キヴォトスの若鷲(エグロン) 作:シャーレフュージリア連隊員
『またアレですか、アロナ先輩』
いいから、ライトの光源とレフ板の調節しててください。
少し真面目にやるんですから!
はいちょっとライトの角度ずらして!
あ! ダメ! プラナちゃん! それはタイトル───
【 The Day After 】
……。
いきなり開幕は酷いじゃないですか。
ごほん。
色彩を叩き返して先生たちは勝利しました、でも勝ったとはいえ次にやる事があります。
事実上、仮想敵の
そう、カイザーは持てる戦力を吐き出してグロッキーになり、防衛室は完全に面目を潰されました。
事実上シャーレに司法権警察権で介入する根拠を完全に喪失し、非常戒厳まで出しても「出す以外手段あるの? 君達なんもしてないのに?」で黙らせてしまえるからです。
エデン条約でもアビドスでも色彩でも防衛室も連邦生徒会もろくな援助をせず、大人が解決する羽目になりました。
せいぜい文句を言えるのが普段から角を突き合わせているアオイ室長やリン行政官くらいです、交通室は大分前から親シャーレですし。
「そしてリベートに関する件ですが……耳に挟んだ噂では貴方最近、高級エステにお通いなされていますねえ。連邦生徒会は高給と見えます」
つるし上げに行ったら逆に先生がつるし上げてる。
連邦生徒会役員の大半が今や事態の認識でどん詰まる有様、しかしインフラ破壊は悪手ですよ、特に復興作業中は……。
先生は事実上「公共の敵」と宣言しました。
しっかし、アオイちゃんと連日財源で議論した後、復興のアレだコレだに各地を南船北馬で仕事は移動中、偶に戻れば持ち出し不可書類の処理をして。
混乱期でまた一旗揚げようとしてる社会不安分子を今回はキツメに分からせる。
アリウスの皆さんやシャーレのみんなも大忙しです、45⁻70ガバメント弾のリボルバーとレバーアクション担いで敵をしばき倒し、装薬強化型のハンドロード弾でガンガンしばいてます。
カスタム型のMarlin 1895でビシバシ軍用重装オートマタも倒れていますね……。*1
とうとうこの間、アンタが休んでくれないとこっちが休めなくて死ぬとダイレクトに何時ものメンバー全会一致でお布団送り。
「隙間時間で寝てるし4時間5時間は寝てるぞ!」
これは言い訳にはならなかった。捨て台詞に「17歳共よく聞いておけよ。最大3年以内にはこんな生活になるんだぞ」とか言って居ましたが、大人が何滅茶苦茶言ってるんですか。
祝賀会参加して気分良くして、「凱旋門立てようぜ!」とか言って怒られたりするのを大人と呼んでいいのか甚だ疑問ではありますが……。
事実上の連邦生徒会の内部調査と告発は既定路線です。やらないと民意が収まりがつかず、民衆は何らかの詰め腹を要求しています。
そりゃあそうですよね、司法関係者の防衛室長が汚職してまーすなんてしたら、じゃあ法律なんか守らなくて良いじゃんとなります。
司法の正義に正当性が疑われてはいけない、法律と法執行と政府は無謬でないと秩序は成立しないんですよ。
”正しくない奴らになんで従う義理がある? ”というわけです、逆に言えば”正しいなら大概は許される”とも言えますが、その正しさはどういう正しさか? というわけです。
クーデターですか? と何時もの調子でウサギの隊長に絡まれてましたが、絡まれる謂れではあります。
「仮に今やって市民の支持が得れると思うのか、ミヤコ」
「はい。いいえ。要約すれば復興の具体的成果を待つべきでしょう」
「脅威分析が正しくて何より」
ミヤコさんも随分と理論と筋道が立てれる様になりました。
彼女の言う正義とは、要するに市民の為になったわけです、正直なところ安心しています。
”SRTにしか無かった正義”なんて、空虚なおべんちゃらを信じてる間抜けじゃただの法匪*2です、彼女らの言う正義と連邦生徒会会長のいう正義が対立する可能性を微塵も考えていません。
個人主観の正義と組織の正義は必ず対立しますからね。
それをミヤコさんはある意味激烈に叩きつけられましたが、結果として彼女らはその正義を自己の責任と義務で理論化したわけです、ある意味先生に対する反抗期でもあり、そして多分。
ミヤコさんもある意味、褒められたいんでしょうね。
自分が初めて全身全霊で勝ちたい大人に。
演習を見ている先生の顔は以前と異なり、困った奴らだと笑っています。
最近は百鬼夜行やトリニティ自警団へ戦闘顧問として、護身術の講座などもしているようです。
視野と視界が開かれた彼女たちは恐らく以前の数倍、数十倍は成長していると言えます。
「遅いッ!」
演習区域ではミヤコさんの攻撃を回避しながら、サオリさんが近接突入、咄嗟の受け身に蹴りを噛まして押し飛ばす。
以前ならここで倒れていたでしょうが、ミヤコさんも負けじと吹き飛ばされたKP-31を気にせずサイドアームを抜いて反撃。
拳銃を放ちながらの突入をいなして、サオリさんの腰からふわりと空へ浮かぶは9バング!
「あ」
『ラビット小隊全滅判定』
負けはしましたが、以前より戦闘時間が27秒伸びています。
大きな進捗ですね……。
2日後、ラビット小隊が受け取った手紙から動いたのを皮切りに事態は大きく動き出しました。
間近に迫る先生の逆襲、更に事実上歴史的使命も失われたSRTという学園の看板以外に寄る辺も無い者達。
「向こうさん、特記戦力の
そりゃ、貴方色んな方法で精神的に体力的に向こうにプレッシャー掛けてますからね。
降伏してくれればいいんですが……。
問題はFOX小隊にその様な自律思考の精神が失われていることです。幹部教育の成果は、費用をかけた特殊学園の成果とは硬直化して自由思考を忘れた部隊……。
なにを間違えたんでしょう、本当に。
誰を信じればよかったんでしょうかね……。
とか考えていたら防衛室長謀反、チェスで負けそうならテーブルを蹴り飛ばせばいいという訳ですか?
朝っぱらから一報を聞かされて、飲んでたお茶をプラナちゃんに吹きかけました。
「まだ降伏してれば、室長の椅子の交渉はしてやったんだがねえ」
『それ多分、首輪をつけると言うんじゃ無いんですか?』
「本来は連邦生徒会会長がやるべき事だ、秩序とはある程度の畏怖と恐怖だ。多すぎると組織が腐り果て似非法律屋みたいなおべんちゃら大好きのカスがのさばるがな」
言いにくい事をはっきり言うな。この大人は本当に……。
ただ言いたい事は真実その通りです、多すぎる畏怖と恐怖は責任は私には無いと言い逃れる官僚の屁理屈しかなくなります。
……もしかしてですけど、私の体制が破綻した理由ってこれなんですか? うう……認めたくない……。
「タイユランの奴があの頃の俺をこう見てたのかねえ」と呟いた後、「いや、負ける様な相手さんの方に問題がある」とか言ってますけど、その人も来れません? 駄目ですか? *3
リンちゃんも無事だと良いけど……。
『そう思うなら顔を見せに行くぐらいしたらどうです? 先輩』
はぁ? 何言ってるんですかプラナちゃん、私はアロナです。
『はぁ……朱に交われば赤くなるですか、先輩』
私が似てきたとでも!? 言いましたね!これは許されませんよ、分からせが必要なようです、表に出なさい。
『分析中。先輩を連邦生徒会会長と証明する理論、精度95%、信頼区間内』
妹が姉をいじめます……うう……。
戒厳とは防衛室長も思い切った手段に出ました、なるほど、上手い手です。
連邦生徒会会長代行を真っ先に隔離することで権力を空白に置き、非常事態に対して戒厳を発令し臨時保安司令部に移す。公然としては合法の範囲内です。
代行体制の方が正直憲章解釈とかの言い訳の集合体で正当性が薄いですからね。
『現状の戒厳体制においては緊急事態の為、以下の法を制限下に置きます。
道路交通法、電波法、郵便法、鉄道営業法は連邦生徒会の制限下としてこれを管制いたします。
また、各学園及び企業、住民各種組織及びマスコミと情報機関はこれを管制下におき、不法事犯等は厳罰をもって臨む所存です。
連邦捜査部シャーレに関しても、その活動は一時制限下におき、先生との交渉によって、事後の対応を決めます』
そして非常態勢と命令者不在を口実にシャーレの活動を管制下に置く、かなり筋道がしっかりしてます。
問題は……権力と体制とは要するに、民衆がそれを認識しないと意味無いんですよね……。
「アビドス方面隊は予定通り現時刻をもって指揮管制権をアビドスへ投げてます、アリウス方面隊も投げてありますから、概ね指揮管制は現地で自活できますね」
「おうご苦労スズ。最悪アリウス方面に回す」
「了解でーす、姫ちゃんどうするんです?」
「そこなんだよなあ……問題は」
先生とスズがなにか話してますが、中々政治的には暴論と言うか酷い詐欺行為です。
「シャーレの活動を管制下に置く」と言われたので、即日立て看板を現地の奴に変えたわけです、カイザーもびっくりだ!
そして非常体制だ戒厳だと言えども、各学園自治権へ深入りするのは訳が違います。
「良いんですか? 暴発しても知りませんけど」
「ユウカ、大丈夫だ! そん時は看板をこれにするんだ」
「……エデン条約機構本部ゥ!? 何ですかコレ!」
「なにってシャーレ解体してもこれに全員天下りするんだよ」
ひっでぇ! 大人のやる事じゃない! 悪魔! 悪魔のやる事ですそれ!
しかも酷いのが「書類化されてないだけで既定路線だよね!」とナギサとマコトに詰め寄って双方から「多分そうじゃない?」と同意を得れる論拠がある事ですよ! 詐欺だ! ひでえペテン師! 詐欺師!
こいつ生徒への貸しを最大活用する気だ! なんて野郎!
「えーっ、リオ会長からセミナー顧問の席のお誘い来てるんですよ!」
「マジ? ちょっと惹かれるな、兼任出来るかな……」
うわあああ! 勝ち馬ライダーが群れ成してる!
まあそうですよね、あまりに戦いの中で勝ち過ぎて引き込みたいですよね。
恐怖に対して人は二種類の反応を示す、排除するか狙われないよう保護下に入るかって真実ですよ。
テレビじゃトリニティの境界線で戒厳部隊に Come Out, Ye Black and Tans を抗議で歌い上げるハナコさんの姿が映っていました、あそこまで反骨だとロックですね……。
結局、戒厳部隊は各所で排除され始めました。
アビドス方面隊の武装解除は大通りで黙々と散弾銃を持って睨みをきかせるホシノさんに阻止され、アリウス方面隊の武装解除はハイランダーの有形無形の妨害とアリウス側に「
「あーあ、マコト議長がブチギレて装甲擲弾兵で封鎖しちゃった」
「そりゃそうですよ、あの人自分の権力に横から手を入れられるのが大嫌いなんですよ」
「良い性格してんねえ」
状況報告レポートを見ながら、ミカさんとイロハさんがコーヒーブレイクしてます。
トリニティは実力排除とかではなく、ひたすらねちねちと「書類の書式が正しくない」と合法性と書類不足で殴り続けています。
「そういえばミレニアムはなにもされてないんだね」
「サーバーがあるからじゃないですか? リオ会長くらいしか知らないでしょうし」
「あー……」
「それにヒマリ部長は”
ユウカの返しにミカとイロハはなるほどと納得した。
以前からミレニアムの天才二人が情報資産を蓄えている事は各校上層部の噂にあったが、中央まで及んでいたかというのは不思議ではない。
「確か第二軍需工場事件の関連資料だそうです」
あちゃあと二人が呟く、要するにダブルアップ作戦の最初の軍需工場資料を特定して連邦生徒会会長へ流したのが昔のヒマリとリオ、そしてチヒロというわけだ。
その後のダブルアップ作戦以降、情報の統制と学園の自主自立へ走るリオと、あくまで自由な情報空間を守るというヒマリで意見は分かれた。
しかしながら流石に事態がそれどころではない場合は手を組む、現状、二人にとってシャーレと先生は極めて都合が良いのだ。
何故なら、ミレニアムは公に動くつもりは無いから。
先生が外出すると言い出しました、戒厳部隊もなんのそのって感じです。
当然戒厳部隊も何か言いたいようですが、先生が「公務外用の妨害ですか?」と尋ねると言葉を詰まらせています。
無理もありません、先生は法解釈バトルに強いんですよ……。
相変わらずニコニコと相手の論拠の欠落を殴っています、相手からしたら最悪です。正門前で先生を確保する事で暴発させたいのでしょうが、事前段階で負けてるんですから。
「ともかく戒厳だ! 逮捕するぞ!」
「先生! こいつら撃って良いですか」
「撃っちゃえ撃っちゃえ」
警衛隊員が呆れたような顔をしながら話しています。
すると、先生が片手を挙げました。
「警衛第二小隊、着けェ剣! しかるのち、三歩前へッ!」
ブーツが地面を叩きつける音が響き、ギラリと鈍く輝く銃剣の横隊が整列する。
「構えェ!」
「ちくしょう狂犬め……通ってよし」
相手さんは遂に音をあげちゃいました。
公務執行妨害という完璧な言い訳が相手に存在すると強弁されかねないわけです。
「ご苦労」
堂々たる礼装の随行のサオリさんが、にこやかに敬礼して返しました。
カヤ室長との会談は、開幕早々舌戦へ変化しました。
まず将来的な構想と建白書を提示しましたが、空間が冷え切っています。
「キミのいうこの組織はなんら実態の薄いまるで連邦防衛室みたいな組織だ、改善の要を認めず、まあそういうことだ」
そう言い終わると、先生は建白書を胸中へしまい込みました。
「それは公文書ですよ! 機密違反です!」
「では言わせていただく、武力があれば権力を弑するのは許されるのか? 暗号名バースデープランについて、カイザー中央役員会は話をしたいそうだ」
「あなたまさか」
「サーバーラックにはまだまだ色々あるぞ? まあ、お前がどういう秩序を作るか見せてくれよ」
先生は手持ちのカードを完璧にそろえてゲームへ臨んでいたわけです。
酷いズルです、全て賭けてるのは相手だけで、ここまでそれを気付かせずに来たわけです。
理由は簡単、膿を出し切らせるため、相手に屈服以外手段が無いと断念させるため。
抵抗が無意味と諦めがつくまでボコボコに、そういうわけですか。
そして最後通牒代わりの「秩序を作れるのか?」という問い、シャーレを脇へ追いやったが故に頼れない中で治安を維持する。
酷い話です、今までのツケ払えと言わんばかりにカヤに仕事させる気です。
そしてそれはあっさりと破綻しました、想像外の一撃は誰にも想定出来ない人から放たれたわけです。
まさかミノリ部長が最初の引き金を引いたとは、そしてカヤ防衛室長は明らかに対応を間違えました。
本質的にPMSCは民衆鎮圧や警備に向きません、当たり前です、お巡りさんは偉いが契約してるだけの警備員が何を偉そうにと皆思いますからね。
そして彼らは効率的な群衆鎮圧を理解していません、本来の専門家のヴァルキューレ警備局はカヤ防衛室長の疑心暗鬼で疑われています。
その結果はこの惨事。
「まだ終わりじゃないさ。最後にお前が必要になる、お前は勇気を失って居なかった、なら全て取り返せるさ」
先生は、カンナ公安局長にそう話して見せました。
どうやら先生には今回はシャーレではなく、上手くヴァルキューレに主役をしてもらいたいようです。
ただ先生としてもヴァルキューレが本格的に防衛室長と決裂したのは意外なようですが、無理も無いとも言いました。
「PMSCが横からしゃしゃり出てきたら自分たちを信用してない証拠だろうがよ、そんなんだからヴァルキューレが嫌がるんだよなあ」
『誰かさんが本館で暴れたせいじゃないですか?』
「指揮統括と運用者の問題だ、ヴァルキューレでもなくカヤ防衛室長自身の問題だ。……”幸い我が国は外国から来援して来た友軍を歓迎する事態になった事は無い”、か」
『”ユートピア”ですか、なんとも皮肉ですね』
ドーンと、何処かから爆発音が聞こえた。
やれやれと外を見ると、ワイルドハントの学生が燃え盛る戒厳部隊の車両付近で Paint It, Black を弾きながら絶唱している。
変な奴もいるもんだ……。
「戒厳で暇してるせいか元気だな」
サオリさんがカツサンドを食べながら呟いてます、そんな他人事みたいに……。
生活安全局の警官二人がやってきましたが、ヴァルキューレは事実上嫌気が差してるのが露骨ですね。
「ここらで一休みですよ。生活安全局もお払い箱と言うか、対応外です。会計科まで動員しろとか何考えてんですかねあのひと」
「早退みたいな物だよ、街頭警備で負傷手当貰うのはうち等の仕事じゃないしねえ」
キリノさんとフブキさんが呆れた様に愚痴を呟いています。
とはいえ仕事を辞める気も無いのか、すぐに近くの銃撃事件に対応しに行っています。
あの人たちもあれはあれで不器用なのですね……。
そして、ある意味この事態の最も悲惨な立場に有る、あの小隊メンバーも来ました。
「まァ今なら早めに投降するのも手だと思うぞ」
しかし、その計画はアツコさんが飛び込んで知らせて来たカヤ防衛室長のヤケクソで一気に否定されちゃいました。
ジェネラルの方が先に「付き合ってらんねえ!」と匙を投げちゃうとは……。
なんというか、カイザーも完全に厭戦気分が蔓延してるんですね、まあ無理もありません、諦めを知らない人と長々やり合いたくないですよ。
単純に強いし……。
ジェネラルから情報を引き出し、先生たちは準備に入り始めました。
先生は今回は二つ作戦を進める事になります。
まずミサイルサイロ制圧の”カルバノグ”、そしてヴァルキューレの支援作戦”Razormind ”、二つからなる Down the Rabbit Hole 作戦。
事実上カルバノグは先生ではなく、ミヤコ小隊長とサオリさん、そして現場の政治的及び技術等の支援のユウカさんが主軸です。
特殊部隊は常に現場判断、ある意味信頼してるという事です。
では先生は? 実はそう、ヴァルキューレの公安局の指揮車両の中。
「よおカンナ、というわけでお前に頼みがある」
「私に?」
「うん、つまるところなんだ、この事態を一番丸く終わらせるためにな」
先生の言いたい事は要するに「シャーレやラビット小隊がカヤを逮捕すると禍根が残るが、ヴァルキューレが逮捕したならば社会正義と秩序の障害にならない」という事。
きったないですねえ……いやまあ体制の正義らしくは有るんですけど。
カンナ局長は呆れた様に「小官にやらせるんです?」と呟きました。
「しょーがねーだろー、他に人がほとんどいねえんだ。んでもって一番適役なんだ」
「それで、その後は?」
「短く”シャーレが一部協力”という文章だけが残るだけさ」
「なるほど」
カンナ局長はコーヒーを飲み干して、やれやれと言いたげに呟きました。
「三流悪役がいきなり配役変更ですか」
「正義と悪は勝った奴が決めるんだぜ、というわけで俺が正義になるんだなこれが」
「正義の味方の台詞じゃないですよソレ。ともあれ、舞台には上がってしまった身です、やりきりますよ」
そういうと、カンナ局長は「白河! 実働班出動だ!」と局長室を出て告げました。
ポニーテールを揺らしてスズの姉の方の白河リッカ書記官がデスクから飛び出し、続けて局員が出撃。
FASTヘルメットにJPCプレキャリ、HK416を装備した公安局実働班が輸送警備車に詰め込まれていきます。
「さてあいつらの方は……」
公園の方を見ると、デカルトが何故か囮にされてました。
「かわいそ……」
流石に先生も
作戦が始まり、ヴァルキューレ警備局の輸送警備車が忽ちにカヤ防衛室長のいる施設を包囲します。
正門前にシャーレMRAPとヴァルキューレ公安局のパトリア装甲車が停車し、公安局実働班が突入を開始。
ジェネラルが予めの手筈通り、撤収と投降を告げ、事実上なんら抵抗を受けることなく実働班は各所で敵対勢力を制圧しました。
「現在までの状況、投降22、制圧13、逃亡阻止55」
防護バイザー付きヘルメット着用の公安局実働班に追い立てられ、逃げた先で待っているのは警備局機動隊です。
待ち構えた銃器対策部隊のMP5と屋上の狙撃班のL96狙撃銃の射線に身を晒すか、公安局実働班のHK416に打ち倒されるか、事実上選択肢は殆どありません。
仮にうまく逃げるか抵抗しても、包囲部隊の網を抜ける前に先生の手からは逃げ切れない。
最低基準がSRTのシャーレから逃げ切るのは容易い事じゃ無いのです。
殆ど抵抗も受けないまま、上層階へ進撃しますが、流石に抵抗する奴も出て来ました。
「装面」
白河書記官が告げ、公安局実働班がM40ガスマスクを着用。
CSガス手りゅう弾を投擲し、レーザーサイトが点灯しHK416を構えて前進を開始。
大半が戦う知恵や知識も乏しい相手ですが、黙々と公安局実働班は射撃して制圧します。
「クリア」
「抵抗者排除確認」
いよいよ残るは最後、カヤ防衛室長の部屋です。
「ヴァルキューレ公安局だ! 出てこい!」
カンナ局長が警告し、カヤのブローニングHPの当てずっぽうな射撃が飛ぶ。
扉の両脇に待機した公安局実働班がハンドサインし、先生が告げた。
「カヤさぁんピザの配達に参りましたぁ」
それと同時にバッティングラム*4で扉をぶち破り、公安局実働班とカンナ局長、先生が突入する。
「内乱のほう助、破壊活動、情報漏洩、その他の罪で逮捕する!」
「あ、貴女だって! ジェネラルだってそうじゃないですか!」
先生がにこやかに告げた。
「知らんのか? 実行前に自白を司法機関に送ると罪に問われないんだぞ」
「そしてジェネラルは実行前に司法取引で自白しました」
カンナが付け加え、カヤは遂に抵抗を断念した。
「状況217終了。各部隊は後続へ引継ぎを開始、撤収準備にかかれ」
それと同時に、カンナ局長に白河書記が電話を渡す。
「ちーっす姐御~! 公園の制圧終わりました~!」
「ご苦労副局長」
やれやれ、ようやくひと段落ですね。
私の仕事も少しは楽になります。
事実上先生の完勝です、公然情報としてはヴァルキューレの活躍により事件は終息したわけですからね。
ミヤコさんもその点は良いとしてますが……。
「先生。貴方事前からある程度察して計画を練ってましたね! 公園の武装決起の辺りから練って我々を利用したんですね!」
「……さァ何のことだか」
「純情な少女の思いを弄んで! 呪ってやるううう!!!!」
「衛視執行! 退場!」
拗ねたウサギが警衛隊員に引きずられて去っていきました。
なんというかまあ、賢くなるとそれはそれで不幸なんですね。
アロナもまた一つ賢くなりました……。
感想評価お待ちしてます。
誤字脱字などの報告本当にありがとうございます!
この場を借りてお礼申し上げます。