けた公安局実働班と刑事局の人間が踏み込んだ。
「クラッシュ!」と合図が叫ばれ、閃光弾が投げ込まれる。
施設内から何度かパンパンと乾いた炸裂音がしたが、すぐに静かになった。
ヴァルキューレの突入に便利屋はほぼ寸前ではあったが、こっそりと調理場の影へ隠れた。
陸八魔危険探知機は極めて高精度である、ヤバいときはあてになる。
逃げる間もなく大半は一網打尽にされたらしく、そっと建物裏の影からムツキとハルカが合流、逃亡へ移る。
「貴様便利屋コノヤロウ!」
後ろから声がした、振り向くとオークション主たちだ。
数は最初見た時の3割にも満たない。残りは捕まったらしい。
「荒らすだけ荒らして逃げんのかよ!」
「まともな物売らずに何言ってるのよ……」
「ハラスメントだ!訴えるぞ!」
「えーっ……」
流石にアウトローの演技も出ない、あまりにナチュラルボーンカスだ。
「こうなればお前らを〆てしのぎの足しに……」
「いや無理じゃねえかな」
もう一人、誰かの声がした。
便利屋はやはり裏から逃げようとしていたので、待ち伏せるのは容易だった。
なにせこいつらは選択肢に「戦わない」という選択肢があるから手強いのだ、恥知らずでも追いつけないまでに逃げ切れるなら強さの表れである。
しかもアルは「戦う相手」「逃げる相手」を選ぶのが早いから困る。
勝負事と兵事で一番駄目なのは思考がグルグル回る時だ。
「先生?」
「よっ、お仕事中失礼。」
「なななな、なんでここに……」
「企業秘密だ」
そう告げたが、ムツキに「多分感づかれてオークション主が違法か調べてたね」と言われてバレた、流石によく分かっている。
便利屋の依頼人にあのオークション、多分まともな品物があった事が無いから別んとこ紹介してやる。
「貴方も運が無いねぇ、闇市のオークションなんて8割が犯罪・横流し・ロンダリングですよ。各校の公認品目へ行きなさい」
「し、しかし」
「慣れないならもういっそカイザーにでも行った方がマシですよ。詐欺ならウチが踏み込む口実になりますし……」
便利屋から「大人のやるこっちゃない」「えげつない」「惨い」と声が聞こえたが無視する。
依頼人が「にゃおおおん」と慟哭しているので、いったん便利屋に下げさせる。
「こ、ここで先生をさらっちまえば天下は俺のモンじゃああああ!」
オークションの責任者が破れかぶれでも起こしたか飛び出す。
無言で拳銃を構え、陸八魔は「手ェ出してんじゃないわよ!」とライフルを速射し、公安局の実働班はHK416を構えた。
結果、合計30発近く袋叩きにされてオークション主は打ち上げられて酸欠起こしてる魚めいた状態へ変貌した。
哀れな奴……、お前が空崎ヒナやミカくらいガタイと腕と頭があれば出来たかもしれんが、流石にここでやるべきは逃亡だよ。
「よーし、じゃあアンタで競りをやろう!懲役刑がどれくらい跳ね上がるかな?
個人的にはシラトリ区の港に檻ごと沈めてやりたいが……背後関係吐いた後、矯正局送りだ」
ずたぼろにされたオークション主を見て、慌てて後ろの警備の一人が逃げ出す。
無論数歩も歩く前に背中を撃たれて倒れた。
「コーンと背中に命中!後頭部と梗塞は身体に悪いよファックいぇーい!」
カヨコが慌てて上を見上げ、L96を構えたD分隊のマークスマンの能地エミがバラクラバごしに満面の笑みを浮かべて声をあげていた。
俺が護衛を連れてないなんて誰が言ったよバカヤロー、それはそれとしてうるせえなアイツ……。
くそっ、腕が良い奴見繕って編成した護衛だが実際に運用して判明したのはガリと眼鏡とスケベと狙撃狂いと言う事実だ、くそっ、なまじ優秀なのにムカつくな。
刑事局の人間から「あーあむごたらしい」と抗議はされたが俺の責任と義務じゃねえよ。
「あのぉ、陸八魔さま」
「なにかしら」
「そのぉ、状況を考えますに依頼内容が消滅してしまったわけで……これでは依頼報酬は……」
アルがあんぐりと口を開けている。
「なんとかならない?」
「いちおう目的の商品はあったんですが……やっぱカイザー系列は高くて依頼の予算が払えんとです……」
「だめぇ?」
「本当に……払えんのです……」
半泣きのアルを見ていると「俺も甘くなったよなぁ」とやや脳内のジョセフィーヌを思い出しながら、財布を取り出す。
仕方がないから適当に10万くらい見繕ってやるから、違法行為があったら知らせてくれやとそっと二人に金を握らせた。
「それはそれとして調書書けよ、お前ら」
「「ハイ……」」
なんだかなぁ……、甘いんだよなぁこういう奴には……。
ケース2
便利屋の財政事情ははっきり言えば低空飛行である。
常に陸八魔の危機感知センスから破滅を回避し、社員の総力を持って破滅を回避し、時に巧みな交渉と大多数は暴力の優位で逃げ切るのである。
ようするにだいたい破滅の三歩手前である。
ただ最近は珍しく安定期だ、借金返済を企むアビドスと合同で犯罪者狩りして砂漠に秩序と正義をもたらす支援業務がかなり儲かった。
大半の敵をセリカとシロコと便利屋がぶちのめして、アヤネが支援するというだけだ。
「ついに!我々はDUへ進出するのよ!」
「高望みし出したね」
「こういう社長って往々にして破産するよね」
カヨコとムツキがアルの言葉に顔を見合わせた、ハルカは純粋なのでキラキラした眼をしている。
しかしかなり具体性がある計画ではある、顔と力がそこそこ売れだしたし、DUで事業をする場合犯罪者狩りで度々一緒に活動したラビット小隊とのコネも利用できる。
無論公権力たるシャーレとのコネは”まだ”使わない、アル社長は千年の大計を練れる、きっと、たぶん。
「というわけで、物件は見繕っているのよ!」
早速アルは、便利屋の所有する車両へ乗り込んだ。
カイザーの放棄装備品のM38ジープをアヤネに教えてもらいながら直したのである。4日間かけた苦労の末である、頑張った。
シャーレ本庁舎、某階。
派遣参謀やスズのオフィスがある階層は、いつもと変わらず仕事中だ。
「連続行方不明事件の流れは分かるが、細胞組織だとちと厄介だな」
末端の細胞を潰しても意味がない、頭から潰してやりたい。
スズは書類を確認しながら「今、ちょいと
公安局からの捜査資料やゲヘナ風紀委員会からの報告を見る感じ、特定はすすんでいる。
「こう言うの見てると捜査部って感じがありますよね」
「こういう事してないと突き上げ激しいんだよ、最近国家憲兵とか軍警察とか私兵集団だとか散々言われてるからな」
別に良いだろ。ぶっちゃけ役に立たねえ置物の
それにちゃんと捜査活動して誤認逮捕はしていないのだ。大好きなのは転び公妨の警察より仕事は丁寧だぞ。
コーヒーを飲んでいるとアロナが報告を入れてくる。
「便利屋の皆さん、DUへ事務所を増やすらしいですよ」
「おおかたセーフハウスを増やすとカッコいいとかシロコにのせられたか、ミヤコにのせられたかなアイツら……」
「家主は学習塾経営などだそうです」
「どーせ、ペーパーカンパニーの類じゃねえの?」
DUの会社がまともな確率は概ねオスの三毛猫くらいにレアである。
ぼけぇーっとアロナの通知を見て、まあ良いかと窓を見ていたが、プラナが首を傾げた。
『先輩。この座標近くにうちの諜報員が展開してますが」
……そう言えば二日ほど缶詰だ、気分転換もかねてアルちゃんの事務所にでも遊びに行くか。
プラナが照合した座標は、何故かうちの諜報先だ。
アツコに「ちょっと出ようか」と告げる。
いきなり便利屋の事務所にドアホンが鳴り、大家が挨拶を兼ねて来た事にアルは危険の匂いを感じた。
問題は定期的な発作として、陸八魔アウトロー症候群は危険の予感をハードボイルドと誤認する習性がある。
要するにヤバい匂いを認識誤認するのだ、つまり今現在の陸八魔は滅茶苦茶鈍いのである。
無論この発作に社員一同は気付いている。指摘しないのはそれが優しさである。それくらいの情が便利屋にはある。
ハルカは守る意識を強め、カヨコは警戒し、ムツキはそれとなく目を配っている。
そしてそういう集団がどういう風に見えるかと言うと、危険集団である。
「いやあ、心強い方が来て嬉しいですね!どうです、ぜひうちの依頼を……実は加入者が多くて残りが少なく……」
大家の言葉に陸八魔は余裕綽綽の笑みで契約書を受け取る。
無論、すぐにサインしない、無言でカヨコが書く前に確認している。
「……これ要するに無条件に従えってコト書いてるじゃない」
流石にアウトローといえど知性は有る、ついでにミノリ部長の「労働契約交渉術と諸注意」の講演も見ている。
大家はやや顔を困らせているが、彼の眼には便利屋はド級の危険武力集団と見えている。悲しいかな、事実その通りだ。
しかし今の陸八魔は完全に発作的アウトロー症候群からこの様な
まあ前の事務所主は武器密売で御用になった北野オリバであるから、当然差は強く出る。
「そもそもあなたは何をやらせたいのよ」
「ええ、実は……3か月ほどで良いので護衛を依頼できませんでしょうか」
「護衛?」
アルがやや首を傾げた。
「定点防御の依頼ならカイザーやマーセナリーのが適役じゃないかしら」
鋭い一撃であった、なにせ正論である。
大家が汗を流し、少し口ごもってから説明した。
「カイザーからは舐められてまして……マーセナリーの方たちは一見様お断りとか言われて……」
最早泣き落としである。実際嘘は言ってない、カイザーからは「舐めた予算案してんな」と馬鹿にされたし、マーセナリーの連絡事務所には近づけなかった。
ちなみに近づけなかった理由は別のオートマタが「給料払えないんなら
幸いレモンの種が泣くまで絞ってるので”まだ”死んだ奴はいない。
「まぁ、話は見てからになるわね」
「えっ」
「現地見ないで守れなんて言われても困るわよォ」
実際その通りである。
今日の社長なんか安定してんな、とハルカ以外の二人は首を傾げている。
ハルカは相変わらず「今日の社長は一際輝いてるな」と認識している、概ね何時も輝いて見えてる。
「内見させてもらうわよ」
立ち上がるアルに大家は慌てた顔を強くする。
無論カヨコが後ろに位置したので、逃げる事は出来ない。アルを止めようにもの、アルの背後はハルカが占位している。
最先頭のムツキを止める者は誰も居ない!
三階のドアを開けた便利屋が見たのは、要するに洗脳施設と武器弾薬類だった。
しかも軽火器のみならず、軍用規格弾薬類まである。
「……違法品じゃない」
「ななな、何のことか……」
アルが呆れた顔をしている。
ムツキに至ってはごそごそと箱をあさり、カイザーSOFの4つ眼暗視装置を掘り当てていた。
「これカイザーのじゃん!」
「……侵攻失敗時の放棄品だね、社長。」
呆れた顔をしてカヨコは呟き、アルは思わず困惑している。
最近はパクった防具を着てる奴も見るには見るが、ガッツリ違法品だ。
無論アルも流石に聞かなくても分かるが、目的は聞いた。
「シャーレとかカイザーが来たら護衛を……」
「貴方流石に身を亡ぼすわよそれ」
「ろ、ローコストにキヴォトスを掌握する計画なんですよ、成功した暁には世界の半分を……」
「要するに半分を4等分しろって事じゃない、それ?無理でしょ」
アルと大家の会話に、カヨコが呆れて呟いた。
ムツキはごそごそと見て回っているが、首をかしげる。
しばしして、ムツキは「くふふ~っ」と笑ってそこから離れた。
「どうしても受けて貰えないようですね」
「いや流石に無理だと思うわよ……」
「しかし我々には、既に戦闘要員の初期ロットが完成しているんですよォ!これでクソ見下してきたカイザーやマーセナリーやあのぼったくりアリウス武器商とかも色々意のままです」
「それ司令部襲われたら終わりと思うのだけど……」
今日の社長なんか理性があるな……、そう思いながらカヨコが最後衛へアルを下げさせる。
何も言わずともハルカが数歩歩み出て、前衛に位置した。
しかし、その瞬間。
窓が何か動いた。
「あ」
便利屋が何かを察して床へ伏せる。
窓ガラスをブチ破ってアリウススクアッドがエントリーだ!
屋内施設戦闘であるからBCM11.5インチライフルを担いだサオリらが突入と同時に射撃、床へ伏せて脅威度の低い便利屋を無視して敵戦闘員へ発砲していく。
「わっわぁっ!」
単発射撃であるがダブルタップで頭へ撃ち込んでいくのを見ながら、大家は慌てて戦え!と命じた。
しかし武器が発射されない。
「た、弾詰まり?!」
一斉に弾が詰まるはずはない、そう、それは当然だ。
瞬く間に抵抗も出来ずに戦闘員は排除され、突入隊員らに拘束される。
「くふふ~!おじさん、これな~んだ!」
ムツキが両手を上げてスイッチを見せる。
「な、なんですそれ……」
「正解はねぇ、カイザー正規部隊員向けの装備品キルスイッチ!」
「へ?」
「これを押すとね、SOFやレンジャーとかの正規隊員の装備は停止されちゃうの、鹵獲防止だね」
なぜこれをムツキが知っているかと言うと、かつてアビドス駐屯地に攻撃した際にカヨコらと装備品を剥ごうとした便利屋がこれのせいで大損こいたのである。
ちなみにキルスイッチは専ら売った武器が自分たちへ使われた際にも使われる。なんならプレジデントが欲深いので「無効化装置」を売った上に「無効化装置キャンセラー」も後で販売した。なんたる暗黒メガコーポか!マッポーの一側面だ。
「そ、そんな……」
「当たり前でしょ、これ外した奴を売ってるけどあっちは安物だし……ヴェリタスに解除頼むなりしてればよかったのにね」
「ミレニアムまで頼めるわけないでしょう!」
「だから片手落ちなんじゃないかなぁ……」
ムツキが呆れた顔をして呟いた。
外ではぞろぞろとシャーレがヴァルキューレを連れて封鎖し、隊員らが交代する。
スクアッドなどの隊員らから「マジもんの陸八魔だ」と声が上がっている、何故か自由なアウトロー陸八魔アルはアリウスでのウケが良い、自立した自由人だからだ。
粛々と連行していき、呆れた連中を見やる。
素人がなに変なコトしてんだ、お前下手すればカイザーの危ないトモダチと振興会だよ。
あれでもあそこは普通にたちが悪いクソヤローなのだ、油断してっと刺されかねんよ。
「というか今回普通に相当邪悪じゃねぇかよ」
後ろじゃアリウス系隊員らが「アル社長にサイン貰おうぜ」と話している。
「なんで、便利屋が一番先に本丸にたどり着くんだよ、畜生めが」
「あんなずぶのトーシロが大それたことやるとは世も末」
スズが最早何も言うまいと閉口しているし、キキョウが頭を抱えている。
事務所の賃貸契約してたから、盗み聞きする羽目になり、本丸にたどり着いた。
どういうことだよバカヤロー!
眠たげなスズもユウカもお目目パッチリだ。
突入するころには大体便利屋諸君が終わらせていた、これだけは嬉しい誤算、なんだかんだまともだ。
「そんでな、あんちゃん。地元だとこの手の犯罪、縛り首なんだけどな。それで今回は俺も妥当だと思うのよ?どうよ?」
「ミランダ条項はどこへ?!」
「この前から、瞼を閉じさせず、ライトを当て続けるとどうなるか俺、気になるんだよ。
冬休みの宿題に生物観察日記が欲しいんだよね」
「NOOO!」と連れていかれていく、まあ安心しろ!お前の行き先はまだマシなヴァルキューレだ!しょぼすぎて何も出ない!
ちなみに回収した装備品は写真を撮りジェネラルへ煽りをかねてメールで送ってやった。
後日返還依頼が届いた。
感想評価お待ちしてます。
誤字脱字などの報告本当にありがとうございます!
この場を借りてお礼申し上げます。
原作のどっちを見たり知ってます?
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長谷川ナポレオンシリーズは知ってる
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ブルーアーカイブだけは知ってます
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どっちも知ってます。