キヴォトスの若鷲(エグロン) 作:シャーレフュージリア連隊員
本作はヘリとかのバリエーションが、アパッチやブラックホーク系だけだと侘しいので増やしてます
AH-64の30㎜の掃射が屋上を舐め取る様に行われ、遂に本格攻撃を決意したカイザーの奇襲攻撃が開始された。
ソーラーパネルが砕け、通信設備がスパークを散らして弾け飛んだ。
屋上に据えた50口径が反撃を行うがガンランを一撃離脱で行う相手はレーダー連動でない限り当たる確率は低い。
直後に現れたZ-20が兵員を危険上等の降下を開始する*1。
『お、降りられるのかよ!』
『これで激しい物か! 行け!』
地上のMRAPが降下する兵員へ機関銃*2を浴びせ、数名がノックアウトされて校庭へ落ちていく*3。
それでも、今まで神聖不可侵なアビドス校舎は遂に敵の侵入を許した。
黒衣に身を包んだカイザーPMSCのアビドス方面隊空挺レンジャーが、バラクラバをつけてMk18を構えながら突入を開始した!
叩き起こされたが、叩き起こさなかったらその方が俺は其方の方に切れていただろう。
野郎、巣に引きこもるかと思いきや飛び出てきやがった、ヤケクソなんだろうが悪い手ではない。
だがな、俺は攻城戦の戦績は悪いが、機動戦ができるなら負ける気はしない。
屋上から爆発音と激しい揺れが響く、敵が侵入したか。
ぼろぼろの制服とPASGTベストを着込んだ屋上からの伝令が慌てて飛び込む。
「敵襲! 校舎内に侵入されましたァ!」
「敵戦力は!」
「ヘリ増強の2個ヘリボーン増強小隊です。既に屋上は突破されました!」
「よろしい!」
「校舎屋上から敵はまっすぐここにきてます! 予想目標はここです、逃げてください!」
「バカヤロウ!俺が逃げれるわけないだろ。大人なんだぜ」
自身の拳銃の安全装置解除を行い、横を見る。
とても良い目をしている、ホシノ、これが見れないのはお前への罰だ。
とてもとても良い目をしているぞこいつら。
「セリカ! バリ作れ、シロコ、一発強いのかましてやれ。深追い不要、行けっ!」
「よっしゃやってやるわ!」
「ん! 私達なら出来る!」
「よたよたのPMCなんかに負けてられませんよ!」
全体としてはやや浮足立っている。
流石に相手も本気だ……いや半分死兵みたいなもんか、万が一がある。
一発気合を入れてやるか、全体用の放送機を手に取り、電源を入れる。
「諸君らの努力により敵は余裕が無くなった、これを撃破すれば、残るは丸裸の王様だ」
全校放送のマイクを握りしめる。
「俺たちのが強い! 何故か分かるかアヤネ!」
「私たちが正しい事を正しいと言えるために戦っているから、ですか?」
「そうだ! 何故なら奴らは利益の為に戦うノライヌ*4で、我々は故郷を守ろうとする義勇兵だからだ!」
後ろから隊員が「総員白兵!」と叫ぶ。
「踏ん張れ! 歴史を動かすぞ! シャーレは地上最強ォ!」
「陣前逆襲やるぞ! 着けェー、剣!」
「人の土地でなにしてくれてんのよォ!!」
後ろからどえらい乱打の音が聞こえている、セリカが小銃を射撃し、アヤネがスコップを握りしめて振り下ろし、シロコが構えた銃剣を叩き込む。
外を見ると対空砲*5とMANPADSがAH-64を1機絡めとったらしい、回転しながら落ちていく、奴らの未来の様だ。
廊下を確認すると第一波が敗走したが、第二次攻撃が開始されている。
懐かしい盾持ちオートマタがAA12自動散弾銃*6をもった兵士と突入してくる、CQC戦闘用の切り札か。
「やっべあれは分が悪い、誰か手りゅう弾無い?」
「会議室にある訳無いじゃん、あっても使い切ってるよ」
「だよねえ」
最悪上手く制圧射撃してシロコ殴りこませようかと隊員たちがヤケクソ話していると階段下から数人の隊員が走り込んできた。
楽しいおもちゃが持ち込んできたようだ。
「車載のM2、整備中のをバラして持ってきました! どいてください*7」
「良いぞ勲章物だ、MGバンカーで歓迎してやれ!」
今の俺には24ポンド砲連隊のように素晴らしいプレゼントだ。
俺もやれることはやろう、これであてがついた、シロコとセリカを呼び戻し、あのくそやかましいAH-64を仕留めてもらう。
アビドスの空にあのような害鳥は不必要だ。
「二人! 戦列を崩したすきに遮蔽物の間を飛び回るハエを落とせ、細かい命令は諸君らには不要だろう、舞台は整えてやる、行け!」
50口径が敵戦列へ火を噴いた*8。
流石重機関銃、あの盾がまるで熱したチーズより早く崩壊する。
「良いぞ! 逃げる奴はカイザーの犬! 逃げないのはよく訓練されたイヌコロだ!*9」
「本当にシャーレ勤務は地獄ですよ!あーはっはっはっはァー!」
銃手が徹夜確定という事実から逃避して叫んでいる。
セリカが飛び出し、シロコが壁面をも走る。
凄いな、あんなCQC出来るのか。
前列が崩壊したせいで戦列に入り込まれたために身動きが取れない。
「飛び道具しかない密集隊形なんて」
「踏み込まれると大混乱……」
転がっているのを見つけて、シロコが円筒形の物を後列へ投げ込んだ。
「擲弾いくよ」
「FUCK!!」
後列が忽ちに潰走する。
セリカがにやりと笑いながら、フルオートを後列へ撃ち込んだ。
シロコたちの進撃路は開けた、まさか転がってたのが缶コーヒーだと気づかんとはな。
パニックと思い込みは怖いものだ、満員の劇場で何故火災だと叫ぶのが違法かよくわかる。
アビドス旧オアシスのカイザー駐屯地、指揮所内の液晶画面は戦場と化したアビドス校舎を映している。
黒煙がいくつも上がっており、画面に分散して配置された各突入部隊のHUD映像は各所でオフラインになっている。
『チョーク4と連絡が取れない、どうなってる』
『チョーク6? どうなった、オイ!』
「チョーク4と6が連絡途絶しました、考えにくい事ですが2個分隊が……」
信じられない、そう言いたげな本社からのPMC社員が愕然としている。
理事以外の全員がこの光景を信じられないといいたげだ、なけなしの空中機動部隊を動員しての早朝奇襲攻撃、本来学生にはあまりに過剰戦力だ。
しかし、いまその90名近い突撃隊は戦闘開始5分で18名を喪失している。
「我々は主導権を失ったな」
理事だけが、全てを超然と受け入れたようにコーヒーを飲んだ。
このジェネラルのお目付け役は啞然としている、だから俺は言ったんだよ。
『スーパー64撃墜された!』
「ゆ、輸送ヘリがぁ……ど、どうしてくれるのだ!」
見苦しく泣き叫ぶな、お前とて社員だろう?
理事は全火力をアビドスへ投げ込めと命じた、こうなれば総力戦だ、全部投げてやろうじゃないか。
そう、俺とお前の仲だからな。
「予備も投入しろ!」
「貴様会社を破産させるつもりか!!」
「正気であいつの首が取れる訳あるか! あの悪魔*10をここで討たねば会社が滅ぶ!」
「き、貴様はもう理事ではない! 不良財産だ! 社を破壊する危険分子だ! 貴様など」
バン! と音がした、カイザー理事が社員の頭をデザートイーグルで撃ったのだ。
小うるさい声も消えて静かになり、理事は最後の賭けに出た。
最初からこうすべきだったのだ。
指揮所に不気味な静寂が現れたが、即座に別の物が支配した。
異常環境からの高揚感だ、もはやこの戦いはアビドス砂漠分遣隊の私闘になろうとしていた。
屋上を奪還、校舎内に侵入した敵を分断した。
良いぞ、降下部隊は組織的抵抗が不可能になりつつある!
FIM-92Cを構えたMANPADSを走らせ、一気に敵航空騎兵を火制にかかる。
『体育館方面敵を撃退しつつあり!』
『用具倉庫方面応援頼む!』
『敵主力本校舎三階東方面で孤立しつつあり! 追い散らせ!』
無線機を背負った隊員がいま居ないので、代わりにアヤネに担いでもらっている。
いよいよ残るはヘリだけになりつつある。
ヘリの航続距離はよく分からんが、向こうも片道は覚悟の上だろう、随分重武装のようだからな。
「おいあれは!」
敵はここでさらに増援をけしかけやがった。
おいあの吊られている人型はなんだ、イエスの物まねか?
「カイザーの新型兵器のゴリアテです! 公式ホームページじゃ開発中と書かれてましたが」
カメラを構えてノノミがやや趣味を覗かせた声で言った。
彼女のミニガンは今起動中だから臨時で小銃兵である。
「馬鹿じゃねえの!」
「シロコ! 落とせる!?」
直ちにドローンがCH-54輸送ヘリを狙うが、AH-64が割り込んでチャフ・フレアを散布して無理矢理切った、理事! お前出来る奴だ! 部下に恵まれてるぞ!
シロコが舌打ちして次を狙うが、AH-64がAIM-9*11を使いシロコのドローンを撃墜する。
「これでラスト!」
しかしミサイルでは確実性が怪しい、どうするか。
すると、何も無い筈の砂漠から白煙が巻き上がる。
俺の部下も居ないはずだが。
「命中」
ブーニーハットを被った生徒が、歓声を挙げて走り去る。
……ヒフミの背後にいたトリニティ生徒会の手の物か、なるほど。
俺たちが勝っても実力をデモンストレーションする良い機会と考えたか、だがこれで敵地上軍の戦力は尽きた!
「先生、地上の敵が総突撃に!」
「諸君! 接近戦の用意だ! 今校舎に居る戦力で敵を粉砕する! 死力を尽くして守り抜くぞ!」
生徒会室前を最終抵抗線としつつアビドス校舎内での決戦が始まる。
カイザーは4分の1を玄関で増援阻止にあて、残るすべてでここへ向かう、ヘリは隊列を再編して突撃機動へ入った。
「もちろんです、これでは敵が少なくて張り合いがありませんよ、後5倍は欲しいですね!」
「ここが正念場だ!回天の時だぞ!」
MG射手の銃身が赤くなってないか?
まずいな火力が下がるぞ、そう考えているとノノミが楽し気に声をあげる。
「皆さん! ミニガン電源接続終わりました! いつでもOK!」
「良いなあ、転職してミニガン撃てるようになろうかな」
「あら、50口径で前線を支えてくれたおかげですよ」
銃手のほほにノノミが口づけをした、なにウチの隊員をかどわかしてるんだ、なんなら俺が引き抜きたいよ!
階段下から敵の声が聞こえる、えらく重そうな足音だ、盾持ちか?
「チョーク5会敵した!」
「クソガキどもを片付けろランチャー! グレネード! 全部だ! 全部ぶっかませ!」
不味そうな顔をしたMG射手がMGごと退避させようとしながら叫ぶ。
M72LAWランチャーを構えた隊員が三名一気に制圧射撃の下展開する。
「ランチャー射手!」
隊員が俺を突き飛ばすように飛びつき破片防御をした。
良い奴だ。後で礼をしなければ。
バリケードが吹っ飛び、爆炎から黒い熊の様な何かが出てきた。
「EODスーツ!?」
『アイ シー ユー!』
IEDにすら耐えれるEODスーツ、なんてもんを。
叫び声を上げてSAIGA自動散弾銃を乱射しながらカイザー重装歩兵が突撃する。
流石にミニガンじゃ手も足も出ねえし50口径は吹っ飛んだ!
「第一バリケード破壊されました! 後退します!」
「次が最後だよ」
まだ、舞える。
他の部隊が敵の側面や退路を塞ぐ機動に入っている、頼みのヘリが動けないのが効いているらしい、鹵獲クルセイダーが校庭に出てきた、動けたのかアレ。
敵の突入点に向け、主砲を向ける。
俺達も同じ階層に居るの忘れてないか?
『おーっほほ、効くぜェ!』
「えーい鬱陶しい! 誰か案あるか」
「ん!」
シロコが志願した、片手になんか厳めしい強盗アイテムが握られている、さっき拾ってきたのか。
火を噴く40㎜の射撃音*12、玄関から悲鳴が聞こえる。
『チョーク、3もう持ちそうにない!』
『チョーク1、総員着剣!』
残りの敵が最後の賭けに出た。
爆薬をぶん投げてこっちの陣地を爆破、対策委員会の教室まで抜いてきた。
今がチャンスか、シロコに手を振る。
「総員着剣! 行くぞ」
「スモーク投げろ、突撃ぃ!」
「資本主義の畜生どもを地獄に送ってやれ!」
見えないが白兵戦が始まったらしい、声は届くので鼓舞を入れてやる。
アヤネも手近のGLOCK18をフルオートにして掃射を始めた。
廊下に押し出されたPMCの兵隊が、突撃する最先頭のシロコを捉えた。
「あいつ等狂ってる!*13」
最後のドローンを前面を切り開くために全力射撃、前列が崩れる。
つづいて指揮官かと思われるEODスーツへ、熊手を構えて殴り込む。
咄嗟の突撃を左手のパンチで対応するが、熊手を首元をひっかけてそのままシロコはヘルメットバイザーを捥いだ。
『え、援護しやがれ!』
「お仕置きの時間ですよー!」
ノノミのミニガンが、PMCの天井を撃つ。
そこに何があるか、アビドス校舎屋上貯水タンクである!
流れ出した水が戦車砲で穴が開いた壁からそのまま真下まで蹴り落した、気の毒にアイツ労災降りるのか?
敵は打つ手が尽きつつある、後2手で勝てる。
「戦闘ヘリはどうした、敵車両を撃破せずして何が攻撃ヘリだ!」
「滅茶苦茶言うんじゃねえ!MANPADSとAAがクリスマスシーズンのシラトリ区みてえに飛んでンだぞ」
セリカが開いた大穴から、特製マガジンの入ったライフルを構える。
素早いバレル変更と装填は10秒以内で片づけて済ませた、膝をついて狙いを済ませる。
短いセリカの息を吸う音がして、特製マガジンの焼夷徹甲弾、前回の鹵獲品が銃口から飛び出した。
2発を弾道計算に使い、一撃をエンジンへ、そして操縦手へ。
エンジン区画が炎上、操縦手が狙撃に驚き体勢を崩してメインローターを校舎外壁にかすめさせる。
「先輩頼んだ!」
「まかせて……!」
高度が取れない中、対策委員と戦闘しながら友軍支援に向かおうとしたのであろうヘリのコクピット側面に、シロコお手製の強盗カッターがぶっ刺さった。
ガンナーと操縦手が恐怖の二文字で張り付いたシロコを見る。
「ようこそアビドス対策委員会へ」
てこの原理と遠心力でAH-64のコクピットガラスをかっぱぎ、スモークグレネードを差し入れる。
ヘリはそのまま地面にぶつかり、スライディングしながら停止した。
シロコが剥いだコクピットガラスで砂漠スキーをして着地し、ぐっと親指を挙げる。
「大量検挙だ! 行くぞー!!」
周りから中隊長ちゃんと呼ばれていた隊員が部室から飛び出し追撃に移った、ローター音が段々遠くなる。
輸送ヘリ隊が残存兵力収容を断念、退却していく。
風通しの良くなった廊下や屋上で分断された作戦部隊は交戦継続の意義無しと戦闘を諦めた。
『チョーク全部隊、アバランチ。繰り返す。アバランチ*14だ』
『全部隊はAOから離脱せよ』
MANPADSや打ち上げれる火器が火を噴く、先頭の輸送ヘリが大きくバランスを崩す、2機目がMANPADSの直撃を受ける。あれも駄目だろう、撤退していく。帰還後再び使えるヘリは、何機居るんだろうな。
校庭では武器を棄てた降下部隊の兵員が投降を始めていた。
『全PMC兵に告ぐ。ただちに武器を棄てて投降せよ。各級指揮官は名乗り出る事!』
「この戦争は負けだ……」
自信と武器をなくした兵員の哀れな背中があちこちに満ちていた。
アビドス駐屯地の指揮所では損失統計があげられていた。
輸送ヘリ未帰還3、特大型輸送ヘリ1未帰還、改造ワークローダー喪失、AH-64も2機喪失、投入兵力ほぼすべての喪失。
「作戦は中止、全てを失ったな」
オペレーターたちが葬儀の様に厳かな所作でヘッドセットを外した。
夢は、終わったのだ。
そう、全ては夢の様なのだ、戦闘開始前のあの苦痛すら今は無い。
カイザー理事は焦っていた、なりふり構わず集めた戦力、上層部からの恐ろしいほどの催促。
もう成功したところで先はないだろう、既にカイザー社内で「アビドス行くならクビのがマシ」と噂が流れるその最前線、良くてもどっかの島での営業くらいが精々だ。
最後の希望は最後の生徒会員を捕獲できたことだけであった、後はこの基地を要塞化して迎え撃てばいい話、とジェネラルはいうがそんなわけあるか! 絶対に主導権は渡さないぞ!
あの男に時間を与える事の恐ろしさが上は理解してない、あの男が大義名分を気にする相手は今手元に抑えたホシノだけだ!
いま、俺は柄にもない事をしている。
「勝って戻れ! 訣別! もはやこれ以外言うべきこともない!」
出撃部隊の閲兵、空へ消えていく私の希望。
「小鳥遊ホシノは消えた、これで事実上アビドス生徒会は消滅した、ゆえにこの進駐は許される、私は理事で企業なんだ。頼む頼むぞぉアビドスを落としてくれぇ」
人生で彼は初めて祈っていた、確実に進めてきた計画だったんだ、危険はあまりない計画。
終われば本社の空調の利いたオフィス生活は確実だろうか、いやもうどうでもいい! 俺はあいつに勝ちたい。
だからあのうさん臭い黒服の計画に乗った! 俺の全てを賭けた!
「理事、プレジデントからのお電話です」
「キヴォトスの空に輝く偉大なる支配者プレジデント」
闇銀行襲撃を受けて連絡した私に、プレジデントは正気かと疑ってきた。
最初望んだ増援はニムロッドミサイル搭載型CH-53、それにMi-28NとOH-58WRを依頼した。
夜襲の遠距離ミサイル攻撃をかまして夜戦の優位と射程の優位を得るしかない。
「世辞などどうでもいい、アビドスは何時落ちる? お前の計画でカイザー全体に与えた損害を理解できてるのか!」
「勿論です、すべて計画通りに、作戦名は”カイザーシェラハト”我々に相応しい作戦名です」
「その言葉忘れるなよ、しくじれば、これまでの損失を貴様のすべてで払わせるぞ!」
無茶振りをして希望とは違うが兵力を借りた、ジェネラルは理事に憐みの様な視線を送っている、なんなら事実憐れんでいる。
実は理事は気付いていないが、最近幻覚と幻聴と会話しているのだ、ジェネラルは笑いに来たが流石に笑えなくなった、夜ごと隣室から病んだ理事の声が聞こえる駐屯地から早く消えたかった。
デスクの上の物をすべて手で払い落し、顔の前で手を組み祈る。
脳裏によぎる、シャーレの先生と呼ばれた男。
次にあった時自分は耐えれるのだろうか……
黒服が連れて行かねば、勝てるならホシノに伏して祈りかねなかった、もう彼に祈れる対象が無いから何でもよかった。
「理事、特別カスタムのゴリアテが届きました、そして私が回せる最後の兵力です」
「分かった、朗報に期待しろ」
ジェネラルが退室し一人になった部屋で黒服に連絡を取る。
ジェネラルには一層理解できなかった、彼は作戦日が近づくごとに精力的になっていた。
1日3食食って1食は分厚い肉を食う、砂漠で汗もかかない、夜食まで喰うし、部下の名前を完全に記憶していった。
「おや、理事殿随分楽しそうですね。ですが? 暁のホルスは手に入りました、計画ももう一押しでは無いですか?」
黒服はまるで遠足前の学生の様にうきうきとした声をする理事に、やや困惑していたが納得はしていた。
権力奪取という行為は眠る男の獣性をくすぐる単語と魅力の事は理解はしている、ここまでイカレた奴は知らないだけだが。
「貴様の甘言に乗ったせいだがね、そのせいで私のキャリアは風前の灯だ、PMC基地が陥落すれば貴様も困るだろう……」
「戦力の寄進をお望みですか? クックック困りましたねぇ、我々に即座に出せるものなど」
作戦部隊を失ったことを知っているくせによくいうよと、理事は愉快気に笑う。
「いいのか? 貴様の宝は我々の手にあるのだぞ?」
「その場合の予備計画はありますが、ふむ……期待せずお待ちを」
電話を叩きつける、彼は空を見上げた、アビドスの連中の気持ちが少し理解できたが、砂嵐はまるで彼を笑ってるようだった。
静かになった、オフィスに1時間後、入室した社員の報告により彼の賭けの殆どは夢になったが……。
「まだだ、最後の戦力とカスタムゴリアテがあれば……無線封鎖を徹底しろ。あと一戦はできる」
そう、夢はまだ終わらない。
「ただでは終わらせん、小鳥遊ホシノ。奴の戦闘能力は本物だ……これを投入されなければ、せめて奴にシャーレの先生に一撃食らわせたい」
そしていま、そのヘリ隊は失われたが、まだまだ手はある。
「きたまえ先生、コールだ……」
皮肉だな、SNSシャーレ公式とか書いてあるを見る限りお前の作戦指揮用の机も薄緑なのだろう?
博打という訳だ、俺とお前の全てを賭けたポーカーだ、俺の全て賭けてやる。
先生の本来居た世界の彼を知るものが居たら、「それで勝てたら苦労していない」と苦笑したであろうけども。
【次回予告】
今はこうする他はない。
何が待っていようと、敵の手の中へと歩いて行く他に、何ができるというのか?
だが、負けたくない。
誰にも、何にも。
次回「 反転攻勢 」
大人とは、恐怖に竦まず前に歩けること。
コードネームの『チョーク』はブラックホークダウンだそうで。
アビドス校舎っておいくらなんでしょうね?戦闘ヘリと輸送ヘリが高そう
ホシノが周りの話を聞いて居れば風通しはそこまで酷くなりませんでした。