キヴォトスの若鷲(エグロン)   作:シャーレフュージリア連隊員

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百花繚乱編に取り掛かってるので初投稿です


誰かにとっての負け戦

 

 

 砂漠を走るCP車両と護衛車両だが、邪魔な奴が出てこようが引き潰すつもりだが、不気味なくらい静かだ。

 ここにあるのは『公式』にも壊れたドローンやオートマタとかがやや違法じみた警備をしてるらしいが、ここ最近のアビドスは完全に不法勢力に生きづらいので動くものが見当たらない。

 道中、ホシノから砂祭りの話を聞いたが、砂漠化地殻変動や土壌流出などが原因であると知った時は驚いた、此処の地殻は動かないのだろうな。

 安心しろ時計は回してやる。

 目的地が近くなってくると、対策委員会の連中に「お先に」と言う

 

「どうしたのよ? 急に怖くなったとかじゃ絶対無いんでしょうけど」

 

 なんとも呆れた奴と言いたげにセリカが言うので、頭の後ろに手を組んで、ゆっくりと足を組んだ。

 

「俺が出ると相手が逃げかねん、暴れ過ぎた」

「やり過ぎた自覚はあったんだ、進歩してるのねえ。で今どんなこと企んでるのよ?」

 

 こいつ図太くなったな。

 

「直ぐには出んが相手の偉いですって感じの奴が出てきたら、これの電源を入れろ」

 

 優しい先生からのプレゼントだ。相手も喜んでくれること請け合いだ。

 

「ん、これは?」

「録音と盗聴器、記録はこっちでも保管して会話はこっちでも聞いてる、相手は子供相手だと舐め腐ってるからな、運が良かったら間抜けなぺら回ししてくれるかもしれん、相手が気づいたら、直ぐに行く」

 

「偵察班からの通信がECMで切れました。UAVも無理ですね。ジャミングやり過ぎだ。EMCONステートどうしてんだか」

 

 呆れた隊員が端末を閉じる、本で読んだがジャミングも垂れ流すと逆探されるから見つかるそうだ、世知辛い話である。

 車間距離を狭めて前進していると、カイザー塗装のOH-58が近づいてきた、向こうの偉い人が来たようだ。

 

「居るんだろう、近くにあのシャーレの連中が!!」

 

 ヘリから降りて早々求愛とはお熱いなあ。

 

「うへぇ、先生向こうさん大分怒ってるよー」

 

 直ぐ行ってやるから待ってろと言い車両を進ませると、対策委員会の前にいかにも偉そうなオートマタと護衛も現れる、車両から降りるとこちらも護衛を連れて堂々と前進する。

 隣の隊員が「対人レーダーが熱気ムンムン」と小声で囁いた、やり過ぎだな。

 

「どうした? 楽しい演説が聞けると期待したのだが、おひねりも用意したんだぞ」

「きっ貴様が……」

 

 理事の顔が赤くなる。

 コートを軽くはためかせ、完璧な所作と言うよりは、革命戦争初期の頃の俺の様に言う。

 

「俺とお前の仲じゃないか! 自己紹介が必要かな? シャーレの広報見れば出てるだろ、お前の友達だよ*1

 

 にこやかな笑顔をしてるんだが相手がどんどん顔を赤くしてる、照れ屋さんか。

 

「俺もお前を知っている、2,3部門担当の理事だな新聞で見た、最近とても忙しそうじゃないか? こんなとこに居て良いのか? 噂の砂祭りでも見に来たか、しばらくやってないそうだが、残念だよな」

 

 まま友愛の印と煙草*2をいるかと向けてやると、突き返された。

 禁煙主義か? 俺もそうだ、楽しく話せそうだ。

 

「そこまで他人事で言えるなぁ、貴様のお陰で出た損失は! *3

「アビドスに乗せるってか? おたくは無関係なんだろう? まあネタは上がってんだ。うちの要件は一つ、理事あんたへの降伏勧告だ」

 

 理事は何か言いたげだが、俺相手じゃシャイらしい。

 やっぱ憧れの人を会うと緊張してあんまり喋れないよな。

 後ろ暗いお金が燃えて身をキレイにしてくれた恩人なわけだし、感謝しているはずだ、俺が喋ると彼は恥ずかしくて喋りづらいらしいから別の手段を使おう。

 

「はい、先生と社会見学だ、あのおじちゃんに質問がある人は手を上げて質問してあげなさい、行けセリカ! バイト根性見せてこい!」

「はぁ!? ここで私に振るの?」

 

 尻尾がビンと突き立ってセリカが吠えた。

 

「大人同士だとシャイな俺のフレンドは照れくさいらしいようでな、生徒の質問の方が嬉しいだろう」

「ばちばちに切れてるだけじゃない! あそこまで怒らせるとか、先生煽りのプロでしょ! ちょっと黙ってて」

 

 セリカに黙らされ、シロコが一歩前に出る。

 

「ん……それは、どうでもいいけど、貴方がアビトス高校を騙して搾取した張本人ってことで良い?」

「そうよ! 今までヘルメット団をぶちこむ! 便利屋のバカたちけしかける! 挙句機械化部隊なんて送り付ける! あんたどういうつもりよ!」

 

 いいぞぉセリカ生身の感情を食らわせてやれ、そうすると生の感情を出しやすくなる、ホシノなんだその目は俺に本気で引いてんじゃないよ、敵は向こうだよ。

 

「ふむ……そこのあれから何を仕込まれ、何を言われるかと思ったが生徒の教育ができてないぞ? 先生」

 

 周りからの今は静かにと言う目線、今は静かにしてるよ。

 

「勝手に私有地へと侵入し、善良なる我がPMC職員を攻撃し、施設を破壊して置いて……」

 

 言ってくれた、言ってくれた、ああ言ってくれたぁ! 素晴らしい。喜びが顔に出てるかもしれん。

 

「だが、これ以上迂闊に口を開くとそこの笑顔の先生がどんなイカサマを企んでくるか分かったものではない。私の自由時間は短いのだ」

「不法行為のバーゲンセールしてるくせに何言ってんだ? 子供言いくるめに来たのか? 理事は暇なのか、俺も忙しいのに態々時間を割いて来てるんだぞ? 証拠は挙がってると言ってるだろう? 捜査令状も取って来てるんだ、全部こっちで調べるから道を開けてくれよ」

「ええい、不法令状だ。後で連邦生徒会に抗議文を送るぞ!」

「我々は連邦組織ですが生徒会傘下ではないこともお忘れなきように」

「私達はアビドスのどこかに埋められているという、宝物を探しているだけだ! なんら違法な盗掘ではないぞ」

 

 この銭ゲバどもがこんな、エジプト見たいな砂漠で宝探しとは酔狂だなぁ、こんなところで宝を探すなら、学者が必須だ。そしてこいつらが学者を雇ってる節はない、ふむ。

 というか本当に掘ってると思えん。

 

「これだけの装備で今度こそ家を武力制圧するつもりでしょ!」

「数百両もの戦車、数百人もの選ばれた兵士たち、数百トンもの火薬に爆薬、これらをたった5人しかいない学校の為に、これほどの用意をするとでも?」

「前回失敗したもんな、悪い軍隊じゃなくて悪い指揮官が居るだけっていいセリフだよな」

「やかましいわ! 一々人をコケにして、良いか君たちなどこれで終わらせるのだ、どこぞのキ印が我が銀行を焼いてくれたがそれくらいでは借金は消えんよ……私だ……そうだ、進めろ」

 

 理事が携帯を取り出し、何かを伝える。

 ……待て携帯? ジャミング環境下に? 

 

「な、なに……? 急に電話……それに「進行」って、何の」

「残念なお知らせだ。どうやら、君達の学校の信用が落ちてしまったそうだよ」

 

 変動金利の3000%上昇を食らったらしい。そもそも返させる積りもない癖に上げて退去要請か? ロベスピエール時代のアッシニアくらい上げろよ。

 3000000%でも変わらんだろう、利子の9000万に怯むんじゃないよ、セリカ、紙飛行機にするくらい肝を鍛えなさい。*4

そもそもだが借金はある敷居を超えたら借りてる奴のが偉いのだ、バックレても現状それを阻止できないカイザーは弱者になりつつある。

 

「これで分かったかな? 君たちの首に掛けられた紐が今、誰の手にあるのか」

「よく言うよ広域ジャミング下で携帯が使えるわけがねえ、お前最初から俺に勝てる未来が見えないから上げてたんだろう?」

 

 水筒から軽く水を飲んで、携帯を指さす。

 

「で、追い詰められたアンタは考えた。シャーレは現地に於いては現地学園の協力を目的としている。つまりこれでホシノ達が折れれば自分の安全が保障できるもんな!」

「名誉棄損甚だしいぞ! ともかく不法な逮捕には断固抵抗するぞ」

「事実を言って怒る奴はフーキエのクソ役人しか浮かばねえよ」

「貴様ら帰れ! 利率も倍増してやるぞ、そこの頭おかしいの連れて帰ったら委託金は今回は忘れてやる」

「捜査と任意同行があるんだが」

「拉致だ! 抵抗も辞さんぞ!」

 

 カイザー側の兵士が構え、理事の胴体と頭にレーザーポインターが灯る。

 狙撃兵くらい待機させてるよ、あんたらが先に撃ちそうだし。

 

「……みんな、帰ろう」

 

 どうしたホシノここからが良いとこなんだが。

 

「……これ以上此処で言い争っても千日手になるだけでしょ」

「ほう……副生徒会長、流石に君は賢そうだな……ああ思い出した、君と一緒にいた、まったくもってバカな生徒会長の事もな」

 

 ホシノが無言でHE弾を排莢口から装填しようとする、先制攻撃はダメだ。

 このポンコツ理事、生徒等にマウント取るのだけは上手いな、子供の遊び場で威張り散らすおっさんか、惨めだねぇ。

 だが、一つ付け足さないとな……

 

「愚か者なら俺も知ってる、1週間で麾下の兵力の大半をアビドスで溶かしたアホだ。まあ優しいホシノに免じて今日は引き揚げてやる、感謝しとけよ」

 

 各自乗車を命じる、遠くの砂丘からバイクの音、狙撃隊も撤収したな。

 助手席から身体を乗り出し、晴れ渡るアビドスの青空に手を振る。

 

「また遊びに来るからな~!」

「失せろ!二度とツラ見せるな!」

 

 つれねェ奴だな。

 扉を閉じて、ホシノが座席後ろから小さく囁いた。

 

「ありがとう、先生」

「出ぱァーつ!」

 

 笑顔で俺は帰還を命じた、素直な可愛げがあるじゃないか。

 ホシノは少し目を閉じて、排莢し安全装置をかけたショットガンを立てかけ、久方ぶりに、眠った。

 

 

 

 

 

 

 微睡の中に沈んでいく、あの何の気兼ねもしなくて良かった頃に。

 確かに治安はカスだったし先輩はアホだったし自分は、バカだった。

 あの楽しかった日々は。

 

「砂祭りの復活させてさ、観光で大儲けするの」

「うちがツノ生えた所みたいに上手くいく訳無いじゃないですか」

「いやいやいや、奇跡のV字回復を信じてる!」

「こんな砂漠に⁉そんな訳無いでしょう! いい加減現実を見てください! 生徒数は激減し、大地は塩を吹く砂漠と化し、ろくに作物だって実らない!」

 

 バンっと机を叩いた、逆さにしたコップが揺れる。

 

「食器やコップだって砂に塗れるから逆さにしないといけない! 電子機器だって砂漠仕様に対策しないといけないこんな”クソみたいな砂漠に”!」

 

 砂祭りのポスターを破る、私はあの時あの人の手を離した。

 

 

「つきましたよ」

 

 シャーレ隊員がホシノを呼ぶ、まだ若々しい1年生だろうか、昔の自分の様に熱気がある眼をしている。

 あのまま死ねりゃあ楽なのになあ……。

 やや不可思議そうにシャーレ隊員が、片手を伸ばして手を掴む。

 

「ん、ありがと」

「はあ……、あの、うなされてたようですから……」

「まあ、色々ねえ。さ、おじさんなんかナンパしてるばあいじゃないでしょ」

 

 会議室へ入ると、既に作戦会議が始まっていた。

 あの最初は、いや今はなんか更に胡散臭い大人の先生も居る。

 まあ胡散臭いのベクトルは別の意味になった、最初はあの大人はある種の占領軍司令官だと思わざるを得なかった。

 新編された連邦生徒会権力の枠外、実働組織、実力を有する埒外の暴力機構、常識的に考えればアビドスを潰し編入する進駐軍だ。

 どう考えても敵だ、しかし段々恐るべき事実が出て来た、本気でどうやら言ってるらしいという事に。

 結果は近隣政治勢力がどいつもこいつも寄ってらっしゃい見てらっしゃい、トリニティの連中はSOG出してきた、ゲヘナは介入しようとした、カイザーが重い腰を上げて本格介入し出した。

 いまアビドスは最悪の状況下にある、幸いなことにマシな大人がついているが。

 

「俺の知る限りアビドスはひっくり返しても砂時計と同じだったよな?」

「アビドスに資源は」

「無いんだなこれが」

 

 アヤネとセリカが口笛拭きながら言った、なんとも泣けてくるセリフだ。

 

「学術目的で発掘するにしても学者が居ない、俺も昔そういう遠征したから分かる」

「この人何なら逆にしてないのよ……」

「世界征服*5

「してたら困る」

 

 そう、この大人は臆面もなくそういう事を言う大人なのだ。

 私が「このクソみたいな砂漠にクソみたいな連邦生徒会がクソみたいに遅い支援を届けてきた事」を畏れ、嫌う理由を理解している。

 巷じゃあシャーレなんていう組織は「平和的で市民生活の為の組織」とかいうじゃないか、ばかばかしい! アビドスに今更来て何になる! 来ないより遅れてきた方がマシなのか? 

 挙句の果て自前の部隊まで送り付けてきた、何処が支援部隊だ。

 そしてこの大人は、完璧な大義名分で進駐を宣言した。

 アビドスからの支援要請に基づき、現地生徒会の指揮下の下作戦活動を行う? なるほど確かに自治権順守のシビリアンコントロールだ、支援を受けてる我々が貴方たちを掣肘する力がない事も良く知ってるだろうが! 

 

「ともかくだ、この件に関しては焦る必要はない。この引き上げは恐らく奴のブラフだな」

「つまり来月までに何とかするしかないねえ」

 

 そう、残された時間はあまりに少ない。

 

「たった2週間で」

 

 セリカちゃんがそう悲しい顔をするのも分かる。

 当初の警戒に反してこの先生は、ある意味全員の想像のそとに居た。

 アビドスに秩序を本気で施行しようとしている、恐らくそれは叶うだろう、ユメ先輩が望んだ様に。

 多分昔ほど栄えてはいないけど、子供が気兼ねなくアビドスに入校できるくらいに、アヤネちゃんやセリカちゃんのように、ノノミちゃんみたいに悩まなくていい。

 その為に。

 

 時間は乏しい、だが道はある。

 

 その為に自分を犠牲にするのは怖くない。

 

 翌朝、会議室に退学届けが発見された。

 

「あんのバカがああああ!!」

 

 先生の怒声がこだまし、空の水筒が窓から投げられて弾道飛行へ入った。

 

 

 

 

 

 午前6時、シャーレUAVオペレーターは悲しいかな24時間営業である。

 無論交代があるが、この時間帯が眠くなる時間だ。

 たっぷりと濃いコーヒーを飲む、アビドスは戦闘さえなければいいところだ、アヤネちゃんは無人機の扱いに関して勉強になる。

 あの子は2機の予算で3機を仕上げているから驚きだ、魔法か詐欺かどちらかである。

 

「ん、震動反応?」

 

 いつものビナーか? いや違う、反応があまりに異様だ。

 これじゃアビドス砂漠の駐屯部隊根こそぎ動員じゃないか? それにこの反応は。

 

「先生起こせ! 叩いていい!」

 

 UAVが接近する航空目標を捉える。

 カイザーPMCのマーキングが入ったAH-64、そして正規の兵員を積載したZ-20輸送ヘリコプター。

 上空制圧用のAH-64が2機、輸送ヘリが6機、恐らく中身はカイザーの一番精鋭な連中、狙い? 決まってる、ここだろう。

 

「MANPADS持ってこい!」

「屋上に50口径に配置しろ!」

「アビドス生徒全員に非常連絡」

「全市民に外出禁止命令を宣布! 今後48時間の緊急事態を理由にしろ」

 

 あーあ、戦争になっちゃった。

 私これは寝れないなあ……。

 

 

 

【次回予告】

 

航空騎兵が奔る!跳ぶ!吠える!

機銃が唸り、ミサイルが弾ける。

虎の子が秘密の扉をこじ開ける。

炎の向こうに待ち受ける、揺らめく影は!

今、解き明かされるゲマトリアの謀略!

今、その正体を覗かせるホシノの謎。

 

次回「  アビドス・ストーム・ライジング! 」

 

小火か大火はこれで分かる。

 

*1
いけしゃあしゃあとよく言う

*2
このために買って来たので後は根性焼きぐらいにしか使え無さそう

*3
カイザーローンへの被害凄まじそう

*4
それが出来たら苦労しない

*5
対仏対策委員会が作られました

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